Fuel Suply Service
軌道宇宙港の燃料供給サービス
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 MEGA TRAVELLER
Science -Fiction Adventure
in the Far Future

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Fig.1 20トン級大型ボート(by橘)




1.はじめに


 「軌道宇宙港シリーズ」の第三弾です。
 前二回は軌道宇宙港における「シャトル・サービス」について考察してきましたが、今度は「燃料供給」に関して考えてみました。

 「俺の商船には、燃料スクープと精製装置が積んであるから関係ないさ」
 「水素ガスに、そんな大金(トン当たりcr500)払ってられるか!」

 はい、自由貿易商船のオーナーである皆様の気持ちは良く分かります。

 しかし、果たして本当に「燃料スクープは安上がり」なのでしょうか?
 ガス・ジャイアントで燃料スクープを行なうことは、本当に、商船の運行経費削減に結び付いているのでしょうか?
 その辺を突き詰めていこうと思うのです。



 下記の考察に当たっては、例によって、MAG様投稿の「スピンワードマーチ宙域の商用船舶」と、松永様投稿の「Excel宇宙船設計シート」を利用させて頂きました。
 いつも、有難うございます。



 
2.ガス・ジャイアントにおける燃料スクープ


(1)商船の行動パターン

 目的地の星系にジャンプアウト。
 最寄りのガス・ジャイアントに立ち寄って、燃料スクープを実施。
 燃料タンクを満杯にした後、通常航行で、星系の主要世界へ向かう。

 ガス・ジャイアントでの燃料スクープを前提とした場合、ジャンプアウト直後の商船の行動パターンは、上記のようになっていると思われます。
 しかし、この燃料スクープ通常航行にどれだけの時間が掛かるのか、きちんと計算されているでしょうか。

 私が学生時代に用いていたハウスルールでは、ガ
ス・ジャイアントで燃料スクープを行なったとしても、主要世界への到着が1〜3日遅れるだけだ、ということにしていました。
 振り返ってみると、何ともいい加減な計算だった訳ですが。
 主要世界での滞在時間が短くなりますので、貿易品を見つける際に、少しだけ不利になるということにしていましたが、ペナルティはそれだけしかありません。
 皆様はどうなさっているでしょう。



(2)ソル星系のガス・ジャイアントで燃料スクープを行なう場合

 我らがソロマニ人の故郷、ソル星系を例にとって計算してみました。

 主要世界は、軌道番号3(軌道半径1.0AU)を巡っている第三惑星、地球
 最寄りのガスジャイアントは、軌道番号6(軌道半径5.2AU)を巡っている第五惑星のLGG、木星になります。
 そして、ソル星系にジャンプアウトしてきた商船の行動は、以下のようになりました。

 大型ガス・ジャイアント(木星)の100倍直径へジャンプアウト。
 100倍直径から、1G通常航行でガス・ジャイアントの上空へ移動。所要18時間
 ガス・ジャイアントにて、燃料スクープを実施。             8時間
 第五惑星(木星)から、第三惑星(地球)へ、1G通常航行で移動。
   最短距離で4.2AU、最大距離は6.2AU           141〜171時間

 以上より、ガス・ジャイアントでの燃料スクープによって生じるロス時間は、167〜197時間になりました。


 商船の運航パターンは、1週間のジャンプ1週間の星系滞在(星系内の通常航行、燃料補給、貨物/旅客の積み下ろし、貿易品の売買など)から成っています。
 それなのに、燃料スクープ通常航行だけで、167時間以上のロス時間が発生してしまう訳ですから、主要世界での滞在時間が短くなるというレベルでは済みません。

 滞在時間がマイナスに(燃料補給以外に何も出来なく)なるか、さもなければ、滞在期間をあと1週間、延長しなければならないでしょう。
 運行パターンを、1週間のジャンプ2週間の星系滞在に変更した場合、1年間に行なえるジャンプの回数は、25回から16回に減少してしまいます。

