ホビージャパンから発売されていた戦術級ウォーゲーム。
1944年から1945年の、第2次大戦末期の東部戦線を扱った内容で、コンセプトは「手軽なルールで初心者でも楽しめる」というもの。
と言うのも発売当時戦術級と言えばスコードリーダーシリーズをはじめとして、複雑なルールのものがほとんどで、あまり初心者向けと言えるタイトルが存在していなかったのだ。
コンポーネントはシンプルだがまあまあいい感じ。
マップAの町の道路がフェードアウトしているのはかっこわるいが、縦横に自由に繋げて使用するようになっているので、これは仕方がない。
それよりあまりにも平地が多くて荒涼としているように見えるのは寂しい。
部隊がロシアなんだから仕方がないと言えば仕方がないが。
ユニットは各戦車の上から見た線画が描かれていていい感じ。
スケールは1ヘックス約70m。1ターン約3分。
戦車は2ユニット、歩兵は4ユニットまでスタックできる。
システムは簡単だが、ありきたりなものではない。
まずシークエンスだが、戦場支配者(イニシアチブ)決定フェイズ、射撃フェイズ、移動フェイズの順番になっており、移動の前に射撃がある時点で珍しい。
更に射撃と移動をどちらの軍が先に行うかは、そのターンのイニシアチブプレイヤーが決定する。
普通と射撃と移動の順番が逆な上に色々な順番が不定なわけで、化夢宇留仁はすぐにわけが分からなくなっていた(汗)。
通常の射撃には完全停止射撃、一時停止射撃、行進間射撃の3種類があり、これは要するに射撃側が止まって撃つか、移動しながら撃つかということで、勿論ちゃんと止まって撃った方が命中率は高い。
また敵の移動中に射撃を行う臨機射撃というのもある。
射撃が命中したら、距離に応じた貫通力が敵のこちらを向いている部分の装甲を貫通できれば撃破となる。
目標が装甲車両ではない場合は、別な判定法を使うが、こっちも単純である。
この辺は実に簡単で機動戦らしさも出ていていいのだが、問題は各ユニットの状況のチェック方である。
各ユニットは1ターンに1回しか射撃を行えない。
また射撃を行ったユニットは、その後の移動フェイズの移動力に影響が出る。
そして同時に何十というユニットが登場するので、このチェックのために、射撃を行ったユニットにはそれを示すマーカーを置くことになる。
何十といるユニット。多いところでは4ユニットスタックしている。それにどんどん置かれるマーカー。
これがスタック同士が隣接しているところでは、マーカーをとろうと思うと隣のスタックがひっくり返ったりする(汗)。こんな状況で重なっているユニットが何か確認しなければならないとなると、泣けてくる。
命中率をよくしようと思うと、その場で停止して射撃するのが最適というのが、この混乱に輪をかける。
更に撃破されたら残骸マーカーに取り替えるので、盤上のユニットは全然減らない(汗)。
ここは結構イライラするところで、登場ユニットが多いシナリオではマジでピンセットが必要である。
解決策を色々考えてみたが、記録用紙を使うか、マップを大型化してヘックスのスペースに余裕を持たせるかくらいしか思いつかない。
どちらもそのままでは不可能である。
簡単なルールで大量のユニットを指揮するというのがコンセプトであるなら、この辺も考えてほしかったところである。
ただし化夢宇留仁は射撃時に先に目標を全て決定してから判定するという方法をとっていたので、通常よりも手間が多かったのが分かった。
ルールブックを読み直してみると、あらかじめ全射撃の目標の宣言が必要とは書いてなかったので、目標を決めて射撃、次の目標を決めて・・・という手順であれば随分楽になる。
その他歩兵、対戦車砲、トラックなどが登場し、様々な展開が楽しめる。
しかし歩兵は弱い(汗)。
移動力も少なく、攻撃力も乏しい歩兵はこのゲームでは実に悲惨な存在である。
敵のすぐ近くまで接近できればチャンスはあるのだが、なにしろマップがロシアの平原なので遮蔽物は少なく、よほど限られた条件でないとその前に撃破されてしまう。
タイトルが戦車戦だし、史実通りなのかもしれないが、ゲームとしてちょっと寂しいところである。
このゲームは発売当時に買ってちょこちょこ遊んでいたのだが、ちょっと物足りないというのが正直なところだろうか。
単純なルールで大量のユニットを指揮できるのは気持ちいいのだが、上記の通りマーカーとスタックをいじっている内に、気持ちよさはしんどさに変わっていってしまう。
また戦争末期と言うことでパンサーやタイガーといったモンスタータンクが出てきて嬉しいのだが、なにしろ末期なのでソ連も化け物揃いでしかも数が多く、期待するような活躍は難しい。
これは史実がそうなのだから仕方がないのだが、大戦初期のユニットも入っていて、マップもバリエーションがあれば戦車のキャラクターがもっと楽しめたと思う。
まあこのシステムそのままではどう考えても無理なのだが(続編の戦車戦2では大戦初期のユニットも登場し、性能差を表現するためにサイコロを6面体から10面体に変更している)。