マンション・オブ・マッドネス


 一言で言えばディセント・クトゥルフ神話版。
しかし流石にテーマがテーマだけに、戦闘だけしていればよいというものではない。


 ゲームの様子の一例。
このゲームもディセントと同じく複数のプレイヤーとゲームマスターのガチ対決というシステムになっている。
 用意されているシナリオは5つと少ないが、実は各シナリオの中でも複数の分岐と結末が用意されているのでバリエーションは多い。

 セットアップが完了したらゲームマスターがフレーバーテキストを読み上げるところから始まる。
これもディセントと同じだが、今回は謎解き要素があり、そのヒントがフレーバーテキストの中に隠されている場合もある。

 ゲームの手順はプレイヤーキャラクター(以下探索者)がそれぞれ好きな順番でアクションを行った後、マスターのアクションを行って1ターン終了。これもディセントと同じ。
 探索者は手番には2回の移動と1回のアクションを行える。
1回の移動では隣の区画に入れる。
アクションには「走る」「カード能力」「アイテムを落とす」「モンスターへの攻撃」「探索」がある。
「走る」は1回の追加移動。「カード能力」は持っているカードの能力を使用する。「アイテムを落とす」は今いる区画にアイテムを落とす。「モンスターへの攻撃」は文字通り。
「探索」は今いる区画を探索する。このアクションによって落とされたアイテムを拾うこともできる。

 マスターの手番には、まず同じ区画にいる探索者どうしがアイテムのやり取りをする。なんでこれがマスターの手番にあるのかというと、探索者がアクションを消費しないでアイテムをやり取りできるようにという配慮だろう。
 次にマスターが脅威トークンをゲーム開始時の探索者の人数分受け取る。
これはディセントと全く同じと言っていいシステム。
次にマスターのアクション。さっきの脅威トークンを消費することによって様々なアクションを行える。
その中にはモンスターの召喚は勿論、様々な現象を起こして探索者の正気度を削ったりもする。
 そしてマンスターの攻撃。
探索者と同じ区画にいるモンスターが攻撃を行う。
 それからイベントステップ。
イベント毎に設定されている複数枚のイベントカードの上に時間トークンを置き、その個数がカードの裏に記されている数値に達したらそのイベントが発生するという仕組み。


 ゲームは基本的に探索者が屋敷の中を歩いて各部屋を探索することで進む。
部屋によっては鍵を開けないと入れなかったり、入ってもこれまた鍵のかかった戸棚にぶつかったりと、なかなか一筋縄ではいかない。
また見つかるのはアイテムだけではなく様々な手がかりの場合もあり、もちろんこれはシナリオごとに変化する。
このへんのシステムは非常によくできている。
 上記の鍵も単に鍵のアイテムを見つけるだけではなく、特殊なパズルを解かなければ先に進めないものもある。
最初それを聞いた化夢宇留仁はこういうゲームにパズルを導入するのに懐疑的だったのだが、時間をかければ必ず解ける問題で、その手数を探索者の知力に連動させるという処理がいい感じにはまっており、ちょっと他にはない面白い味を出していたのには感心した。


 パズルの例。
1知力で1回1ピースを90度回転させるか、隣接しているピースと入れ替えるか、2知力で1つのピースを他と入れ替えるかができる。
隣接するタイルどうしが接している色がそろえばクリア。

 「手がかり1」が見つかるとそのシナリオの全貌が判明し、ようやく勝利条件も確定する。
つまりそれまでは探索者はなにをやれば勝てるのかわからないままなのだ。
これもホラーらしい雰囲気作りに貢献していると思う。


 忘れてはならないのがフィギュア。
探索者8体に加え、9種類のモンスター(カルト信者など含む)の合計32体がセットされている。
フィギュアの出来はまあまあと言ったところだが、やはりこういう雰囲気を重視するゲームではフィギュアがあると盛り上がる。
ちなみに画像のフィギュアは全て化夢宇留仁がペイントしている。

 で、ソロプレイには向かないシステムだと承知の上でソロプレイしてみたのだが・・・
流石に無理があった(笑)
各部屋に何が隠されているのかはあらかじめマスターがシナリオの指示に従ってカードを配置していくので、流石にどの部屋になにが隠されているかを知らないふりでは面白くない(笑)
やはりソロプレイも可能になった第2版を遊ぶべきか・・・。
しかし。
化夢宇留仁はソロプレイの鬼(笑)であるので、なんとかこのゲームをソロプレイで楽しめないかと考え、えらい苦労して作り出したのが以下のシステムである。