 200トン級A型自由貿易船(TL=15)を用いた試算によれば、
 高純度燃料を購入して25回のジャンプを行った自由貿易船は、通常の貨物と旅客が常に満杯という条件で、年間65万クレジットの利益を上げることができました。
 燃料スクープを行なって16回のジャンプしか行なえなかった自由貿易船は、同じ条件であっても年間12万クレジットの赤字になります。

 高純度燃料の購入燃料スクープ、どちらが「安上がり」なのか。
 答は明らかですね。



(3)リジャイナ星系のガス・ジャイアントで燃料スクープを行なう場合

 今度は、リジャイナ星系で計算してみましょう。

 リジャイナ星域の首都リジャイナは、大型ガス・ジャイアント(アシニボイア)の衛星です。
 ですから、主要世界は軌道半径55(軌道半径275万km)を巡っている第五衛星、リジャイナ
 最寄りのガスジャイアントは、その公転中心に存在するLGG、アシニボイアになります。
 リジャイナ星系にジャンプアウトしてきた商船の行動は、以下のようになりました。

 大型ガス・ジャイアント(アシニボイア)の100倍直径へジャンプアウト。
 100倍直径から、1G通常航行でガス・ジャイアントの上空へ移動。所要18時間
 ガス・ジャイアントにて、燃料スクープを実施。             8時間
 ガス・ジャイアント上空から、第五衛星(リジャイナ)へ1G通常航行で移動。
   移動距離は275万km                       10時間

 以上より、ガス・ジャイアントでの燃料スクープによって生じるロス時間は、36時間です。
 この程度ならば許容範囲だと思われますが「主要世界がガス・ジャイアントの衛星になっている」星系でなければ、ガス・ジャイアントでの燃料スクープは不経済だ、ということにならないでしょうか。



(4)レック星系のガス・ジャイアントで燃料スクープを行なう場合

 オリジナルの星系データです。
 公式設定によれば、ランス星域に存在するレック星系は、呼吸可能な大気を持つ農業世界でした。
 また、主恒星のスペクトルはM0V型
 可住圏は軌道番号0(ゼロ)にしかありませんから、主要世界のレックは、軌道番号0(公転半径0.2AU)を巡っていることになります。
 また、星系内にはガス・ジャイアントが1つだけ存在しますので、レックのすぐ外側の軌道番号1(軌道半径0.4AU)を、小型ガス・ジャイアントが巡っていることにしました。


 レック星系にジャンプアウトしてきた商船の行動は、以下のようになります。

 小型ガス・ジャイアント(名前なし)の100倍直径へジャンプアウト。
 100倍直径から、1G通常航行でガス・ジャイアントの上空へ移動。所要13時間
 ガス・ジャイアントにて、燃料スクープを実施。             8時間
 第二惑星(名前なし)から、第一惑星(レック)へ、1G通常航行で移動。
   最短距離で0.2AU、最大距離は0.6AU            31〜54時間

 以上より、ガス・ジャイアントでの燃料スクープによって生じるロス時間は、52〜75時間になりました。


 ここまで計算して気が付いたのですが、主恒星MOV100倍直径は、およそ0.5AUの距離になっています。
 第一惑星(レック)も第二惑星(名前なしのSGG)も、主恒星の100倍直径の内側に入っているではありませんか。
 以下は、慌てて行なった再計算の結果です。


 主恒星の100倍直径へジャンプアウト。
 100倍直径から、1G通常航行で、第二惑星(SGG)の上空へ移動。所要22時間
 ガス・ジャイアントにて、燃料スクープを実施。             8時間
 第二惑星(名前なし)から、第一惑星(レック)へ、1G通常航行で移動。
   最短距離で0.2AU、最大距離は0.6AU            31〜54時間

 以上より、ガス・ジャイアントでの燃料スクープによって生じるロス時間は、61〜84時間です。
 幸か不幸か、数字はあまり変わりませんでした。


 軌道番号0に主要世界が、軌道番号1に小型ガス・ジャイアントが存在するという理想的な星系であっても、ガス・ジャイアントでの燃料スクープを行なうと、最低でも2日半61時間)のロス時間が生じてしまうと判明しました。




