Cthulhu リレー小説


みなさんはシナリオで神様を出したことがありますか?
僕はないです。
「探索者が神様と絶対に出会うシナリオ」のプロット、データ、背景情報なんかをリレー風にやってみませんか?
神様は既存でも、オリジナルでもいいですがチョクで見た時のSANロスは最低1d20以上は欲しいですね(笑
これがうまくいけば、クトゥルフ同人誌のネタにできそうなんで…

書き出しコメント・@2c氏


<起>
1926年、夏、ニューヨーク。探索者(学者系かジャーナリスト系がのぞましい)の元に電報が届く。打電主は以前ちょっとした事件で知りあったギャングスタである。
「非常に興味深い生物を鹵獲したので、アーカムまで来られたし。K.Y」
−とるものもとりあえず列車でアーカムに駆けつけた探索者は…

執筆・@2c氏



暮れ頃にアーカムに付き、迎えに来ていたギャングに車で案内されたのは、さびれた倉庫街の一画にある廃工場の2階だった。
妙に人の気配がして、スチームのような機械の動く音もしているところを見ると、建物のどこかで密造酒でも作っているのだろう。
それにしてもギャングが興味を抱く生物とは???
2階の奧にある窓のない部屋に、その生き物はいた。
一見それは人間だった。
人間と同じように2本の足で立っているし、体つきもそれらしい。しかもボロボロではあったが、元はシャツとズボンだったらしい服も着ていた。
それがふり返ったとき、それが確かに人間ではないことが分かった・・・。

執筆・化夢宇留仁



索者が目を覚ましたとき、まっさきに目に入ったのは廃工場の煤まみれの天井だった。
「よう、気が付いたかい?」
タバコをふかしながら探索者をのぞき込んだのは電報をよこしたK.Yことケネスだった。
「驚かすつもりじゃなかったんだがな」
彼が水差しから注いでくれたグラスを受け取るとき、
探索者は自分の手が震えているのに気が付いた。
一瞬悪夢のような怪物の姿が思い出される。
探索者はその残像を無理矢理払いのけ、ケネスに事の次第を問いただした。
「数日前ボストン沖でちょいとした取引をやらかしたんだがね、
その帰りに海に浮かんでたんだよ。
土左衛門かと思って引き上げてみたのさ。
それがあの怪物だった。ただまだ動けるとは思ってなかったよ」
探索者は気を取り直して、
もう一度あの怪物に相対する勇気を振り絞った。
「…そいつは無理だな。
…さっきも言った通り奴がまだ生きてるとは思っちゃいなかったんだ。
奴はあんたを驚かせた後…ここから逃げ出しちまったよ。
若いのに探させちゃいるんだが…遅いな」
その時、何の予告もなくドアが開いた。
ギャングの手下だろうと思った探索者達の予想に反し、
そこに立っていたのは小柄な老紳士だった。
メガネの奥のその瞳は、
この男がなみなみならぬ知性を秘めていることを想像させた…

執筆・マッドハッター氏


老紳士は炯々としたまなざしで探索者とケネスとを
一瞥したあと、名乗りも上げずにずかずかと入り込んで
来た。咄嗟のことに対応もできない二人である。
と、そのとき、老紳士は手にしたステッキを唐突に
振り上げるやいなや、ケネスをしたたかに打擲した。
狂人のごとき振るまいに一瞬ひるんだケネスだが、
素早く体勢を整えると素早く懐に手を伸ばした。黒い塊を
眼にして、慌ててその手をつかむ探索者。
「てめェ、何しやがんでえ!この爺…」
「『あれ』をどうした」
格の差、というやつだろうか。流石にチンピラとは違い、
ケネスはこの老人から受けるプレッシャーを如実に感じた。
「な、何のことだよ」
その瞬間、あたりは異様な臭いに包まれた。現代の我々ならば
明らかなオゾン臭を感じ取ったことだろう。
ちっ、と老紳士は踵を返して戸口に向かった。慌てて後を追う
探索者とケネス。
「お、おい…なんだよ、ありゃあ…」

執筆・@2c氏



人を追って建物の外に出た二人だったが、出た瞬間にまわりの空気が異常な変化を示していることに気づいた。
異臭が漂っていたのだ。
先刻の生臭いがどこか涼しさを感じるような匂いではなく、何日も放置された水が発するような、生々しさ故に生物の生存を許さないような異臭である。
しかもその匂いはすぐに漂うなどと言う生易しい状態ではなく、あたりの大気に充満するかのような強力な圧力を持ちはじめていた。
あわてて原因はなにかとあたりを見回してみると、老人が走り去る方向とは反対方向、倉庫が立ち並ぶ通りの突き当たりにある空のコンテナやゴミが積み上げてある広場の中に、異様な光景を目撃することになった。
 そこには一人の人間らしきはっきりしないシルエットが立っていた。
だがそれは目を凝らせばぼやけ、意識をそらすと人間に見えるというような曖昧なもので、具体的にどんな姿形をしているのかは判断できなかった。
ただそれが腕らしき部分をなんらかのリズムに乗せて動かしながらなんらかの旋律を唱えているような印象を受けた。
 そのシルエットがはっきりしないのにはもう一つ原因があった。
それの前に、巨大な空間の歪曲とでも言うべき現象が発生しており、視界を歪ませ、更にそれが現実味を帯びるにつれ、見えなくしていたのだ。
恐ろしい悪臭をまき散らしつつ、そこに現れようとしているものの形がはっきりしてくるにつれ、それには一対の翼らしきものがついているのが分かってきた。
それはおぞましい姿を現しつつ、その翼をゆっくりと羽ばたいていた。

 探索者とケネスは、しばらく老人を追うのも忘れて見とれていたが、やがて二人同時に息を呑み、顔を見合わせた。
これはとてつもなく異常な事態であり、どんな危険が迫っているのか想像もつかない。
不思議と工場の中に逃げ込もうという考えは浮かばなかった。
多分無意識に今新たにこの世界に現れようとしているものに対しては、建物の中に入ったくらいでは防御にならないと感じ取ったのであろう。
二人は老人が走り去った方向へ、全力疾走した。

 老人は歳に見合わない健脚ぶりで、なかなか追いつけなかったが、倉庫街を出たあたりに待たせていたらしい黒塗りのパッカードに乗り込もうとしているところで追いついた。
後ろを振り返ると、手前の倉庫でちょうど影になっているが、そこになにものかが大きな翼で羽ばたきながら接近している音が聞き取れ、すぐにさっきの悪臭も追いついてきた。
老人はあせって車のドアを閉めようとしていたが、二人は無理矢理それをこじ開け、中に転がり込んだ。
「おまえ達なんのつもりだ!?」
老人が激高するが、かまっていられない。
ケネスが叫んだ。
「運ちゃん!とばしてくれ!」

