Jump MSD

 
 
 
 
 

1.はじめに

  いわゆる100直径といったジャンプ制限が重力の大きさで定まっているとすると,地球は太陽のジャンプ制限に抵触してしまうといったおかしなことが生じます.
これでは,恒星の重力圏外まで移動するために,通常ドライブによる長時間の移動を強制されることとなり,宇宙船運行における,ジャンプ1週間,停泊1週間という基本概念が大きく崩れてしまいます.

 既に重力ベースでの行為判定の例は,

http://www.users.zetnet.co.uk/trisen/sol/traveller/index.html

 に提示されており,これを機にTMLにおいて重力ベース検討法による矛盾に関する多くの議論がなされました.TML  (Traveller  Mailing  List)は,医者,科学者,軍人,コンピューターエキスパート,トラベラーの権威など,学識経験者を含んだグループです.
 
   TMLは,最終的には,100直径制限は重力ではなく重力偏差に基づき説明するのが適当であろうという結論に達しました.重力偏差は,重力を距離で一回微分したもので,ある点での重力変化の度合いを示したものです.重力が距離の2乗に反比例するのに対して,重力偏差は距離の3乗に反比例するため,これによって恒星の影響を薄め整合をとることができるためです.

 本稿では,これらの議論を踏まえ,MegaTraveller用に重力偏差ベースでの難易度行為判定表について考察してみました.




 
 
 
 

2.最小安全距離の検討
 

(1)検討の基本

 ジャンプドライブは,巨大質量による重力の影響を除くため天体の100直径以上の距離での始動が義務づけられています.何故ならばジャンプドライブの能力を左右するジャンプフィールドの精度が,重力(偏差)の影響を受けるという設定だからです."From Port to Jump-point" (JTAS 22)によれば,この数値はあくまで簡易ルールのようですが,最終的な厳密なルールがどのようなものなのかは示されていません. 

  また,メガトラベラーにおける100直径外でのジャンプ行為は「並」ですが,10〜100直径では難,10直径以内では至難です.それぞれの数値の差は+4もありますが,その間をどのように補間するのかも不明です ("Starship Operator's Manual Vol 1") . 

 PLDS氏は,この点を以下のように説明しており,これらはTMLでも受け入れられたようです.つまり,「100直径制限は実は商船のパーサーなどが乗客に対して簡易に説明する目安のようなもので,熟練した乗員達は別に正確な最小安全距離 MSD (minimum safe distance) を算出しているのだ」とという見方です.
 

 

 
(2)重力ベースによる検討

 では具体的に行為判定について検討していきましょう.高等学校の教科書を押し入れの隅から引き出してきましょう.果たして遥か未来に偉大なる古典的なこの式が存続しているかどうかは別として,天体からの重力加速度は式(1)のように表されます.
 

       A=GM/L2                                                           (1)
 
 ここに,Aは重力加速度,Gは重力定数,Mは天体質量,Lは天体からの距離です.重力は重力加速度に,船体質量を乗じることにより求まりますので,重力加速度について議論をします.この式の意味するところは,重力(加速度)は,天体質量に比例し,天体からの距離の2乗に反比例するということです.

  表-1にソル星系の天体データを示します.図-1にこのデータに基づき検討した,ソル星系内の各惑星公転軌道位置における重力分布を示します.限界重力をどう設定するかにもよりますが惑星ヴラント(Vland)を基準に判断すると10E-4がその限界値となります.
 
 図から確かに太陽の重力の影響が薄まるには,木星軌道まで,限界値の1/10以下程度となるには土星軌道まで行かねばならないことが分かります.一般に恒星の質量は特定星系の全天体の90%以上を占めることが多く,重力に頼る方法では自ずと世界観の維持が困難となると判断したTMLの意見はもっともであるといえます.
 