(5)燃料スクープに伴うロス時間

 前述の200トン級A型自由貿易船の場合、高純度燃料の購入を止めて、尚且つ、年間65万クレジット以上の利益を上げるためには、22回のジャンプを行なうことが必要だと分かりました(松永様のExcel設計シートを開いて、ジャンプ回数を変えてみてください。すぐに結果が出てきます)。
 すると、星系での滞在を延ばせる時間は、1回のジャンプに付き47時間
 商船が訪れる星系の全てにおいて、ガスジャイアントでの燃料スクープが平均で47時間以内に可能でなければ、割に合わないということです。

 ガス・ジャイアントにおける燃料スクープが、短時間で可能な(例えばリジャイナのような)星系で、経費削減のために燃料スクープを行なうことは全く構いません。
 ですが、常に燃料スクープを行なうという前提で商船の運航を考えると、経済的にはマイナスになってしまう危険が高いように思えました。
 ですから、中型/大型商船の大部分は、全体的な運用コストを下げるため、軌道宇宙港での燃料補給を前提にしていると考えられます。

 商船の加速性能を2G以上にすることによって、通常航行に掛かる時間は短縮できます。
 ですが建造費の増加は、更なる採算の悪化を招きますので、ご注意ください。




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Fig.2 ガス・ジャイアント内で、燃料スクープ中の40トン級徐行艦載艇

橘様から頂いた徐行艦載艇に、無断で「探照灯」を追加しました。
ガス・ジャイアント内部で探照灯を点灯しても、何の役にも立たない
と思われますが、まぁ「雰囲気作り」ということで、勘弁してください。




3.海洋における燃料スクープ



(1)商船の行動パターン

 海洋における燃料スクープを行なう場合、商船は通常通り、主要世界に最も近い空間でジャンプアウトすれば良いことになります。
 そして主要世界の軌道上で、軌道宇宙港には立ち寄らず、大気圏に突入。
 着水した海洋で燃料スクープを行えば、燃料補給は完了です。
 着水地点から地上宇宙港までの移動時間は掛かりますが、それほどの時間にはなりません。
 燃料スクープの時間と合わせて、5時間もあれば十分でしょう。

 ガス・ジャイアントにおける燃料スクープの場合と異なり、移動時間は問題となりません。
 大気圏への突入が可能な、エアフレーム(完全流線型)船体は必要ですが、もともと地上宇宙港を利用することが前提の小型商船ならば大丈夫。

 「2D6で、その世界の治安レベル以下を出すこと」というルールがあったように思いますが、それを除けば何の障害もないようです。
 しかし、この「治安レベル以下」という記述は、「治安レベル以上」の誤植ではないのでしょうか。

 しかし、それでも私は「海洋における燃料スクープ」が現実的でないと考えました。
 その理由は、以下に述べます。



(2)宇宙港における、燃料補給の必要量

 星系に寄港する商船の船腹量から、それらの商船に補給する燃料の必要量を求めてみました。

 1G加速の性能を持つ商船が、1週間のジャンプ空間待機状態)と、1週間の星系滞在通常航行状態)における、パワープラント用燃料消費量を基準としています。
 テックレベル13コンテナ船を計算に用いましたので、船腹量1千トン当たりで、15トンの燃料消費量になりました。

 その基準値に、ジャンプ用燃料消費量を加えます。
 こちらは計算がとても簡単でした。
 寄港する商船がジャンプ1J1)性能ならば、船腹量の10%
 ジャンプ2J2)性能ならば15%ジャンプ3J3)性能ならば20%ジャンプ4J4)性能ならば25%になるからです。
 テックレベル17以上の場合は数値が変わってきますが・・・。
 その宇宙港に寄港する商船のジャンプ性能がいくつになるかという問題は、星域図を見ながら考えてみてください。