執筆・化夢宇留仁



転手は後部座席を一瞥するが、車を出そうとはしなかった。
探索者は後部座席の窓から顔を出し、すぐさま後ろを確認する。
かすかではあるが、半透明でおぼろげな姿の【なにか】が差し迫って来ていた。
『おい!まずいぞ、ケネス!追い掛けて来てる』
危機を感じ取ったのか、ケネスは口調を強めて、運転手にこう言った。
『いいから!早く出せ!』
だが、運転手は老紳士の顔を見るだけで、一向に車を出す気がない様子であった。
とうとうイラついたケネスが、
『早く車を出さねーか!コイツが見えねーのか!』
と言い、運転手にこれみをがしに6連発銃を見せ付けた。
運転手は『ヒッ!』と小声で怯えた声を出し、キーを回し始める。
たちまち、車は、けたたましいエンジン音を上げながら倉庫街を後にする事になる・・。
 
 探索者とケネスは呼吸を整えるのに必死で、車内に『ゼィゼィ・・、ハァハァ・・』と
荒い息が聞こえてくる。老紳士は、しばらく彼らが落ち着くのを待ち、そして口を開いた・・。
『全て、お前さんのせいじゃぞ!』
鋭い視線をケネスへ向けて言い放った。ケネスはその声に反応し、老紳士をチラっと見る。
『ルグ・アルタス! 人ならざる者を手に入れよって・・。』
老紳士の声色が変わり、と同時に彼の表情も暗く落ち込む・・。
探索者とケネスは後部座席のシートに深く寄りかかり、事態を把握せんが為、互いの顔を見合わせた。そして探索者が先に口を開く、
『あの怪物みたいなのは、一体なんだ?』
だが、探索者の質問をさえぎってケネスが割って入ってくる。
『おいおい。それよりあんたこそ、一体全体何者なんだ?
あの変なやつに、妙に詳しそうなそぶりじゃねーか?』
2人の視線が老紳士に向けられる。
『ワシか? わしは【ロイド】と言う者じゃよ・・。この界隈で古美術品を
収集している愛好家じゃ。』
ロイドと名乗った老紳士は、さも”ワシのことなど今はどうでも良いじゃろ”という感じで
彼らの方を見ずに、まるで独り言のようにつぶやいた。そして会話はさらに続く・・、
『お前さんたちが海から引きずり上げた者は、そもそも人間じゃった者だ・・。
【ブルベスの小瓶】なんぞに手を出したのが、あやつの人生の汚点だったのじゃよ・・。
いいか!お若いの。やつの様な【死にぞこない】になりたくなければ、今回の出来事には関わるな!』
淡々としゃべり終えると、ロイドは2人を睨みつけた。2人は、ただ呆然とするばかりで、
自分たちの身に、これから何が起きようとしてるのか、
皆目検討もつかずにいた・・、ただ1つの事柄については・・。

 車は倉庫街を完全に抜け、町の入り口まで来ていた。
ここから東に2キロほど車を飛ばすと、ロイドの屋敷があるという・・。
ほどなくしてケネスが口を開く、
『俺たちがじいさんの車に飛び込む前に得体の知れない化け物を見ちまったんだが、
あんたなら、何か知ってるのか?ありゃ、一体・・。』
探索者とケネスの表情に緊張が走る。これこそが、彼らが知りうるべき唯一の事柄であったから・・。
ロイドはその問いかけに、遠い目をしながら返答し始めた。
『アレか?・・ワシも詳しくは知らんのじゃが、クークン著作の【ル・シュギズル】に書かれている文献を参考にするならば、『不浄なる者、ン・カヰ(イ)』そのものじゃろうて・・。』
ロイドの顔がより一層、こわばる・・。 探索者がすかさず口を開く、
『悪魔か何かなのか?それとも邪教徒のまじないか何かなのか?』
探索者とケネスは今の今まで、自分たちを追ってきた【なにか】を思い返し、身震いする・・。 ロイドは2人を見つめながら静かな口調で話し始めた。
『フフ、そのような【まやかし物】とは訳が違うて・・。やつらは、蕃神どもじゃ・・。
この世に存在しては、ならぬ者ども。紅き血の山の住人で、先史代の支配者の末裔じゃよ・・。』

 彼らはひとまずロイド邸に向かうことになる・・。

執筆・ウルタールさん



を外れて数分もすると、背後のプレッシャーは少しずつ弱まっていった。正体不明の妖怪といえどもストレートシックスの馬力にはかなわないらしい。ケネスと探索者は大きく息をつき、何気なく視線が合って弱気な笑みを交わす。

あたりはまばらな木立ちから楡やブナが生い茂る森へと急激に変わり始めた。道はろくに舗装されておらず、昨日降った雨があちこちに小さな池を作っている。
車輪がぬかるみに落ち込み数回バウンドしたところで、前方に瀟洒な屋敷が見えてきた。このあたりでは珍しいゴシックがかった大邸宅で、張り出した破風の大窓がひときわ目に付く。
「あんたん家か?爺さん」
「ようこそ、我があばらやに」フン、と鼻を鳴らす老紳士。「歓迎しよう。不本意ながらな」
植え込みがぐるりを取り巻いており、かつてはワーズワースもかくやの庭園だったのだろうが、残念なことに枝葉が伸び放題でだいなしになっている。しかしながら掃除が行き届いているのと、最低限の剪定がなされているのとで、陰気な雰囲気からはどうにか免れていた。
侍従か誰かがエンジン音を聞きつけたのだろう。鉄の門扉は大きく開いている。前まで来ると老紳士はステッキで運転手の頭を小突き、パッカードを停止させた。いちいち横柄なそぶりだが、妙に堂に入った物腰である。世が世なら荘園領主とでも言ったおももちだろうか、と探索者は思った。
******************
数分が経過したが、邸内から誰も出てくる様子がない。ケネスはいらいらと舌打ちをしている。運転手は車窓からおろおろと邸内を伺った。
「おかしいな…アーノルドさんが出てこないなんて」
普段なら執事でも飛び出して来るか、或いはすでに待機しているのだろう。ロイド翁は何故か無言で邸宅を睨みつけている。
「ちょっと見てきます」
慌ててドアを開け運転手が走りだしたのと「馬鹿者、行くな!」というロイド翁の怒声が交差したその瞬間である。

執筆・@2c氏


なんだよ、爺さん、いきなり大声をあげて・・。』
不機嫌そうな顔つきでケネスはロイドを見る。
だが、ロイドがその声に反応する事もなく、屋敷の正面から、じっと二階の一番右奥の部屋の窓を睨みつけていた・・。
『何故じゃ!何故、あの部屋のカーテンが開いておる!!』
ロイドの叫びに一同、その部屋を見上げる・・。
『何か具合が悪いのか?ただの部屋にしか見えないが・・?』
行列の中央に立ち尽くすロイドを見て、探索者はこう言い放ち、すぐに右隣のケネスの顔を見た。ケネスも同じ事を思ったらしく、なんだかな?・・というジェスチャーで首を傾けた・・。
探索者の言うとおり、部屋の外観は一見して、それとマズい所は見当たらず、見上げると重厚かつ圧迫感を感じずにはいられないその立派な外観は黒い屋根にアメリカン・ゴシック様式の
端正な煉瓦造りの赤茶げた外壁と、光をより多く取り入れる為に作られた大きめのアーチ状の窓に、少し不釣合いな真っ赤なカーテンが備え付けてあるのみであった・・。
『アーノルドか!・・アーノルドの仕業なのか!!』
ロイドは、やっとの思いで喉から声を絞り出すと、全身がブルブルと震え出し、両手のこぶしをギュッと握り締め出した。両目は、カッと見開き、今にも目玉が飛び出さんとする状態である・・。
 ロイドの左側に居る運転手のマイクは、日頃から、あの右奥の部屋には何があっても近づくな・・と忠告されていたので、執事のアーノルドがヘマをやらかしたに違いないと決め込んだ。
しかしマイクは、実際の所あの部屋が何であるかは一切、聞かされてはおらず、ご主人に忠実な・・そして小心者な男でしかなかった・・。

