(1)金星の潮汐
もしも金星に海があったら、という仮定で計算をしてみます。 バロウズの描く「金星シリーズ」では、厚い雲の下に広大な海洋が隠されている、という設定だったと記憶していますが。
トラベラー宇宙の金星は、軌道番号2(軌道半径0.7AU)を巡る、規模8の腐食性大気を持った砂漠世界です。 無理矢理、金星に海洋が存在することにしてみましょう。
0.7AUは105,000,000km。地球=月間の距離400,000kmの262.5倍でした。 太陽が金星の海洋に及ぼす潮汐力の大きさは、
(21,343,692)×(8/8)×(262.5)^-3
= 1.180
ルナP。
月が地球に及ぼす潮汐力の、およそ1.2倍です。 金星に海洋が存在するとしたら、地球とほぼ同程度の(若干弱い)潮汐が存在することになりました。 実際のところ、金星の自転は極めて遅い周期でしかありません。 ですから、年に数回の満ち引きしか起こらないのでしょう。 もしも自転周期が24時間だとしたら、地球並みの潮汐が存在できそうです。
(2)水星の潮汐
もしも水星に海があったら、という仮定で計算をしてみます。 これだけ太陽に近いと、その世界は確実に「灼熱地獄」となっている筈なのですが、その辺はさておき、潮汐だけを考えました。
トラベラー宇宙の水星は、軌道番号1(軌道半径0.4AU)を巡る規模3の真空世界になっています。 海洋が存在するとしたら、その潮汐はどうなっているでしょうか。
水星の規模は3ですから、半径は8分の3で、「0.375」となります。 0.4AUは60,000,000km。地球=月間の距離400,000kmの150倍でした。 太陽が金星の海洋に及ぼす潮汐力の大きさは、
(21,343,692)×(0.375)×(150)^-3
= 2.37
ルナP。
太陽へ大きく近付いたにも関わらず、水星の規模が小さい(半径が小さい)ことから、潮汐力の大きさもあまり大きくなりませんでした。 月が地球に及ぼす潮汐力の、およそ2.4倍しかありません。
(3)イオの潮汐
木星の衛星、イオに及ぼされる潮汐力の計算です。 現実において木星が、イオに強力な潮汐力を及ぼしていることは有名でしょう。 そのためイオの火山活動が活発化して、希薄な大気が存在する程だそうですから。
木星の半径と質量は、私が作成した大型ガス・ジャイアントの数値を用います。 半径5万km、質量が月の「7,000」倍というデータですね。
また、イオは(CT「偵察局」より)規模2の世界として扱いました。 半径は8分の2ですから「0.250」ということになります。 軌道番号は6ですから、公転軌道の影響は(6/8=0.750)^-3でした。
イオにも海洋が存在するとしたならば、木星がイオの海洋に及ぼす潮汐力の大きさは、
(7,000)×(0.250)×(0.750)^-3
= 4,148
ルナP。
月が地球に及ぼす潮汐力の、およそ4,150倍です。 イオにも「カナダのファンディ湾」のような地形が存在するとしたら、その入り江の潮位差は、62,250mにも達すると分かりました。 海洋の中、小笠原諸島のような孤立した地形であっても、4,000mの潮位差が毎日、生じている訳です。
ついでに計算してみたところ、イオの公転周期は40時間(=1.66日)になりました。現実世界のイオとは若干異なりますが、極端に異なることはありません。似たような数字です。
イオの自転周期はすでに公転周期と同期しています。 そのため、イオは常に同じ面を木星に向けているそうですが、仮にイオの自転周期が15.4時間だとしたら? その場合、イオは地球と同じように、25時間で2回の干満が起こるようにすることになりました。 ですので上記の想定通り、イオの海洋の中でも4,000mの潮位差が生じ、ファンディ湾では62,250mの潮位差が生じているでしょう。 1時間当たりに直せば、海洋の中でも毎時660m。 ファンディ湾ならば、毎時10,000mの潮位変化です。 自転周期は任意に決めることができますが、どうなるにしても、とても楽しい世界になりそうですね。
また、イオの自転周期がもっと遅くなった(例えば30時間になった)場合、潮位の変化はゆっくりになりますが、その反面、海洋の水を集める時間が長くなるため、潮位差はより大きくなるそうです。 |