TACTICS 2
入門用シミュレーションウォーゲームの代表格。
地味な存在だが、多分日本で最もよく売れた作戦級ウォーゲームの一つだろう。


なんともシンプルなパッケージである。
当時ちょくちょく見かけた大判A3変形の平箱サイズ。
でかくてしかも薄っぺらいので、すぐ真中あたりが凹んでしまうのも愛嬌である。
アバロンヒル社のウォーゲーム、クラシックシリーズのボックスは、どれも基本デザインは同じなのだが、その中でもタクテクス2は地味で、漂う雰囲気もチェスのそれに近いものがある。
しかしこれはこれで味があっていいと思う。
購買意欲を誘うデザインと言うには疑問だが(笑)。

当時入門者向けウォーゲームの決定版として翻訳&販売会社のホビー・ジャパンが力を入れていて、説明書は「シミュレーションゲーム入門ガイドブック」という冊子になっていて、ルールはその付録の体裁になっている。
今改めて見直してみると、この冊子、入門者向けにしてはデザインや紙面構成が渋すぎるし、ルールも加えて64ページというボリュームも、かえって入門者を挫折に追いやっていたのではないかとさえ思える。
ま、当時のゲームに対していた少年達の熱意はすごかったから、問題ではなかったのかもしれないが。

さて、内容だが、1ユニットは主に師団規模。いわゆる作戦級のウォーゲームである。
マップは架空の島を描いたこれまたシンプルなもので、その上に縦横にラインがひかれ、スクエアを構成している。
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化夢宇留仁はこのゲームを買った中学生の頃から、 このあたり入門用としては少々問題を感じていた。
ウォーゲームというものは、多くは実際の戦場を再現しており、ただゲームを楽しむだけでなく、シミュレーションの名の通 り史実の再現や、また戦況に新たな可能性を見出したり、ひいては歴史自体を楽しむというのも大きな要素だと思う。
それがこのゲームでは、架空の島の架空の国同士の戦闘を扱っているのだ。
上記入門ガイドブックで、史実をシミュレートする楽しさにも多くのページが割かれており、一応のフォローはされているとも取れるのだが、やはりそれは実際に史実のシミュレーションゲームを行うのとは異なる。いわゆる机上の空論に等しいと思うのだ。
どこか本末転倒の気がしてならない。
また、同じくガイドブックの方では説明はされているのだが、ゲームに反映されていないのがヘックスである。
だいたい距離や位置の明示にスクエアを使ったゲームなんてのは数えるほどしかなく、ほとんどがヘックスを利用しているのだ。
入門者用ゲームで始めて触れるシステムは、やはり一般的なものの簡略版であるべきだと思うのだがどうだろう?
これもガイドブックの方では、ご丁寧にもヘックスを例にとってZOKや地形効果 の説明なんかをやっている。
混乱を意図しているのかとさえ思える。
もしかしたらこのゲーム、ホビー・ジャパンが日本でのウォーゲームの普及を防ぐために世に送り出したのでは・・・・・・・・・・???

実は、このゲームは米アバロンヒル社が最初に発売したウォーゲーム、「TACTICS」の改良版で、改良されたとは言え古いゲームに変わりなく、システムも簡単にプレイできるように考えられていると言うより、まだウォーゲーム自体が黎明期で、大したルールが作られていなかったのが本当のところなのだ。
それを翻訳元のホビー・ジャパンが入門者向けと銘打って営業にいそしんだ結果 、上記のような妙な具合になってしまったのだ。
だから入門者向けなんていう要素は忘れて、いわゆるクラシックアイテムとすれば、結構魅力のあるゲームに見えてくる。
このシンプルと言えば聞こえはいいが、地味な割に機能性もイマイチなマップも、そう考えればクラシカルないいムードの代物に・・・・・見えなくもない(汗)。

見にくいと思うが、地図上を斜めに走っているラインは道路であり、青いラインは河川、各所にある灰色の格子が都市、上のほうのもじゃもじゃが山岳地帯、右上や下の方にあるもじゃもじゃは森林地帯を表している。
ここにレッド軍、ブルー軍に分かれてユニットを配置したら準備は完了。
勝利条件は、敵の殲滅、または全ての敵都市の占領である。
下図はこのゲームの部隊編成表である。

このゲームでは両軍とも戦力はまったく同じで、色違い(ブルーとピンク)でそれぞれがこの編成表と同じだけのユニットを所有している。
実はこれ、上記入門ガイドブックに掲載されていたものをスキャンした画像である。
だから白黒なのだが、実は化夢宇留仁は現在はユニットを持っていないのだ。
無くしたわけではない。
プレイ回数が多かったのと、アバロンヒル社の厚紙の張り合わせ技術がしょぼかったせいで、ボロボロになって捨ててしまったのだ(汗)。
その後も自分でユニットを作り、 何度かプレイしたが(笑)。

しかし・・・・・・・あらためて見てみると、この無機質加減は驚くべきものがある。
ユニット上部のペケの数は規模(ペケ2つなら師団、とか)を表し、四角いマスの中はその種類を表している。(楕円なら機甲師団、バツなら歩兵と言った感じ)
下の数字は左から、戦闘力と移動力である。
・・・と、言われてその内容が想像でき、ゲームにどう生かされるのか分かるのはウォーゲーム経験者だけだろう。 そうじゃない人には、単に小難しそうでマニアックなイメージしか浮かばないのではなかろうか。
この無機質で記号化が進んでいるところこそ、ボードウォーゲームの面白いところでもあり、 グラフィックにより想像の幅を狭めているコンピュータゲームを越えるところなのだが、それは理解されづらく 、日本で定着しなかった理由の一つであろう。