ダンカン・マクベインからカール・スタンフォードへ
    スコットランド キャニッチ
    マクベイン荘
    ダンカン・マクベイン

親愛なるスタンフォード氏
 御挨拶と御祝いを申し上げます。
シャトレーヌ嬢から、貴殿の最近の成功についての助言と、貴殿が必要とされている物に関する情報とを承りました。
憂慮すべきことに、二人のアメリカ人が発掘作業を続けているため、小生が例の物を手に入れるには、もう少々お時間をいただきたいと存じます。
しかし例の物を一刻も早く手中にされたい貴殿のお気持ちは小生もよく承知しております。
小生の部下のうち二人をアメリカ人達の下で働かせていますので、間もなく彼らが片をつけてくれることでしょう。

 蛇人間に関する小生の研究は、実に満足すべき進展を示しており、あと一年ほどで完了する見込みです。
更に深く研究するためには、無名都市に行かねばなりません。しかし例の物を手中とするまではここにとどまるつもりです。

 先に貴殿からいただいた手紙の中で、シャトレーヌ嬢が「トゥーレの友愛団」の指導者達を改宗させる際には、小生も彼女と共にここにいる方が望ましいと書かれました。
小生は、今この時期にあのドイツ人達が、おそろしく険悪な関係にあるフランス人である彼女の言うことを聞くかどうか、非常な懸念を感じております。
彼女の代わりとして、ヘルムート・グロスマンにこの仕事を依頼してはどうでしょう。彼がこの200年間というものドイツに帰ったことがないのは承知しておりますが、貴殿に他に心当たりが無い限りは、小生は彼こそがこの仕事の適任者であると考えております。

 「東方の聖堂騎士団」の中には、我々が捜しているような人材はいないという貴殿の意見、小生もまったく同感です。
彼らにはまだ、大いなる真実に直面する準備が出来ていないのです。しかし彼らは真なる神々の熱心な信者であるということに変わりはないので、ドイツの我が同胞達は注意深く接触するべきでしょう。

 小生は「黄金の曙錬金術会」または「銀の星」について詳しくなく、貴殿に何ら忠告を差し上げることはできません。小生はロンドンの我が同胞達に貴殿の言葉を伝え、いずれ彼らの方から貴殿に連絡させるつもりでおります。
小生はウイリアム・シーブルック氏と話し合いましたが、上記二つの団体に関係し続けているアレスター・クロウリイ氏には、超自然的能力が備わっている模様で、我々もこの人物に接触を計ってみるべきかもしれません。

 スコット氏が貴殿の地域における計画を担当していることを聞き及びました。どうか彼によろしくお伝え下さい。小生は世界大戦の前以来、彼に会っていないのです。
おそらく来年には、我々は相まみえることが出来るでしょう。

 

敬具
ダンカン・マクベイン