 ほんの数分ではあったが、辺りは物音一つせずに静まりかえっていた。
その数分は不気味なほど、長く感じられたかもしれない・・。
ふいに、ギャー!!、という人の叫ぶ声がしたと思うとまさしく今、一同が見上げている部屋から聞こえてきた声であった。
『おい、どうなってるんだよ・・。』
ケネスがポツリとつぶやくと、おもむろに六連発銃に右手が伸びる。
探索者は生唾を飲み込み、二歩ほど後ずさりをし、身を守る何かを自分は持ってないのか、と自身の体を手探りし始める・・。運転手のマイクは、良く作りこまれた帽子を脱ぎ、事の成り行きを押し黙って見つめていた。ロイドはというと、なにやら悲痛な表情で部屋の窓を見つめ続け、こんな言葉が口からはっせられた・・。
『ジャ、・・ジャクソンが戻って来たのか・・』
それを言うなり、ロイド翁は何かに捕り憑かれた様に自宅のドアを滑るように入り込み、姿を消していった・・。
不意を突かれた3人ではあったが、その後を追うようにして順々に屋敷のトビラをくぐって行く。中に入るとまず目の前に大きなシャンデリアが3人を出迎え、その先に二階へと通ずる幅広な階段が顔をのぞかせている。
屋敷の中央に位置する、その大きな階段は左右の棟を行き来する為の連絡通路にもなりえる
立派な階段であった。正面から登りきった所に踊り場があり、そこから左右に分かれる為の
別階段が数段、用意されている造りとなっている。この立派な階段であれば、常時、2人ないし3人は同時に上り下りが出来るであろう階段幅が認められ、この屋敷の大きさと価値を十分満たすものであると推測される・・。
ロイドの姿は階段を登りきった所に見え、右手の廊下へと消えていった・・。
一方で、探索者たちも素早く後を追いながら、状況掌握のために言葉を交わす。
『どういう事なんだ?ジャクソンって誰なんだ、ケネス?』
探索者がケネスに問いかけるが、俺は知らん、と素っ気ない返事が返ってきただけであった。同じ質問をマイクにぶつけてみると、幸いに、マイクは自分が知る限りの情報を彼に話し始めた・・。
『ジャクソン様というお人は、ロイド様のご子息に当たるお方で、二週間前から行方知れずになられていたんです。執事のアーノルドをはじめ、何人かの使用人たちの話では、失踪する前の晩に先程の部屋に入られたそうです。そしてあらゆる伝手(つて)を頼って、ようやく見つけなさったのが、貴方たちが捕獲した人物だったんですよ・・。』
そこで、マイクは2人をチラっとみる・・。当然、ケネスと探索者の2人は唖然とした表情をし、お互いを見つめる。
『じゃあ、何か?あの土座右衛門みたいな怪物が爺さんの息子だってのか?』
ケネスは何とも言えぬ表情を浮かべてマイクに話しかけた。
マイクは、ええ・そうです、と言葉短かに返答をした。
『見た目の著しい変化では判別もつきませんが、失踪当時のお身なり、
そのままでしたので、だんな様はひと目でお分かりになられました。』

 そうこうしている内に、3人は階段を登りきり右手に曲がって屋敷の右側の棟に続く廊下の入り口にまで辿り着いていた・・。
そこには、ロイドが居た・・。いや、正確には廊下の床にヘタリ込んでいた。

なぜ・・??

その廊下の先に視線を走らせると、思いもよらぬ光景が飛び込んできた。廊下の突き当たり付近に天井からなにかが、ぶら下がってる様にも見える・・。
探索者たちは不安に駆られながら、よ〜く目をこらして見てみる。

 執事のアーノルドは手足を動かしている・・。
ピクピク、ピクピクと・・。

体の反射機能と呼ぶべき動きなのだろう・・。
彼、アーノルドは天井に頭部がまるごと突き刺さっており、首から上がまったく見えない状態であった。そして、もっとも嫌悪するものが、そのおびただしい出血量であった。滝のように下へ流れ落ち、
アーノルドの死体(もう、こう呼んでも差し支えないであろうその姿は、)の下には、血の池がすでに出来上がっていた・・。彼の着ている仕立ての良い上下のおそろいの黒の背広は、ほとんど真っ赤に自身の流した血で染まっていた・・。
 突如として、そのあまりにも異常な光景を目の当たりにした3人は、ほとんど同時と言ってよい程に叫び声をあげていた・・。
その声がロイドの耳に届いたかどうかは分からないが、あやつり人形のごとく、口をパクパクさせながら話始めた。
『全ては、ワシの責任なんじゃ、・・ああ、済まぬアーノルドよ・・。そのような姿になりはててしまうとは・・。
・・息子のジャクソンに興味本位で【ネクロノミコン】なんぞを見せたのが大きな過ちだったのじゃよ・・。わざわざ、遠きアフリカの地から持ち帰らせたワシの責任じゃ・・。そして、異界への鍵となる【ブルベスの小瓶】も・・。』
壮絶なる出来事に、しばしの沈黙が訪れる・・。

 だがこれで終わったワケでは無かった・・。瞬く間に廊下がヒヤっとし、例の一番奥の部屋の閉ざされたドアに霜(しも)が出来始めていた。
その勢いたるや、とても素早くアっという間にロイドの目の前までに白い霜が迫って来ていた。アーノルドの死体は凍りつき、屋敷の中だというのに、異常極まりない寒さに襲われた。その瞬間、ロイドはハっと目を覚まし
『違う!! ジャクソンじゃない!! あれは!、あれはー!!』
という、半ば半狂乱におちいりながら、叫び続けた・・。
そして、辺り一面にあの何とも言えぬ、
鼻をそむける強烈な異臭が漂いだす・・。
探索者とケネスは恐れおののいて、その場で立ち尽くすしか出来ずにいた・・。
そう、この感覚は、まさしく倉庫街で不意に出くわしてしまった【なにか】と同じ感覚だったからだ・・。

執筆・ウルタールさん



者かの見えざる手に掴まれ揺さぶられているかの様な激しい震えが、探索者とケネスの全身を走り抜ける。
歯の根は合わず、壊れたカスタネットの様にガチガチと音を立てていた。
(夏なのに、なんて寒さだ!)
しかし、額から伝わってきた汗が目に入った時、探索者は全身が冷たい汗でぐっしょり濡れていることに気が付いた。

違う。
これは寒気ではない。

これは恐怖だ。

あの奥の部屋から伝わってくる圧倒的な威圧感。
自らの存在そのものを否定する何者かの気配。
生態系の頂点に君臨する人類が忘れてしまっていた生物としての本能が、今すぐ逃げる事を命令していたが、恐怖で凍り付いた体はギアの外れた機械の様に微動もしなかった。

