ドミニオン:異郷

 ドミニオンの拡張第6弾。
国境を越えて広がる世界には、今まで見たこともないような文化が。
異国情緒のあるカードや、既存のカードをパワーアップしたものや、マニアックなカードが満載のセット。


 例によっていくつかカードを紹介してゆく。
まずはパワーアップ系の代表格の「義賊」
想像通り「泥棒」のパワーアップ版で、まず+1金がついたことで、全く役に立たないということは無くなった。
肝心の泥棒能力では、なんと言っても「銀貨」と「金貨」しか盗まなくなったのが大きい。
そして財宝を1枚も公開しなかったプレイヤーには「銅貨」を1枚獲得させてしまうという、微妙なアタックと義賊らしさを表現するところが面白い。
そして「異郷」の特徴である獲得時点の効果もあり、「義賊」の能力はカードを獲得した瞬間にも発揮される。
 基本的に「泥棒」の欠点を払拭したような強カードなのに、コストは据え置きの4という太っ腹。
実はそれには理由がある。
「陰謀」以来増え続けている特殊財宝には見向きもしないのだ。
したがって基本セットの財宝カードでプレイするには隙のない強さを発揮するが、拡張の財宝があるサプライだと使用すべきかどうか迷うことになる。
まあ「金貨」が盗めれば強力なのは間違いないのだが。


 「画策」は微妙な能力に見えるが、実は非常に強力なカードである。
まず「+1カードを引く」と「+1アクション」があることで、何枚あっても邪魔にならない。
そして能力は、手番終了時に場に出ているアクションカードを1枚山札の上に戻せるというもの。
「画策」で「画策」を戻すことも出来る。
この能力を使えば、最小限のアクションカードを繰り返し使用することができ、例えばそれが強力なアタックカードだったりすると、他のプレイヤーはたまったものではなくなる。
「画策」を複数枚使えばそれだけ戻せる枚数も増えるので、強力なコンボを繰り返し繰り出すことも可能。
とにかく使い方次第で恐るべき能力を発揮する。
気を付けたいのは、とにかく戻すということを繰り返していると、全然デッキが回転しなくなるというところ。
「画策」を使ったコンボで繰り返し「白金貨」を複数手に入れたとしても、シャッフルタイミングが無ければ手札に入ってこないのを忘れてはならない。

 「よろずや」は「鍛冶屋」を上回る最強ステロカードとも呼ばれている強力なカードである。
ちなみにステロというのは、最低限のアクションカードを少しだけ獲得することでデッキを強化する戦術を指す。
例えば「鍛冶屋」を2〜3枚だけ入れたデッキは「属州」を購入する速度が飛躍的にアップする。
 「よろずや」の能力は多彩である。
まず「銀貨」を1枚獲得する。
次に自分の山札の1番上のカードを見て、捨て札にするか戻すかを選択する。
更に手札が5枚になるまでカードを引く。
そして手札から「財宝」以外のカードを1枚廃棄してもよい。
つまり財宝の補充と手札の補充と不要カードの廃棄を一気にできてしまうのだ。
手札が5枚よりも増えることはないが、「屋敷」を廃棄できるので密度の高いデッキになり、しかも山札の1番上のカードは不要であれば捨て札にできるので、ドローの密度も高い。
地味なのか派手なのかよく分からないカードだが、特に「植民地」の無いサプライでは無双の強さを発揮する。

 「街道」は機動力のある「橋」のようなカードである。
「橋」と同じくサプライのカードのコストを1下げた上に、何枚買っても無駄にならない。
「街道」を8枚買って「+1カードを購入」組み合わせたりすると、理論上は無料で「属州」を12枚一気に購入することも可能である。
例えば「労働者の村」7枚と組み合わせればそれが実現できる(笑)。
 てな感じで夢にあふれたカードだが、だいたいは取り合いになるのでそこまでの効果は現実的ではない。
しかし少ないコストで「属州」や「植民地」を購入できるのは間違いないので、無視できるカードでもない。

 「岐路」はコスト2と安いが、実に使いやすく強力なカードである。
まずはドミニオン始まって以来の「+3アクション」の能力が目を引く。
もちろん制限はあり、その手番で最初に出した「岐路」に限っての能力である。
その前に「岐路」をプレイした時点で、手札にある勝利点の枚数分ドローというのも強力である。
例えば手札が「岐路」と勝利点4枚だったりすると、まずは4枚ドロー。
ドローしてきた4枚に「岐路」が入っていれば、再び最低4マイドロー。使うアクションは「岐路」のみで、これをあと2回繰り返すことができる。
 またその性質上、ゲームの終盤に強いという特徴がある。
手札が勝利点だらけでも、「岐路」さえ入っていればニッコリできるのだ(笑)。
逆に序盤では仕様に注意が必要なカードでもある。
例えば圧縮系カードと組み合わせると、勝利点の無い手札に「岐路」のみあって、結局なにも出来ないというケースもあるのだ。

