Prelude for The Twilight Peak 3rd
「黄昏の峰へ」の前奏曲 第3章
 MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future

CG softs:  DOGA-L3, Metasequia

 

 

 

 

 

 
 



 
 
 
 
 
 

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図41 レック軌道宇宙港−小型船用ドッキングベイに接近中の、95トン級シャトル

意外に思われるでしょうが、宇宙港クラスDであるにも関わらず、
レック星系には軌道宇宙港が存在していました(GTの公式設定)。
地上の気象が Violent なため、シャトルでなければ安全に
離着陸できないそうです(GURPS StarPort より)。





1.はじめに


 〈貿易〉技能は、貿易品の売却価格を数日前(技能レベル×3日前)に予想できる、とても便利な技能です。
 直感的には便利なことが明らかな技能であり、間違いなく色々と役立っている筈なのですが、その具体的な効果(実際にどれだけの利益が増えたのか)や、上手な使い方が今ひとつ分かり難い技能でもあります。

 という訳で今回は「黄昏の峰への前奏曲 第2章」で扱わなかった、〈貿易〉技能の考察を行ないます。今回も背景設定には、シナリオ「黄昏の峰へ」を利用しました。



2011.11.25 追記
 〈貿易〉技能について、日本語版と英語版では、そのルールが異なっています。
 その理由は分かりませんが、日本語版はCT「豪商」に準拠しているということなのかも知れません。

HJ日本語版の〈貿易〉ルール
 〈貿易〉技能によってサイコロのうち1個をあらかじめ振っていた場合は、忘れずにその目を使用すること。ただし、「実際価格表」で残りのサイコロをふる直前に2Dを行い、10+だと予想が外れる(「実際価格表」でサイコロを2個振ることになる)。
 また〈貿易〉技能レベルは予想を立てられる時期にも関係する。〈貿易−1〉なら3日前、〈貿易−2〉なら6日前に1個目のサイコロを振ることができる(レベルごとに3日)。


GDW英語版の〈貿易〉ルール
 If the players rolled one die in advance (allowed for Trader skill), remember to use the prior roll on this table.
 プレイヤーが(〈貿易〉技能によって)サイコロ1個をあらかじめ振っていた場合、忘れずにその目を使用すること。



 見比べれば一目瞭然ですが、英語版には「10+で予想が外れる」「技能レベル1毎に3日前から予想できる」というルールが存在しません。
 MT本来のルールとしては、「予想は外れない」「レベル数に関係なく予想できる」ということなのでしょう。

 MAG様が海外に問い合わせてくださった結果、以下のような使い方がなされているそうです。

具体的な手順は下記になります。
 @貿易技能を有していれば予測によりサイコロのうち1個を先に振ることができる。
 A売るか売らないかを選択する。売る場合はBへ、売らない場合は1週間経過し@へ戻るか、別の世界に出発する。
 Bもう一つサイコロを振り@と合わせて売却値を決める。ここでサイコロを振ったならば必ず売却しなければならない。


 しかし、これに不満を感じる方も多いようで、最近の英文エラッタでは以下のようなルールが追加されていました。



英文エラッタ(2010/03/25)で追加された〈貿易〉ルール
 This is mentioned on page 47 (Estimating the Sales Price), but no task is given in the tables.

 The task should be:
  To estimate first die on a given cargo lot for a given system:
  Difficult, Trader, Edu, Safe, absolute, 6O mim.

 Referee:
  On success, player generates the first die, and prediction will last for 9 days. On failure, no roll is made. Regardless of result, the task may not be retried.
 
 これは47ページ(売却価格の見積もり)で述べられていますが、行為判定は表で与えられていませんでした。
 この行為判定は、
  貿易品の価格見積もりで、最初のサイコロを振るためには、
  〈難〉、〈貿易〉、教育度、安全、確定、60分。

 レフリー:
  成功した場合、プレイヤーは、最初のサイコロを振ることができます。そして予測は、9日先まで有効です。失敗した場合、サイコロを振ることはできません。結果に関わらず、再挑戦を行なうことは出来ません


英文エラッタ(2010/09/15)で訂正された〈貿易〉ルール
 For each level of skill, the throw may be made three days prior to the actual sale.Thus, as a practical matter, Trader-3 is required to estimate actual value before transporting goods to another star system.