 陽

表-1 ソル星系の天体データと重力加速度
天体名称
軌道半径
(km)
軌道半径
(AU)
天体直径
(km)
天体質量
(kg)
表面重力
(m/s2)
10直径重力
(m/s2)
100直径重力
(m/s2)
恒星重力
(m/s2)
太陽
水星
金星
地球
火星
木星
土星
天王星
海王星
冥王星
        
-
57910000
108200000
149600000
227940000
778330000
1426940000
2870990000
4497070000
5913520000
  
-
0.387
0.723
1.000
1.524
5.203
9.538
19.191
30.061
39.529
  
1390000
4878
12104
12756
6794
143584
120536
51118
49528
2320
  
1.989E+030
3.3E+023
4.87E+024
5.98E+024
6.42E+023
1.9E+027
5.69E+026
8.69E+025
1.02E+026
1.31E+022
  
274.654
3.700
8.868
9.805
3.710
24.58
10.448
8.872
11.093
0.649
  
0.6866
0.0092
0.0221
0.0245
0.0092
0.0614
0.0261
0.0221
0.0277
0.0016
  
0.006866
0.000093
0.000222
0.000245
0.000093
0.000615
0.000261
0.000222
0.000277
0.000016
  
-
0.039560
0.011332
0.005928
0.002553
0.000219
0.000065
0.000016
0.000007
0.000004
  
 

 図-1 各惑星における惑星からの重力加速度と太陽の重力加速度の比較
 軌道半径  直径 質量 表面重力 10直径 100直径重力 軌道重力
 (km) (AU) (km) (kg) (m/s2) 10 100 
太陽

 
 

(3)重力偏差ベースによる検討

 さてでは本論に入りましょう.重力偏差ベースによる議論に移ります.重力加速度偏差は重力加速度を距離で1階微分することにより求まり,式(2)のように表せます. 


 C=-2GM/L3                                                           (2)


 ここでCは重力加速度偏差です.重力偏差は,この重力加速度偏差に船体の重量を乗じることにより求まります.繰り返しになりますが,このことから重力偏差は,天体質量に比例し,天体からの距離の3乗に反比例することが分かります.

 表-2にソル星系の天体データを示します.図-2にこのデータに基づき検討した,ソル星系内の各惑星公転軌道位置における重力加速度偏差分布を示します.限界重力をどう設定するかにもよりますが惑星ヴラント(Vland)を基準に判断すると10E-4がその限界値となります.
 
 図から地球及び火星軌道では確かに太陽の重力偏差による影響が薄まり,どうやら適切な限界値の考察が可能となるであろうことが分かります.
 

表-2 ソル星系の天体データと重力加速度偏差
天体名称
軌道半径
(km)
軌道半径
(AU)
天体直径
(km)
天体質量
(kg)
表面重力
(m/s2)
10直径偏差
(m/s2/m)
100直径偏差
(m/s2/m)
恒星偏差
(m/s2/m)
太陽
水星
金星
地球
火星
木星
土星
天王星
海王星
冥王星
        
-
57910000
108200000
149600000
227940000
778330000
1426940000
2870990000
4497070000
5913520000
  
-
0.387
0.723
1.000
1.524
5.203
9.538
19.191
30.061
39.529
  
1390000
4878
12104
12756
6794
143584
120536
51118
49528
2320
  
1.989E+030
3.3E+023
4.87E+024
5.98E+024
6.42E+023
1.9E+027
5.69E+026
8.69E+025
1.02E+026
1.31E+022
  
274.654
3.700
8.868
9.805
3.710
24.58
10.448
8.872
11.093
0.649
  
-9.88E-011
-3.79E-010
-3.66E-010
-3.84E-010
-2.73E-010
-8.56E-011
-4.33E-011
-8.68E-011
-1.12E-010
-1.40E-010
  
-9.88E-014
-3.79E-013
-3.66E-013
-3.84E-013
-2.73E-013
-8.56E-014
-4.33E-014
-8.68E-014
-1.12E-013
-1.40E-013
-
-1.37E-012
-2.09E-013
-7.92E-014
-2.24E-014
-5.63E-016
-9.13E-017
-1.12E-017
-2.92E-018
-1.28E-018
  

 

図-2 各惑星における惑星からの重力加速度偏差と太陽の重力加速度偏差の比較









 次に重力偏差に対する安全限界値を定めねばなりませんが,TMLでは,惑星ヴラントにおける「100直径位置の重力」を限界値としていたので,ここではそれに倣い,「100直径位置の重力偏差」を限界値としてみたいと思います.

 表-3に,ヴラントが所属するヴラクラン星系の天体データと重力加速度偏差を示します.残念ながらヴラントのデータは幾つか提案がなされており,どれを信頼すべきか私には判断がつきませんが,当面表に示した値を採用することとしました.
 

