造物主の選択(ライフメーカーの選択)

小説/J・P・ホーガン/小隅黎訳
創元SF文庫1999年1月29日初版発行
税別800円

入手方法/Amazonで売ってたけど、なぜか1000円に値上がりしてました(汗)。


 「造物主の掟」の待望の続編。
 タロイド達の中には、新しい考えに同調できず、前の体勢に戻らないとライフメーカーの怒りに触れると考える者もおり、その勢力は地球人が事故死したのを端にしてまた広がり始める。
 そんな時、科学者ワイナーバウムのチームは他のデータとは切り離された奇妙なデータ集合体を発見する。
なんとそれは、10万年以上前に絶滅した、タロイド達の元になった宇宙船を建造した異星人の脳の電子コピーだった。
その進んだ知性と会話を交わして有頂天になるワイナーバウムだったが、それを知ったザンベンドルフは、しぶとく生き残ってきた知的生命体がお人好しではあり得ないと不安を顕わにする。
しかし異星人達は、ザンベンドルフの予想よりも質が悪かった(笑)。


おもしろさ 5

 ストーリーは勿論のこと、相変わらずテンポがよく、キャラが起ってて、描写も素晴らしい。異星人達の描写も実にユニークで、どこを取っても面白い宝箱のような作品。
ただ少し残念だったのは、今作では愉快なタロイド達の活躍が少な目だったところか。


トラベラー度 1  
 

レフリー度
 世   界 3  タロイド達の世界もそうだが、本作では異星人ボリジャンの世界の描写が素晴らしい。
 ストーリー 3  シナリオにするにはあまりにも複雑すぎるが、部分部分を参考にするのは効果的だろう。
 フレーバー 4  超低温ガス世界の描写、ボリジャンの描写、人工知能コンピュータの意思表示、それにベルトコンベヤーの河なんかも生かせたら楽しい。

お気楽度 3  読みやすいのだが、やはり前作を先に読んでおきたい。

投稿者/化夢宇留仁 20060406



トラベラー2 逃亡の惑星
(原題 Become the hunted)

小説/Jefferson P Swycaffer著/佐脇洋平訳
富士見書房1991年 (原書1985年)発行

入手方法/絶版 中古のみ


 トラベラー小説第二段。話としては、「戦乱のアウトリーチ」の少し前になる。
 無実の罪を着せられ、田舎惑星チャーカンに逃亡した「公文書機構」海軍のアザロス・ステルダン大佐。元情報部員としての技能を活かして潜伏するも、海軍の追跡は執拗だった。
偵察艦が惑星を封鎖し、海軍と地元の警察は協力してステルダンを追う。そして、賞金稼ぎや地元のギャング、さらに海軍の上層部から送られた暗殺者にまで追われる破目になったステルダンは、惑星を脱出すべく、惑星全土を人質とする捨て身の賭け(ハッタリ)に打って出るのでした。


おもしろさ 4

 前作「戦乱のアウトリーチ」に比べればかなり良い。最後でガックリ、ということもありません。陰謀、政治、ロマンス、銃撃戦に宇宙船戦闘などなかなか盛りだくさんです。
 舞台となる惑星チャーカンは、タンカーの爆発事故で首都がきれいに吹き飛ばされ、政府の記録類が失われた混乱状態にあります。描写を読む限り宇宙港は大規模なようですが、大型タンカーを地表面に着陸させねばならないことから、どうも軌道施設はなさそうです。
ギャングの手で身分証を偽造してもらったステルダンは、割と簡単に別人に成りすまして宇宙港のブローカー会社に就職するのですが、密輸の片棒を 担ぐ破目になります。で、その過程で知り合うギャングのボスや偽造屋等、ルールブックの言う「悪党」達がなかなか良い味です。
また、ステルダンを追う海軍の士官が、偽造屋として地元ギャングに潜入する場面も、悪党プレイの参考になるでしょう。
ステルダンが脱出作戦の牽制として、ギャング組織を混乱に陥れるのですが、その手段というのが、発信元を分からないようにする装置を使ってはいるものの、普通の電話。他のSF作品なら「設定古すぎ」となるのですが、トラベラーの世界では違和感無しです。
 ただ、クライマックスの宇宙船戦闘がちょっとダメかなと。入手難と思われるのでネタばれで行きますが、ステルダン大佐が巻き込まれたのは、現職の海軍総司令官が、自分の理想とする国家を建設するため、ステルダンを通じてミサイルの自爆信号を敵のレーダーと同じ周波数に設定して、意図的に味方を大敗させて国家の危機的状況を演出するとともに、前任の無能な総司令官に自分がとって代わる、というもので
した。で、ステルダンは敵の周波数と同じかどうかチェックしなかった自分を責め(これに関しては、ステルダンは些細なミスが多いと言う報告書を、捜査を担当する士官が読む場面があります)、最後には逃げ回るのを止めて体を張って真実を暴く決心をするわけですが、彼を護送する宇宙船を偵察艦が攻撃します。で、ステルダンは宇宙船のレーダーの周波数を変えて、敵のミサイルを自爆させてあっさりと危機を乗
り切ってしまう。ちょっとご都合良すぎと思いました。


