関連作品データ

コミック




栞と紙魚子シリーズ

★★ 諸星大二郎/朝日ソノラマ
 本屋の娘の栞と、古本屋の娘紙魚子。二人の女子高生が奇怪な事件を体験する・・・のだが、全然ホラーではない。
むしろほのぼのギャグ漫画。連作読み切り形式。
中国伝奇物や妖怪ハンターシリーズなどでおどろおどろしい世界を表現してきた著者だが、こんなにほのぼのギャグにはまるとは意外な収穫。
 で、クトゥルフ神話にどう関係するかだが、作中に段先生という小説家が出てくるのだが、その家族がなんというか外国人なのである(笑)。
左の画像が一家の写 真である。
黒いスーツが段一知(だん・いっち)先生(笑)。
その横が娘のクトルーちゃん(笑)。
見にくいが(見えてもよく分からない形をしているが)クトルーちゃんが抱いているのがペットのヨグ・ソトホート(笑)。
背後の巨大な顔が段夫人(名前は不明)である。
見ての通り奥さんが外国人(笑)なので、クトルーちゃんは混血らしい。
クトルーちゃんのおじいさんとおばあさん(奥さんの両親)が遊びに来る話があったが、なにやら巨大な祭壇を用意して呼び出し(交通 費がかからないからだそうだ/笑)、暗雲立ちこめ嵐が吹き荒れ、周囲の町並みは破壊されて大変そうであった(笑)。
この一家の素晴らしいのは単に名前を借りてきたというだけではなく、クトゥルフ神話独特の意味不明さ、人間には理解できない感覚が表現されているところである。
例えば右下の図は長姫という強大な力を持った悪霊が段夫人に遭遇するシーンである。
長姫は過去数百年にもわたって力をふるってきた悪霊のような存在で、もちろん恐るべき怪物なのだが、やはり日本の文化の上になりたっており、話が通 じる。
まだよくある敵キャラクターの範疇なのだ。
しかし段夫人の場合は話は通じているようでどこか通じない。その上そのパワーと存在感は圧倒的で、日本古来の悪霊もたじたじである。
設定的には完全にギャグなのだが、その異質感がなんともいい感じで、その辺のクトゥルフ神話を使ってみただけという作品よりもよほどクトゥルフ神話らしいと化夢宇留仁は思うであった。

2004年3月。
めでたく5巻目も発売。
粒よりの面白さでした♪
前巻で 普通の人間サイズになった段先生の奥さんですが、それでもパワーは衰えず、この巻でも爆笑させてもらいました♪
「人の部下を味噌漬けにして返すな!」(笑)。

 

 


召還の蛮名 学園奇覯譚

★★槻城ゆう子/エンターブレイン
 ホビージャパン社から刊行されていたRPGマガジンに不定期連載されていたコミックの増補改訂版。
クトゥルフ神話関連の単語は山ほど出てくるが、神話にはほとんど触れず、魔術に重点を置いており、むしろオカルト漫画と言える内容になっている。
 ストーリーは主人公の女の子が高校で、普通科からいきなり神智科に編入になるが、実はそこが魔術師を育てるための学科であったという奇想天外なもの。
しかし全体的に暗示的な表現が多く、ギャグなんだかドラマなんだかホラーなんだかわけが分からない漫画になっている。
作者は分からない点も新たな知識を得た上で再読すれば発見することも多いだろうみたいな偉そうなことを書いているが、そもそも漫画は面 白いかどうかが最も大切な評価基準であることを考えれば、ピント外れも甚だしい。
唯一幕間マンガの「実在?創作?ネクロノミコンの正体」で、オカルトとクトゥルフ神話の関連をパロディとして実在の人物を登場させて描いているのは面 白かった。


仙術超攻殻オリオンORION

★士郎正宗/青心社
  なんだかゴチャゴチャした異世界で、ゴチャゴチャした魔法だか仙術だかを駆使して、九頭炉を召還したり神様が暴れたりする。
上記九頭炉は明らかにクトゥルフを意識しているが、別にクトゥルフ神話に関する話というわけではなく、仙術の支配する世界においての異なる力という描かれ方をしている。
それにしてもこの作者の作品はしんどい。読み直す気力もない(汗)。
でもドミニオンはけっこう好き(笑)。

