裏辺境戦争レポート その2

惑星ディアンのボロス海軍基地で、基地司令官のトレント中佐、副司令官のアベ大尉、通信士官エイミー・ライト中尉はまだ悩み続けていた。  
あれだけ悩んでいた席順は、エイミー中尉の「立食形式ではダメなんですか?」という何気ない発言で解決したが、今度のその食事の内容について悩んでいたのだ。
「いやさ、仮にも提督の方々が大勢いらっしゃるのにだよ、士官食堂の料理なんかじゃまずいよねえ」
「はい、ごもっともです」
「ここはさ、宇宙港のホテルから出前を取るのがいいんじゃないかな?」
「ああ、よろしいですね」  
トレント中佐の発言に、アベ大尉がもみ手で答える。
「フラミンゴホテルの料理、そんなに美味しくないくせに高いじゃないですか」  
エイミーが即座に答える。この惑星にはホテルと言えば一つしかないのだ。そもそも、軍の基地と、鉱物輸送路用の簡易宇宙港以外に何も無い砂漠の星なのだ。
「いや、だけどね、いつも何かと良くしてもらってるんだから」
「そうですよねぇ」  
エイミーの顔がひきつる。
「あ、司令達、あそこの支配人にマージン貰ってるって噂、本当だったんですか?」
「バカ言わないでくれよ」
「君ね、私と中佐は単に地域住民との交流の場としてあそこのレストランを使ってるだけだよ」
「その通り。支配人だって、我々と顔を会わせる機会が多いから、何かとしてくれるだけなんだから……何もやましいことはないよ」
「地域住民てホテル専属の売春婦のことですよね?」  
納得のいかない、という顔でエイミーが呟いた。
「君ね、どこでそれを?」
「いや、だとしてもね、それとこれとは……」
「しかも、その代金をフラミンゴホテルの支配人が払ってて、司令達は見返りに軍関係の宿泊を全部あそこに指定してるんですよね?」  
トレント中佐とアベ大尉の顔が青くなる。
「君ね、君だってね、こないだ支配人が持ってきたケーキを喜んで食べてただろう」
「そうだそうだ。休暇の時に帰省用にあげた特等チケットだってね、あれはトラベラー協会員用だったのを、特別に支配人から貰ったんだよ」
「あ〜、人のこと共犯にしようとしてる……信じられない。もう報告しちゃおうっと」

「ま、待ちなさい!」
「わ、分かった。君の転属の上申書を書いてあげよう」
「それがいいですね。ね、ライト君、空気がきれいで、海があって、それでいて田舎でもない所を紹介しよう」 
「な、黙っていてくれたら、こんな砂漠の星とはおさらばできるんだよ」
「……じゃあ、黙ってます」
「いや、さすがライト君だ。分かってくれると思ってたよ」
「焦ってたくせに」
「まあまあ、それより早く食事の内容を決めちゃいましょう」
「そうだね。だからフラミンゴホテルで決定してさ、マージンでライト君にドレスでも買ってあげよう」
「あたしへの口止めですか?」
「好意ですよ、好意」
「ま、どっちでもいいですけど」

「でも戦争中なのにいいんですかね、私達こんなに能天気で」
「いいのいいの。ここには直接関係ないんだから」
「あ、でもさ……ゾダーン軍が頑張ってくれて、ここも前線に近くなってくると、少しは基地も拡張されて私も大佐に昇進なんてことになったりしてね。ウヒヒ」
「えっ? その時は是非、私もお引き立て下さい!」
「分かってるよ。君と私の仲じゃないか」
「ありがとうございます。私は一生、司令についていきますので」
「このオッサン達は……」  
その頃、イフェイトでは大勢の兵士が、ゾダーン軍と死闘を繰り広げていた……。

By 龍太郎氏

龍太郎氏による、裏辺境戦争史第2回。

軽薄さに磨きが掛かった裏辺境戦争(笑)。
相変わらずいい味を出してます。

今度化夢宇留仁のゲーム世界にもこの面々に出演してもらおうかな(笑)。
世界が違うからキャラと名前だけ借りて(笑)♪

化夢宇留仁