特集 知っても役に立たない世界 ロボットは便利な道具ですが、必ずしも役に立つモノばかりではありません。また、便利さに頼って事の本質 を忘れてもいけません。本当に必要かどうかを考えることも大切です。と言うことで今回は、役に立たなかった ロボット、本質を忘れたロボット、そして必要かどうかは分からないロボットをとりあげます。 スナイパーロボット ガッシッダ国家警察技術部製作 屋外保安システム OS-1 「スナイパーロボット」 TL13 Cr653,250 量産予定価格Cr483,375 重量147kg 容積50リットル 円筒形 外部電源 活動時間=無限 固定式 知力=7 教育度=3(3) 敏捷度=2 筋力=0 高自律型 上級命令 15/25 戦闘アーマー=12 装備:視覚センサー*1 +望遠*1 +光量増幅*1 +受動赤外線*1 +能動赤外線*1 高感度聴覚センサー*1 動力インターフェース 頭脳インターフェース プログラムインターフェース 生命活動センサー プログラム:感情表現 法律-1 保安-2 調査-2 レーザーピストル-2 磁気ライフル-2 武装:磁気ライフル-11 7/4 D4 フルオート3 遠方 弾薬100 ゴム弾/AP弾 レーザーピストル-13 6/2 D3 遠方 どこからどう見ても電柱である。実際、電柱としての機能もあり、作動のための電力も送電線から取っている。 さて、街角の監視カメラが犯罪の抑止に効果的なのは周知の事実だが、このロボットは、さらに一歩進んで、「進行中 の犯罪の抑止」を行うため、ソロマニリム宙域のガッシッダ(1127)で開発された。 さて、テストとして極秘に犯罪多発地域に数台投入されたこのロボットであるが、数日を経ずして、路上ピストル強盗 に遭遇した。ロボットは、強盗の手を撃って銃を使えなくして、頭にゴム弾をぶつけてノックアウトしてから、警察署に連 絡した。犯人は逮捕され、まずは大成功である。 しかし、お手柄の翌日の夜には、全てのロボットは役立たずになっていた。泥棒たちが電柱を這い上り、武器や、場 合によってはロボットそのものを盗んでしまったのである。外見でロボットか本物の電柱かを判断できなかったせいか、 電柱の変圧器も多数破壊された(その際、銀の部分が盗まれたことは言うまでもない)。このロボットには、武器の射角 の問題もあって、自己防衛能力が皆無だったのである。また、電源を外部に依存している以上、線を切断されてしまえ ばそれまでだった。電柱によじのぼり、仲間のロボットを分解する泥棒に対し、他のロボットが攻撃を加えることもなか った。普通の電気技師が危険にさらされるので、電柱に登る者を攻撃しないようにプログラムされていたのである。 かくして、一人の強盗を逮捕した代償として、多くの武器を犯罪者に引き渡すことになったこのロボットは、そのままお 蔵入りとなった。改良すれば使えるという言う意見もあったのだが、そもそも、街角に武器が並んでいるという状況に問 題があることは、一見して分かるはずである。また、普通の移動できるタイプのロボットにパトロールさせると言う、ロボ ットがない時代の人ですら思いついたアイデアを採用しなかったのかも不明である。 なお、一台65万クレジットのロボット多数をドブに捨てた責任は、誰もとっていない。 ゴミ箱ロボット ラーム電子工業 試作清掃ロボット「ごみ箱くん」 TL13 Cr 203,840 重量73.5048kg 容積100リットル(ごみ箱部分50リットル 70kgまで運搬可能) 外枠型 燃料電池=24kw 燃料0.96リットル 活動時間=8時間 反重力推進=150kg 知力=2 教育度=1 敏捷度=15 筋力=11 高データ型 基本限定命令 20/50 装甲なし 軽量触手*2 装備:視覚センサー*1 触覚センサー*1 清掃道具パック プログラム:反重力機器-1 清掃-1 空飛ぶゴミ箱である。このロボットは、Lusea(ディアスポラ/1325)の一地域で、街中でのゴミのポイ捨てが問題になっ た時、地元州議会の要望で開発された。街を巡回し、自律的に街路のゴミを回収して、指定の場所に捨ててくれるので ある。 しかし、「ゴミ拾いを増やすよりも、ゴミ投棄の規制を強化せよ。」という当然の異論が出て、結局は罰則案の方が議 会を通過したのであった。だがこの時、既に試作第一号ロボットが完成していて、しかも発注契約も締結されていたの である。この不透明な発注の過程は疑惑を招き、調査の結果、州議会、州政府とメーカーとの癒着が明らかになった。 現在、試作ロボットは工場内の清掃にのみ従事している。汚職に関連した議員と副社長は、禁固1年の実刑判決を 受け、服役中である。ゴミのポイ捨てには罰金が科されることになり、街は美しくなった。ロボットは便利な道具である が、便利さに頼って事の本質を忘れてはならない。