宇宙船カタン



 ワームホールに落ちて見知らぬ銀河に来てしまった宇宙船が、そこで異星人との交易を行って生き抜いていく。
 名作「カタンの開拓者たち」のSF版。
実はカタンのSF版はもう1つあり、どちらも日本で発売されなかったことから日本タイトルも曖昧で、紛らわしいことになっている。
ここで紹介するのは2人用のカードゲーム版である。



 ゲーム開始前の様子。
それぞれ1隻の宇宙船を持ち、改装して強化しつつ、見知らぬ銀河を冒険する。
海賊に出会うこともあるし、貿易コロニーを作ることも、通りかかった惑星から救援を求められることもある。

 初期セッティングが終わった宇宙船。
プレイヤーは太陽と月のどちらかを選ぶのだが、画像は太陽の方。
太陽と月とでは、最初に持っている資源惑星が異なり(右下のカード)、入手できる資源が異なってくる以外は違いはない。
所持金は25アストロ。
キャノン1門、エンジンが2基。

 船尾格納庫にあるHとKと描かれたタイルは、トレードシップとコロニーシップ。
それぞれ交易惑星(トレード)と生産惑星(コロニー)に基地を建設するための材料で、条件を満たした惑星を発見して上記材料を使用すれば基地を建設できる。
 画面上は交易品の保管室で、現在2つの交易品を保管している。
このように資源などは矢印マーカーを回転させてその数を示すのだ。

 ゲームを通じて宇宙船は様々な能力をパワーアップされてゆくが、ゲーム開始時に、船に1つだけバージョンアップを施すことが出来る。
画像は初心者にお勧めの倉庫拡張モジュールで、通常各資源は2つまでしか保管できないが、このモジュールを装備することで3つまで保管できるようになる。
各モジュールは更にもう一段階バージョンアップが可能で、倉庫モジュールの場合は最高4つまで資源を保管することが出来るようになる。

 ゲームの各ラウンドは、プレイヤーごとに生産フェイズ、飛行フェイズ、貿易&建設フェイズの3つのフェイズを順番に行う。
通常のカタンと違うのは飛行フェイズの存在である。
 生産フェイズでは、通常と同じくサイコロを振ってどの資源が生産されたかを判定する。
しかし振るのは画像の黄色いサイコロ1つで、しかもこのサイコロには1から3の目しかない。

 ゲーム開始時に資源を生産できるのはそれぞれ1枚ずつ配られているカードで、サイの目1が出れば生産される。
太陽のプレイヤーは1が出れば燃料を獲得でき、付プレイヤーは炭素を獲得できる。

 次はいよいよ飛行フェイズである。
画像の4つの山は、それぞれ異なるセクターを示し、手番プレイヤーがどのセクターを飛行するかを決めると、対戦相手がカードをめくって見る。
左側に少し見えているのはリザーブカードで、なんらかの理由でセクターカードの枚数が減った場合に補充される。

 カードが「海賊」でなければ、そのまま公開される。
画像はコロニーを建設可能な惑星。
ここにコロニーを作れば勝利ポイントを獲得できる上、以降の生産フェイズで2が出れば炭素が手に入る。
勿論コロニーシップを消費してコロニーを建設。

 コロニーを獲得したことでセクターカードが減ったので、リザーブカードを配置。
斜めになっているのはここでアクションを消費したという意味である。
 飛行フェイズにはエンジンの出力分カードをめくる(航海する)ことができる。
初期状態ではエンジン出力は2なので、もう1枚カードをめくると、今度は交易惑星がめくられた。
 交易惑星ではカードに描かれている取引を行うことができる。
画像の場合は燃料1と1アストロを好きなように交換できる。
他に燃料を高く買ってくれる惑星もあるので、1アストロであれば買っておくのがお得である。
 1回の飛行に許されているアクションは2までなので、ここで交易を行えば飛行は終了となる。もっともエンジン出力も最初は2なのでどちらにしても終了なのだが。
アクション回数は宇宙船を改装することで4まで増やすことができる。

 更にゲームが進み、今度は交易惑星(右端)を手に入れた。
交易惑星とは貿易&建設フェイズに、描かれている取引を行うことができる。

 カタンであるから当然最大数獲得へのボーナスもある。
左は主に交易惑星を獲得した時に得られる、フレンドシップポイント(握手しているマーク)が3つ以上で最大のプレイヤーに渡されるカード。
右は主に海賊を撃退した時に得られる名声ポイント(勲章のマーク)が3つ以上で最大のプレイヤーに渡されるカードで、それぞれ1勝利ポイントになる。

 飛行中にすでに異星人の文明が存在する惑星を発見することもある。
画像は惑星ハデスを見つけたところである。
異星人文明の惑星を見つけたら、アドベンチャーカードを参照する。


 アドベンチャーカード。
ゲーム中には3枚が公開されており、それが現在挑戦可能なミッションとなる。
発見した異星人文明惑星がその3枚の中にあれば、ミッションに挑戦し、成功すれば報酬を受け取ることができるのだ。
報酬には様々な資源や、フレンドシップポイント、名声ポイントなどがある。
ミッションが成功するとそのアドベンチャーカードは成功したプレイヤーのものとなり、右のリザーブアドベンチャーカードがめくられて再び3枚が公開された状態になる。
 画像の場合は公開された3枚の中に惑星ハデスがないので、残念ながらミッションに挑戦することはできない。