 例えば、ランス星域のトリース星系は、宇宙港クラスD、宇宙港規模6の星系です。
 トリースは非農業/貧困世界ですから、隣接するインズ星系(農業世界)から大量の食料を輸入し、2パーセク離れたヨーリ(富裕世界)へ安価な工業製品を輸出していると考えました。
 大雑把な考え方ですが、貿易量の半分がジャンプ1の商船で、残り半分がジャンプ2の商船で運ばれているということになり、燃料補給量の必要量ジャンプ1J1)とジャンプ2J2)の平均値。
 (25,41536,465)÷2=30,940トン
 ということになるでしょう。

 一方、ヴィリス星域の星域首都フレンジー星系は、宇宙港クラスA、宇宙港規模6+でした。
 フレンジーは典型的な中継港であり、商船は2パーセク離れたガーダ・ヴィリスからやって来てディノータムで燃料補給を行ない、さらに4パーセク離れたディノータムへと、向かうことになります。
 もちろん、その逆もありでしょう。
 この場合、商船の半分がジャンプ2J2)で、半分がジャンプ4J4)ですから、平均値のジャンプ3J3)の欄を見れば良い訳です。
 宇宙港規模6+J3ですから、燃料補給の必要量175,225トンになりました。


         表3  宇宙港規模による、燃料の消費量

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 海洋で燃料スクープを行なうとしても、宇宙港で燃料を購入するにしても、これだけの燃料が消費される訳です。
 上記の数字は2週間当たりの消費量ですが、これだけの燃料を販売した場合、売上げ額は年間でどれくらいになると思われますか。
 1年間を52週間とみなした場合、上記の数字を26倍すれば年間の消費量に、さらにcr100を掛ければ、低純度燃料の売上げ金額が出てきます。

 再びトリース星系を例に出して計算すると、

 30,940トン×26倍×cr100cr80,444,000

 そうです。
 1年間で、MCr80もの売上げが生じるのです。
 日本円に直して、80億円です。

 もしも「海洋における燃料スクープ」に関して何の法規制も無ければ、宇宙港の経営者は上記の利益を得られません。
 エアフレーム完全流線型船体を持つ商船は、燃料スクープをやりたい放題ですし、エアフレーム船体を持たない商船に関しても、燃料シャトルを使えば燃料スクープが可能になります。
 あるいは、貨物のシャトル・サービス(トン当たりcr10の輸送運賃)を利用して、スクープした燃料を持ち上げるという裏技も考えられるでしょう。

 反対に「海洋における燃料スクープ」がその世界の法律で禁じられているとしたら、どうでしょうか。
 宇宙港、または、星系政府から特別な許可を受けた企業(燃料供給サービスを行なう業者)以外が、海洋から燃料スクープを行なうことは出来ません。
 その企業は、結果的に燃料の独占販売権を握ることになるでしょう。

 海洋からの燃料スクープは、基本的に「無料」です。
 地上でそれを売るならば、売上げ金額はそのまま利益になりますし、軌道上で販売するとしても、輸送量トン当たりcr10が掛かるだけです。
 独占販売権を得た見返りとして、10%くらいのリベートを政府関係者に支払ったとしても、十分に引き合うでしょう。
 法律制定の理由は環境(海洋)保護のためとか、検疫のためとか、密輸防止のためとか、いくらでもでっち上げられます。
 簡単な法律を1つ作るだけで、年間MCr80の利権が転がり込んでくる。
 こんな魅力的な条件を見逃せる、政府関係者が居るでしょうか。

 宇宙港規模が5未満(燃料の消費量が少な過ぎ、売上げ額を期待できない)星系や、治安レベルが「無法レベル」の(燃料スクープを禁じる法律を作れない)星系ならば、こんなことは無理でしょうけれど。
 上記のような理由で私は、「海洋における燃料スクープ」が現実的ではないと考えているのでした。



(3)宇宙港における、燃料販売の売上高

 参考までに、燃料を独占販売した場合の売上高について、載せておきます。
 金額を見れば、何が何でも、燃料の独占販売をしたくなってくると思いますが。

       表4  宇宙港規模による、低純度燃料の売上げ見込み

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 宇宙港規模4以下の星系では、燃料を独占販売するだけの魅力がありません。
 しかし、規模7以上の星系では、ものすごい金額の売上げです。