表-3 ヴラクラン星系の天体データと重力加速度偏差
天体名称
軌道半径
(km)
軌道半径
(AU)
天体直径
(km)
天体質量
(kg)
表面重力
(m/s2)
10直径偏差
(m/s2/m)
100直径偏差
(m/s2/m)
恒星偏差
(m/s2/m)
ヴラクラン
ヴラント
 
-
190889600
     
-
1.276
   
1167600
14400
     
2.40669E+030
8.72E+024
  
- 
 11.22
-
 -3.90E-010
 
-
  -3.90E-013
-
-4.62E-014
  

 

 次に重力偏差に対する安全限界値を定めねばなりませんが,TMLでは,惑星ヴラントにおける「100直径位置の重力」を限界値としていたので,ここではそれに倣い,「100直径位置の重力偏差」を限界値としてみたいと思います.

 表-3に,ヴラントが所属するヴラクラン星系の天体データと重力加速度偏差を示します.残念ながらヴラントのデータは幾つか提案がなされており,どれを信頼すべきか私には判断がつきませんが,当面表に示した値を採用することとしました.

 限界値を求めていく場合に,注意すべき点として,ヴラント自身の重力偏差に加え,恒星ヴラクランも重力偏差を発生させていることが挙げられます.両者は同時に作用している訳ですが,2天体からの重力偏差の複合条件がどのようにジャンプドライブに影響を及ぼすのかはよく分かりません.

 ここでもTMLによる議論「複数の天体で重力が釣り合っていても,それは綱引きをしている状態であり,依然として重力自体は存在すると考えた方がよいだろう.安全側の評価として,複数の天体による重力は方向性を無視して足し合わせた上で検討するのが良いと考える」を踏まえ,単純に和として処理することにします.
 
 よって「並」の行為判定の基準となる重力偏差の限界値は4.357E-13m/s2/mとします.また同様に,「難」の行為判定の基準となる重力偏差の限界値は4.357E-10m/s2/mと求まります.

 以上の検討結果から,重力偏差に基づく行為判定表を作成すると表-4のようになります.表-4での10直径から100直径への補間,あるいは外挿は,100.75 /難易度+1として算定しています.この表を使うためには,重力偏差を求める必要があります.偉大なるプログラムHEAVEN&EARTHを稼動させればたやすく必要な天体データは得られるので,各自で簡単なワークシートを作成すれば即座に最小安全距離MSDが得られます.
 
 

表-4 難易度表
重力加速度偏差
難易度
-4.36E-016
-2.45E-015
-1.38E-014
-7.75E-014
-4.36E-013
-2.45E-012
-1.38E-011
-7.75E-011
-4.36E-010
-2.45E-009
-1.38E-008
-7.75E-008
-4.36E-007
-2.45E-006
-1.38E-005
-7.75E-005
-4.36E-004
  Simple
  Simple+1
  Simple+2
  Simple+3
  Routine
  Routine+1
  Routine+2
  Routine+3
  Difficult
  Difficult+1
  Difficult+2
  Difficult+3
  Formidable
  Formidable+1
  Formidable+1
  Formidable+1
  Impossible


 



 
 

3.簡易データの作成
 

(1)惑星からの重力偏差発生表

 しかしながら,実際のセッションにおいて,ジャンプの度に重力偏差を計算するのは如何にも煩雑です.そこでもう少し簡易なルールを模索してみましょう.そのために,まず式(2)を工夫をしてみます.最小安全距離 MSD は惑星直径の係数倍で表されるのが一般的ですので,乗ずる係数を今Jとおくと,式(3)が得られます.
 

 C=-2GM/(JD)3                                                           (3)
 ここに,Dは惑星直径です.Jは無次元化最小安全距離と表現することもできるでしょう.
 また,惑星の質量Mは,惑星直径と密度を用いて表すと式(4)が得られます.
C=-2G(ρ1/6πD3)/(JD)3                                                 (4)
  
 ここに,ρは密度です.これを整理すると式(5)が得られます.
 