トラベラー度 5  
 

レフリー度
 世   界 5  
 ストーリー 5  
 フレーバー 5  悪党(ギャングはもちろん、陰謀をめぐらせる高官なんかも)は大いに参考になります。

お気楽度 5  読みやすいのだが、やはり前作を先に読んでおきたい。

投稿者/松永さん



リディック

映画/デヴィッド・トゥーヒー監督
2004年アメリカ

入手方法/DVD発売中


 あれから5年。賞金稼ぎに発見されたリディックは反撃に転じ、賞金をかけたのが5年前に助け出した男だと知り、彼の住むヘリオン第1惑星へ。
しかしその男がリディックに賞金をかけたのは、恐るべき悪の軍団に対抗できるのがリディックしかいないと分かったからだった・・・。


おもしろさ 2

 が〜〜〜ん(汗)。
前作「ピッチブラック」が面白かったので、本作も少し期待していたのだが、冒頭のナレーションですでに大ダメージ(汗)。
いきなり「悪」って宣言するなよ(汗)。
更にリデイックがヘリオン第1惑星に行き、彼の出生の秘密が語られたあたりでまたダメージ(汗)。
 「悪」と定義された敵と、主人公の出生の秘密(汗)。
しかもリディックは絶滅させられた種族の最後の生き残りなのだそうな(笑)。
う〜〜ん前作にあったTRAVELLERっぽいリアルな雰囲気はどこにいってしまったのだ(汗)?
 灼熱の刑務所惑星の描写は面白いところもあるが、その温度差にSFっぽい理由付けが無いのでガッカリ。
最後は肉弾アクションで決めるのも、普通〜のアメリカ映画になっちゃった感じ。


トラベラー度 3  リディックを「悪党」として見れるか(笑)?
 

レフリー度
 世   界 4  設定は似たところが多いようなのだが、どうも恒星間の海軍が存在しないらしい。
カルト教団が率いる武装艦隊というのは狂ってて面白いかも。
 ストーリー 1  
 フレーバー 4  宇宙船や装備など、個性的なものがたくさん出てくるので、イメージを膨らます参考になると思う。

お気楽度 4  前作を観てなくても問題無さそう。

投稿者/化夢宇留仁 20040412



アウトバースト

コミック/星野之宣
短編集のタイトル/滅びし獣たちの海
スコラ平成8年9月28日初版/777円

入手方法/古本屋
異なる版で同じ作品が収録されたものもありそう?


 アマゾン河上流の密林で、古代都市の遺跡が発見された。
実はそこは伝説の黄金都市エル・ドラドだったが、眠っていたのは黄金だけでは無かった・・・。


おもしろさ 3

 自然破壊への警告がテーマだが、そんなことよりも様々なフレーバーや意外な展開が楽しい。


トラベラー度 3  舞台は現在の地球だが、遺跡の調査の様子は充分トラベラーっぽい。
 

レフリー度
 世   界 0  現代の地球が舞台。
 ストーリー 4  少しの手直しでシナリオになると思う。
このままではPCに旨みがなさすぎるかもしれないが。
 フレーバー 4  密林の不気味な遺跡の描写はどれも参考になる。
溶鉱炉の使い方がベター。

お気楽度 5  サクッと♪

投稿者/化夢宇留仁 20040421



罪の島

コミック/星野之宣
短編集のタイトル/滅びし獣たちの海
スコラ平成8年9月28日初版/777円

入手方法/古本屋
異なる版で同じ作品が収録されたものもありそう?