「旦那様!」
突然、運転手のマイクが手足をばたつかせながら、半ば這う様にロイド翁の元に走り出した。
「旦那様!旦那様!」
必死の形相で主の元に駆けつけ、庇う様にロイドに覆い被さる。

その時だった。
奥の部屋から広がる白い霜が、一斉にザワザワと動き始め、マイクに群がるように迫ってきた。
目を凝らして見れば、それは霜ではなく、細い糸の様な無数の触手の集合体であることが分かる。
白いカーテンはマイクにまとわりつき、その体を持ち上げた。
抗いながら主人の名を呼ぶマイクの声は、すぐに意味を持たない絶叫に変わった。
無数の糸の様な触手がマイクの皮膚を貫いて体内に侵入し始めたのだ。
蠢く触手がマイクの皮膚を軟体動物のように内側から波打たせ、やがてマイクは白目を剥き弱々しく呻くだけになった。

その時、突然乾いた破裂音が響き、探索者とケネスの間の空気を切り裂いた何かがマイクの額に命中した。
マイクの首は天を仰ぎ、反動で頭を垂れ、マイクはそのまま動かなくなる。

発砲音に我に返った探索者とケネスが振り返ると、大階段を隔てた向こう側の廊下にウィンチェスター’73を構えた一人の若い女が立っていた。
「お爺様、逃げて!…あなた達も!」
トリガーガードを引きながら彼女は叫ぶ。
半狂乱のロイドを両側から抱えながら、探索者とケネスが慌てて逃げ始めると、触手の群れが追ってきた。
探索者達は大階段で女と合流し、足を縺れさせながら出口に向かう。
彼女は、殿(しんがり)でライフルを発砲しながら威嚇してみせるが、押し寄せる白い波に小さな穴を開けるだけで、歯止めにはならない。
探索者達が玄関まで辿り着いた時、彼女が大階段の最後の段を踏み外した。
バランスを崩して倒れ込んだ彼女の上に、覆い被さるように押し寄せる白い触手の雪崩。
「ヴァネッサ!」
ロイド翁が叫び、探索者達が絶望したその時、ヴァネッサの目の前数インチの所で唐突に触手は動きを止めた。

***** ***** ***** ***** ***** *****

「化け物もおねむの時間。って事か?」
ケネスは、葉巻に火を付ける。
「私たちが考える眠りとは、随分違うものでしょうけど。」
美しい栗色の髪の乱れを直しながら、ヴァネッサは言った。

探索者とケネス、ロイド、ヴァネッサはパッカードの中にいた。
屋敷の外には生き残った使用人達が途方に暮れながら、主人の様子を窺っている。
「さて…そろそろ俺達にも分かるように事情を説明してはくれまいかね。」
「…そうね。ここまで巻き込んでしまったのだもの。あなた達には知る権利があるわね。」
「待て、ヴァネッサ。そもそも、こやつらがアレを見つけてしまったのが悪いのじゃから、説明なんぞしてやる義務は…」
「いいえ、悪いのはブルベスの小瓶を使ってしまったお父様と、小瓶とネクロノミコンを手に入れたお爺様よ。」
ヴァネッサはキッパリ言って、ロイドを睨んだ。
「…やれやれ、性格のきつさは母親似かのう…。」
「お爺様に似たのよ。」
そして、ヴァネッサは淡々と語り始めた…。

ロイド翁の息子・ジャクソンがブルベスの小瓶を使ったのは、15日前の事だった。
ロイド翁が手に入れた魔術書“ネクロノミコン”に魅入られたジャクソンは、本に記されているままに、新月の夜にブルベスの小瓶を開けて儀式を行ったのだ。
動機は分からない。
学者肌故の純粋な探求心か、生来の気の弱さ故に邪な何かに操られてしまったのか。
ともかく、儀式を済ませたジャクソンは“人ならざる者”になり、そのまま姿を消してしまった。
その時になって初めて、ロイドとヴァネッサは事態の深刻さに気付いた。
ジャクソンが行った儀式は、邪神を呼び出す儀式だったのだ。
儀式の行われた祭壇には空間の歪みが現れ、日に日に大きくなっていった。
ロイドとヴァネッサは、ジャクソンを探す為に方々尋ね歩いた末に、ようやくケネスの事を聞き今回の一件に至る訳である。

「新月の夜に行われた儀式は、15日後…満月の夜が明ける頃、この世界で成長した邪神と人ならざる者が合わさる事で完了するの。」
「…って事は。」ケネスが唾を飲み込む。
「そうよ。今日の夜が明ければ邪神が姿を現すわ。そうなったら、私たちに出来る事は一つもないの。」一息ついてヴァネッサは続ける。「でも、今ならまだ出来る事があるわ。…夜明けまでに、人ならざる者を見つけ出して殺すのよ。人ならざる者がいなくなれば、儀式は失敗して邪神は本来の世界に戻るはずよ。」
ヴァネッサにとって、人ならざる者を殺すという事は、父親を殺すという事だ。
探索者とケネスはその事に触れようと口を開きかけたが、幾夜も泣き明かしたであろう彼女の赤い瞳に気付き、何も言葉が出なかった。
ロイド翁は瞳を閉じ、力無い溜息を吐きながらシートに深く沈み込む。

二人は既に覚悟が出来ているのだ。
実の息子を殺す事の。
実の父親を殺す事の。

探索者とケネスは顔を見合わせ頷いた。
「乗りかかった船だ。手を貸すぜ、姉ちゃん。」

執筆・秋山氏



う日も暮れようかという頃、黒塗りのパッカードが、アーカムの外れの林の中に建っているプレハブ小屋の前で停まった。
用心している様子で降りてきたのは、ロイド、ヴァネッサ、ケネス、そして探索者である。
ロイド以外の3人はみな武器を持っており、ケネスに至っては途中で取ってきたトンプソンマシンガンを構えていた。
「あれが・・・そうなのか?」
不審そうに小屋を見るケネス。ロイド翁が静かな声で答えた。
「そうじゃ。ジャクソンが儀式の為に建てたのだ。ネクロノミコンに記されていたことを思えば、何が起こっても不思議ではなかったからの。」
「で、ほんとにその・・・ジャクソンさんはここに戻ってくるのか?」
「儀式を完成させるには、満月の夜明けに祭壇の前にいなくてはならない。戻ってくるはずじゃ。」
「それが分かってたんなら、わざわざ探さなくてもよかったんじゃねえの?」
「そうはいかなかった。あやつは正気を失っていて、なにをするか分からなかった。それに屋敷を襲った怪物を見たじゃろう。あれが儀式の直後にも襲ってきたのじゃ。あやつは傷つき、姿を消した。」
「あやつって・・・ジャクソンのことかい。」
ケネスはへの字口で足元の石を蹴った。
彼のようなギャングにとっても、ロイドとヴァネッサのように肉親への感情を押し殺すのは、理解できないことだった。

 小屋は丘の上に建っており、探索者が顔を巡らすと、少し離れて灰色の海が目に入った。
小屋の入り口の前まで来て、ヴァネッサの表情がくもった。
ドアに近寄ってゆくが、鍵を持った手が震えている。
彼女の視線に釣られてドアを見てみると、ドアノブは異様な形に変形し、半分外れてぶら下がっているような状態だった。
「もう来ているわ。」
彼女のつぶやきに、ロイドも小さく答えた。
「そのようじゃな・・・。」

 おそるおそる扉を開けたが、そこに怪物の姿は無かった。
更にそこには、簡単なテーブルとイス、あとは缶詰類やランタン、ロープなどがあるばかりで、祭壇らしき物も見あたらなかった。
しかし部屋の隅で大きな口を開けている引き上げ戸、そしてそこから続くポッカリと開いた地下への入り口が、それらがどこにあるのかを物語っていた。
「儀式は地下で行わなければならない。この下には洞窟が広がっておる。それをわしが研究中に偶然見つけたのだが、ジャクソンはそれを利用するのを思いついたわけじゃ。」
探索者は思う。この老人はなにが専門なんだ?