 低純度燃料を取り扱わず、高純度燃料だけを販売しているとしたら、売上げ高は以下のように、5倍に膨れ上がるでしょう。

       表5  宇宙港規模による、高純度燃料の売上げ見込み

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Fig.6 海洋に着水して、燃料スクープ中の20トン級大型ボート

橘様から頂いた大型ボートを、勝手に着水させました。



4.宇宙港における、燃料の生産と備蓄



(1)燃料生産プラント

 宇宙港へ、必要な水素燃料を供給するための「燃料生産プラント」は、基本的には、地上に設置されます。

 ガス・ジャイアントから専用艇で燃料スクープを行ない、無人タンカーで可住圏まで運んでくるという方式。
 アステロイドベルトから、氷質の小惑星を運んできて少しずつ溶かし、水素燃料の素となる水を得る方式。
 いくつか他の方式も考えているのですが、ガス・ジャイアントから可住圏までの距離が分からないとか、アステロイドの牽引コスト(1トン当たりcr135)が高すぎるなどの理由によって、諦めました。

 スピンワードマーチの宙域図を見ながら数えてみたところ、439星系中の368星系83.8%)の主要世界に、燃料補給可能な水界が存在しているようです。
 「燃料生産プラント」は、専ら「主要世界の海洋を利用して燃料を生産している」と考えて良いでしょう。

 水界の存在しない71星系16.2%)の場合は、ガス・ジャイアントから水素を入手する方法しか無いだろうと思っていました。
 ところが、これら70星系でガス・ジャイアントの有無を確認したところ、51星系は大丈夫でしたが、21星系4.8%)には、ガス・ジャイアントも存在しません。
 この20星系に存在する14の宇宙港(Aクラスも存在します)が何処から水素燃料を入手しているのか、とても知りたいと思うのですが、どなたか、公式設定をご存知ありませんか(笑)。
 もう一度調べ直したところ、アステロイド・ベルト20星系すべてに存在していましたから、そこから燃料を得れば良いのでしょうけれど。


 それはともかく、宇宙港用の「燃料生産プラント」を、メガトラの宇宙船設計ルールで設計するため、燃料スクープの項にあった、
 「燃料スクープを使用すると、1時間あたり船体の20%の容積の水素を燃料タンクにすくい取ることができる」
 という記述を拡大解釈しました。

 つまり、船体容積50トンの「燃料スクープ装置付き宇宙船」を地上に設置すれば、それは毎時10トンの生産能力を持つ「燃料生産プラント」になるということです。
 ちょっと強引ですが、これ以外に「燃料生産プラント」の設計方法を思いつきませんでしたので。

 もちろん、通常ドライブもジャンプドライブも積みません

 コンピュータや管制パネル、環境維持のため、低出力の核融合炉は搭載しましたが、船体の大部分は燃料タンクになりました。
 一応、宇宙船の体裁を整えるため(また、真空/腐食性大気下での使用も考慮して)船体の装甲値は40を持たせてあります。
 毎時1千トン未満の生産プラントテックレベル10、1千トン以上の生産プラントテックレベル13で設計しました。


          表7   燃料生産プラントのサンプル

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 生産能力と建造費(初期投資)は、ほぼ比例しています。
 2,000トンの生産能力を得るために、1,000トン級のプラント2基を選んでも、100トン級のプラント20基を選んでも、あまり建造費は変わりません。

 生産能力が大きく違っても、維持費はあまり変わりませんでした。
 最大サイズ10,000トン級の維持費は、最小サイズ2トン級のわずか10倍です。
 維持費の大部分を、従業員(オペレータとエンジニア)の人件費が占めているためでした。

