宇宙戦艦ヤマト
バンダイのシミュレーションゲームIFシリーズ。
バンダイらしくコンポーネントが素晴らしい。
ユニットを見ているだけでワクワクしたものである。



化夢宇留仁が中学の頃、狂ったようにプレイしていたゲームである。
最近ケーブルテレビが入って、ヤマトの映画を片っ端から放送していたので、懐かしくなって久しぶりに箱を開けてみた次第である。
美しいコンポーネントと、シンプルなルールに各機体やミサイルなどの上面 図が印刷された多種類のユニット、そしてテレビ第1段からヤマト3までを網羅したシナリオ。
子供心をくすぐる要素が一杯つまっている(気のせいか箱に「GAME for ADULT」と書いてあり、裏には「成人向」とまで・・・)。
当時友人とともにヤマト熱に浮かされていた化夢宇留仁には、まさにうってつけのゲームだった。

ところでこのゲームには、上級ルールと基本ルールがある。
上級ルールはプロット方式で、同時移動、同時戦闘を行うシステムになっており、レーダー、対空砲、士気、船体の被害箇所の特定など、非常に詳細なものである。
しかし実際問題複雑すぎてドラマの再現どころではなく、特に気の短い中学生には不向きなもので、化夢宇留仁はもっぱら基本ルールで遊んでいた。
思うのだが、 このゲームは基本ルールが王道であり、上級ルールはおまけにすぎない。
言ってみれば基本ルールがプレイアビリティとシミュレーションのバランスを、ぎりぎりのラインまで絞り込んだまさに商品といえるものなのに対し、上級ルールはシミュレーション性のみに集中したデザイナーのマスターベーションなのだ。
・・・という訳で、これ以降この場で語られるのはあくまで基本ルールに従った内容であることを、ここでお断りしておく。

まず(いきなりルールの関係ない話だが)ゲームマップだが、宇宙空間が描かれたそれは青みが強く、星雲なんかも描かれちゃったりして、まさにテレビのヤマトのそれである。
反りやすいマップだがそこはバンダイ、心得たもので、マップ連結部につけるクリップが用意されている。

写真はテレビ第1作の山場、七色星団の決戦の初期配置を再現してみたものだ。
小さすぎて見づらいどころの騒ぎではないが、画面左の下にいるのがガミラスの猛将ドメルの乗艦で、マップの折り目あたりにいるのが戦闘空母。もちろん戦闘空母の上にはドリルミサイル爆撃機が載っている(笑)。
この初期配置から、戦闘が進むにつれ刻々と移り変わる各ユニット達の配置をマップの上から見下ろす。これこそボードウォーゲームの醍醐味ではなかろうか!?

ユニットがまた素晴らしい。
各軍ごとに色分けされ、機体上面図の線画が印刷されたそれは、当時の化夢宇留仁には見飽きない楽しさに満ちていた(今でも大して変わらないけど/笑)。
テレビで登場する艦船は、真上からの姿はほとんど見せてくれない。特にやられ役のメカなどは、斜めのパースでバーン!と現れたかと思うと、次の画面 ではもう爆発しているのだ(泣)。
それがじっくりと真上から拝めるだけでも嬉しかった。
当時化夢宇留仁にこのゲームのユニットだけを渡したとしたら、大喜びしていそいそとオリジナルのルールを作り始めただろう。

さてルールだが、実にシンプルであり、かつツボを押さえている。
シンプルな面を紹介すれば、まず移動と戦闘は交互に行われる。支援射撃や間接射撃のルールなど無い。
ユニットに印刷された基本攻撃力は射程を兼ねており、1ヘックス離れるごとに威力も1減少する。
被害判定は表に従い、距離による修正を受けた攻撃力と、目標の防御力の比と、サイコロ2個の交差した欄を見る。
被害は4種類。
ダメージ1〜3と、破壊である。
数値ダメージを受けたらその数値に対応したダメージマーカーを目標ユニットに置く。 マーカーには攻撃力、防御力、移動力がどれだけ低下するかが書かれている。
・・・と、こんな感じである。
まさにシンプルで普通のルールである。そして心憎いのはこれからである。
まず移動だが、艦船のユニットは長方形をしており、2ヘックスにまたがって配置される。