 用意してきたものと、部屋にあったランタンに火を点けて、梯子で地下へ降りてゆく。
降り立ったところは狭い部屋で、すぐ隣に扉があったが、それは開け放されていた。
扉の向こうは、一部壁土やレンガが組まれてはいるが、明らかに天然の洞窟の一部で、直径約10mの大まかな円形をしており、三方に他の洞窟へと続く穴が開いていた。
そしてその部屋の中央には小さな台座があり、紅い布がかけられていた。赤い布の中央には五芒星の中央に炎のようなものが描かれた印がある。どうやらこれが祭壇と言うことらしい。
しかしそれらは、この部屋に入って最初に注意を引きつけた物ではなかった。
一行が最初に眼を向け、背筋に冷たいものが走った原因になったそれは、台座の上の直径1mほどの「ゆがみ」だった。
それはまるでそこだけ気圧が異なっているように、または巨大なうごめくレンズが浮いているかのように見えた。
時たまそのゆがみの奥に、何かが動いているように見えるのは、探索者の気の迷いだろうか。
これこそが、ジャクソンの行った儀式によって発生した時空の裂け目あった。
「もうこんなに大きく・・・」
ヴァネッサの表情は悲痛だった。この裂け目がこのまま広がり続ければ、地上の小屋どころか、アーカム、果ては地球まで丸飲みにしかねないのだ。
しかし最後の儀式が行われれば邪神が呼び出され、この世は地獄と化す。
選択の道は一つ。最後の儀式までに「ルグ・アルタス」と呼ばれる、人ならざる者と化した父親を殺さなくてはならないのだ。
最後の儀式が行われずに夜が明ければ、この裂け目も消えるはずだった。

 これから夜明けまでこの地下洞窟で待機し、ジャクソンが現れるのを待つ。
ここからは見えないが、今頭上の空には満月が明るく輝いている筈である。
「あやつは洞窟の先のどこかに身を潜めている。最後の儀式が始まるその時まで。」
「それにしてもロイドさんよ。俺はあの・・・ルグ・なんたらを海で拾ったんだぜ。いったいどうやって海まで行ったんだ?」
ケネスの問いは、探索者も疑問に思っていたことだった。
「この洞窟は、最深部で地下湖に繋がっている。おそらくそれが海に通じていたのじゃろう。」
「よく溺れ死ななかったもんだな。」
ケネスの当然のセリフは、そこにいる全員が不安に感じていたことをはっきりと思い起こさせた。
怪物に襲われて傷を負い、地下湖から海に出て、何時間も水中に没していたのに生きていたジャクソン。
果たしてそんな怪物を殺すことが出来るのだろうか。
「そう言えばあの怪物・・・なんだっけン・カイとかいうやつ。あれはなんで襲ってくるんだ?」
それにあの怪物の背後にいた人影は?探索者もロイドの顔を覗き込んだ。
「わしにもよく分からん。おそらくブルペスの小瓶が解放された時に、新たな魔物を呼び寄せたのだろう。しかしル・シュギズルによれば・・・」
「よれば?」
「いや、なんでもない。」
ロイドは首を振り、黙り込んでしまった。
誰もその先は訪ねようとしなかった。ロイドは固く口を閉ざしているし、そもそもル・シュギズルとかいう本のことを語られても、ケネスと探索者には理解できるとは思えなかった。

