狂骨の夢
京極夏彦

キョウコツノユメと読む・・・と言うか、今回のは普通読めるな(笑)。
例によって京極堂のシリーズである。
毎回異なった妖怪をモチーフに、怪奇な物語を展開する訳だが、今回の妖怪は「狂骨」である。
何ともマイナーな妖怪が出てきたものである。 文中の説明では色々な要素が絡み合っているよくわからない奴、という書かれ方がされているが、ほんとにそんな感じで、読んでた化夢宇留仁もよく分からなかった。

さて、内容だが、テーマの妖怪にふさわしく(?)、イマイチよく分からない物語だった。
別にストーリーが意味不明だとか、おかしな点がある、という訳ではない。
何が語りたいのかよく分からない話だったのだ。

まず構成だが、「魍魎の匣」を更にパワーアップした感じで、色々なキャラクターの視点でそれぞれの状況が語られ、それぞれが違う方向から事件に関わってゆく。
「魍魎の匣」でも訳が分からなくなりかけたが、モチーフの箱の中の少女というイメージが明確で、また挿入される劇中小説も一貫性を持たせるのに一役かっていた。
だが「狂骨の夢」ではそういうはっきりしたモチーフが見当たらない。
一応骨というキーワードは徹底されていて、とにかくいろいろな形で骨が関わってくるのだが、なにしろ骨である。キャラクターを感じない。つまりはっきりしたイメージを描けないのだ。

その上今回はしょっぱなから二重人格らしい女性の一人称で始まり、その後も初登場のキャラクターの一人称か、その視点の三人称が続くという形で、なかなかお馴染みのキャラクターにたどりつけず、余計にイメージが固めにくい。
おなじみの関口氏の視点になるのは、新書版で150ページ目である(汗)。ちなみに主人公の筈の京極堂がまともに事件に関わるに至っては、371ページ目である(大汗)。
ま、ミステリーというジャンルを考えると、事件とその関係者が主人公のようなものであるから、特に問題はないとも言えるかもしれない。
ただし前から書いているように、このシリーズはキャラクター小説としての要素が強い。
そう考えるとやはり問題なような気がする。

そしてストーリーである。
「狂骨の夢」は今までの2作とはストーリーの質がまったく異なっている。
簡単に説明すると、それぞれ無関係だった人たちが、気狂いらしい女性、朱美と関わったり、髑髏が海に浮いたり集団自殺事件を捜査したり、そんな事をしている内に、小説家が殺される事件があり、それを皮切りに全員が一つの物語のピースにはまってゆくという・・・・
・・・・・
何の事やらよく分からない(笑)?
そこである。
今までの2作品は内容を紹介しようとすると、その行為自体がネタばれに直接繋がってしまうような、特異なストーリーだったのに対し、今回のはある程度までは内容の紹介ができるのである!
つまりは普通のミステリー、いや、この場合は普通に近い構成のストーリーなのだ。
近いというのは、例によって見る者の見方や観察力によって謎が発生する部分が幾つかあるからだが、これに関しても「狂骨の骨」のそれは、まだトリックとして納得できるものが多い。
要するに京極堂シリーズ始まって以来の普通のミステリーなわけだ(笑)。
そのせいか今回のプロットは、非常に複雑かつ多くの要素を含んでいる。
京極夏彦氏が一生懸命考えこんでいる様が想像がつく(笑)。
だがそれがネックになっているのだ。

確かに謎解きを読めば、なるほどそうだったのかと納得する。
山ほどある謎は全て筋が通る。
・・・・
ただし通るだけなのだ。

ミステリーにおいて、謎解きを読んだときに面白く感じるのは、謎が提示されている時に読者が想像する仕掛けと(これは化夢宇留仁の場合ほとんどはっきりしたものにならないが)、本文での種明かしとの比較&その意表を突いた仕掛けにあるのではないかと思う。
それに必要な条件は地に足ついたキャラクターとリアルな描写、感情移入、そして読者に把握でき、感想を持てる量の情報、ではなかろうか?
「狂骨の夢」では前者3つももう一つうまく機能していない上に、最後の情報に関しての部分が多すぎるのと節操がなさすぎるのとで、どうでもよく感じてしまうのだ。
だから朱美の秘密とか、想像はつけていたものの、謎解きを読んでもなんだかどうでもいい感じだし、ある骨をめぐっての争奪戦に至っては、想像するのさえ億劫になる始末。

やはりキャラクター小説としての要素が強く、それで面白く出来ていたのであるから、それはそれで生かしていってほしかったと思うのだが、どうだろう???
とりあえずは次作に期待・・・かな?
実はもう古本屋さんのオープニングセールの新書版200円均一コーナーで、京極堂のシリーズはほとんどそろえてしまったのだ(笑)。


 

クラッシャージョウ
連帯惑星ピザンの危機

高千穂遙

中学生の頃だったか、友人に借りて読んだ記憶がある。
この度、古本屋の100円ワゴンセールで出ているのを見つけて、思わず全巻まとめ買いをしてしまった。

さて、久し振りに読んだ感想だが、一言で言うと・・・・・・・・・
・・・・・・・
無い(汗)!
なんと言うか、感想を書こうにも、これといって語ることが無いのだ。
いや別に面白くなかったということではない。むしろ面白かった。
ただあまりにもアップテンポで、派手な事件が次々と起こり、感想を思い浮かべる暇も無かったのだ。