汚職ももってのほかである。 爆弾ロボット DKロボテック社 スーパープレデター兵器誘導システム TL14 Cr557,580 重量48.8671kg 容積、形状は不定 燃料電池=12.15kw 燃料25.92リットル 活動時間=720時間(←地雷/機雷タイプのみ 他は不明) 移動システムなし 知力=9 教育度=4(14) 敏捷度=不明 筋力=不明 高自律型 上級命令 装備:視覚センサー*1(望遠、光量増幅、受動赤外線、レーザー測距) 質量センサー*1 磁力センサー*1 プログラムインターフェース プログラム:兵器操作-2 艦隊戦術-1 輸送機器(種類は様々)-1 通信-1 戦術-1 歩兵地上戦闘-1 (プログ ラム部分は推定) スーパープレデター兵器誘導システムは、既存のさまざまな爆弾やミサイル、さらにはに大砲やレーザー砲などに取 り付けることで、自律的な精密誘導や「戦術的判断」を可能にさせるシステムである。図は滑空爆弾への取り付け例で あるが、ロボットは、先端にある薄茶色の透明なドーム部分である。爆弾やミサいるへの搭載ということは、もちろん、 使い捨てが前提である。 「戦術的判断」は良いが、いわゆる「スマート爆弾」や自動反応式の砲塔と何か違いがあるのかと言うと、メーカーも 認める通り、違いは何もない。しかし、軍部には好感をもって迎えられている。実戦投入はまだ一度だけだが、とある世 界に対する機雷封鎖作戦で大戦果をあげた。BPL(爆圧放射レーザー)機雷に装備されたプレデターシステムは、護衛 艦や掃海艇は無視して、商船のみを選択して攻撃するのは基本ワザ、タイミングを計って一斉に爆発して、護衛艦に 対処する隙を与えずに、護送船団に大打撃を与えたこともある。 ここで問題になるのは、兵器としての性能ではなく、その必要性と採用になった過程である。 プロメテウス政府(そもそもが占領政府に分類されているのだが)が、新型軍用ロボットの調達に際してプロメテウス (ソロマニリム/2027)所在のロボットメーカーに対し、軍事関連研究に応じて法人税額を調整するという政策を発表し た。要するに、税額による試作発注の強制である。 この軍事研究の強制にDKロボテック社は強い反発を覚え、当てつけに「いかにもしょうもないヤツ」を作って政府に提 出した。ところが、そのやる気のなさに対する当てつけに、軍当局は採用を決めてしまったのである。実際、採用→生 産という流れになれば、DKロボテック社は多額の設備投資が必要になってしまうからである。調達費用はすべて税金 である。国防と言う重要な分野において、市民の税金をこのような理由で使う行為と、特定のメーカーを圧迫する行為 には嫌悪感を感じざるを得ない。 繰り返すが、いかに好評と言えども、従来の自律型兵器と変わるところはあまりない。もともと採用してもらおうと言う 気の無い設計で値段が高いことに加え、こうした取り付け式のシステムよりも、最初からスマート兵器として設計した方 が安上がりなので、新規に採用するメリットはあるのかも、再検討が必要である。 ただ噂によれば、反戦主義のDKロボテック社ではあり、軍がなにか不正なことを企てた時などには、その場で兵器を 爆発させる秘密プログラムが仕掛けられていると言う。 ロボット短信 ・「萌え」ロボット事件に死刑判決 (ディンガー発 ○月○日) ディンガー駐留海兵隊スナイパー養成課程における、「萌え」ロボットに対する殺人未遂、および殺人未遂の教唆事件に対し、軍法会議の判決 が下された。本来の容疑であった、スナイパー養成課程における殺人未遂は審理却下(無罪ではない)とされたが、それらの容疑に代わり、被告 人6人は、「非戦闘地域における残虐行為の実行、およびその教唆」「人道に対する犯罪行為」を犯したとして、戦争犯罪により有罪、銃殺刑を宣 告されたのである。 裁判長W.ビング少将は、教官らの行為が、標的がロボットであったとしても「非武装の市民に対する残虐行為を強要した許しがたい犯罪行為」に 相当する糾弾し、前述の戦争犯罪に相当するとした。デインガー検察庁のリックマン検事総長は、 「確かに、法理に照らせばそうなりますが……。まさか死刑判決とはね……。」 と困惑気味である。この判決に対してのディンガー市民の声は、「正義を貫いた」という称賛はごく少数であり、「民間の司法に対する手の込んだ いやがらせ」という意見、「個人的な怨恨」説、さらには、「ビング少将は萌えシリーズの愛好者だから」と揶揄する説も流れている。 ただ、死刑判決を受けた教官らにとっては笑いごとではない。60日以内に控訴手続きを取らなければ、死刑が確定してしまう。すでに被告6人 のうち5人は退職の意思を示しており、軍当局も受け入れる方針であるが、それでも、民間の裁判所でも同じ容疑で裁判を受けなければならない のである。 広告
|