 缶詰とパンで簡単な食事をとり、交代で休憩を取りながら、部屋に開いた3つの穴を見張る。
そのどれからジャクソンが出てくるのかは予想のしようもない。
 長い夜だった。
ヴァネッサが仮眠を取っている時、ケネスが小声でロイドに話しかけた。
「ロイドさんよ。そもそもはブルペスの小瓶とかいうのが開けられちまったのが始まりなんだよな。その小瓶はどこに行ったんだ?」
ロイドは眉を寄せ、ちらりとケネスの方を向いたが、ケネスのみならず探索者とも目が合い、すぐに視線をそらした。
「小瓶の中身はジャクソンに取り付いている。空の小瓶がどこに行ったかなど、覚えておらんよ。」
ケネスと探索者は顔を合わせた。この爺さんはなにかを隠している。
しばらくして、ケネスが言った。
「ほんとうに小瓶は空だったのか?」
「無論だ。」
そう答えたロイドだったが、二人は老人が一瞬身を固くしたのを見逃さなかった。
「爺さんうそついてるな?」
ケネスが立ち上がったが、彼がロイドに詰め寄る前に、3人ともが顔をこわばらせて動きが止まった。
それまでの静けさが破られ、近くでなにかの音がしたのだ。
その音は4人が入ってきた入り口の方から聞こえてきていた。
規則正しく体重がかかるようなきしむ音。少しずつ大きくなるそれは、梯子を誰かが下りている音に違いなかった。
息を飲むロイド。
ケネスはマシンガンを構え、探索者はヴァネッサを揺り起こした。ヴァネッサは素早く事態に気付き、ライフルを構えた。探索者もケネスに借りた45口径を抜いた。
ほんの数m先にある梯子の部屋につながる扉は閉まっていたが、すでに暗黒の波動とでも呼ぶしかない、オーラのようなものが漏れ出てきているように感じられた。
次の瞬間、扉のノブが回り、それが顔を出した。
それは怪物ではなかった。
背が高く、浅黒い肌をしたエジプト人風の黒髪の男で、黒いスーツを身につけた単なる人間の男にしか見えない。歳は30から35くらいだろうか。
しかしケネスのトンプソンを構える腕は震え、顔面は蒼白だった。
他の3人も同様である。
なぜか4人は、男が見たままの人間ではなく、恐るべき怪物、いや魔神とでも言うべき存在だと直感的に理解していたのだ。
また探索者は、廃工場の怪物の背後に立っていたのがこの男だというのもはっきりと思い出していた。
「起こしてしまったのなら、申し訳ない。」
男が発したのは、流暢な英語だった。
「こんな時間に失礼かとは思ったのだが、もうそろそろ約束の時間なのでね。」
「貴様は・・・何者だ!?蕃神・・・おまえがン・カイなのか!?」
ロイドの震える声に、男は眉を寄せた。
「ン・カイ?私はいくつもの名前で呼ばれているが、そんな名前は覚えがないな。いや、ン・カイという場所なら知っているが。」
「いずれにしろ紅き血の山の邪悪な住人じゃろう。なにをしに来た!?おまえなぞに用は無い!この場から早々に消え失せろ!」
「紅き血の山・・・聞き覚えがあるが、はて。なんだったか・・・。」
「そんなことはどうでもいい!ここから立ち去れ!」
男は微少を浮かべた。
「おまえに用がなくても、私にはあるのだ。まずは小瓶を出してもらおうか。」
顔を見合わすケネス、ロイド、探索者。
ヴァネッサは少し呆然として、次の瞬間にはロイドをにらみつけた。
「お爺様、まさかまだあれを・・・」
「まだ使い道があるかもしれん。無かったら儀式を止められない可能性もあるではないか。」
「うそ!お爺様はやっぱりル・シュギズルの記述を信じてたのね!」
「違う。そうじゃない。そうではないのだ。」
ケネスと探索者はなにがなにやら分からず、ぼけっとしていたが、突然黒い男が笑い声を上げたので驚いた。
「なるほど!そういうことか。ル・シュギズル!あれを読んだわけか。」
男は心からおかしそうに笑っていた。
「なにがおかしい!魔道士クークンが書いたル・シュギズルは恐るべき真実を記した魔道書じゃ!おまえのような魔神など、ル・シュギズルに書かれた呪文でひとひねりに出来るのじゃぞ!」
男は更にひとしきり笑ったあと、いきなり真顔に戻った。
「そろそろ夜が明ける。サービスタイムは終了だ。」
突然男の両腕が、着ていたスーツごと、恐るべき速度でのびたように見えた。
次の瞬間にはロイドの上着は引き裂かれ、彼自身は前のめりに倒れていた。
男の手には、いつの間にか破れたロイドの上着が握られている。
男はポケットから古びた陶器の小さな瓶を取り出すと、満足そうに笑みを浮かべた。
「うむ。やはり残っていたな。全て取り付いたにしては、力が弱いと思っていたのだ。」
そう言うなり、男は瓶の蓋を開け、残っていた奇妙な液体を飲み干してしまった。
「この瓶には、私の力を遮断する呪文がかけられていてね。蓋を開けてもらわないと見つけることが出来なかったのだよ。長い間探していたが、これであとは男に取り付いた分だけだな。」
いきなりヴァネッサのライフルが火を噴き、男は入ってきた扉の方に吹っ飛んだ。
それで催眠術にかかったような状態から目が覚めたケネスと探索者も、慌てて銃を乱射した。
男は雨のように全身に弾丸を受け、踊るようにして倒れた。
静寂が訪れた。
男はピクリとも動かない。
ロイドはなんとか立ち上がった。特に怪我は無いようである。
「むう・・・小瓶の中身を飲まれてしまうとは。」
「助かったぜ。ヴァネッサちゃんよ。あんたのおかげだ。」
ケネスのセリフに、彼女は大きくため息をついた。その目には涙が光っていた。
「もう・・・ダメだと思って・・・あの男・・・あんな怪物に狙われたら、もうダメだと思って・・・でも・・・でも、お父さんの顔が浮かんで。ここで私が諦めたら、お父さんもあんな姿のままで・・・」
その時、背後からくぐもった声が聞こえた。
「すまない。」
驚いて振り返ると、そこには前に探索者が見たときよりも更に人間らしさを減じた姿の「人ならざるもの」が立っていた。
服はわずかな下着程度のものが残っているだけで、それもボロボロである。肌は灰色で、目は巨大化して瞳の色は薄れ、全体的に黄色っぽくなっている。鼻はほとんど消え失せ、二つの穴が残っているだけだ。よだれをたらす口からは小さな鋭い歯が並んでいた。
ヴァネッサは息を飲み、言葉も出ないようだった。
「ジャクソン!正気に戻ったのか!」
ロイドが声を弾ませるが、怪物はゆっくりと首を振り、口をもごもごと動かして、聞き取りづらい言葉を発した。
「夢の中にいるようです。何度も意識が薄れ、気がついたらまったく知らない場所にいたりしました。今ももう一つのなんらかの意識が、私の意識を支配しようとしている。ここにやってきたのもその私の意志なのか、確信が持てない・・・」
「ジャクソン・・・わしはお前を信じておる。今こそもう一度決めるがいい。ネクロノミコンを信じるのか、ル・シュギズルを信じるのか。」
「なにを言っているの、お爺さま!」
叫んだのは彼女だったが、もちろんケネスと探索者も同じ事を思い浮かべていた。
「ネクロノミコンには、ブルペスの小瓶を開ければ封じ込められている邪神が復活し、この世は滅ぶと書かれている。ル・シュギズルには、復活するのは邪神ではなく、古代に全宇宙を支配していた善の心を持った神、旧神であり、太古の神々の戦争で邪神のほとんどを封印した存在だと書かれている。火の精クトゥグァをフォーマルハウトに、水の精クトゥルフを古代都市ルルイエに封印したのも旧神じゃ。それが復活すればこの世の邪悪と戦い、最後に地上の楽園を築くと書かれているのじゃ。」
「なんだそりゃ、まったく逆じゃねえか。」
「その通り。どちらが真実なのかは、実際にやってみないとこには分からん。しかしジャクソンはル・シュギズルを信じ、儀式を行ったのじゃ。」
「その結果がこれか?どう見たって・・・その・・・」
途中でヴァネッサのことを思い出し、口ごもるケネス。
「結果はまだ分からん。儀式が完了するのは夜明けにジャクソンがこの裂け目に飛び込んだ時じゃ。」
「やめてお父様!例えル・シュギズルが正しくても、お父様は死んでしまうわ!それに私は旧神なんて信じられない。そんなものに頼るのは間違ってる!」
その時ジャクソンだったものが、黄色い大きな目を更に見開き、ヴァネッサの肩越しに入り口の方を凝視した。
思わず4人が振り向くと、そこにはあり得ない光景が。
蜂の巣になって倒れた男が起き上がろうとしていたのだ。
しかし誰も驚きの声を上げようとはしなかった。男が現れたときに感じた直感は、それが銃で殺せるようなものではないと告げていたのだ。
男はつぶやいていた。
「物事が予定通りに進むのは楽しいことだ。しかし予定外の展開になるのも、実に楽しいことだ。それにしてもせっかく飲んだパワーをこんなことで使ってしまうとは・・・」
「なにを言ってやがる。またこれを喰らいてえのか!」
そう怒鳴りながらトンプソンを向けるケネスだが、その目には不安だけが浮かんでいた。
男はケネスは無視して、「人ならざるもの」に顔を向けた。
「ジャクソンくん。考え直したまえ。ル・シュギズルに書かれていることはでたらめなのだ。」
「なにを言う!ル・シュギズルは魔道士クークンの・・・」
ロイドの言葉を遮ったのは、ジャクソンだった。
「私は心を決めた。お前の言うことは本当かもしれない。しかしなにより確実なのは、おまえが邪悪な存在だということだ。おまえが考え直せと言うのなら、私が選ぶのはその反対だ。」
その声に秘められた決意に、慌てて4人が振り返ったとき、ジャクソンは時空の裂け目に飛び込んでいた。
「お父様、やめて!!!」
ヴァネッサの悲痛な声も、もはや完全に裂け目の中に入り込んで姿を消してしまったジャクソンには届いていないだろう。
「やれやれ・・・入ってしまったか。ちょうど夜明けだ。これで儀式完了と言うわけだな。」
男の声に3人が振り返ると、男はすでに壁に寄りかかるように立ち上がっていた。
「お嬢さんには私の術が効きにくいようだ。どうやら今、裂け目に飛び込んだ男が施した防護呪文のようだな。私が放った死の糸が届かなかったのもそのせいか。」
「貴様、やはり貴様がアーノルドを・・・」
ロイドが歯を食いしばり、男をにらみつける。
「そんなことより面白い話を聞かせてやろう。魔道士クークンと言ったな。あの男がなぜ魔道士と呼ばれるようになったか?それは私が少しだけ呪文を教えたやったからだ。」
「なに?」
ロイドの表情が凍り付いた。
「そしてクークンは魔道書ル・シュギズルを書いた。私の言葉にしたがってな。」
4人は不吉な予感に身を震わした。
またロイドとヴァネッサは、ル・シュギズルが千年以上前に書かれた本であることを知っており、同時に目の前にいる男のセリフが嘘ではないと直感的に理解し、慄然とするのだった。
「ブルペスの小瓶は、蓋が開かないと私にも見つけるのは難しい。そこでエサを蒔くことにしたわけだ。蓋を開けたくなるような内容の、魔道書という形でね。」
「馬鹿な・・・そんな馬鹿な・・・」
ロイドはその場に膝をつき、身体を震わせていた。
この男の言うことが本当なら、ロイドは自分の息子を邪神の復活のために・・・。
「しかし私にも誤算があった。まさか儀式終了まで生贄を捕まえることが出来ないとは。」
「よく・・・分からねえ。おめえは邪神とやらの復活が目的なんじゃねえのか?」
ケネスのセリフに、男は少し驚いたような顔をした。
「なるほど。人間の視点というのはいつでも面白いものだ。ちっぽけな視界しか無いというのに、見えているものがこの世の全てだと思いこんでいるのだからな。」
「なにを!」
ケネスには男のセリフの意味が分かなかったが、ギャングの性質故か、馬鹿にされたということだけはよく分かっていた。
「おまえ達の言う邪神というのは、おまえ達のちっぽけな命を踏みつぶしても気づきもしないような存在だ。その存在同士の関係が、人間ごときにどうして理解できよう?」
「つまり復活するものは、我々人間にとっても、そしてお前にとっても敵と言うことか。」
ロイドのセリフに、男は少し笑みを浮かべただけで答えようとはしなかった。
そして裂け目に目を向けた。
「そろそろのようだ。私も準備にかかろう。」
4人が再び振り返ると、裂け目は10cmほどにまで縮んでいたが、そこから空間にひび割れのようなものが広がりつつあり、中には赤い光が発生し、どんどん強くなっていた。
なにかが生まれ出ようとしているのだ。
「いかん!ここから離れるのじゃ!」
ロイドの声で我に返った3人は、慌てて入り口の方へ走った。
その脇で、黒い男も変化しようとしていた。服が溶け込むように身体に吸収されてゆき、全体的に青黒い色になって、少しずつ身体が大きくなっている。
「な、なんだこいつ!」
ケネスが驚きの声を上げる。
「かまうな!死にたくなかったら早く上がれ!」