C=-2G(ρ1/6π)/J3                                                 (5)
  
 惑星規模を式中から消去することができました.結局のところJは密度の3乗根に比例しており,これによって表-5のような簡易表が得られます.行為判定レベル毎の無次元化最小安全距離Jを,惑星密度の関数として表すことができます.ヴラントと地球の密度の差は1%ですから,地球に対する密度比kで表すことにします.

 密度比kは,通常の惑星で1.0,ガスジャイアントで0.2程度と考えればよいようです.これらを詳しく設定したい場合は,HEAVEN&EARTHで作成される天体データを参考にすればよいと思いますが,密度の3乗根に比例であることを考えると大雑把にkを設定しても精度は十分です.逆に大半の惑星では100直径と考えればいいとも言えます.

 表-5の簡易表は,厳密にやろうとすれば,後述する表-6,表-7とから恒星の重力偏差分の調整を行い用いるのがよいと考えます.

 

表-5 ジャンプ難易度と最小安全距離MSDの簡易算定表
難易度
重力加速度
偏差(m/s2/m)
k=0.1
k=0.2
k=0.4
k=0.6
k=0.8
k=1.0
k=1.2
k=1.4
難易度
Simple
 

Simple+1
 

Simple+2
 

Simple+3
 

Routine
 

Routine+1
 

Routine+2
 

Routine+3
 

Difficult
 

Difficult+1
 

Difficult+2
 

Difficult+3
 

Formidable
 

Formidable+1
 

Formidable+1
 

Formidable+1
 

Impossible
  

-4.36E-016
-7.75E-016
-1.38E-015
-2.45E-015
-4.36E-015
-7.75E-015
-1.38E-014
-2.45E-014
-4.36E-014
-7.75E-014
-1.38E-013
-2.45E-013
-4.36E-013
-7.75E-013
-1.38E-012
-2.45E-012
-4.36E-012
-7.75E-012
-1.38E-011
-2.45E-011
-4.36E-011
-7.75E-011
-1.38E-010
-2.45E-010
-4.36E-010
-7.75E-010
-1.38E-009
-2.45E-009
-4.36E-009
-7.75E-009
-1.38E-008
-2.45E-008
-4.36E-008
-7.75E-008
-1.38E-007
-2.45E-007
-4.36E-007
-7.75E-007
-1.38E-006
-2.45E-006
-4.36E-006
-7.75E-006
-1.38E-005
-2.45E-005
-4.36E-005
-7.75E-005
-1.38E-004
-2.45E-004
-4.36E-004
445.15
367.43
303.28
250.33
206.62
170.55
140.77
116.19
95.91
79.16
65.34
53.93
44.52
36.74
30.33
25.03
20.66
17.05
14.08
11.62
9.59
7.92
6.53
5.39
4.45
3.67
3.03
2.50
2.07
1.71
1.41
1.16
0.96
0.79
0.65
0.54
0.45
0.37
0.30
0.25
0.21
0.17
0.14
0.12
0.10
0.08
0.07
0.05
0.04
560.86
462.93
382.11
315.39
260.33
214.87
177.36
146.39
120.83
99.74
82.32
67.95
56.09
46.29
38.21
31.54
26.03
21.49
17.74
14.64
12.08
9.97
8.23
6.79
5.61
4.63
3.82
3.15
2.60
2.15
1.77
1.46
1.21
1.00
0.82
0.68
0.56
0.46
0.38
0.32
0.26
0.21
0.18
0.15
0.12
0.10
0.08
0.07
0.06
706.64
583.26
481.42
397.37
327.99
270.73
223.46
184.44
152.24
125.66
103.72
85.61
70.66
58.33
48.14
39.74
32.80
27.07
22.35
18.44
15.22
12.57
10.37
8.56
7.07
5.83
4.81
3.97
3.28
2.71
2.23
1.84
1.52
1.26
1.04
0.86
0.71
0.58
0.48
0.40
0.33
0.27
0.22
0.18
0.15
0.13
0.10
0.09
0.07
808.90
667.67
551.09
454.88
375.46
309.90
255.80
211.13
174.27
143.84
118.73
98.00
80.89
66.77
55.11
45.49
37.55
30.99
25.58
21.11
17.43
14.38
11.87
9.80
8.09
6.68
5.51
4.55
3.75
3.10
2.56
2.11
1.74
1.44
1.19
0.98
0.81
0.67
0.55
0.45
0.38
0.31
0.26
0.21
0.17
0.14
0.12
0.10
0.08
890.30
734.86
606.56
500.66
413.24
341.09
281.54
232.38
191.81
158.32
130.68
107.86
89.03
73.49
60.66
50.07
41.32
34.11
28.15
23.24
19.18
15.83
13.07
10.79
8.90
7.35
6.07
5.01
4.13
3.41
2.82
2.32
1.92
1.58
1.31
1.08
0.89
0.73
0.61
0.50
0.41
0.34
0.28
0.23
0.19
0.16
0.13
0.11
0.09
959.05
791.61
653.39
539.31
445.15
367.43
303.28
250.33
206.62
170.55
140.77
116.19
95.91
79.16
65.34
53.93
44.52
36.74
30.33
25.03
20.66
17.05
14.08
11.62
9.59
7.92
6.53
5.39
4.45
3.67
3.03
2.50
2.07
1.71
1.41
1.16
0.96
0.79
0.65
0.54
0.45
0.37
0.30
0.25
0.21
0.17
0.14
0.12
0.10
1019.14
841.21
694.33
573.11
473.04
390.45
322.28
266.01
219.57
181.23
149.59
123.47
101.91
84.12
69.43
57.31
47.30
39.05
32.23
26.60
21.96
18.12
14.96
12.35
10.19
8.41
6.94
5.73
4.73
3.90
3.22
2.66
2.20
1.81
1.50
1.23
1.02
0.84
0.69
0.57
0.47
0.39
0.32
0.27
0.22
0.18
0.15
0.12
0.10
1072.88
885.56
730.94
603.32
497.99
411.04
339.27
280.04
231.15
190.79
157.48
129.98
107.29
88.56
73.09
60.33
49.80
41.10
33.93
28.00
23.11
19.08
15.75
13.00
10.73
8.86
7.31
6.03
4.98
4.11
3.39
2.80
2.31
1.91
1.57
1.30
1.07
0.89
0.73
0.60
0.50
0.41
0.34
0.28
0.23
0.19
0.16
0.13
0.11
Simple
 

