化夢宇留仁観察日記
第三回

化夢くんの幸運

もう二ヶ月も前のことになろうか。
これは化夢君がまだ引っ越し先も決まっていなかった頃の出来事である。

仕事を終えた私は、もう10年以上も居を構えていようかという、藤井寺への帰路についていた。
今日は早めに帰れたので、ビールでも(たっぷり)飲もう、などと考えていた矢先、乗換駅で呼び止める者が。
「ちぃーーすっ!」
こういう体育会系の挨拶をする人物は私のまわりにはあまりいない。はたしてその人物は地神氏(化夢君と私の大学の後輩。ものすごく緻密かつ重厚なイラストの描ける人。詳しくは掲示板または地神氏のHP STUDIO虎影群参照のこと)であった。
地「仕事帰りっすか?」
カードマンの仕事をしている彼は見事なパンダ焼けの顔で語りかけてくる。
マ「ああ、地神氏も今帰り?」
世間話をしつつ、地神氏が乗り込む電車に私も乗り込む。
なんやかやと近況報告がてら話をしているうちに、話は化夢君の引っ越しのコトに。
地「化夢さんは引っ越し先まだ決まらないんすか?」
実は地神氏と出会ったその日の数日前に彼は天王寺で部屋探しをしていたのだ。私もつきあっていたのだが、お目当ての不動産屋は定休日。結局ぶらぶら歩き回ったあげくにやっとみつけた不動産屋で物件を一つだけみせてもらい、それも結局気に入らず、あとは居酒屋で飲んでかえったのだった。
マ「まだみたいだけどねぇ」
地神氏は私ほど化夢君の引っ越しの事情に通じているわけではなかったらしい。今居るところは大家の都合で出ていかなければならなくなったこと、敷金は敷き引き無しで全額返ってくること、引っ越し手当も大家から出たらしいこと、等を話すと、
地「いやー、化夢さんは昔からそういうところでは運がいいですよねぇ」
とのこと。
そういえばそうかもしれない。
部屋探しにつきあった日もそうだった。居酒屋で飲んでいるとき、最初行こうと思っていた不動産屋のパンフレットを化夢君が広げて見始めた。と、隣で飲んでいた男性が「お兄ちゃん達、その不動産屋はやめた方がいいよ」と声をかけてきたのだ。 なんでも広告の誇張、誇大表現が頻繁にあるところらしく、近々役所の方から営業停止処分を受けるだろうとのこと。話をしていた感じではどうもその件で内偵している調査会社の人のような印象を受けた。
ではその日最初にその不動産屋に行かなかった化夢君は幸運といえるのかもしれない。なにがなんでもはやく見つけないと気持ちが落ち着かないと言った風情だったので、強引に勧められたら「もうなんでもいいやーー」と決めてしまいかねなかった。 そして後で後悔することになったかもしれない。

居酒屋での出会いと言えばMAC教室の件もそうである。A氏(第一回参照。某短大の助教授先生。MAC愛好者。酔いつぶれると二人がかりでないと解放できないらしい/笑)との出会いも偶然といえば偶然である。
この時点(マッドハッター氏が地神氏と話している時点/注・化)では化夢君はあまり人には話していなかったようだが、フリーウェアからシェアウェア(要するにタダのお手伝いから給料がもらえる)になる話は既に決まっていた。
さらにさかのぼって考えれば、化夢君がMACを使うようになったのはPSソフト「スタジオP」(グラフィック&音楽作成ソフト。壺も作れる)の作品公募で賞を取ったコトによる副賞としてパフォーマをもらったのがきっかけだった。
化夢君自身がMACを選択したわけではないのだ。周りほとんどがDOS/V機を使っている中でパソコンを買う選択があったときおそらく化夢君とてDOS/V機を買っただろう。おそらく翼氏(化夢君と私の大学の先輩。でも歳は私の方が上(笑)現在ウルティマ世界住人)あたりが強引に・・・・そう考えるとこれまた化夢君の幸運と言えはしまいか?
そういえばあのパフォーマをもらった作品には私も含めて数名の人間の協力があったはず。じゃあのパフォーマに関しては1%ぐらいは私も権利を主張してもいいのではなかろうーか・・・・
などととりとめもないことがつらつらと頭の中をよぎっていく・・・・
地「ところでマッドさんこの電車でいいんですか?」
私の物思いを断ち切らせたのは地神氏の一言だった。みれば電車は藤井寺を通り過ぎようとしている。
地「これ急行ですよ」
マ「・・・・」
地神氏と私は同じ路線だが、私の方が早く降りる駅なのだ。そして何となく地神氏につられて乗ったこの電車は藤井寺には停まらない。
しようがないので地神氏とは別れ、次の停車駅でおり折り返すことに。
藤井寺駅で降りたときには結局いつもと変わらない時間になっていた。せっかく早く帰れると思っていたのになぁ・・・・
「ども、おつかれさんですー」
重い足を引きずり改札への階段を上る私の前に突然化夢君が姿を現す。時計をみれば確かに化夢君が仕事を終える時間である。ここで出会っても不思議はない。
化「いやーー助かったっすよ、悪いけど金貸しもらえませんか」
マ「・・・・・・」
化「いま切符買うのに財布の中見たら110円しか無いんですよ」
マ「・・・昼飯食べるとき気づかなかったの?」
化「昼は例の中華屋(改装を機会に昼飯10食分で化夢君がメニューを新たに作りかえた。このときの食事は1食分には含まれていないらしい)のぞいたらまだ営業してなかったんですけどテストで作ったやつ食わせてくれたんで、財布開いてないっす」
マ「・・・・・いくらいるの?」
化「あーーー1000円、いや2000円貸してください」
そして化夢君は夕飯代を確保して家に帰っていった。

後日この記事を書くにあたって藤井寺駅改札の写真を撮ろうとして、レンズキャップを紛失する。キャップのバネが弾けて部品をまき散らしつつエスカレーターに吸い込まれていったのだった。・・・ニコンのアクセサリーは高いのに・・・

私は運を吸い取られているのだろうか?

化夢君の幸運 またはマッドハッターの不運 了

 

 

 

 

 

 

化夢君と私が偶然出会った藤井寺改札口。
こんな写真を撮ったがために・・・くそっ!

 

化夢宇留仁のコメント

またまたまたありがたい原稿をいただいてしまいました(笑)。
どうもあまりにも更新が無いのでしびれを切らしたような感じですな(汗)。
申し訳ないっす。

それにしてもあの時、電車をはさんで反対側のホームに、マッドハッター氏が降りたのが見えたときは、まさに天使に見えました(笑)。
ありがとうございます(笑)。