 生産された水素燃料は、シャトル・サービスによって軌道宇宙港まで輸送されます。
 その輸送コストは、「シャトル・サービス」の投稿を参考にしてください。
 地上から軌道上へ燃料を持ち上げることはあっても、逆に、軌道上から地上へ下ろすことはありませんから、復路は空荷で戻ることになってしまいました。
 単純計算で、輸送コストは1トン当たりcr20ということになるでしょう。



(2)燃料生産プラントの必要数

 表3に示した燃料の消費量を賄うため、どれだけの燃料生産能力が必要になるのか、計算してみました。
 2週間当たりの燃料消費量を、1時間当たりの消費量に換算しただけですが。


         表8 宇宙港規模による、燃料生産能力の必要量
  

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 ランス星域のトリース星系は、2週間当たりで30,940トンの燃料を必要としています。
 30,940÷336=92.1トンより、1時間当たり92.1トンの燃料生産能力が必要だと分かりました。
 100トン級の生産プラントFS−8)が1基あれば、十分に需要を賄えます。
 稼働率80%を越えていますので、故障や定期点検に備えて、20トン程度の予備が欲しいところでしょう。


 ヴィリス星域のフレンジー星系は、175,225トンの燃料を必要としていました。
 175,225÷336=521.5トンより、1時間当たり521.5トンの燃料生産能力が必要です。
 100トン級の生産プラントFS−8)が6基で需要を賄えますが、予備としてもう1基のプラントがあれば便利でしょう。



(3)燃料タンク

 生産した水素燃料は、燃料タンクに貯蔵しておく必要があります。
 この燃料タンクも、メガトラの宇宙船設計ルールで設計してみました。

 船体の99%以上は燃料タンクで占められています。
 建造費と維持費の数字が2組ありますが、左側は装甲値20(頑丈な鋼鉄製)の地上設置型、右側は装甲値40(宇宙船並)の軌道宇宙港設置型です。
 すべてテックレベル10で設計しました。


            表9  燃料タンクのサンプル

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 10,000トン級FT−10)まで、建造費はほぼ比例していますが、100,000トン級FT−11)以上は、ずっと割安になりました。



(4)燃料タンクの必要量

 さて、宇宙港には果たしてどれだけの燃料タンク(備蓄)が必要でしょうか。

 CT「1兆クレジット艦隊」のキャンペーン・ルールにおいては、宇宙港クラスごとに、Aクラス200万トンBクラス150万トンCクラス100万トンDクラス50万トンの燃料備蓄が存在すると定義されていました。
 また、フェニックス通信Vol.1には、「宇宙港には、3日分の燃料備蓄が必要だ」という記述があります。
 私は、色々と検討した結果、GTのStarPortを参考にしているフェニックス通信の数字を採用しました。

 3日分の燃料消費量は、以下のようになります。


        表10 宇宙港規模による、燃料タンクの必要量

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 宇宙港規模7+J4で、ようやく燃料備蓄が50万トン
 宇宙港規模8にならなければ、100万トン以上の燃料備蓄は必要有りません。
 どう考えてもCT「1兆クレジット」の燃料備蓄は過剰でしょう。


 ちなみに、ランス星域のトリース星系は、6,630トンの燃料備蓄が必要ですので、1,000トン級の燃料タンクFT−9)地上設置型が7基と決まりました。

 ヴィリス星域のフレンジー星系は、37,548トンの燃料備蓄ですので、10,000トン級の燃料タンクFT−10)が、軌道上に4基必要です。



(5)高純度燃料の必要性

 トラベラー宇宙に「燃料精製装置」が安価に普及している状態ならば、高純度燃料の需要は有り得ません。
 どの商船も当然のように「燃料精製装置」を搭載している筈ですから、宇宙港で燃料を購入するとしても、安価な低純度燃料を購入して、燃料タンクの中で精製すれば済むからです。

 そうだとしたら、AクラスBクラスの宇宙港で販売されている高純度燃料は、誰が買っているのでしょうか。
 高純度燃料で1回補給する代金があれば、その宇宙船に必要な「燃料精製装置」は、十分に購入できるのですから。