 ロイドが引っ張り上げられ、なんとか全員が小屋の外に出た。
あたりは真っ赤な光に染め上げられ、東の空には太陽が顔を出そうとしていた。
その直後、轟音と共に地割れがいくつも走り、小屋が建っている場所全体が盛り上がった。
慌てて逃げる4人の背後で、小屋はバラバラになり、10mもあろうかという、太くて真っ赤な触手が現れた。
呆然とする4人の目の前で、触手はうごめき、更にはその下の、ヘドロのような色の身体が現れつつあった。
すっかり姿を現したそれは、3本足で人間じみた両手があり、しかし頭の部分には巨大な触手だけがそそり立つ、全身が粘液に包まれた怪物だった。
朝日を浴びてそそり立つ20m近いそれは、まさに悪夢の具現化であり、この世に存在してはならないものだった。
 4人は恐怖と絶望のあまり絶叫した。
ケネスは絶叫しながらトンプソンを乱射していたが、弾が無くなってもその動作は変わらず、やがては絶叫が笑い声に変わっていた。
 ロイドとヴァネッサはある程度予想していたからか、まだ正気を保っていたが、その絶望のあまり続く絶叫と、流れ落ちる涙は止まらなかった。
 探索者はその場で失禁し、彼自身はそんなことには気づきもせず、空の45口径の引き金を引きながらその怪物に突っ込んでいった。
その顔はよだれと涙でぐちゃぐちゃだったが、なぜか顔には至福の表情が浮かんでいた。
彼はそのまま倒壊した小屋の屋根に登ってゆき、なにかをわめきちらしながら怪物に飛びついた。
 怪物は自分の脚に飛びついた探索者に気付いたのか、鋭く長いかぎ爪のついた3本指の腕でつまみ上げた。
探索者の銃がぽとりと落ちてきた。
探索者を顔らしき触手の部分まで持ち上げた怪物は、ほんの数秒指先のものを見つめていたが、すぐに興味が失せたらしく、そのままぽいと放り投げた。
探索者は飛んでゆき、視界から消えた。
 いきなりあらたな地響きが始まった。
怪物はそれに反応し、3本の脚を器用に使って数歩後ずさった。
小屋があったところには、怪物が抜け出た大きな穴がポッカリと口を開けていたが、その穴から赤い光が上がってきていた。
それはやがて巨大な人の形となり、光は赤から白へと変化し、最終的には片腕を天に向かって突きだした体勢の、銀色の巨人となっていた。
巨大な楕円形の目は黄色く光りを放ち、銀色の全身には炎のような赤い模様が見て取れた。
巨人は身体を一揺すりした後、怪物に向き直り、東洋の空手のような構えを取って、意味不明の叫び声をあげた。
「でゅわっ」
 地上では笑い疲れたケネスは尻餅をついてへたり込み、もはや1人のギャング風情にはどうにもならなくなった事態を呆然と見つめていた。
 ヴァネッサも気が遠くなりそうなのをこらえ、銀色の巨人を見つめていた。
「あれが・・・旧神・・・ルグ・アルタス・・・お父様・・・」
ヴァネッサの肩を抱き、ロイドは燃えるような目で巨人を見つめていた。
「ル・シュギズルがやつの書かせたでたらめだとしても、まだ旧神が邪悪なものと決まったわけではない。しかも旧神と同化したジャクソンの意識が残っている可能性もある。とにかく今は、あの怪物を倒してくれるのを祈るしかあるまい。」
 朝日を浴びて対峙する怪物と巨人。20m近い彼らの身体は、回りの林からも大きく突き出ていた。
「でゅっ」
かけ声と共に巨人が構えを変える。
すると怪物は両手を肩あたりまで上げ、不吉な笑い声のような声を発した。
「ふぉっふぉっっふぉっふぉっふぉっふぉっ」
「でゅわっ」
痺れを切らしたのか、巨人が怪物に駆け寄った。
すかさず怪物が真っ赤な触手を伸ばしたが、それを左腕で掴む巨人。
そのまま怪物を引きよせるようにして、右手の人間そっくりの指をまっすぐ伸ばし、怪物の肩に手刀を喰らわせた。
怪物は怪鳥のような悲鳴をあげた。
その衝撃に怪物は3本の脚を乱れさせ、膝らしき部分が地面につく。
その地響きは、戦いを見つめている3人の身体をも揺らす程だった。
たまらず怪物は左右の腕のかぎ爪を、巨人の腹部に突き立てようとしたが、巨人はすばやく後方に飛んでかわした。
怪物が体勢を立て直そうとしている間に、巨人は両腕を左右に広げた。
巨人の身体全体が光を発し、やがてその両腕に集まってゆく。
怪物がようやく巨人に向き直ったとき、巨人が胸の前で両腕を交差させた。
激しいスパークが発生し、目にも留まらぬ速さで光の束がのび、怪物の胸に突き刺さった。
光の束は怪物の身体を貫通し、そのまま夜明けの空彼方へ飛び去った。
傷口から煙の漂う大きな穴が胸に開いた怪物は、しばらく動かなかったが、身体が揺らいだかと思うと、前のめりに倒れた。
「やったか!」
「お父様・・・すごい・・・」
意気上がる二人だが、すぐにその笑顔は凍り付いた。
倒れた怪物が再び起き上がろうとしていたのだ。
「まだ生きておるのか。なんという化け物・・・ジャクソン!とどめじゃ!」
老人の声が聞こえたように、巨人は再び両腕を左右に広げた。
再び巨人の身体が光に包まれる。
しかしロイドは気付いた。光がさっきよりも弱い。
ロイドは不吉な予感に眉を寄せた。
怪物が立ち上がったとき、巨人の腕が交差されたが、スパークだけで光の束は発生しない。
そればかりか、巨人は身体の力がぬけたように膝をついた。
「しまった・・・やはりそうだったか。ブルペスの小瓶の残りのパワーも同化できなかった旧神は、地球上で行動出来るのは3分が限界なのだ!」
「ええ!?じゃあお父様は!」
ロイドの言葉に衝撃を受けるヴァネッサだが、どうしようもない。
 怪物はゆっくりと巨人に近寄ると、その鋭いかぎ爪を振り下ろした。
成す術もなく切り刻まれてゆく巨人。
そして怪物の頭部の触手が巨人に巻き付く。
苦しみもがく巨人だが、もうその身体に触手をはねのけるだけのパワーは残っていなかった。
触手が離れると、巨人は力無く倒れた。
怪物は少し距離を置くと、触手と両腕を開いた。
全身が光り始め、やがて触手と両腕に集まってゆく。
「ま、まさか・・・!」
ロイドはそう叫ぶと、いきなり走り出した。
「お爺様!だめよ!」
止めようとしたヴァネッサだが、彼女の手は空を掴んだ。
老人は流れる涙を拭くことも忘れ、巨人へと走っていた。
「ジャクソン!わしが!わしがあんなものを見つけたばかりに!ジャクソン!諦めるなジャクソン!わしの命を賭けた呪文で、お前を守ってみせる!」
老人は巨人のそばに走り寄り、もうあと数歩で巨人にたどり着くというところで、ちょうど落ちていた探索者の落とした銃につまずいて倒れた。
ちょうど地面に出ていた大きな石に激突した彼の頭蓋は、もろくも砕け散ったのだった。
「お爺様!」
その直後、怪物の触手と両腕が交差され、巨人のそれよりも遙かに強いスパークが走り、光の束が巨人に突き刺さった。
一瞬の閃光の後、大爆発が起こった。