 「貿易」技能1レベル毎に、実際の販売よりも3日前に、サイコロを振ることができます。このように、実際の問題として、他星系へ貿易品を運ぶよりも前に価格を見積もるためには、「貿易−3」の技能が必要になります。


 上記の英文エラッタは、Don McKinney氏が作成/公表しているものです。これら追加ルールの採用については、レフリーとプレイヤーの皆さんで話し合って決めてください。
 面倒なことが嫌いな私は、「行為判定は省略」「技能レベル1ごとに3日先の価格を予想できる」「予想は外れない」というルールで期待値計算を行ないました(笑)。





2.〈貿易〉技能の使い方

(1)目的地の選択

 〈貿易〉技能の使い方として、CTやMTのルールブックで説明されている使い方です。
 〈貿易〉技能のレベル数×3日先の売却価格を(サイコロ1個分だけですが)予想できるため、自由貿易船はジャンプ1回で到達できる目的地の中から、最も高く売れそうな世界を選び、目的地を決めることが出来ます。
 もちろんジャンプには1週間が掛かりますので、目的地での売却価格を予想しようとしたら、〈貿易〉技能のレベル数は最低でも3レベルが必要になるでしょう。
 このため、私はつい最近まで、2レベル以下の〈貿易〉技能は何の役にも立たないと堅く信じておりました。その考えは、完全に間違っていたわけですが。




(2)売却直前の予測

 掲示板にてMAG様に教えて頂いた使い方です。
 〈貿易〉技能が2レベル以下であっても、目的地における売却価格を予想することは可能だったのです。
 ルール上は、ジャンプ空間内でサイコロを振っても良いのですが、新しい情報が何も入ってこないのに、価格を予想できるという状況も不自然です。目的地に到着し、星系内のニュースや広報を収集して、通常ドライブで星系内を航行する間に売却価格を予想する、という形にすべきでしょう。

 貿易品の売却直前に振ったサイコロの目が悪かった場合、もう1つのサイコロの目が良いことを期待して売ってしまうか、あるいは、全く違う価格で売れることを期待して売却を中止し、1週間後に再度、2つのサイコロを振るという選択肢があります。
 1週間後の売却がより高値になって、大きな利益を産み出すという保障はありませんが、売却予想価格があまりにも悪い場合は、1週間を待った方がより多くの利益を見込めるでしょう。
 次の3章では、その問題を具体的に考察してみました。




(3)価格予測が外れる可能性

 MTのルールでは実際に貿易品を売却する際、2Dを振って10+ならば、売却価格の予想が外れます。あらかじめ振っておいたサイコロの目は、使いません。改めて2つのサイコロを振ることになっていました。
 CTの「豪商」に書かれていたルールも、10+で予想が外れます。

 ところが、MAG様に紹介頂いたMTの英文ルールでは、その条項が存在しないようなのです。英文ルールの場合、〈貿易〉技能の予測は絶対に外れないということになりました。

 MAG様が海外で調査したところ、「10+で予想が外れる」ルールは日本語版だけのオリジナルルールらしいので、今回の考察では用いません。予想は外れないという計算で考察します。





3.売却直前の価格予測

(1)〈貿易〉技能レベルが2以下の場合

 〈貿易〉技能のレベルが2以下であっても、目的地に到着した時点で、運んできた貿易品の販売価格を予想することは可能です。
 価格予想の際に振ったサイコロ(1D)の目がいくつであるかによって、実際の販売価格はある程度の範囲に収まることになるからです。

 以下の表42〜50で、〈ブローカー〉技能毎に異なる販売価格の予想を示しました。表の左上に示した期待値が、貿易技能と無関係に定まる販売価格の期待値です。
 実際の販売価格が100%より小さい数値赤色で、大きい数値は黄色で、150%以上の数値は水色、100%ちょうどの数値は白色で示してあります。


 表42 〈貿易〉技能を用いて予想した、貿易品の販売価格(ブローカー技能なし)