 ベーリング海で座礁した海洋調査船の生存者が、旧ソ連の生化学実験施設にたどり着く。
そこはすでに廃棄されていたが、実験結果はまだ生きていた・・・。


おもしろさ 3

 実験対象に選んだ生物がユニークで、ラストのスペクタクルもなかなかの迫力。目の付け所がいい。


トラベラー度 2  舞台は現在の地球だが、実験施設の探険の様子はなかなかトラベラーっぽい。
 

レフリー度
 世   界 0  現代の地球が舞台。
 ストーリー 4  巨大だが動きが鈍く、肉などの利用価値が高かったために絶滅してしまった生物の設定をすれば、シナリオに転用できそう。
 フレーバー 4  ある生物の痕跡を表す描写がどれも雰囲気があっていい。

お気楽度 5  サクサクッと♪

投稿者/化夢宇留仁 20040421



巨人たちの伝説

コミック/星野之宣
短編集のタイトル/巨人たちの伝説
創美社/集英社1988年8月15日初版/777円

入手方法/古本屋
異なる版で同じ作品が収録されたものもある。


 2部構成のSF大作。
第1部 燃える第五惑星
 6万年前に、人類とは別に地球上に高度な文明を築いていた巨人族が、氷河期に対抗するために木星の近くに燃える惑星を造り出そうとする。
第2部 巨人への道
 1982年。地球は新たな氷河期を迎えようとしていた。
それを避ける唯一の方法は、木星を第2の太陽として燃える惑星に変化させることだった。
その成功には北極のピラミッド基地と、木星遠征船プロメテウスの綿密な協力が不可欠で、まさに人類による宇宙への挑戦と言える大事業だった・・・。


おもしろさ 4

 まさに正統派SFで、第1部だけでも完成度が高いのに、その設定が第2部で見事に昇華しているが素晴らしすぎる。
これでもう少しキャラクターに魅力があれば超傑作になったと思う。
 著者もあとがきで書いているが、史上初の木星爆発SFとしても興味深い。
「アメリカで宇宙飛行士の訓練を受けたただ一人の日本人」という設定も、今では微笑ましい。
 またこんなハードな内容が週刊少年ジャンプに連載されていたというのも、実に感慨深いものがある。
昔はよかった(笑)。


トラベラー度 1  太陽系を舞台にした正統派SFなので、かえってトラベラーらしくないかも。
 

レフリー度
 世   界 0  今や過去となった現代の地球が舞台。
 ストーリー 2  根本的に恒星間飛行が出来るトラベラー世界には相容れないストーリーだが、レッドゾーン世界での出来事とすれば、工夫次第で面白いシナリオになると思う。
 フレーバー 3  消滅した巨人達の文明や、氷河期に関する様々な描写は利用のし甲斐がありそう。

お気楽度 3  200ページを越えるハードSF。

投稿者/化夢宇留仁 20040421



太陽惑星イカルス

コミック/星野之宣
短編集のタイトル/巨人たちの伝説
創美社/集英社1988年8月15日初版/777円

入手方法/古本屋
異なる版で同じ作品が収録されたものもある。


 1987年。地球は進みすぎた大気汚染によって太陽光線が遮断され、新たな氷河期を迎えようとしていた。
国連は太陽近くに高出力レーザーを備えた蓄電衛星を送り込み、氷河期を乗り越える計画を実行に移す。
しかし謎の組織がその計画を妨害しようとしていた・・・。


おもしろさ 3

 これまた氷河期を迎えた現代地球が舞台の、正統派SF。
小惑星イカルスが絡んでくるところがこの著者らしい。
大気汚染による氷河期到来というのは、現在のオゾン層破壊による地球温暖化とまったく逆の予測で、執筆当時の世情が想像できて面白い。


トラベラー度 2  太陽系を舞台にした正統派SFなので、かえってトラベラーらしくないが、妨害者も宇宙船でやってくる展開は少しそれっぽいかも。
 

レフリー度
 世   界 0  今や過去となった現代の地球が舞台。
 ストーリー 3  移住もままならない大人口世界が氷河期を迎えるという設定にすれば、意外にスムーズにシナリオに出来そう。
 フレーバー 2  太陽電池と高出力レーザーを備えた衛星というアイデアは活かしてみたい。

お気楽度 4  短編だが少々古風なタッチ。

 

投稿者/化夢宇留仁 20040421



スターダストメモリーズ

コミック/星野之宣
短編集のタイトル/スターダストメモリーズ
スコラ平成7年9月29日初版/825円

入手方法/古本屋


 外宇宙へ旅立った人類をテーマにした全6篇からなる連作宇宙SFで、どれもSFマインド満点で味わい深い物語で構成されている。

詩人の旅
 エウロパにある鉱物プラント基地では、外宇宙へ旅立つ冬眠宇宙船の発進準備が行われていた。
しかしスタッフは長い宇宙生活のストレスに押しつぶされそうになっていた・・・。

木霊の惑星
 惑星ジェミニ2には、奇妙に人間じみた動物の生態系が構築されていた。
その真相を知る老人が、過去の計画の完成のためにジェミニ2に降り立った・・・。

メリー・ステラ号の謎
 惑星ベガC-2の探査任務にあたっていたメリー・ステラ号が無人で発見された。
いったいこの船にはなにが起こったのか?