 私のトラベラー宇宙において「燃料精製装置」は、宇宙海軍と偵察局だけが独占使用できることになっていますが、あまり、賛同しては頂けないでしょうね。




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Fig.11 海洋上に設置された、燃料生産プラント



5.宇宙港のサンプル



(1)アードン星系の場合

 アードン星系は、宇宙港規模6の星系でした。
 中型/大型商船の大半は、4パーセク離れたディノータムと、シーユー星系との間を運行していますので、燃料補給の必要量ジャンプ4の欄、58,565トンを用います。

 これだけの燃料を地上から軌道上へ持ち上げるためには、95トン級シャトル5.2隻が必要でした。
 予備を含め、タンカーに改造されたシャトル6隻が運行していることにします。

 燃料生産量は、1時間当たり174トン。
 生産量100トンの燃料生産プラント(FS−8)が2基、地上の海岸付近(または、地上宇宙港)に設置されました。

 宇宙港の燃料備蓄は、12,550トンが必要です。
 10,000トン級の燃料タンク(FT−101基1,000トン級のタンク(FT−92基、あるいは、1,000トン級FT−912基を軌道上に設置します。
 残り550トンの備蓄は、100トン級のタンク(FT−8)を6基地上宇宙港に設置しておけば良いでしょう。



(2)キャロラン星系の場合

 キャロラン星系は、宇宙港規模5の星系です。
 商船の大半は1パーセクの距離にあるアードン星系と行き来していますので、燃料補給の必要量は、4,715トンになりました。

 宇宙港クラスはCですが、軌道宇宙港が存在しません。
 地上宇宙港を利用できない商船のために、燃料専門のシャトル・サービスが必要ですが、すでにその輸送量は「シャトル・サービス」にて計算に折り込み済みです。
 ここでは考えません。

 燃料生産量は、1時間当たり14トン。
 生産量10トンの生産プラント(FS−7)が2基地上宇宙港に設置されました。

 宇宙港の燃料備蓄は、1,010トン。
 1,000トン級の燃料タンク(FT−9)1基地上宇宙港にあれば十分です。



(3)ザーコン星系の場合

 ザーコン星系は宇宙港規模5の星系でした。
 商船の大半は2パーセクの距離にあるアードン星系トレマス・デックス星系と行き来しているのですが、それらの商船はテックレベルの制限から2連続ジャンプを行っています。
 燃料の消費量は、ジャンプ1(10%)×2回=20%。
 燃料補給の必要量は、ジャンプ3の欄を見て、8,815トンになりました。

 これだけの燃料を地上から軌道上へ持ち上げるためには、40トン級徐行艦載艇1.7隻が必要です。
 予備を含め、タンカーに改造された徐行艦載艇2隻が運行していることにしました。

 燃料生産量は、1時間当たり26トン。
 生産量10トンの生産プラント(FS−7)を3基地上宇宙港に設置します。

 宇宙港の燃料備蓄は、1,889トンですから、1,000トン級の燃料タンク(FT−92基が必要です。
 軌道宇宙港地上宇宙港に、1基ずつが置かれていれば大丈夫でしょう。



(4)ユートランド星系の場合

 ユートランド星系は、宇宙港規模4の辺境星系です。
 あまり考えていませんが、商船の大半は隣接したザーコンピーコン星系からやってくると想定しました。
 燃料補給の必要量は、ジャンプ1の欄を見て、713トンです。

 これだけの燃料を軌道上へ持ち上げるためには、20トン級大型ボート0.27隻が必要でした。
 貨物輸送も旅客輸送もこなしている1隻だけの大型ボートは、燃料輸送も行なわなければなりません。
 船倉内に折り畳み式の燃料タンクが必要になりました。

 燃料生産量は、1時間当たり2.1トン。
 生産量2トンの生産プラント(FS−6)を2基地上宇宙港に設置しましょう。

 宇宙港の燃料備蓄は、153トンですから、10トン級の燃料タンク(FT−7)を8基ずつ軌道宇宙港地上宇宙港に設置することにしました。




2009.04.02 投稿前のチェック。
2009.04.09 初投稿。