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 MTのルールにおいて〈ブローカー〉技能を持たずに投機貿易を始めることは、無謀としか言いようがありません。しかし、そういうPCも何処かに居ることでしょう(私がレフリーしたPC達もそうでした)。
 もちろん、貿易品を売却する世界の宇宙港がDクラス以上であれば、宇宙港のブローカーを利用できますが、投機貿易による利益は大きく目減りしてしまいます。

 それはともかく〈ブローカー〉技能を持たない場合、貿易品の販売価格は36分の1541.7%)の確率で期待値を下回り、同じく36分の1541.7%)の確率で期待値を上回ります。残る36分の6(16.7%)の確率は、期待値通りの価格になるでしょう。
 〈貿易〉技能を用いて、価格決定に用いるサイコロの1つの目が明らかになっている場合、その目が1〜3であれば、売却を1週間待ってサイコロを振り直した方が、より高く売れる可能性は増えました。
 ただし、1週間の停泊(経費の増加)を埋め合わせできるほど、高く売れるかどうかは分かりません。



 表43 〈貿易〉技能を用いて予想した、貿易品の販売価格(宙港ブローカー−1)

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 「技能なし」の次に期待値の大きい売り方は、宇宙港で技能レベル1のブローカーを雇う方法です。最終的な販売価格の5%を手数料として支払わなければなりませんが、「技能なし」よりも確実に、利益が増えます。「技能なし」の自由貿易商人は、積極的に利用してください。



 表44 〈貿易〉技能を用いて予想した、貿易品の販売価格(ブローカー−1)

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 乗組員の〈ブローカー〉技能が1レベルの場合、貿易品の販売価格は36分の2158.3%)の確率で期待値を下回り、36分の1541.7%)の確率で期待値を上回ります。期待値は、中央値より上にあることが分かりました。
 それでも、〈貿易〉技能を用いたサイコロの目が1〜3であるならば、売却を1週間待ってサイコロを振り直した方が、より高く売れる可能性は大きいのです。



 表45 〈貿易〉技能を用いて予想した、貿易品の販売価格(宙港ブローカー−2)

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 技能レベル2のブローカーを雇える宇宙港は、Cクラス以上の宇宙港です。帝国領内であれば、ほとんどの星系はCクラスの宇宙港を備えているでしょう。ですから、技能レベル2のブローカーを雇えることは、ほぼ確実です。

 しかし、乗組員の〈ブローカー−1〉を使った場合(表44)と比べると、ほとんど違いがありません。貿易技能による予想結果(1D=1、5、6)の欄で数パーセント優っているだけです。サイコロの目によっては、宇宙港のブローカーを利用することでかえって損をしてしまうと分かりました。

 どちらにせよ、最終的な販売価格の10%をブローカーに払わなければなりません。〈ブローカー−1〉を持つ乗組員が居るのであれば、宙港ブローカーの利用はじっくりと検討した方が良さそうです。



 表46 〈貿易〉技能を用いて予想した、貿易品の販売価格(宙港ブローカー−3)

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 技能レベル3のブローカーを雇える宇宙港は、Bクラス以上の宇宙港です。Bクラス以上になると、Xボート等の通っている幹線航路でなければ、利用できないかも知れません。技能レベル3の宙港ブローカーを利用した場合は、最終的な販売価格の15%を支払う必要が生じます。

 明らかに、乗組員の〈ブローカー−1〉(表44)よりも期待値が大きいので、利用できるのであれば積極的に利用すべきでしょう。



 表47 〈貿易〉技能を用いて予想した、貿易品の販売価格(ブローカー−2)

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 〈ブローカー〉技能が2レベルの場合、貿易品の販売価格は36分の2158.3%)の確率で期待値を下回り、36分の1027.8%)の確率で期待値を上回ります。残る36分の6(16.7%)の確率は、ほぼ期待値通りの価格でした。
 〈貿易〉技能を用いたサイコロの目が1〜3であるなら、売却を1週間待つ方が良いでしょう。サイコロの目が4である場合は1週間待っても期待値が変わりません。