 この銀河に存在しているのは友好的な異星人ばかりではない。
飛行中には海賊に遭遇することもある。
 海賊がめくられたら、対戦相手は海賊に遭遇したことと、その海賊がどのような要求をしているかだけを手番プレイヤーに伝える。
重要なのは海賊の戦力(カード右上の数字)なのだが、これは手番プレイヤーには伝えられないのだ。
手番プレイヤーは要求を呑むか拒否するかを選択し、拒否すれば戦闘となり、ようやく海賊のカードが公開される。
 戦闘は青いサイコロを使用し、それぞれの戦力にサイの目(1から4)を足した数を比べて判定する。
プレイヤーの宇宙船の戦力はキャノンのポイントで、初期状態では1しかない。
戦力2の海賊も強敵だが、ゲームが進むに連れてもっともっと強力な海賊が登場するので、キャノンの強化も重要である。
 戦闘に勝てば名声ポイントが手にはいるが、負けたら船に損害が出た上、飛行フェイズはただちに終了となる。
画像の海賊に負けると、キャノンを1門失うことになるので、やはり負ける戦闘はできるだけ避けたいところである。

 飛行フェイズが終了したら貿易&建設フェイズである。
 まず貿易だが、自分が所有している交易惑星2つまでと自由に貿易を行うことができる。
また対戦プレイヤーとも自由に取引を行える。
 建設フェイズには宇宙船の様々な能力をパワーアップできる。
画像では燃料を2つ消費して、エンジンを1基追加している。
これで飛行フェイズにカードを3枚までめくることができる。
 他にもキャノンを増設したり、コロニーシップやトレードシップを作ったりできるが、なにより重要なのは船内の改造である。



 6種類ある宇宙船改造モジュール。
 左上は倉庫モジュールで、カーゴベイに3つまで資源を保管することができるようになる。
必須のモジュールで、説明書でも最初に設置するのを薦めている。
 その横が科学研究モジュールで、生産フェイズに2が出れば科学技術を1獲得できる。
科学技術はパワーをアップしたキャノンとエンジンを開発するのと、異星人文明惑星とのミッションで使用する場合がある。
 右上は工場モジュールで、生産フェイズに3が出れば交易品を1つ獲得できる。
 左下は指令モジュール。飛行フェイズのアクション回数を3に増やすことができる。
 その横は偵察モジュール。飛行前にセクターカード2枚をめくり、山札の一番上か一番下に自由に戻すことができる。
 右下は取引モジュールで、貿易フェイズに対戦相手の資源1つを2アストロで強制的に購入することができる。
 なんだか最後のはどうかと思わないでもないが(笑)、どれも重要な能力を宇宙船に与えてくれる。
各モジュールを設置するには、鉱石、炭素、食料を1ずつ消費する必要がある。


 さらに各モジュールにはレベル2の施設がある。
レベル2の設備を建設するには、まずレベル1のモジュールを設置し、それを改造するために鉱石1、炭素1、食料2を支払う必要がある。
 レベル2になるとそれぞれの能力が更にパワーアップする上、勝利ポイントを1もたらしてくれる。
しかしレベル2のモジュールは、各モジュールについて1つずつしか存在しない。つまり早い者勝ちなのだ。


 てな感じで、カタンに宇宙冒険SFのガジェットを詰め込みまくった好ゲームである。
ポイントは4つのセクターの惑星の記憶と、宇宙船の効率的なパワーアップで、これらに失敗すると苦難の旅を強いられることとなる。
 似たようなテーマの「ギャラクシー・トラッカー」と比べても、宇宙船の建造はできない代わりにパワーアップは細かいところまでいじれて楽しいし、航海の表現は圧倒的に本作の方が雰囲気がある。
カタンのシステムもびっくりするくらい自然に導入されているし、流石はトイバーと言ったところである。
 ただし化夢宇留仁的に少し残念なところもある。
まずは2人用ゲームであるということ。システム的に不可能でも無さそうだし、3〜4人でも楽しめるようにしてほしかった。
ただしゲーム時間がのびてしまうだろうし、スペースも炬燵プレイは不可能になりそうだが(汗)。
 もう一つは宇宙船モジュールのデザイン。
雰囲気はあって悪くはないのだが、各モジュールがもっと具体的なイラストであれば、もっと想像を刺激されて楽しめたと思う。
 また本家カタンと比べるとプレイヤー間のやりとりが少なくなっているのは好みにもよると思うが、2人用では仕方がないとも言える。
 しかし総じて完成度の高い好ゲームなのは間違いない。

気楽さ 3
言語依存 5
 そこそこテキスト量があってそのどれも重要なので、日本語化は必須。
ソロプレイのしやすさ 3
 システム的にに大して問題があるわけではないが、やはり自分だけの宇宙船と思ってプレイしたい。
化夢宇留仁の好き度 4

20110611