マンション・オブ・マッドネス ソロプレイサポートシステム

 要するにシナリオごとに(分岐も全て網羅)どの部屋に何が隠されているかをhtmlで構築しただけのものだが、これで実に楽しくソロプレイできるようになった♪
当ゲームをお持ちの方はぜひ試してみてほしい。
ちなみに全ての分岐を網羅するとなかなかの大ボリューム(書類数4000弱/汗)であり、色々と間違っているところもあるかと思うので、もし見つけたら修正するので教えてほしい。
更にこのシステムではマスターが「目的カード」を見るのは探索者と同じタイミングなので、公開してみたらどちらかがすでに勝利条件を満たしていたという展開はある。
そこは性質上どうしようもないのでそういうものだと思って遊ぶこと(笑)
 そうそうこれまでの画像に映り込んでいる銅色のコインみたいなのはドミニオンのパーツで、このゲームとは関係ない(笑)。
このシステムではカードを置く代わりになにか目印を置いてその部屋が未探索だとわかるようにするので、それに使っていたのだ。

 ソロプレイが楽しめるようになったので一通りのシナリオを遊んでみて、いくつか気づいたことがあった。
まず上でプレイヤーとマスターがガチで対決するゲームと書いたが、やはり基本的にはマスターは探索者に恐怖を楽しんでもらうのが趣旨なので、それを意図してプレイする必要がある。
というのもマスターが全力で勝利に向かうと、ホラーと言うよりもウォーゲームみたいな雰囲気になる場合があるのだ。
例えば探索者が勝利するために絶対通るであろう部屋があったとして、そこからモンスターが沸いて出てくるのはまだホラーっぽいが、その部屋にモンスターがすし詰めになって待ち伏せし始めたらホラー気分は吹っ飛んでしまう(笑)
 またシナリオによってはバランスが変だったり、勝利条件がうまく機能しない場合もある。
これはなかなか困ったところで、特に探索者の死亡が絡むと変なことになる。
探索者は上記の「目的カード」が公開されるまでは死んでも新しいキャラクターで再挑戦できるので、勝利条件が確定する直前に死ぬと、館からの脱出が条件だったりするとかえって有利になる場合があるのだ。
 またどの部屋を探索するかの順番は基本的に探索者に任されるので、それがシナリオの意図から大きく外れるとおかしなことになることも。
ここはもう少し工夫してほしかったかも。

 ちうわけで非常に凝ったシステムの大作で、感じるのはとにかくフレーバーを楽しんでほしいという意気込みだった。
例えば戦闘システムも3種類のカードから対応するモンスターに応じたカードを引いていちいち状況説明を読んで処理するようになっており、これはなかなか効果的で面白い。
ただしテキストの違和感をなくすために、モンスターの種類だけではなくどんな武器を使ったかとか探索者の状況とかによって適合するカードを探さなければならないので、合うカードが出てくるまでめくり続けるのが少々面倒(笑)
などなど、荒削りなところもあるのだが、その意気込みを買いたい優良ゲームだと思う。
ちなみに化夢宇留仁は「シナリオ3 血縁」が一番気に入った。

 拡張セットの紹介をしようと思ったら、それが純粋な追加シナリオのみの内容だったので、そうなるとこっちにシナリオの内容が紹介していないと妙な気がしたので追記。

シナリオ1:リンチ家の崩壊
 仕事上のパートナーであるウォルーター・リンチという男を探してほしいという依頼を受けた探索者達。
リンチは息子を失ってから妻と2人で暮らしていたということで、彼の家にやってきたが・・・。
 比較的小規模なシナリオ。内容も地味だが雰囲気は悪くない。

シナリオ2:神聖なる場所
 探索者の先輩である聡明な女性が行方不明になっていた。
彼女の遺した手紙には、彼女はダンウィッチで邪教の本拠地へ潜入捜査を行っており、探索者にこの手紙が渡ればそれが失敗したということだと書かれていた・・・。
カルト信者がぞろぞろ出てくる上に展開によっては冗談では済まないやつも出てくるので要注意。

シナリオ3:血縁
 探索者の1人の叔父に当たるアルティマスが死に、彼の家を相続した。
しかしその家は敷地は広いものの建てかけのまま放置されており、廃墟のような様相を呈していた・・・。
 舞台のほとんどが野外という変わったシナリオで、雰囲気がよくて面白い。

シナリオ4:教室の呪い
 キングスポートの南西にあるヘイル=ブライトン大学は使われなくなった軍の要塞を改築して使用していたが、設備は最新のものを揃えていた。
しかし校舎が異常に寒い、電気の接触が悪いなど問題が続出し、探索者たちが調査を行うことに・・・。
 学校という設定がいい。黒幕(?)に意外なやつが。

シナリオ5:緑の目の少年
 自動車事故を起こしてしまい、緑の目の少年に導かれるように巨大な家にやってきた探索者達。
そこでは執事が迎えてくれたが・・・。
 クトゥルフ神話というよりもホラー映画な雰囲気。
マップが非常に広い。

20230611追記

気楽さ 2
言語依存 5
 なかなかのテキスト量だが、同じカードの使い回しが多い。フレーバーテキストは読んであげよう(笑)
ソロプレイのしやすさ 1

 上記のシステムを使用すれば4。
化夢宇留仁の好き度 4

20230521