 レベル3の宙港ブローカーを利用した場合の期待値(表46)と比較すると、全体では優っているものの、〈貿易〉技能で振ったサイコロの目が「5、6」の場合に劣っていると分かりました。
 その場合は、15%の手数料を取られてしまいますが、宙港ブローカーを利用すべきようです。



 表48 〈貿易〉技能を用いて予想した、貿易品の販売価格(宙港ブローカー−4)

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 技能レベル4のブローカーを雇える場所は、Aクラスの宇宙港のみです。私の愛する辺境航路では、まず利用できません。利用した場合には、最終的な販売価格の20%を支払う必要があります。

 乗組員の〈ブローカー−2〉(表47)と比べると、全体では期待値が顕著に大きいのですが、〈貿易〉技能で振ったサイコロの目が「1、2」の場合、期待値が小さくなっています。サイコロの目が「1、2」の場合は、宙港ブローカーを雇わない方が良いでしょう。



 表49 〈貿易〉技能を用いて予想した、貿易品の販売価格(ブローカー−3)

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 〈ブローカー〉技能が3レベルの場合、2レベルの場合とほぼ同じです。
 〈貿易〉技能を用いたサイコロの目が1〜3であるなら、売却を1週間待つ方が良いでしょう。
 しかしサイコロの目が4であるならば、1週間待つことによる期待値の増加は、3%ありました。この3%によって、1週間分の経費が賄えるのであれば、1週間を待っても構いません。


 表50 〈貿易〉技能を用いて予想した、貿易品の販売価格(ブローカー−4)

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 〈ブローカー〉技能が4レベルの場合、貿易品の販売価格は36分の2672.2%)の確率で期待値を下回り、36分の1027.8%)の確率で期待値を上回ります。7割の確率で期待値を下回っていても、残り3割が期待値を上回れば良い、と言えるほど、サイコロ運が良い時の販売価格が大きかったのです。

 〈貿易〉技能を用いたサイコロの目が1〜3であるなら、売却を1週間待つ方が良いことは間違いありません。サイコロの目が4の場合は、待たない方が良いようです。



 上記、表42〜50の結果を、表51にまとめました。
 
     表51 〈貿易〉技能を用いて予想した、貿易品の販売価格の比較

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 基本的には、上記の表51に示した順番で乗組員の〈ブローカー〉技能や、宇宙港のブローカーを利用すべきです。
 ただし〈貿易〉技能で予測したサイコロの目によって、一部の順序が入れ替わることもあるでしょう。例えばサイコロの目「5、6」が出た、乗組員の〈ブローカー−2〉と、宙港ブローカーの〈ブローカー−3〉などです。

 こうして並べた状態を見比べると、宙港ブローカーが「あまり役に立たっていない」ことに気が付きました。
 「前奏曲 第2章」で明らかになった通り、辺境航路の自由貿易で利益を出すためには、技能レベル3程度の〈ブローカー〉技能が不可欠なのです。それだけの技能を備えた自由貿易商人は、Aクラスの宇宙港に寄港しても、宙港ブローカーを利用する必要がありません。

 宙港ブローカーを利用する自由貿易商人は、〈ブローカー〉技能を持たないか、低いレベルしか持たないのです。そうした商人は大きな利益を得られません。すぐに経営が行き詰まり、淘汰されてしまうと思います。では、宙港ブローカーは一体、誰の商品を売買して収入を得ているのでしょうか。

 この問題については次回の考察「黄昏の峰への前奏曲 第4章」で考えてみます。




(2)〈貿易〉技能レベルが3以上の場合

 〈貿易〉技能レベルを3以上持っている場合は、目的地に到着した時点で、1週間後の販売価格を予想することも出来ます。到着した時点で、すぐさま貿易品を売却した場合の価格と、1週間待って売却した場合の価格を、比較することが出来るのです。

 当然ながら、今週よりも来週の方が「高く売れそうだ」と判断したならば、停泊期間を1週間延長して、次の週に貿易品を売却するべきでしょう。
 反対に、今週の方が来週よりも「高くうそう」なのであれば、さっさと貿易品を売却しなければなりません。



