ドミニオン



 カードゲームは選ばれないと言われていたゲーム賞を総なめにし、ボードゲーム界を席巻した怪物ゲーム。
 システムは基礎部分をトレーディングカードゲームのデッキシステムに置いているが、天才的なシステムの組み替えによって、全く新しいエキサイティングなゲームに仕上がっている。


 こ〜んな感じにカードを並べてからゲーム開始。
ただし画像は3人プレイ想定のソロプレイなので、本来は手前の山札は各プレイヤーの前にある。
またその他のカードも並べ方が決まっているわけではなく、やりやすいように好きなように並べればいい。

 左上にあるのが「廃物置き場」カード。
ゲーム中に廃棄されたカードを置く。
 その横に並んでいるのがお金カード3種。お金と言ってもこのゲームでは使っても無くなるわけではないので、収入レベルを表すカードと思った方がいい。
 その横の緑のカードが勝利ポイントカード。「屋敷」「公領」「属州」の3種で、それぞれ1、3、6の勝利ポイントになる。
要するにこれらのカードを早くたくさん買ったプレイヤーが勝つのだ。
 手前にずらりと並んでいるのが王国カード。
一番右側の紫色の「呪い」カード以外は全25種類の中から10種類を選んで並べる。選ばれなかった15種類はそのゲームでは使用しない。
つまり1つのゲームなのに、王国カードの選び方によって無数のバリエーションが楽しめるしわけである。
画像はルールブックにあった初めてのゲーム時の推奨の組み合わせ。

 各プレイヤーの最初の山札の中身は、価値1の銅貨カード7枚、勝利ポイント1の屋敷カード3枚の合計10枚。
要するに屋敷3つとそこそこのお金を持った状態から、領主として勢力を広げていくわけである。

 さて、さっきから各プレイヤーの「山札」と書いているが、普通のゲームには山札は1つしかない。
ドミニオンの特徴の1つは、トレーディングカードゲームのように、各プレイヤーに1つの山札があるというところなのだ。
 画像は上記の最初の山札の内容である。
カードの左下に書かれているのはそのカードの価格。
価値1の銅貨はなんと価格0。屋敷は価格2である。
各手番にはお金を使って王国カードや勝利ポイントカード、そしてお金カードを購入する。
そうやって自分の山札(デッキ)を育ててゆくゲームなのだ。


 プレイヤーの最初の山札は10枚だが、手札は毎手番5枚である。
自分の手番の終了時に、自分の山札から新たに5枚のカードをひくのだ。詳しくは後述する。
 手番にはアクション1回、カードの購入1回を順番に行える。
アクションというのは手札の王国カードの能力を使うということである。
その王国カードに、アクションを増やしたり、更にカードをひいたり、購入枚数を増やしたりと言った能力があるので、上記の手番内に行えることが変動してゆく。
 そして手番の最後には、使ったカードもそうでないカードも、全て捨て札になる。今買ったばかりのカードも捨て札になる。
もちろんそのまま廃棄されてしまうわけではない。捨て札になったカードは、各自の山札が無くなった時点でシャッフルされて新たな山札になるのだ。
そうやって自分の山札を育ててゆく。
そして全て捨て札にしてしまうので、毎回手番の最後には山札からカードを5枚引かなければならないというわけ。

 ゲームは並べられたカードが3種類無くなる(1種類につき10〜20枚置かれている)か、勝利ポイントの「属州」(勝利ポイント6、12枚置かれている)が無くなった時点で終了する。
そうなったら手札も全て山札に戻し、山札内の勝利ポイントを合計し、それが一番高かった者が勝利する。
「属州」カードの勝利ポイントは非常に高いので、ほとんどの場合はこのカードが無くなって終了し、このカードを最も多く持っていた者が勝利する。
つまりはいかに「属州」カードを素早くたくさん買うかというゲームなのだ(例外はある)。
 そこで問題になるのが「属州」の価格である。画像を見てもらえば分かるが、8である。
(※画像は実は拡張1「陰謀」のもの。右下のアイマスクがその違い。最初のドミニオンのカードは使用頻度が多かった(笑)ので少し傷んでいたので、代わりに「陰謀」のものを掲載している。アイマスク以外はまったく同じである)
思い出してほしいが、最初の山札には価値1の銅貨が7枚しか入っておらず、しかも手札は5枚しか配られないので、最高でも価格5のカードまでしか買えないのだ。
どうやったら価格8のカードが買えるのか。
そこにたどり着く最短ルートを探し出し、その状態を維持する手段を考えるのがこのゲームのポイントなのだ。
単純に考えれば、もっと価値の高いお金カードを購入するのが一番手っ取り早い。
そうしていれば山札がシャッフルし直されるたびに価値の高いお金カードが手札に来る可能性が高まり、やがては属州も購入できる。これが基本戦術である。
そこに更に王国カードを付け加えることで、手札のお金が足らなくても属州を購入できるようにしたり、他のプレイヤーへの妨害をしたりしてゲームに幅が出来てゆくのだ。
 もう一つ重要なポイントがある。
それは上記にある属州を買うための最短ルートを探し出した後、「その状態を維持」するというところである。
勝利ポイントカードはゲーム中には全く役に立たない。しかし購入すれば山札には入ってゆくので、結果5枚しかない手札にも混じってくる。
そうすると次に高いカードを買う資金が手札に集まりにくくなるわけである。
単純に欲しいカードを購入しているだけでは、デッキのパワーが弱まってしまうのだ。
高いカードを購入出来る状態を維持するために、それに対処できる王国カードを購入するケースもある。