Simple+1
 

Simple+2
 

Simple+3
 

Routine
 

Routine+1
 

Routine+2
 

Routine+3
 

Difficult
 

Difficult+1
 

Difficult+2
 

Difficult+3
 

Formidable
 

Formidable+1
 

Formidable+1
 

Formidable+1
 

Impossible
 

1) kは惑星密度比(特に設定しない場合,ガスジャイアント0.2,惑星1.0程度)
2) MSDの単位は惑星直径

  
  

  

 
 

(2)恒星からの重力偏差発生表

 表-6はソルを基準とした各軌道位置(単位:ソル直径)での重力偏差の発生表です.表-7は軌道半径(AU)を各恒星の質量密度と直径からソル直径換算距離に変換するための補正係数表です.
 
 使い方は,表-7で恒星スペクトルと規模から補正係数を求め,これを惑星の軌道半径(AU)に乗じてください.その軌道位置における恒星の重力偏差の値がソルでいうと何直径の値に相当するかが示されます.表-6により重力偏差が求まります.なお,表-7の恒星スペクトルは5刻みでしか示していません.必要なら線形補間してください.

表-6 ソル直径換算,惑星軌道位置重力偏差加速度算出表
難易度
重力加速度
偏差(m/s2/m)
ソル直径換算
惑星軌道半径
Simple
 

Simple+1
 

Simple+2
 

Simple+3
 

Routine
 

Routine+1
 

Routine+2
 

Routine+3
 

Difficult
 

Difficult+1
 

Difficult+2
 

Difficult+3
 

Formidable
 

-4.36E-016
-7.75E-016
-1.38E-015
-2.45E-015
-4.36E-015
-7.75E-015
-1.38E-014
-2.45E-014
-4.36E-014
-7.75E-014
-1.38E-013
-2.45E-013
-4.36E-013
-7.75E-013
-1.38E-012
-2.45E-012
-4.36E-012
-7.75E-012
-1.38E-011
-2.45E-011
-4.36E-011
-7.75E-011
-1.38E-010
-2.45E-010
-4.36E-010
-7.75E-010
-1.38E-009
-2.45E-009
-4.36E-009
-7.75E-009
-1.38E-008
-2.45E-008
-4.36E-008
-7.75E-008
-1.38E-007
-2.45E-007
-4.36E-007
609.80
503.33
415.45
342.91
283.04
233.63
192.84
159.17
131.38
108.44
89.51
73.88
60.98
50.33
41.55
34.29
28.30
23.36
19.28
15.92
13.14
10.84
8.95
7.39
6.10
5.03
4.15
3.43
2.83
2.34
1.93
1.59
1.31
1.08
0.90
0.74
0.61