 到着した週での販売価格を「今週の販売価格」、1週間後の販売価格を「来週の販売価格」と定義します。
 表52〜56に利益増分の期待値を示しました。期待値ですから、確実にこれだけ儲かるという訳ではありませんが、何十回も貿易を繰り返せば、その儲けの平均値が下記に近づいてくることだけは確かです。



        表52 貿易品売却を1週間待った場合に期待できる
            販売価格の増分(ブローカー技能なし)

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 今週と来週の販売価格を比べた場合、当たり前の話ですが、36分の1541.7%)の確率で値下がりし、36分の1541.7%)の確率で値上がりします。残る36分の6(16.7%)の確率は、価格が変わりません。
 今週よりも来週の方が高く売れる場合、つまり、水色で示した組み合わせの時だけ、貿易品の売却を1週間待つべきでしょう。
 今週の販売価格が安いと予想していたら高く売れて、来週は高く売れる筈だったのに安くしか売れなかった、という可能性は常に存在するのですが。



        表53 貿易品売却を1週間待った場合に期待できる
            販売価格の増分(ブローカー−1)

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 わずかですが、ブローカー技能なしの場合と比べて、数値が大きくなりました。



         表54 貿易品売却を1週間待った場合に期待できる
             販売価格の増分(ブローカー−2)

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 〈ブローカー〉技能レベルが2レベルになると、数値の振幅が、明らかに大きくなりました。〈貿易〉技能による「来週の販売価格」予想がますます重要になってきます。



         表55 貿易品売却を1週間待った場合に期待できる
             販売価格の増分(ブローカー−3)

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         表56 貿易品売却を1週間待った場合に期待できる
             販売価格の増分(ブローカー−4)

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 今週のサイコロの目が「1」、来週のサイコロの目が「6」だった場合、売却価格は今週と来週で153%も違うようになりました。
 より大きな利益を得るためには、〈ブローカー〉技能と〈貿易〉技能の双方で、高い技能レベルが必要なのです。



 〈貿易〉技能が5レベル以上あった場合、2週間後の販売価格まで予想できることになりますが、そこまでは考察しません。





4.実際の〈貿易〉技能の利用

(1)技能レベル1の自由貿易船

 乗組員の技能レベルが1で揃っているA型自由貿易船(ここで用いる技能は〈貿易〉と〈ブローカー〉のみ)が、リジャイナからジェンゲに到着したとします。
 船倉の中身は、すべてリジャイナで購入した貿易品ばかりだとしましょう。

 リジャイナの貿易品 宇宙港A テックレベル12 富裕 仕入れ値5,200cr

 これをジェンゲで売却した場合、売却基準値は6,500crになります。〈ブローカー〉技能が1レベルしかなくても、確実に儲かると思われました。

 船長は到着の直前に〈貿易〉技能1レベルを用いて、ジェンゲにおける貿易品の販売価格を予想してみます。
 ところが、振ったサイコロ(1D)の目は、なんと「1」!
 表44より、販売価格は最低が50%、最大でも110%にしかなりません。
 実際に売却する際に振るもう1つのサイコロの目が、いくつになるか分かりませんが平均値は83%です。
 販売価格の期待値は、1トン当たり5,736cr。仕入れ値を差し引いた利益は、1トン当たり536crにしかなりません。これでは、船荷を運んできた時よりも収入が少なくなってしまうでしょう。赤字確定です。

 船長の〈貿易〉技能は1レベルですから、1週間後の価格までは予想できません。
 このまま貿易品を売却してしまい、赤字を少しでも減らすべきなのか、あるいは1週間を待てば、もっと高い値で売ることが出来るのか、期待値で考えてみます。



    表57 リジャイナの貿易品をジェンゲで売却した場合の利益期待値
        到着した時点でそのまま(予想した価格通りに)売却した場合と、
        売却を1週間延期して、改めてサイコロを振り直した場合。

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 ジェンゲへの到着直前に振った〈貿易〉技能のサイコロの目によって、貿易品の売却を1週間延期した場合の「利益期待増分」が変わってくるでしょう。

 貿易技能に関係なく、目をつぶってサイコロを振った場合、販売価格の期待値は、〈ブローカー−1〉を用いると113%、トン当たり7,332crになりました。仕入れ値を引くと2,132crですから、船荷を運ぶよりもずっと儲かることは明らかです。