 ここから実際のゲームを例にとって、王国カードとゲームの展開を紹介する。

 とりあえず手札から王国カード「地下貯蔵庫」を出したとする。
まず「+1アクション」の能力があるので、続けてアクションを行うことができる。
もう1つの能力は手札からいらないカードを捨て札にすると、その枚数分山札からひけるというもの。
それではと役に立たない「屋敷」カードを3枚捨てて、山札から3枚引いた状態が下の画像である。


 銅貨3枚に「鉱山」1枚。
まだ序盤なので、価値2、価格3の「銀貨」を買うという選択肢もあるが、その前に「地下貯蔵庫」の能力でもう1アクション残っているので、「鉱山」を出す。


 「鉱山」カードは25種類の王国カードの中でも強力なカードの1つで、特に序盤には大活躍する。
能力はお金カードを1枚廃棄し、その代わりに1ランク高いお金カードを手に入れ、それを手札に加えることができるというもの。
 まず「廃棄」だが、これは捨て札にするのとは異なる。
捨て札はあとで山札になって手札に帰ってくるが、廃棄されたカードはそのままゲームから除外されてしまうのだ。
鉱山を使った場合はお金をランクアップできるという報酬があるが、そうでない場合も廃棄を行う場合もある。
それは上記のデッキのパワーの維持に関わるところで、要するに必要のないカードは無くしてしまった方が、手札のパワーが上がるのだ。
 で、お金には3種類ある。銅貨(価値1、価格0)、銀貨(価値2、価格3)、金貨(価値3、価格6)で、今回は銅貨を廃棄したので、手札に銀貨が入ることになる。
この手札に入るというのも鉱山が強力なところで、普通なら手に入れたカードは捨て札となり、次に手札にはいるまで使用できないのに、鉱山の能力ならいきなり購入に使用できるのだ。
デッキを強化するという点でも、その手番の購入額を上げるという意味でも、2重に強力であり、1枚は買っておきたいカードである。


「鉱山」カードのおかげで手札は銅貨2枚、銀貨1枚となり、合計価値は4になった。
これでカードを1枚購入(しなくてもいい)し、全部捨て札にしてから山札から5枚カードをひいて手番終了である。
こんな感じでデッキを成長させつつ、カードを購入してゆくわけである。

 別な例。
現在の手札は3枚。なぜなら前のプレイヤーが王国カード「民兵」を出したからである。
民兵の能力はその手番の購入金額を2増やすのと、他のプレイヤーの手札を3枚まで減らすというものなのだ。
なかなか強力な攻撃カードと言える。
こちらの手札の内容は、銅貨1枚、銀貨1枚、王国カード「市場」1枚である。

 アクションとして「市場」を出す。
「市場」も強力なカードの1つで、見ての通り4つも能力がある。
まずは「+1カードを引く」にしたがって、デッキからカードを引く。

 引いてきたのはこちらも「民兵」だった。
「市場」の能力の「+1アクション」を使って「民兵」も出す。
さっき民兵を出したプレイヤーには逆襲である。

 そして更に「市場」の能力「購入価格+1」と、民兵の「購入価格+2」と、手札の銅貨、銀貨の価値を合計すると、この手番の購入価格は6に。
価格6、価値3の「金貨」を購入できた。
「市場」にはもう1つ「+1カードを購入」もあり、今回ならば6を好きなように分けて合計2枚のカードを購入できる。また金貨を買った上で、価格0の銅貨を買うという選択肢もある。
ここでは安いお金が手札に増えるのを嫌って金貨を1枚買っただけで終了したが、勿論それが正しいかどうか分からない。
どれをどう買うかは悩むところである。


 こんな感じで進んでゆくドミニオン。なんとなく雰囲気はつかめただろうか?
王国カードにはまだまだ様々なものがあり「+アクション」と「+カードを引く」を重ねてコンボにする技とか、カタルシスを感じさせる組み合わせも作れる。
システム上他のプレイヤーがなにを購入しているかが見えるので、プレイの丸々コピーができる(手札の運は大きく影響するが)珍しいゲームでもあるが、それで勝っても楽しくないので、自分なりのデッキを作ってゆくことになる。
ある意味デッキという名の箱庭を作るゲームでもあるのだ。

 システムを突き詰めてみると、最初に使用される王国カードが並んだ時点で、その組み合わせでの最良の手段というのは確定している。
もちろん運は影響するが、確率的にこれが正解というのは必ず存在するのだ。
ただし変数があまりにも多いのでそれを断言するのはほぼ不可能で、それを頭の中で作戦として考え、ゲームが始まったらそれを実行し、結果を確かめるという流れになる。
要するに「ドミニオン」は1種のパズルゲームなのだ。
無限に近い組み合わせのパズルを頭の中でシミュレーションし、結果は勝利という形でもたらされるが、それが最善手かどうかは分からないままなので、同じ組み合わせでも繰り返し楽しめるパズル。
やはり革新的なゲームだと言えるだろう。

 化夢宇留仁はしばらくはまりまくって毎日1人でやっている時期もあった(汗)。
拡張セットも追加されて更に王国カードのバリエーションは増し続けている。
これからも定番ゲームの1つとしてやり続けるのは間違いないゲームである。

気楽さ 4
言語依存 3
 元々テキスト量は多くないが、完全日本語版が出ている。
ソロプレイのしやすさ 5
 カードゲームのくせに、山札の中身(順番は別だが)まで公開情報な上に各プレイヤーの手番には他のプレイヤーが介入しないので、まったく問題なくプレイできる。
化夢宇留仁の好き度 5

20091231

終了条件を間違っていることが判明したので修正 20100130
システムに関してのコメントを追加 20120513