アンバーゾーン「クーデター・プライス」  

これは自由貿易を行うPC一行が、取引先の惑星でクーデターの勃発に遭遇するシナリオです。  

ジュエル星域ユートランド(C473464−7)は帝国領外に位置する独立星系で、トラベラー・ハンドブックによれば「ゾダーン遠征(未訳サプリ?)」にも登場していて、主産業は鉱業ということです。  
ユートランドは小さく貧しいながらも、帝国と友好関係にある穏健な文民政府の手によって、長く平和に運営されてきました。  
TLは7、地球の1970年代程度ということで、ここでは私達の文明と同程度 と擬制します。  
人口は数万人。とても少ないです。にも関わらず、TL7は機械製品を輸入しているとはいえ、これでは不自然です。  
この数万人は投票権のある市民階級(政治家・実業家・有識者)の数字とします。 この下に、投票権を持たない一般の鉱夫や農民などの労働者階級が600万人ほどいることにするのです。

規模が小さい惑星なのに空気が汚染されているのは、鉱業採掘が活発なことと、惑星自体が多量の鉱物資源を含有していること、火山活動も活発で断続的な噴火が 各地で起こっていることが原因です。  
よって重力も規模の割りには高く、地球の8割程度と擬制します。  

文民政府の長、ギケセ大統領は就任以来、ユートランド・コーヒーの栽培出荷 に 保護を与え続けてきました。  
ユートランド・コーヒーは火山灰の土地で収穫される、非常にコクのある特殊なコーヒーです。
鉱業と農業の二本の経済の柱によって、ユートランド経済を維持 し ていこうと考えたのです。  
一方、実業家たちの間で、鉱物の輸出のみならず自国内での加工生産を行い、 工 業化を推し進めようとする者達がいました。
もちろん、普通なら市場も無いこん な 小さな惑星で工業製品を生産するのは無意味ですが、ユートランドは微妙な位置 にあるのです。   帝国とゾダーンの間・・・どちらかの勢力を駐留させる条件として、その軍隊 に武器(低質で何の魅力もないものですが)を売りつけることができれば、十分に 採算は取れるはずです(何しろ原材料はそこらにタダで転がっています)。  
この計画を実行に移すには、中立政策を取り続けているギケセ政権が邪魔にな り ます。
かと言って選挙で打ち勝つのは、不可能でした。  資金的にはともかく、投票者の7割はギケセに保護された農園の主たちなのです。  
実業家たちは、ギケセ政権打倒のために、軍指導部のオゼラ大佐に白羽の矢を立てました。  
オゼラ大佐は48歳。精力的で理想に燃える有能な軍人ですが、いささか粗暴で短慮な面も目立ちます。ただ、兵士たちからは絶対的に信頼されています。  
ギケセ政権が2期連続で軍事予算を削減したことに、オゼラ大佐は強い不満を抱いていたのです。  
彼は実業家たちを胡散臭い信頼できない奴ら、と見ていますが、軍事政権樹立 の ために仕方なく彼らと手を結びました。

クーデターの実行

.とある実業家(計画の一味です)の主催したパーティーに出席し、官邸に戻るギケセ大統領の車を、数台の軍用車両が追跡します。
逃走する大統領車を暗闇で待ち受けていたのは、戦車でした・・・。

.ユートランド地上軍9000人の内、首都周辺に駐屯していた3000人がこのクーデターに参加しています。
他の3000人は別の大陸に、残り3000人は各地に細かく分散して配置されている部隊で、彼らは成り行きを静観します 。

.ユートランド宇宙軍は惑星防衛艦1隻と戦闘艇8隻の貧弱なものですが、それでもこのクーデターには断固として反抗します。
とは言っても、陸戦部隊を持たないので、特に有効な解決手段は取れません。

.このクーデターの真の首謀者はとあるメガコーポレーションです。   
アストロール・アソシエイツ社はエネルギー産業の名門企業です。同社の調査チームが、ユートランドの大陸地下に強い放射線反応を発見しました。ウランの数倍の核分裂エネルギーを発する、ピラニウムの大鉱脈が眠っていたのです。  


プレイヤーの立場と行動の例

.取引先での突然のクーデター騒ぎにビックリ。買い付けた荷は、まだ船に積まれていません。
上手くこの物資を回収して、無事に脱出しなくてはなりません 。急がないと地上軍に船を没収されたり、宇宙軍に拿捕されたりする可能性があります。

.偶然に大統領を助けてしまった一行は、革命軍から手配される身に・・・。 宇宙船は当然に没収されていますし、警備の厳重な宇宙港にはもう行けません。   
助かるためにはこのクーデターを失敗させるしかない!?  


このシナリオ、あとはどう料理するも各レフリーのお好みによります。  
ただ、ボク個人の好みではクーデターを失敗させるために動くにしても、ドンパ チやって・・・というのは好きではありません。
そもそも、一介の商人が突然命をかけて銃撃戦!なんていうのは不自然です。 やはり、トラベラーらしく(?)コソコソと立ちまわるべきでしょう。
大統領 を 助けてその承諾を得れば、かなりの軍資金と権限が約束されます。  
近隣の部隊に革命軍と戦うよう命令する、農園の私兵を義勇軍として組織する 、 傭兵部隊(帝国のおたずね者部隊がこの近辺にはウヨウヨいます)を雇うなどで す。  
また、アストロール・アソシエイツの関与の証拠をつかむこともキーとなります。ただし、このことが帝国に知られれば、AA社は一切の事件との繋がりを物理的に断ち切ろうとします。  
それこそ、傭兵部隊が大量に降ってきて革命軍も政府軍もまとめて根こそぎ撃滅 します。大統領、オゼラ大佐、実業家たち、農園主たち、PCたちにも暗殺者が 送 りこまれるでしょう。  
あくまでもシッポをつかんでも、取引材料とすることです。大統領がAA社に 鉱脈の採掘権を与える約束をすれば、AA社は迅速に革命軍を排除さえしてくれま す (ちょっとアクドすぎるかな?)。                              

龍太郎