 「国境の村」は、村シリーズ最高値のコスト6のカードである。
しかし基本能力は「村」と全く同じ。
これはどういうことかと言うと、「国境の村」を購入した時には、それより安いコストのカードを1枚同時に獲得できるのだ。
つまりコスト5のカードを獲得すれば、差額で考えれば「国境の村」はコスト1とも考えられる。
しかし廃棄する時には勿論コスト6扱いなので、ぜひ「弟子」とか「改築」とかと組み合わせて使いたい。
また同時に獲得するアクションが強力なものであれば、「村」の能力と合わさってデッキを一気に強化できるカードでもある。
コスト6と言えば、昔から「金貨」と比べられる厳しい価格帯なのだが、それに充分応える能力を持ったカードだと言える。

 「坑道」は「異郷」デビュー当時から物議を醸したトンデモカードである。
コスト3で勝利点2。コスト2の「屋敷」が勝利点1ということを考えれば、これだけで悪くないコストパフォーマンスである。
そこに「坑道」を捨て札にすると「金貨」が獲得できるというトンデモ能力が追加されているのだ。
カードを捨てるアクションはそれこそ山ほどあり、それらがあれば「坑道」がデッキに入っているだけで、いつの間にか「金貨」が増えてくるのだ。
この能力はアタックによって捨てる場合でも同様で「民兵」でも「金貨」を獲得できるし、「冒険者」の能力で山札から捨てた場合でも適用される。
 化夢宇留仁的にはどう考えてもコスト3は安すぎると思う。
せめてコスト4が妥当では?下手をしたらコスト5でもいい。
 というわけでとにかく強力なのだが、運の要素は大きいのと、やはり序盤にデッキに勝利点カードを入れてゆくのは厳しい状況もあるので、考えさせられる面白いカードである。

 「交易人」はリアクションカードだが、手札を攻撃してくるアタックにはなにも出来ない。
その代わりカードを押しつけてくるアクションにはとことん強い。
なにしろ押しつけられるカードを全て「銀貨」に替えてしまうことができるのだ。
 自分のアクションの時も強力で、カードを1枚廃棄し、そのコスト枚数分の「銀貨」を獲得することができる。
とにかく「銀貨」(笑)
なんでもかんでも売ってしまって「銀貨」に(笑)
しかも廃棄するカードのコストは問わないので、不要なカードを廃棄することでデッキの圧縮や「呪い」対策も万全である。
 とにかくデッキが「銀貨」だらけになるので、「属州」もすぐに獲得できるはずである。
しかし「銀貨」ベースとあって、「植民地」購入は難しくなる。
その辺のバランスを見ながら獲得を考慮する必要があるだろう。


 「香辛料商人」は「金貸し」に迫る序盤で購入したい圧縮形カードの最新型である。
まず廃棄するのは財宝に限るが、「銅貨」以外でもOK。
効果は2種類から選べ、「+2カードを引く、+1アクション」と「+2金、+1カードを購入」のどちらかで、状況によって使い分けられるので便利。
残念なのは高価な財宝を廃棄しても「銅貨」を廃棄しても効果が同じなのと、終盤では使いにくいケースがあるというところ。
「金貸し」と同時にサプライに現れたら、他に強力なアクションがあれば「香辛料商人」を選択する方がベターだと思う。


 「庭園」以来のデッキ拡大型勝利点。
デッキにある勝利点カード4枚につき1点になる。
 このカードは使いどころを見極めるのが実に面白い。
「工房」などと組み合わせるのが強力というのは「庭園」と同じだが、「男爵」や「公爵」など、「シルクロード」と組み合わせるとより強力になるカードも多い。
化夢宇留仁的にはドミニオンシリーズをより面白くするのに一役買ったカードだと思う。


 てなわけで一癖も二癖もあるカードがそろった拡張セットである。
効果が直接的ではないカードが増えて初心者には分かりにくいかもしれないが、シリーズを通して遊んでいるプレイヤーには奥深さと広がりという点で必携のセットだと思う。
しかし不満もある。
「異郷」というタイトルで化夢宇留仁が思い浮かべて期待していた程には、「異郷」らしさを感じられなかったところがそう。
例えば「シャーマン」とか「首苅り族」とかに出てきてほしかった(笑)。

気楽さ 4
言語依存 4

ソロプレイのしやすさ 5

化夢宇留仁の好き度 5

20120811