ドミニオン:収穫祭



 「ドミニオン」シリーズ拡張5作目。
今回は「多様性」がテーマとなっており、デッキに他種類のカードがあれば有利になるアクションカードが集められている。
パッと見はどちらかと言えば地味に思えるカードが多いのだが、条件がそろうと爆発力を発揮するカードがそろっているのが特徴。



 「収穫祭」を代表するカードと言える「収穫」。
山札の上から4枚のカードを公開し、そのカードの種類がそのまま+金になる。
つまりは全部同じカードが公開されたら1。全部異なるカードが公開されたら4である。
 全部同じカードが公開されることは序盤以外はまず考えられない。
すると期待値は2から4ということになる。
3でも「金貨」と同等。4ならコスト5で「金貨」を越えることになるので、金を創り出す能力としては非常に優秀である。
ただし上限が4と固定されているので、予想外の大爆発というのはあり得ない。
計画性が必要なカードだと言える。


 「移動動物園」は非常に優秀なドローカードで、+1アクションがつく上に、このカードを出したあとの手札が全て異なるカード同士であれば、+3ドロー。重なったカードがあれば+1ドローとなる。
手札を減らすアクションや圧縮との相性は抜群で、コスト3とは思えないパフォーマンスを発揮する。
コスト3で「銀貨」を買っている場合ではないのだ。


 「収穫祭」の中でも最強と噂される強力ドローカードがこの「狩猟団」である。
カードを1枚ドロー。そして+1アクション。更にその時点で手札に無いカードを1枚ドロー。
一見「研究所」とほとんど同じ能力であり、時には結果も全く同じになる。
しかし条件がそろうと、同じコストとは思えないほどのパフォーマンスを発揮するのだ。
特に複数の「狩猟団」をデッキに入れると、「狩猟団」が「狩猟団」を呼び込み、延々とドローすることができる。
「白金貨」など、貴重な高価値カードがある場合も、高い確率で手札に引き込むことが可能なのだ。

 「農村」は「村」シリーズの上位互換で、1枚ドローするカードが財宝かアクションに限られる。
一見地味な効果だが、実は非常に強力なカードである。
たった1枚のドローで「屋敷」や「呪い」をめくってきてゲンナリする可能性がゼロなのだ。
 その効果はゲームが進めば進むほど顕著になる。
デッキに「属州」や「植民地」があふれていても、それらは捨て札にしてアクションか財宝にたどり着いてしまうのだから当然である。
「農村」でドローアクションを拾ってきて、そのドローの中で再び「農村」でも引いてこようものなら、祭りの始まりが見えてくる。
勿論「呪い」対策にもなる。

 「馬商人」はリアクションカードだが、あまり防御的なカードではない。
通常の効果は「+1カードを購入」と+3金だが、カードを2枚捨てなければならない。
 リアクションはアタックカードを防御できるわけではないが、このカード自体が脇に置かれ、次の自分のターンに手札に戻り、かつもう1枚カードをドローできる。
 どちらの効果も、一定のコストを支払って攻撃力に替えるものとなっている。
通常のアクションはペナルティはあっても+3金はやはり強力だし、リアクションもアタックをきっかけに力を貯められてしまうのだから、相手にとってはプレッシャーになる。
パッと見青いからと言って、デッキ構築の候補から外してしまうのは大間違いのカードである。

 「魔女娘」はその名の通り「魔女」の娘のようなカードで、コストは「魔女」より1安い4、カードを2枚ドロー出来るのは同じだが、その後手札からカードを2枚捨てなければならない。
また「魔女娘」の「呪い」蒔きには制限があり、「災い」と呼ばれるカードが手札にあれば、それを公開することで免れることができる。
「災い」カードは通常10種類の王国カードに追加されるカードで、コスト3以下のカードからランダムに選択される。
つまり「魔女娘」が存在するサプライでは、王国カードが11種類存在するのだ。
 「魔女娘」の効果だが、やはり「呪い」蒔きカードの例に漏れず、強力である。
ただし前述の「災い」が強力なカードだったりすると、みんながこぞって手札に入れてしまい、全然役に立たなくなるケースもある。
実に分かり訳す強力だったお母さんに比べると微妙だが、その分戦楽的に使えるようになり、化夢宇留仁的にはお気に入りのカードである。