 


KUROKO 黒衣 全4巻
   

★高橋葉介/秋田書店
 身につければ霊能力を発揮し、人から見えなくなる黒衣(くろこ)をまとった二人組が憑き物落としに活躍。
またその一人である真紅郎の妹は、1年前のある事件で屋敷から出られなくなっており、彼女を押さえるためにおばばが付きっきりになっていた。
その事件とは政界をも揺るがすスキャンダルと、恐るべき力を持った怪物に関わるものだった・・・。

 もはや日本を代表する怪奇コメディーコミックの大家となった葉介作品。
相変わらずのテンポのよさと、見事なキャラ立てで楽しませてくれる。
 しかし本作はどうやら打ち切りになったか、または契約更新されなかったようで、全4巻で終了。
勿論最後はちゃんと終わっていて、作者本人も特に文句のない終わり方だったようだが、だらだらと続いておればまた夢幻氏でも出てきたのではないかと思うと少し残念。
この書き方だと面白くないようなイメージだが、そんなことは全くなく、ノリノリの葉介ワールドを堪能できる。
とにかくすごいのはキャラクターの立ちようで、出てくるキャラクターほぼ全員が生き生きと描かれているのは見事の一言である。
作品として短命だったのは、多分主人公キャラが他のキャラに比べると弱いのと(それでもその辺のヘボ作品と比べたらよほどよくできている)、彼の妹にまつわる件が少々暗い影を落としすぎたせいではないかと思う。

 クトゥルフに関係するのは件の妹に憑いている怪物で、作者もはっきりと「ダンウィッチの影」をモデルにしたと言及しており、ラストの山場ではオリジナリティのある立派な旧支配者として活躍している(笑)。


学校怪談 全15巻
★高橋葉介/秋田書店平成7年8月15日初版

 学校を舞台にした怪奇短編シリーズで、5巻まではそれぞれが独立した話だが、6巻からはキャラクターが確定して怪奇&アクション&コメディのシリーズ物となる変わった構成になっている。
しかしどちらも面白いのは流石。
 6巻からの主役は霊能力を持った若い女教師九段九鬼子先生で、彼女は実は「夢幻紳士」の夢幻魔実也の子孫でもある。
この辺の世界のつながりも楽しい。

 クトゥルフに関係するのは、15巻でミスカトニック大学超常現象研究チームというのが話に出てくるのだが、それ以外にもクトゥルフ神話からイメージしたと思われる怪物などもちょこちょこ出てくる。
 現代日本を舞台としたシナリオのネタ本としても使えるかな?

20060516


影男”独裁者を撃て”
★高橋葉介「猟奇博士」より/朝日ソノラマ平成7年4月20日初版/388円

 独裁者ヨグ・ソトゥート4世の統治する某国に、影男が潜入した。彼の狙いは皇帝の持つ「ティンダロスの指輪」だった。
変装の名人である影男だが、皇帝に見破られて捕まってしまい・・・。
 冒頭はルパン三世風だが、捕まってからは意外な展開に。
しかしシリーズ物の第1話風の話なのに続きがないのが残念。

 クトゥルフ神話に関係するのは、上記の皇帝とその指輪の名称のみ。

 


混沌の島
★★★高橋葉介「怪談」より/朝日ソノラマ平成3年12月25日初版/922円

 裸の女が砂浜に打ち上げられている。女は生きており、彼女を見つけた男はテントに連れて行く。
彼女は男の別れた妻の若い頃にそっくりだった。
やがて男は、島の洞窟の奥にあるものを彼女に見せる。
それは混沌そのものだった・・・。
 完成度の高いクトゥルフ神話もの。アブホースかウボ・サトゥラか。
物語はソラリス風でもある。

 シナリオの発端部分の参考にもなるのではなかろうか。


戻る