 予想した販売価格のサイコロの目が「1」でしたから、貿易品の利益期待値は536crしかありません。来週の期待値との差は、1トン当たり1,596crです。
 この増分に貿易品の量82トンを掛けると、船倉一杯に積んできた貿易品の販売利益の期待値は、157,057crになりました。

 ところで、A型自由貿易船はローン返済や維持費を合わせて、2週間当たり9万8千クレジットの支払いが必要です。パワープラントを停止し、ジャンプしないことで燃料代だけは節約できますが、ローン返済に比べれば僅かな額です。
 貿易船が何もしないで宇宙港に停泊していても、銀行は支払いは待ってくれません。貿易品の売却を1週間待つだけで、4万9千クレジットの損失を負ってしまうのです。果たして、1週間の延期はこの損失に引き合うのでしょうか。

 上記の例の場合、貿易品の販売利益は15万クレジットと予想されますから、1週間の機会損失4万9千クレジットを負っても、まだ黒字になり得ます。
 〈貿易〉技能によるサイコロの目が「1」か「2」であれば、貿易品を売却するため1週間を待つことも、経済的に許されるでしょう。
 その場合、貿易品の売却による利益は、平均で2万6千クレジットの増加が期待されました。
 停泊期間の延長は、6分の2(=33.3%)の確率で発生します。



 航海を続けるに当たって、ジェンゲの貿易品をダイナムで売却する際や、ダイナムの貿易品をダイナムンで売却する際、〈貿易〉技能は役に立ちませんでした。

 ダイナムンからレックへ貿易品を運ぶ際には、再び〈貿易〉技能が活躍します。


    表58 ダイナムンの貿易品をレックで売却した場合の利益期待値
        到着した時点でそのまま(予想した価格通りに)売却した場合と、
        売却を1週間延期して、改めてサイコロを振り直した場合。

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 上記の例でも、〈貿易〉技能で振ったサイコロの目が「1」か「2」であれば、貿易品をより高く売るため、1週間を待っても許されます。その場合の利益増期待値は3万4千クレジットでした。

 パイリーマ、ジャイルドン、インズの貿易品売却にも〈貿易−1〉の技能を活用するならば、スピンワード・メインの往路全体において、14万4千クレジットの利益増を期待できるでしょう。
 航海期間の延長は、上記5星系で3分の1の確率ですから、平均で1.7週間の延長が見込まれます。




(2)技能レベル3の自由貿易船

 今度は、乗組員の技能レベルが3の自由貿易船を考えてみましょう。コースは同じで、リジャイナからジェンゲに到着したとします。船倉の中身も、すべてリジャイナで購入した貿易品ばかりにしました。

 船長はリジャイナに居る時点で〈貿易〉技能3レベルを用い、ジェンゲにおける貿易品の売却価格を予想していました。
 サイコロ(1D)の目は、生憎と「1」です。
 表49より販売価格は最低が80%、最大が130%でした。平均は105%。販売価格の期待値は、1トン当たり6,825cr。仕入れ値を差し引いた利益は、1トン当たり2,116crになると予想されます。
 船倉一杯の82トンで17万3千クレジットの利益が出ることになりました。「1」の目が出ても十分に儲かるところが、流石〈ブローカー〉3レベルと言えるでしょう。

 それでも、来週はもっと儲かるかも知れません。
 実際に、ジェンゲに到着した時点で「来週の販売価格」の予想に応じて、期待できる売却利益の増加分を、下の表59にまとめてみました。


  表59 リジャイナの貿易品をジェンゲで売却した場合の利益期待値
        到着した時点でそのまま(予想した価格通りに)売却した場合と、
        売却を1週間延期して、売却する場合の比較。

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 欄が狭くなったので、表59の数値は、82トンの貿易品を売却した場合の利益に直しました。単位はKCrです。表57と58の右端の数字だけを載せたと考えて下さい。

