ファミコン必勝本 ファミコンゲームブック

 JICC出版局から出ていたシリーズ。やっぱり新書版。
しかしこっちは見るからに子供向けの装幀で、パッと見には攻略本としか思えない。
内容はタイトル通りファミコンを元にしたゲームブックだが、何冊くらい出てたのか、定かではない。
とりあえず見るからにつまらなさそうなのだが(笑)、意外に悪くないかも・・・。


スーパースターフォース
ゴーデスの復活

JICC出版局/1987年4月6日初版
井上尚美/ベンチャープロジェクト
パラグラフ数 480

 シューティングとアクションアドベンチャー(?)がミックスされた奇妙なコンピュータゲームとしてデビューした「スーパースターフォース」は、アドベンチャー面の極悪難易度とエンディングの理不尽さで一部で有名なゲームである。
とか言っている化夢宇留仁はその後継シューティングの「スーパースターソルジャー」しかやったことがないのだが(汗)。
そんなゲームのゲームブック化と言われても、いったいどんな内容になっているのか想像もつかないが、とりあえず覚えなければいけない数値が少ないので電車でもプレイ可能ということで、通勤中にプレイしてみた。
その結果・・・・・・・・・・・・
なんたることか、これは超名作である(汗)。
下記の「リンクの冒険」も面白かったので、同じ作者と言うことである程度期待もしていたのだが、それでも面白い!

 主人公は1999年(未来である/汗)のパソコン少年。彼がネットワークゲームに使ったハッキングプログラムが、偶然ゴーデスを封印していたプログラムを解除してしまい、ゴーデスが復活してしまった。
ゴーデスは時の秘石を奪ってそれを分断し、過去の6つの世界に改変を行った。
このままだと現在の世界は消えて無くなってしまう。
時の監視者ノルムにそれを告げられ、時の秘石を集める勇者となる主人公だが・・・・。
 てな感じで、まあいかにもな導入なのだが、この後の冒険が素晴らしいテンポで、グイグイ引き込まれる。
基本的には6つの世界を回ってゴーデスの陰謀をうち砕き、時の秘石を集めてゆくのだが、舞台が分けられているだけにそれぞれのシチュエーションは短い。
しかしそれは物足りなさを感じさせるどころか、絶妙なテンポを生んでいる。
 またサブキャラクターがいい。
ゲームブックでサブキャラクターがいいというのも変わっているが、本作で活躍するのはコンピュータのダーナと、時の監視者ノルム。
ダーナはタイミングよく無味乾燥ぽいけど実は親切な分析結果を聞かせてくれるし、 ノルムはポイントポイントでいきなり現れてはアドバイスをしてくれる。
このサブキャラはほんとに良くできていて、基本的にひとりぼっちで世界に立ち向かわなければならないゲームブックの中で、世界に存在感を与えるのと、主人公と世界の距離を縮める効果も挙げているのだ。
 6つの世界の冒険は、それぞれ歴史的事実に準じてはいるのだが、あくまでドラマ性と主人公の視点を重視しており、データ偏重主義に一切陥っていないのはまさにプロの仕事。
 元のゲームの設定を活かした単純明快なシステムもいい。
主人公は100のTE(タイムエネルギー)を持っている。
ダメージを受けるとこれが減ってゆくのだが、時の秘石の欠片を見つける毎に100に戻る。これがまた絶妙なバランスで、ゲームになっているのだ。
 基本的に設定の曖昧なシューティングゲームのゲームブック化という企画自体どうかと思っていた化夢宇留仁だが、逆にその曖昧さを活かして新鮮な冒険を描くことも出来るのだと思い知らされた。
 ラストには更に仕掛けが用意されており、これまたいやがおうにも盛り上がる設定。
いや〜、ほんとに表紙からは想像の出来ない完成度の高い作品である。
こんなの子供がやったら夢中になって本から引き離せなくなるぞ。
38のおっさんである化夢宇留仁も少しやばかった(笑)。
それにしても著者の井上尚美さん、言語学者らしいのだが、ほんとただ者ではないよ(汗)。

追記
一箇所明らかにパラグラフの行き先が入れ替わっているところがあったので、書いておく。
119番。
ここで「滝をのぼってみる」なら368、「ドームのふちにそって一周してみる」なら204に行くように指定されているが、これは逆。
滝を登るなら204で、ドームを回るなら368である。

20070706


リンクの冒険
暗黒トライフォース伝承

JICC出版局/1987年5月10日初版
井上尚美/RECCA社
パラグラフ数 184

 デスマウンテンに不気味な影が。
モンスターが出没するようになり、ゼルダ姫は原因不明の眠りの病に。
魔王ガノンが蘇ったのに違いない。
再び立ち上がるリンクだが、真実はそんな単純なものではなかった・・・。

 ルールシステムは無し。パラグラフ数も少なく、電車の中でやるのにもってこいだと、通勤中にプレイ。まあ子供だましの内容は覚悟で・・・。
と、思ったらこれがよく出来ていた!
上記の通りシステムが存在しないので、要するにパラグラフ小説なのだが、まず文章が癖が無くて実に読みやすく、また基本をちゃんと押さえた丁寧な書かれ方なので、自然にリンクに感情移入できる。
これだけでパラグラフ小説としては成功したも同然なのだが、その上に魔法がうまい。
ルールシステムが無いのにどうして魔法が楽しめるのかと言うと、本書でリンクが使う魔法は「動詞」魔法なのだ。
魔法を手に入れた時点では、動詞は単なる動詞である。
例えば「みたす」「かえす」「とかす」。
しかし状況に応じて正しい動詞を選べば、その動詞の通りの結果となって魔法が発動するのだ。
これは単純ながらゲームブックの特徴を実にうまく活かしている。
まず文章であること。ゲームブックは文章で構成されるのだから相性がいいのは当然。
選択肢として並べれば、それだけでゲームとして通用すること。この点ではソーサリー!の魔法システムにも迫る見事なアイデアである。
ソーサリー!と同じように出てきていない動詞も並べれば(本書ではそこまでやっていないが)、冗談抜きで遜色のない魔法を楽しむことが出来る。
見るからに子供だましの雰囲気漂うこの装幀に、こんなグッドな内容が隠されていようとは。
ゲームブックは奥が深いですな(笑)。
 また細かいことだが、本書は各パラグラフ番号の下に、そのパラグラフはどのパラグラフから来たのかも書かれている。
対象が低年齢ということを意識した心遣いである。
ほんとにいい仕事してます(笑)。
 ちなみに化夢宇留仁は会社への行きの電車でラスボス近くまでは行ったのだが、惜しくもゲームオーバー。
帰りにはクリアした。
最初のゲームオーバーだが、実はずいぶん始めの方の選択ですでに決まっていた。
またもう一つ似たような、そこで選び間違えると後々まで進んでもゲームオーバーしか待っていないというイベントがある。
普通これは腹立たしいものだが、本書の場合はその選択肢の内容が工夫してあって、ゲームオーバーになっても納得できるようにしてあったのも感心した。
ほんとによく出来ている。

あ、そうそう。表紙イラストは出渕裕氏。
色々やってたんですな(笑)。

20070625



NEXT

BACK