暗黒の大広間
(暗黒のフロア)



 「電力会社」のフリーゼの縦型大箱シリーズ。
不気味な屋敷の出口を求めてさまよう人たち。彼らの視界に外への出口が。
しかし出口の前には暗黒の大広間が広がっており、暗闇の中で何かが動く気配が・・・・・・。



1人のプレイヤーがそれぞれ4人のキャラクターを受け持ち(人数が多い場合は3人)、大広間の右下から、左上の出口を目指す。
最初に3人脱出できれば勝利である。
もちろん単に大広間を横切るだけなら簡単なのだが、この大広間には怪物がいるのだ。
それがボードの右上に立っている奇妙な人形である。


 ゲームには3種類+αの怪物の部品が入っていて、自由に組み合わせることができる。フランケンシュタイン型、腐肉型、執事型があり、画像は執事型に大目玉をつけたものである。
しかし怪物のデザインはゲームシステムには全然関係ない。フレーバーである。


 この怪物に食われないように大広間を移動するわけだが、人間は毎ラウンドそれぞれのコマに書かれた数字分、動くことができる。
ここにちょっとしたゲーム的工夫がしてあって、人間コマは裏と表があり、毎ラウンドひっくり返る。
画像は赤、青、緑のコマ。全7色ある。
つまり7人までプレイできるのだが、5人以上だと1人のプレイヤーの担当するのは3コマになる。
バックが色つきなのが表で、黒いのが裏である。
表裏に書かれている数字は合計は7になるのだが、その組み合わせは様々。
つまり毎ラウンドキャラクターによって移動力が異なり、またたくさん動いた次のラウンドは必ず少ししか動けないのだ。
このちょっとした工夫によって単調になるのを防ぎ、スリルを増しているのは見事。


 怪物の方は、毎ラウンドタイルをめくり、そこに書かれているだけ移動する。
ほとんどのタイルは数字だが、中には1つか2つの血の十字架が描かれたものもあり、それがめくられると十字架の数だけキャラクターを食うまで動き続ける(最高20歩)。
また怪物は1歩毎に前と左右を見て、人間キャラクターを見つけるとそっちに方向転換して迫ってくる。
キャラクターは点在する石柱に隠れながら、出口を目指さなければならない。
しかし怪物は壁にぶつかると反対側にワープして現れる。しかも同じ列ではなくて、アルファベットでつながった全く異なる列から出てくるので、ちゃんと見ていないと予想外のところから襲われることになる。
 この半自動処理の非人間性が見事に怪物らしさを演出していて、ほんとに何を考えているのか分からない怪物に追われているような気がしてドキドキさせられるのだ。
キャラクターも怪物も、実にあっさりとしたルールがどちらもスリルを増すように働いているのが素晴らしい。


 オプションルールになると、怪物が見通すことができる透明な石柱やワープタイルなど、更に様々な要素が追加され、より生還が難しくなる(画像は基本ルールの2人プレイのもの)。
しかし基本ルールでもしっかり面白い好ゲームだと思う。


 というわけで流石はフリーゼと言える傑作である。と言っても化夢宇留仁はフリーゼの作品をプレイしたのはこれが最初なのだが(笑)。
 基本的には怪物の移動力以外にはランダム性のないアブストラクトなのに、見事にパーティーゲームとしてまとまっている。
 画像は前にプレイした時に実際に起こった怪物の移動直後の状態。
あと1歩のところで移動力が尽きてストップ(笑)。
こんなことになったら心臓バクバクものである。
こうまでダイレクトにスリルを味わえるボードゲームというのも珍しいのではなかろうか。

気楽さ 4
言語依存 0
ソロプレイのしやすさ 5
 システム的にもテーマ的にもソロプレイ向き。少々コマの数が多いが。
化夢宇留仁の好き度 5

20100606