 「品評会」は、終了時にデッキにあるカードの種類/5(切り捨て)×2の勝利ポイントになる。
「収穫」もそうだが、「収穫祭」には平均値が高いが、上限が決まっているというカードが特徴のようで、「品評会」もゲーム開始の時点で得られる勝利ポイントの上限が分かっている。
通常のサプライであれば、6である。
銅貨、銀貨、金貨、屋敷、公領、属州、呪い、そして王国カードの10種類で、合計17種類であるから、これは動かしがたい。
それでコスト6と考えると、特殊勝利点としては少ないような気がするが、逆に考えると、通常ゲーム終了時のデッキには、銅貨、銀貨、金貨、屋敷、属州が存在し、おそらく終盤には公領も買っているだろう。更に当然「品評会」が入り、ここまでで合計7種類。普通にプレイしていれば更にアクションカードを3種類購入するのは容易いことであり、プレイに支障が出るような選択でもない。
つまり「品評会」の勝利ポイントの期待値は4なのだ。
コスト5の「公領」よりも1多い。
これを多いととるか、少ないととるかは終盤の手札によると思うが、更に重要なポイントがある。
白金貨、植民地が入るとサプライの合計種類は19。そこに前述の「魔女娘」が入ると、災いカードで王国カードが1枚増えるので、合計種類は20に達する。
つまり最終勝利ポイントが8に達する可能性が出てくるのだ。
更に「闇市場」や後述の「馬上槍試合」が加わると、勝利ポイント10点の可能性さえ出てくる。
可能性は非常に低いとは言え、ロマンのあるカードである。


 「占い師」は一見地味に見えるが、実は強力なアタックカードである。
+2金に加え、他のプレイヤーの山札を勝利点か呪いがめくれるまで捨て札にしてしまう。
山札の一番上が勝利点や呪いになっても他の4枚が強力なら問題ないと思うかもしれないが、その前に強力なアクションや財宝が捨て札にされてしまうのがきついのだ。
例えば「礼拝堂」が「占い師」で捨て札にされてしまった場合、他のプレイヤーと比べて圧縮速度で大きく遅れを取ってしまう。
要注意カードである。

 「豊穣の角笛」は、その手番に場に出したカードの種類を上限としたコストのカードを獲得することができる。
勝利点カードを獲得した場合は「豊穣の角笛」を廃棄しなければならない。
 序盤から中盤にかけての重要カード獲得能力も侮れないが、白眉は後半の勝利点の獲得だろう。
アクションブーストとドローを組み合わせてカードを並べた後に「豊穣の角笛」を出せば、1手番に何枚もの「属州」を獲得することも可能なのだ。
 「豊穣の角笛」は上記の通りロマンあふれるカードなのだが、その能力を使い切るには他のカードを完璧な計画の上で獲得していかなければならない。
爆発力がある分玄人向けのカードと言える。

 「収穫祭」の目玉カードである「馬上槍試合」は、とにかく早い者勝ちのカードである。
通常+1アクションの能力を持つが、他のプレイヤーの誰も「属州」を公開できなければ更に+1カードを引くと、+1金が追加される。
そして自分が「属州」を公開できれば、それを捨て札にすることで「報償」カードか「公領」が手に入るのだ。



 画像が「報償」カード。
5種類あるがどれも1枚しか存在しない。そしてそのどれもが非常に強力な能力を有する。
「報償」カードの強力さは筆舌に尽くしがたく、ゲーム序盤で手に入れば勝利は間違いない。
「馬上槍試合」を購入すると、「報償」を手に入れるために、まずは最速で「属州」を手に入れるのが使命となる。
誰かが「馬上槍試合」を獲得したら、他のプレイヤーは決断を迫られることになる。
運を信じて後から「馬上槍試合」を獲得するのか、諦めて他の道を模索するのか。
 「馬上槍試合」が王国カードに現れたら、いつものドミニオンとは違うゲームが始まったと認識する必要がある。
それだけ癖が強いわけだが、ドミニオンの世界に新たな深みを加えたカードとも言えるだろう。

 というわけで「収穫祭」は搦め手が多い印象のセットである。
化夢宇留仁はこのセットを加えることで、考える方向としても多様性と深みが増して面白くなると思う。
人によっては好き嫌いのありそうな内容だが。

気楽さ 4
言語依存 4
 完全日本語版が出回っている。
ソロプレイのしやすさ 4
化夢宇留仁の好き度 4

20120804