射手座のケンタウルス
 惑星サジテリアスα-2には、不死の能力を持つケイロンという動物が存在するという。
その調査に向かったのは、巨大コンチェルンの会長であり、不死への渇望を秘めた老人だった。
しかしケイロスは彼の想像を絶する寄生生物だった・・・。

鯨座の海
 鯨座ミラ星系の第2惑星は生命の存在しない砂漠の世界だった。
過去にこの惑星からの電波を受信していた科学者はその秘密を探ろうとしていたが、そこに大昔の世代宇宙船がたどり着き・・・。

セス・アイボリーの21日
 生命調査船リンクは惑星リンデンに不時着。
唯一の生存者だったセス・アイボリーは救助信号を放つが、この惑星上では生命体の成長と老化が急速に進み、助けが来るまでに自分の寿命が尽きてしまうことを知り・・・。


おもしろさ 5

 どれもこれも一定以上の完成度を誇るが、特に最後の「セス・アイボリーの21日」は、なんとも切ない感動を与える超名作である。


トラベラー度 2  この作者独特のドライな雰囲気はトラベラーらしくないのだが、設定はそれらしいところも多い。
 

レフリー度
 世   界 2  「詩人の旅」以外は地球が出てこないのでどんな世界でも割り当てられそう。
 ストーリー 2  SFアイデアがメインの短編なので、ストーリー自体はシンプルなものが多い。
 フレーバー 5  コミックで外宇宙ハードSFが読めるのはこの作者くらいではなかろうか?
様々な描写全てが参考になる。

お気楽度 3  それなりにボリュームはあるが、どの話もコンパクトにまとめられている。

投稿者/化夢宇留仁 20040421



メビウス生命体

コミック/星野之宣
短編集のタイトル/スターダストメモリーズ
スコラ平成7年9月29日初版/825円

入手方法/古本屋


 オリオン座X-17のブラックホールでは、吸い寄せられてくる宇宙塵や小惑星の調査のための採集班が編制されていたが、いつもクズしか拾ってこなかった。
しかしある日、彼らが拾ってきたのは完全な球形の物質で、それは地球外の知的生命体の存在を感じさせた。
だがその球体が破壊されたとき、それは人間の手におえる物ではないと判明する・・・。


おもしろさ 3

 おそらく今まで創造された宇宙生物の中でも最も凶悪な能力を満喫できる。


トラベラー度 3  トラベラーっぽい!という程でもないが、トラベラーらしく無いところも特に見あたらない。
 

レフリー度
 世   界 1  
 ストーリー 1  1発SFアイデア短編(笑)。
 フレーバー 5  この生物(?)はある意味究極の能力を備えている。
シナリオに生かせたら面白いのだが。

お気楽度 5  サクサクサクッと(笑)。

投稿者/化夢宇留仁 20040421



コドク・エクスペリメント 全3巻

コミック/星野之宣
ソニーマガジンズ2000年2月29日初版/850円

入手方法/書店で注文か古本?


 地殻変動によって滅亡を前にした惑星デロンガVアルファでは、凶暴な生物同士を戦わせて究極の生物兵器を作るコドク計画が進められていた。
地表に熱蜂(ホット・ビー)を降ろす任務についた宇宙軍兵士達だったが、母船に置き去りにされてしまう。
 その20年後、惑星デロンガVアルファは爆発。
その残骸の中に生物らしき姿が発見された・・・。


おもしろさ 4

 星野作品にしては戦闘の扱いが大きく、キャラクターの個性も強い。
でもやっぱり最大の見所は異星生物というのがやっぱり星野作品らしい(笑)。


トラベラー度 3  すごくトラベラーっぽい!という程でもないが、トラベラーらしく無いところも見あたらない。
 

レフリー度
 世   界 3  地球は登場しないし、政府の存在も曖昧。
 ストーリー 5  そのままシナリオに出来ると思う。
 フレーバー 5  様々な異星生物が恐るべき能力を披露してくれる。
また超高性能戦闘用サイボーグや、生体パーツを使ったパワードスーツなど、他にもフレーバー盛りだくさん♪

お気楽度 4  そこそこボリュームはあるが、この著者にしては読みやすい方だと思う。

投稿者/化夢宇留仁 20040422


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