 

表-7 ソル直径換算惑星軌道半径を求めるための恒星規模/スペクトル補正表
スペクトル
Ta
Tb
U
V
W
X
Y
B0
B5
A0
A5
F0
F5
G0
G5
K0
K5
M0
M5
M9
27.492
34.637
41.067
43.640
45.772
47.010
47.010
45.772
44.655
41.067
39.650
36.808
34.637
29.214
36.808
42.711
45.772
47.010
49.956
49.956
47.010
45.772
42.711
42.711
39.650
36.808
34.637
39.650
44.655
48.393
49.956
53.591
53.591
49.956
48.393
44.655
44.655
42.711
41.067
36.808
43.640
47.010
51.741
53.813
62.940
79.299
73.035
67.800
62.940
58.273
55.230
51.363
39.650
49.956
59.229
67.800
79.299
85.423
89.311
85.423
81.534

 
 
41.067
57.669
73.035
84.045
90.178
98.613
106.228
109.869
114.753
129.805
136.609
155.587
179.654
 
 
 
 

115.936
127.605
133.159
142.592
155.744
200.791
228.861
278.040

 
 
 
 
 


 



 
 

4.ジャンプ難易度表の利用例

 では作成した簡易表から実際の行為判定のための難易度を算定してみましょう.

(1)ヴラント

@ヴラントは,恒星ヴラクランF8-Vを巡る軌道半径1.276AUの惑星です.表-7の補正係数98.613です.小さい方が安全側の評価となりますので,F5の値を用いています. ソル直径換算距離は1.276*98.613=125.83です.

A表-6から恒星による重力偏差を求めます.125.83直径ですから,安全側に判断して108.44直径の欄から7.75E-14と求まります.

B表-5から「並」でジャンプを実施しようとすれば,その重力偏差は4.36E-13ですから,Aを減じると3.5E-13が惑星からの重力偏差に対して許容される分となります.概算で116直径離れればジャンプ可能となります.本来答えは100となるはずですが,簡易表で安全側に何度か丸めていますので,この程度の誤差が生じます.
 

(2)アイデラティ 

@アイデラティは,表面温度の低い恒星デラティM2 Vの近接軌道(0.2AU)を巡る惑星です.表-6の補正係数は136.609です.小さい方が安全側となりますのでM0の値を用いています.0.2*136.609=27.32です.

A表-5から惑星軌道が最小安全距離の内側にいることが分かります.「並」の安全率を確保するためにはソル直径換算距離60.98まで離れる必要があります.

B60.98を,逆に補正係数136.609で除すと0.45AUとでます.従って2〜3日かけてその外側まで移動する必要があります.
 


 


 


 

5.まとめ

 重力によりジャンプ難易度を説明しようとすると,主要世界を恒星の重力井戸深くに拘束する結果となり,トラベラーの世界観を崩していしまいます.そこで,TMLでの議論を受けて重力偏差に基づくジャンプ難易度表を作成ししました.本稿で得られた知見を以下にまとめて示します.

@重力偏差に基づく簡易表を作成した.「並」の行為判定の基準となる重力偏差の限界値は惑星ヴラント及び恒星ヴラクランの重力偏差から4.357E-13m/s2/m,同様に,「難」の行為判定の基準となる重力偏差の限界値は4.357E-10m/s2/mとした.

A惑星規模と距離が上手く無次元化できる点を利用し,恒星密度に応じた簡易表を作成した.重力偏差が密度の3乗根に比例であることを考えると,ガスジャイアントを除く大半の惑星では100直径に近い検討結果となる.

B恒星による重力偏差を求めるための簡易表を作成した.スペクトルと規模とから,恒星の重力偏差を求めることができる.
 
 
 


 

.