実は、息子が強盗で逮捕されたんです(笑)。いや、強盗と言っても、カツアゲですけどね。 「車を買うお金が欲しかった…。」 というその時の息子の供述に、私は天啓を得たのです。この一言が「へことら」を誕生させました。息子に車を 買ってやらなかったことは後悔していませんよ、無論。妻はこのことで今も時々イヤミを言いますけどね(笑)。 で、息子に限らず、少年犯罪の多くが、欲しい物を買う金、もしくは欲しい物そのものを目的としていることも知 った私は…、新聞をきっちり読んでりゃ分かることだなんて、言わないで下さいね。 とにかく私は、すぐに設計に取り掛かりました。コンセプトは、「高校生のアルバイト三ヶ月で買えるスポーツタ イプ反重力車」です。企画会議を経て、一週間で社長のゴーサインが出ました。社長も大いに気に入ってくれま したよ。安物すぎて技術者のプライドが許さない、と言う部下も居ましたし、ブランドイメージに傷がつくという重 役も居ましたよ。この時、さすがに息子の犯罪のことは言えないので、私は言いました。「安物の何が悪い!安 物であることに誇りを持て!庶民的であることに誇りを持て!」とね。でまかせですが、みんなやる気になってく れました。おかげで、誰かが冗談で言った「へことら」なんて安物丸出しの名前に、みんな賛成してしまったんで すよ(笑)。私は「ミニ」とか「ミニミニ」という名前を考えていたんですけどね。 で、試作一号車の完成は、その二週間後でした。何しろ、簡単な設計ですからね(笑)。その段階で、私はもっ と低価格、軽量化が可能なオープンタイプも設計することにしました。そして出来上がったのは、アルバイト三ヶ 月どころか、「ひょっとしたらおねだり攻撃で買ってもらえるかもしれない反重力車」でした。実を言うと、この値 段なら私も息子に買い与えてましたね(爆笑)。 え、息子ですか?うーん、それが衛星軌道の少年刑務所で禁固六ヶ月の実刑を喰らってしまいましたよ。保 護観察で釈放はされたんですが、家出して許可地域から出てしまいまして、それで実刑に。妻は私が薄情だか らだと責めるんです。息子も「薄情な親父」と言って、出所した今も口を利いてくれません。確かに、息子の審判 中、私はこいつの製造計画にかかりきりで、一度も会いに行けませんでしたよ。でも、薄情とまで言われる筋合 いじゃないですよね。私は息子のために、強盗までしなくても買える車を創っていたんですから。そう思いません か? (帝国経済新聞091-1116号掲載のゲッサン自動車技術主任ラムゼイ・グラハム氏インタビューより抜粋) ゲッサン自動車 SLAVG(Super Light Anti-Gravity Vehicle)-1「へことら」は、「高校生のアルバイト三ヶ月 で買えるスポーツ反重力車」として開発された。横から見れば、宇宙船のハッチか何かとしか思えないデザイン と大きさであるが、掛け値無しにこの姿である。とにかく「軽く、安く」を合言葉に、ツードア・ツーシートのスポー ツカー仕様以外は最初から考えず、削れるところは全て削った。外形は意匠デザインの手間を省いた四角い箱 であり、オープンタイプに至っては、鋼管羽布張りでもはや箱ですらなくカゴである。そして完成したのは量産価 格2114Crと言う、高校生のアルバイトはもちろん、帝国市民の平均月収の一ヶ月で買えるスポーツカーとなっ た。 この超低価格車に、社内にはゲッサンブラントに安物イメージを与えるとの反対意見もあったが、「安物であ ることに誇りを持て」との、技術主任ラムゼイ・グラハム博士の名言が反対者達の口を封じ、結局は「へことら」 という、意味は無いがどことなく脱力感を覚える言葉をわざわざ名称にしたほど、安物であることを誇っている。 実のところ、「高校生のアルバイトで買える」をコンセプトにしつつ、おおよそ高校生が買いそうに愛称なため、 市場では失敗も予想されていたが、クローズタイプ、オープンタイプ共に、高校生のスポーツカーとしてはもちろ ん、家庭のセカンドカー、低所得者層のアシ等に生産能力ぎりぎり一杯の大人気である。簡単な設計ゆえに製 造も簡単、したがって生産ラインの急な拡張も難しくなく、発売以来の急速な注文の増加にも関わらず、一度も 小売店で売り切れになったことが無い。この点にもグラハム主任の設計の妙が光る。 なお、いくつかの世界の教育界では、「へことら」のせいで学生の勉強が疎かになっている、と輸入禁止を求 める運動が起きている。 タイプ: 反重力車 SLAGV-1 "へことら" 密閉型 TL15 2642.5Cr (量産価格2114Cr) 船体: 1/2 排水素=0.5 形状=4 流線形 密閉式 装甲=1G 重量=0.28685t 総重量=0.307606t パワー :1/2 燃料電池=0.06Mw 燃料=水素0.0108kl/24h 移動: 1/2 反重力=0.35t 最高速度=165.38kph 巡航速度=124.04kph 地表速度=40kph 通信: 電波式=遠方*1 探知機: ヘッドライト*2 管制装置: コンピュータなし 電気型パネル*1 環境= 基本環境 居住区画: 乗員1 (操縦1) 座席x2(適度) その他: 船倉=0.02kl 目標サイズ=小 視認レベル=弱 タイプ: 反重力車 SLAGV-1.1 "へことらオープン" 開放型 TL15 2252.5Cr (量産価格1802Cr) 船体: 1/2 排水素=0.5 形状=0非流線形 開放式 装甲=1G 重量=0.27135t 総重量=0.292106t パワー :1/2 燃料電池=0.06Mw 燃料=水素0.0108kl/24h 移動: 1/2 反重力=0.33t 最高速度=155.67kph 巡航速度=116.75kph 地表速度=40kph 通信: 電波式=遠方*1 探知機: ヘッドライト*2 管制装置: コンピュータなし 電気型パネル*1 環境= 基本環境 居住区画: 乗員1 (操縦1) 座席x2(適度) その他: 船倉=0.02kl 目標サイズ=小 視認レベル=弱 あとがき 低価格反重力車です。冒険にお使いください。なお、総重量は座席二つに人が乗るとして、一人75kg x 2 = 150kgを追加しています。 |