ストーリーを簡単に説明すると、ある太陽系国家において、放送電波に乗せられていた催眠暗示により、一斉に革命が起こる。
王宮に詰め掛けた群衆の数は凄まじく、王は一人娘に全てをたくし、一人用宇宙船で脱出させる。
偶然彼女の宇宙船を見つけた宇宙の何でも屋&超エキスパートのクラッシャー・ジョウ達は、彼女に依頼を受けて革命の首謀者を追い詰める・・・・。
・・・・・
という訳で、いわゆるスペオペ活劇なのである。
感想らしい感想が浮かびようも無い。
こういう作品では、TRPGトラベラーのネタ探しを心がける化夢宇留仁なのだが、どうやらそれは前に読んだときに完了していたようで、特に目新しいものを見つけることは出来なかった。

しかしそんな事を言ってても始まらない。
中学の頃に読んで、今また買って読んだからには化夢宇留仁の好きな要素がどこかにあるのは確かである。
どこだろう????
・・・・・
どうやらそれは信頼感らしい。
作中でクラッシャーチームは悪態をつきあいながらも、それぞれ信頼しあっている。
特に15歳のリッキーと、50歳を越えてるサイボーグのタロスの間にはそういう雰囲気が強い。
どうやら化夢宇留仁にはその雰囲気が心地よいらしいのだ。
なんだろう?
????
またこの先のシリーズも読んでゆくだろうから、おいおい考えてゆくとしよう。


 

クラッシャージョウ
撃滅!宇宙海賊の罠

高千穂遙

シリーズ2作目である。
最初の作品があまりにも読み応えが無かったので、 思わずもう1冊続けて読んでしまった(汗)。

ところで、化夢宇留仁はキャラクターとして、ごついおっさんが好きである。
この場合のごついおっさんというのは、いわゆる固太りで、経験豊富で、自分のやりたいことに一生懸命なおやじを指す。
勿論条件がそろえばおばさんでもいいのだが、キャラクターとしては珍しく、特に日本ではほとんど見た事が無い。「天空の城ラピュタ」のドーラはそれっぽかったが。
海外ではハインラインの「宇宙の呼び声」のヘイゼルばあさんとかは、そのまんまでかっこよかった。
そういう意味では、この「クラッシャージョウ 撃滅!宇宙海賊の罠」(長い・・・/汗)は、化夢宇留仁にとって面白い作品だった。

条件に合ったおっさんは二人登場する。
一人目は連合宇宙軍重巡洋艦艦長コワルスキー、もう一人は表紙で不敵な笑みを浮かべている海賊評議員、生傷男こと、ブルーザーである。
本作品ではある高価な動物の輸送をめぐっての、宇宙軍と海賊、密輸業者、そしてクラッシャーの四つ巴の抗争が描かれている(なぜか「狂骨の夢」を思い出す化夢宇留仁/笑)。
どちらかと言うと宇宙軍は巻き込まれた方で関係ないはずなのだが、そこをコワルスキーという濃いキャラクターが無理やり、かつ自然に物語に入り込んでいる。
コワルスキーが艦長として乗り込んでいるのは、300メートル級の重巡洋艦で、もちろんジョウ達の乗るミネルバなど問題にならない戦闘力を有している。
ジョウ達を海賊だと誤解したコワルスキーはミネルバを攻撃するが、逆にエンジンを撃ち抜かれて漂流の憂き目にあう。
たかだか100メートル級の船にそんな目にあわされて、面目丸つぶれとなったコワルスキーは、ミネルバを執拗に追いかけることになる。
こう書くと単に頭の固い馬鹿官僚といった感じだが、そこはそれ、別なシーンで圧倒的な指揮力と戦闘力を見せつけることで、かっこいいおやじになっているのだ。
ブルーザーの方は完全に敵であるにもかかわらず、どこか憎めないキャラクターでいい感じだった。
殺し合いをした相手であるジョーと再会して、「なんだジョウじゃねぇか。無事で何よりだな。」などととぼけたことを言うようなやつなのだ。
表紙から受けるイメージとはえらい違いだが(笑)。

ストーリー的には例によってのスペオペアクションで、特に取り上げるほどのものではないが、高価でワープに弱い動物を輸送、というTRPGトラベラーっぽいシチュエーションは気に入った。

と言うような感じで、相変わらず内容といえるほどの内容は無い。
しかしやはり楽しめる。
謎は深まるばかりである(笑)。


 

エイリアン秘宝街
菊地秀行

前記クラッシャージョウと同じく、古本屋さんの100円ワゴンセールでそろえてしまったシリーズ1作目。
これも昔に友人に借りて読んだ。
結構面白かったようなぼんやりとした記憶と、クラッシャージョウがトラベラーなら、こちらは同じくTRPGの「クトゥルフの呼び声」に相通じるところがあって、気になっていたのだ。