 上記の例では、今週の売却価格予想のサイコロの目が「1」でした。
 その場合、来週の売却価格のサイコロの目が「2〜6」の範囲ならば、売却を来週まで延期した方が利益は大きくなります。その全ての場合で、増えた利益が自由貿易船のローン+維持費=4万9千クレジットを上回っていますので、1週間の待機期間も問題になりません。
 来週の売却価格のサイコロの目が「1」ならば、売却価格は上がりませんから、安くても今週の内に売却してしまった方が良いでしょう。

 このような方法で〈貿易〉技能を活用し、36分の15(41.7%)の確率で停泊期間を1週間伸ばすとしたならば、貿易品の売却利益は、

 停泊期間を1週間と定め、予想価格が低くても貿易品を売却する場合
                  貿易品の売却利益の期待値 = 375KCr

 貿易品を高く売るため必要ならば、停泊期間を2週間まで延ばす場合
    貿易品の売却利益の期待値 − 支出4万9千クレジット = 473KCr

 上記の通り、9万8千クレジットが増えました。〈貿易〉技能を活用できる状況は、貿易品の黒字売却が確実な世界に限られますが、3レベル以上の〈貿易〉技能を用いることで、9万8千クレジットの利益増が可能なのです。
 〈貿易−1〉の技能による利益増の、およそ3倍になりました。



 似たような状況ですが、ダイナムンの貿易品をレックに持ち込んだ場合も計算してみます。

  表60 ダイナムンの貿易品をレックで売却した場合の利益期待値
        到着した時点でそのまま(予想した価格通りに)売却した場合と、
        売却を1週間延期して、売却する場合の比較。

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 さらに数字が大きくなりました。来週の売却価格が予想できることで、さらに精度の高い期待値を求めることが可能になるのです。
 貿易品の売却利益は、559KCrから681KCrに増加して、
12万2千クレジット増えました。

 表の掲載は省略しますが、インズへ向かう途中にある、貿易品を売却できる世界に寄港した際、〈貿易−3〉を用いて1週間後の売却価格を予想し、サイコロの目によって(36分の15の確率で)停泊時間を1週間延ばしても良いのであれば、売却利益はそれぞれの星系で、以下に示した分だけ増加します。

 リジャイナ  → ジェンゲ   9万8千クレジット
 ダイナムン  → レック     12万2千クレジット
 レック    → パイリーマ  10万クレジット
 テュレデッド → ジャイルドン 9万8千クレジット
 メイシーン  → インズ    11万7千クレジット
 スピンワード・メイン往路合計  53万5千クレジット

 航海期間の延長は、平均で2週間になるでしょう。つまり、上記5星系の2箇所で、停泊期間を延長するということです。
 その見返りとして、53万5千クレジットの利益が増えると分かりました。停泊期間の延長に伴う経費増加は織り込み済みですので、上記の金額は純利益の増加を意味します。
 〈貿易〉技能は、この技能単独ではあまり役に立ちませんが、下の表61に示された通り、〈ブローカー〉技能と組み合わされた場合、非常に大きな利益を生み出す技能になるのです。



  表61 ブローカー技能と組み合わされた、貿易技能の効果(利益増分:KCr)

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5.まとめ

 〈貿易〉技能の使い方を色々と考察してみました。

 この技能の使い方について掲示板で示唆され、その問題を考察してみたところ、高レベルの〈ブローカー〉技能と組み合わさった〈貿易〉技能は、とても有用であることが判明したのです。
 前述の通り、私は〈貿易〉技能の使い方を間違えていましたし、真面目に使ったこともありませんでしたから、勉強になることばかりです。

 シナリオ「黄昏の峰へ」の舞台となるスピンワードメイン上の星々は、ハイリスク・ローリターンという言葉がぴったりなほど、自由貿易商人に冷たい世界ばかりです。
 しかし、そんな過酷な環境でも、自由貿易船の乗組員であるPC達が〈貿易−3〉と〈ブローカー−3〉の技能を兼ね備えていれば、約半年の航海で200万クレジットに届く利益を上げられることでしょう。



2010.01.03 初投稿。
2010.04.21 加筆修正の上、再投稿。
2011.11.25 「はじめに」の部分で英文マニュアルやエラッタの情報を追記。