星辰正しきとき



 クトゥルフ神話を題材にしたカードゲーム。
もちろん見ての通りホラーというわけではない(笑)。

 「星辰正しきとき」は、たくさん出ているクトゥルフ神話を扱ったゲームの内でも、非常に変わったゲームだと言える。
プレイヤーは邪教の信者となって、儀式を行い星辰を正し、神話怪物を召還する。それだけのゲームなのだ。



 最初に25枚の正方形のタイルを5×5で並べ、これが星辰を表す。
タイルは両面印刷で、それぞれのタイルの端に描かれている絵柄が裏側になっている。
並べる時は裏表気にせずテキトーに並べる。
 プレイヤーには手札が5枚配られ、手番には 1.儀式 2.召還 3.カードを1枚捨てる 4.手札が5枚になるまでカードをひく を順に行うが、4以外は行わなくてもかまわない。
 1.儀式では、手札を1枚捨てることで、その手札に描かれている効果を星辰に行うことが出来る。


 画像では信奉者のFORMLOSE(日本名不明/笑)を捨てたところ。
左上に曲がった矢印のマークがある。
この効果で、星辰のタイルを1枚裏返すことが出来る。
ここでは4つ星を裏返し、1つ星に変化させた。


 次は「召還」。
手札に現在の星辰と合致するカードがあれば、召還して配置することができる。
 さっきの「儀式」 による変化で、眷属「ハスターの使者」を召還できた。
カードに書かれている星の配置が、場のタイルと合致しているのが分かるだろうか。
 これで2勝利ポイントになる。
10勝利ポイントになったら勝利である。


 「儀式」では、他にも「入れ替え」と「ずらし」の変化をもたらすことができる。
 入れ替えは隣り合ったタイルを文字通り入れ替える。
 ずらしは画像のように、好きな1列を1タイル分ずらす。
はみ出た分は反対側に配置される。
またカードによっては、同じ変化を複数回行えるものもある。

 召還は信奉者など、勝利ポイントの低いものは当然星辰がそろいやすくなっている。
 画像は信奉者の「ビヤーキー」を召還したところ。
2箇所に2つずつの並びでそろうので、召還は簡単。


 神話モンスターには上記の「信奉者」「眷属」の他に、「独立種族」「旧支配者」がある。
「信奉者」は最も簡単に召還でき、勝利ポイントも低いが、重要な能力を持っている。それは後述する。
「眷属」は2の勝利ポイントを得ることができる中堅種族で、召還できれば強い武器となる。そして「信奉者」と同じ重要な能力も持っている。
「独立種族」は勝利ポイントは0だが、特殊な能力を持っている。
画像は独立種族の1つの「ガスト」。
ガストを召還すると、手札を6枚持てるようになるので、できるだけ召還しておきたい種族である。


 クトゥルフ神話と言えば「旧支配者」である。
もちろんこのゲームでも旧支配者は大きく扱われている。
旧支配者には「クトゥルフ」「ハスター」「ツァトゥグァ」「チャグナー・フォーン」の4種類が用意されている。
 画像は旧支配者の「ハスター」。
勝利ポイントは4も得られるが、召還するためには4×2の長方形の中に、5種類の星が正しく並んだ状態を作らなくてはならない。
これは並大抵の難しさではなく、普通にやっていたのではまずそろわない。
そこで「信奉者」と「眷属」の能力が活きてくる。
召還済みの両種族で、該当する旧支配者に属するものは、旧支配者を召還するための星を減らすことができるのだ。


 例えば画像の信奉者「深きものども」は、旧支配者「クトゥルフ」の信奉者であり、新月(カード右上の絵)をクトゥルフ召還の必要な星から減らすことができる。
旧支配者召還時には同時に3枚までの「信奉者」と「眷属」を利用できる。
しかし召還されると、利用された「信奉者」「眷属」は生け贄となって捨て札にされる。
勝利ポイントの効率を考えれば、できるだけ「眷属」は旧支配者の召還には使いたくないところである。

 召還した神話怪物は、「儀式」の時にも利用できる。
カードの下に描かれている矢印がそれで、儀式のために手札から出されたカードの能力を変化させることができるのだ。
画像の「深きものども」は、「ずらす」能力を「入れ替える」能力に変化させることができる。
上の「ハスター」であれば、「入れ替える」能力を「入れ替える」3回に変化させる。



 さて旧支配者「ハスター」を召還したい状況だとする。
見た限り右すみの満月と新月のみが合致している。これでは召還は遠い。


 しかし手元にはすでに信奉者「ビヤーキー」と眷属「ハスターの使者」が召還済みである。
彼らの召還支援能力を使えば、真ん中の「4つ星」と「無」(なにもない空)は無視できる。
ハスターを召還するのに残る条件は、左下の「5つ星」のみである。
よく見れば、長方形の左上に位置する「無」は裏返せば「5つ星」になる。
裏返して1つ横に移動させればいいのだ。

 てな感じでゲームを進め、誰かが最初に10勝利ポイントに達せばゲームは終了する。
実にシンプルかつ雰囲気のあるシステムで、イラストを始めとしたコンポーネントも実に出来が良く、高いレベルでまとまった好ゲームだと思う。
しかし問題もある。それはどうしても長考になってしまうところである。
なにしろシステムがああなので、手札を回転させたりしつつ場札と見比べて考え込むのがどうしても必要になる。
考え無しでやっていても、勝利ポイントの高い神話怪物は召還できないのだ。
ここがもっと選択肢を絞るような感じで、プレイアビリティを高めてあれば傑作だったのだが、惜しい。



 しかしそれにしてもコンポーネントは素晴らしい。
でも最近出た版では、少しデザインが変更されていて、化夢宇留仁的には劣化したように感じた。

気楽さ 4
言語依存 1
 独立種族の能力が言語に依存するが、種類が多いわけでもないのでルールブックの対訳表で十分。
ソロプレイのしやすさ 4
化夢宇留仁の好き度 5

 問題も多いけど、手軽なクトゥルフ神話テーマのゲームとしては、最も出来のいい方だと思う。

20100505