 ヴァネッサが気がつくと、彼女はケネスに抱きかかえられていた。
「目が覚めたかい。」
あわてて彼女が見回すと、辺りは強力なハリケーンが通り過ぎたあとのようで、小屋の跡形もなく、怪物が出てきた穴も土砂でふさがっていた。
怪物の姿も、もちろん巨人とロイドの姿も、そして探索者の姿もない。
ケネスも傷を負い、服もボロボロで、額からは血を流していたが、その顔には安心したような笑顔が浮かんでいた。
「あの爆発で生き残った俺たちは運がいい。それにあの怪物も、あのダメージじゃあしばらくはどこかで大人しくしてるだろう。あいつの用はすんだみたいだしな。」
「でも・・・お父様と・・・お爺様は・・・」
「あんたの父さんと爺さんは、あんたと、この世界を守るために精一杯戦ったんだ。こうやって俺たちが生きていられるのはあの二人のおかげだよ。」
「そうね・・・二人は満足してるわよね・・・」
そう言って涙を流すヴァネッサ。
その時遠くから誰かの声が聞こえたような気がした。
二人は顔を見合わせ、声が聞こえたような気がする方向を見る。
「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!」
早朝の白い光を浴びて、片手を大きく振りながら林の奥から走ってくるのは探索者である。
「探索者!生きてたのか!」
息を切らせて走ってきた探索者は、目を輝かせて二人と抱き合った。
「目が覚めたら木の枝の上で驚いたよ。ちょうど枝が重なっているところに落ちて助かったらしい。」
「こいつぅ、悪運の強い奴だぜ!」
「ほんとに、あなたはあの怪物よりも不死身だわ!」
3人の明るい笑い声が、朝の清々しい空気の中に響き渡った。

完(笑)。

執筆・化夢宇留仁


化夢宇留仁あとがき

 リレー小説&リレープロット掲示板で最初に始まったストーリーなのですが、完成までは長い時間がかかりました。
その理由の一つは、リレーでシナリオのプロットというのが、根本的にうまくいかないというのがあるように感じました。
結局内容はすぐに中途半端な小説になりました。
更に話が進むに連れ、情報量が増すばかりで話がまとまりようがないような状態となり、長い間ほったらかしになっていました。
しかしこの度秋山氏が続きを執筆されたのを受け、このチャンスに終わらせようと、即日化夢宇留仁が最終話を書きました。
最後は滅茶苦茶なパロディになっていますが、これは化夢宇留仁の悪ふざけであり、それまでのぐだぐだ展開のストレスが吹き出したのかもしれません。
オチは他に2つほど考えたのですが、迷わず一番滅茶苦茶な本番のオチを選びました(笑)。

※最後に、実は最終話は大きな見落としがあります。
それはロイド邸のあかずの間の顛末で、すっかりその存在を忘れていたのです。
秋山氏はそこに祭壇があるつもりで執筆されたのだと思うのですが、化夢宇留仁はなぜか舞台がニューヨークだと勘違いしており、いくらなんでもニューヨークの民家近くで巨大怪獣と巨人が戦うのはまずいだろうと思い、街外れの林に舞台を移したのです。
これは完全な化夢宇留仁のミスです。

更に大きな見落としが発覚(汗)。
最終話は日が暮れる頃に始まっていますが、その前までの展開ですでに日が暮れていました。
申し訳なし。

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