 


地球防衛艦隊ユニットの一部。
左から 沖田艦、アンドロメダ、ヤマト、そしてブラックタイガー。


移動の際には前後にしか動けず、後進する場合は移動力を倍消費する。進行方向を変えるためには旋回しなければならないわけだが、その際1ヘックスサイドの旋回に1移動力を消費し、それはユニットの艦尾側を動かすことで成される。


この艦尾が動くのがその大質量をうまく表現しており、プレイヤーは艦長気分を味わえてしまうのだ。

 

戦闘ルールも上記で説明したが、あれはビームや機関砲についてのルールで、ミサイルと特殊火器に関してはそれぞれ別 なルールが用意されている。

まずミサイルは射程が10しかなく、命中率はその10ヘックス中でも離れれば落ちてしまう。ただし距離によって威力が落ちることは無く、威力は強く、かつ艦載機がミサイルを使用する場合、その発射は1回しか許されない。補充のためにはいったん母艦に戻らなければならないのだ。


敵軍ユニットの一部。
左から ラジェンドラ号、プレアデス、ナスカ高速空母、デスラー艦、三段空母、ガミラス巡洋艦。

 

導き出される結論として、 艦載機はたった1度のチャンスを生かすべく、危険を冒して最大限敵艦に接近することになる。
雰囲気的にはミサイルというより太平洋戦争における急降下爆撃である。
しかし宇宙船艦ヤマトの世界では、むしろその方が世界観を正確に再現しているといえるだろう。
またゲームとしても艦載機のミサイルは手に汗握る見せ場だったのは言うまでも無い。

もちろん波動砲をはじめとした超兵器にはそれぞれ特殊ルールがつけられている。
ただしその波動砲に関しては、発射まで2ターンも身動きできない上に、効果 範囲が限られているので、テレビ通りの活躍をするには、力不足の感は否めない。

最後にシナリオについて。
このゲームにはテレビや映画のシーンを再現した40ものシナリオが用意されている。
内容はバランスの取れたもの、そうでないものと様々で、ゲームとして面白いのは2の土星の輪付近での地球主力艦隊と白色彗星帝国の艦隊戦を再現した「カッシーニの攻防」、新たなる旅立ちの、暗黒星団帝国軍に追い詰められている、ガミラス艦隊の救援にヤマトが向かう「デスラーの救援要請」あたりだろうか。
このどちらも戦力的にはそこそこバランスが取れており、手に汗握る展開となる。

シミュレーション的に面白いのは、1の冒頭圧倒的なガミラス艦隊に、地球最後の防衛艦隊が沖田艦長の指揮のもと殴り込みをかける「冥王星会戦」。
このシナリオでは地球艦隊にはほぼまったくと言ってよいほど勝ち目が無い。強力なガミラス艦隊に、微弱な地球艦隊が如何に撃ち破られ、敗走するにいたるかを楽しむシナリオなのだ。これはこれで手に汗握るものがあるのだ(笑)。

シナリオ全体を見てみると、興味深いことが分かる。
1のシナリオは全体的にガミラスが強力で、ヤマトがまともにやって勝てる戦いは少ない。それどころかヤマトに有利な特別 ルールが山ほど用意されていても、一方的にヤマトが負けてしまうものまであるのだ(上図の「七色星団の決戦」もそうである) 。
対して、シリーズが進むにつれヤマトの勝機は上がり、バランスが取れてくる。
これから分かるのは、テレビ第1作が絶望的な状況を演出するという点で、非常に完成度が高かったということである。
すなわちヤマトの最初の航海は、あとのシリーズとは比較にならない辛い旅だったのだ。
なんだか感慨深いものがある。

気楽さ 3
言語依存 2

ソロプレイのしやすさ 4

化夢宇留仁の好き度 5