簡単に内容を説明しよう。
まず表紙で頑張っているにいちゃん。彼が主人公の高校生でありながら、世界に名だたるトレジャー・ハンターである八頭大である。
この時点でいかにもジュブナイルな設定だと思われるだろうが、まさにその通りで、高校生のくせに大金持ちで、総理や大統領とも顔なじみ、身長180cmの色男、小さい頃から死線を越えてきた強者でありながら子供っぽいところもある・・・・という、書いてても腹が立ってくるような設定なのである。
しかしこれが結構面白い。
なんだかんだ言っても土台はしっかりしている菊地秀行、元禄時代までさかのぼれる事件の背景や、江戸時代の不気味な長者や商人の設定、それらが現代に影響を及ぼし、また事件が続いている様子など、おどろおどろしていると同時にロマンがあって、楽しめた。

あと上にも書いたが、「クトゥルフの呼び声」との関連。
昔読んでいた頃は化夢宇留仁の方が「クトゥルフ〜」 を知らなかったので、感想のもちようが無かったのだが、今回読んでみてそのあまりの関連の深さに驚かされた。
なんと言うかそのまんまなのである(汗)。
おまけに巻末にある参考文献には、「ピックマンのモデル」の名が挙がり、あとがきでは菊地氏が「クトゥルー地名リスト」を片手にボストンからノース・エンドへ旅をしたことなんかが書かれている(笑)。

知らなかった・・・・(汗)。
しかしこれで、以降のシリーズを読むのがまた楽しみになった。
昨日また古本屋で今年2月に発売されたばかりの、数年ぶりの新刊も手に入れたことだし(笑)。


 

鉄鼠の檻
京極夏彦

京極堂シリーズも4冊目、そろそろキャラクターもこなれてきた感じがする。
結論から言うと、本作は今までで一番面白かった。

前作では登場人物が多く、舞台も様々、設定も複雑で、ストーリーを追う以前にそれを把握するのが精一杯で、最後の方では疲れてどうでもよくなってしまったのだが、今作では作者もそれを意識したのか、舞台は限定され、登場人物は多いものの統一性を出し、設定にも大きなモチーフを用意することで、複雑でありながら分かりやすく楽しめるものになっていた。

登場人物に関してだが、前作では過去の謎に関わるものまで考えると、牧師、真言宗の坊主、神主、後醍醐天皇、フロイト・・・などなど宗教と思想のバトルロイヤルを思わせるものがあったが(笑)、 今回は舞台かつ最大の謎として、隠された寺を用意することで、自然登場人物にも一本筋が通って、設定登場人物ともに個性と厚みが出来ていた。

またシリーズ物の面白さとして、前の作品との関わりがあるが、この「鉄鼠の檻」には、第1作「姑獲鳥の夏 」に登場した意外なキャラクターが再度登場し、濃いのがそろったメインキャラクターに負けないくらいの個性と厚みを出しているのも面白かった。
同時に第1作で存在だけは語られたものの、行方不明になっていた人物まで登場する。
こうなってくると、また第1作を読み返してみなければ気がすまない。
しかしこれでますますこのシリーズは、ミステリーと言うよりもキャラクター小説であるという印象が強まった。

先にも書いたが、メインの舞台は雪に閉ざされた箱根の山奥にある、謎の古寺である。
なにが謎かと言って、その建立者も、宗派も、所有者も定まらないという謎しかないような寺なのだが、寺に訪れたキャラクターたちもそうだが、おそらく多くの読者にとっては、寺という場所で坊主がどのような環境で生活し、何を考えているのか。要するにお寺そのものが一番謎に感じるのではないだろうか?
寺というものに対して、大体のイメージは誰でも持っていると思う。
しかし具体的なディティールとなると、はなはだ心もとないのが現状である。
本作ではその辺もストーリー上の謎と絡めて、寺という場所の特殊性と神秘性を存分に味わえる。
化夢宇留仁の場合、お気に入りの映画に「ファンシィ・ダンス」という映画があって、その中でお寺での生活の描写はけっこうされていたので、まだイメージがつかみやすかったが(時刻を知らせる鳴り物の描写などは、本文だけで正しいイメージがつかめていたか怪しいものである。)、それでも現実世界にあって、まったく違う常識に支配された山寺のイメージには幻惑され、魅了される部分があった。

ストーリーに関して考えてみる。
この作品のストーリーを簡単に説明しようと思うと、なんだか変なことになる。
前々からこのシリーズはそうなのだが、まず登場人物の誰の視点で語ればいいのか分からない。
各自それぞれの視点と立場、考え方によって、事件の受け取り方が違うし、事件に対した状況も異なっているからだ。
ダメ人間の小説家、関口の口から語ればそれは現実世界に生じた悪夢に他ならないし、古本屋で憑き物落しの主人公からすれば単なる因果関係の解説、超能力(笑)探偵榎木津から見たら・・・なんだろう(笑)???
こんな感じで多様な謎と、キャラクターそれぞれの視点を絡め合わせて、厚みのある物語にしているのが本シリーズの持ち味だと思うのだが、この「鉄鼠の檻」はそれがイヤミなくうまくまとまった佳作だと言えるだろう。


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