航海日誌番外編3
長い待機が始まった。
いつでも戦闘をできる態勢で、じっと敵の出現を待つ。
日が落ち、夜が更け、朝日が昇った。
見張りを続けながら携帯食料を口に入れる。氷砂糖をなめるのも、疲れを一時だけ忘れるのに役立つ。
そして、ついに敵が出現した。
道の向こうから、ディーゼルのエンジン音が聞こえた。
ジュリエッタが素早く合図を出し、全員が即応態勢にあることを確認する。
武装した兵士を乗せたタイヤ式トラックが前後に2台ずつ、その真ん中に幌をした麻薬輸送車らしきものが3台、計7台の隊列だった。
道路上に埋設した地雷は、中央の1個だけを質量検知型にしてある。周囲1メートル以内を500Kg以上の質量
を持ったものが通ってから、3秒後に爆発するようにセットしてある。
地雷を埋設した付近を、先頭の車両が通りすぎる。ジュリエッタは銃をしっかりと構え直した。
帝国の関与が露骨に判明しないよう、武器はこの惑星で造られたローテックレベルのライフルを選択している。
突如、2台目の車両が吹き飛んだ。
地雷の爆発と同時に、曲がり道に沿ってL字に展開したチームが、角度をつけて一斉射撃を始めた。このL字待ち伏せは簡単に火力を集中させることができる上、道の一方にしか兵員を配置しないため、撤退がスムーズに行えるというメリットがある。
爆音検知で爆発するようにセットされた、2発目以降の地雷が爆発を始めた。
燃え上がる車両から兵士が転がり落ち、銃弾を受けて次々と倒れていく。
敵は完全に総崩れの状態となっていた。
銃弾を避けた数人は、ジュリエッタ達が射撃を行っているのとは反対側へと逃げていった。
だが、道の反対側には対人地雷が設置してある。
路上の地雷と射撃から逃れようとした兵士達は、自然とキルゾーンに追い込まれていくことになり、全滅するという計算だ。
射撃を避けつつ、反撃を加えようと側面に回り込もうとした敵の末路も似たようなものだった。
ジュリエッタは万全を期して、チームの側面と後方に指向性地雷を設置し、セキュリティーを確保していた。側面
に回った敵は、秒速800メートルで飛来する金属片の嵐を受け、身体をズタズタに引き裂かれた。
敵は反撃することも出来ずに全滅へと向かいつつあった。
ジュリエッタは最初の笛を吹いた。チームの射撃が一瞬で止んだ。
先ほどまでの激烈さが嘘であるかのように、周囲を静寂が支配する。
攻撃が止んだと勘違いした敵が、次第にトラックの影から姿を現わした。指揮官らしい男の怒号が飛び、兵士達は反撃に移ろうとした。
ジュリエッタは深く息を吸いこみ、2度目の笛を吹いた。
射撃が再開された。一瞬にして数名の敵兵士が血煙を上げて倒れた。生き残りの敵は再びトラックの物陰へと飛びこんでいく。
オクパラが撃ったグレネード弾がトラックを吹き飛ばした。
3度目の笛を吹く。チームの射撃は変わらず続けられる。
そのフェイントに引っかかり、1人の敵兵士が物陰から頭を出した。その頭は即座に銃撃を受けて破裂した。
十分に弾幕を張り、ジュリエッタは4度目の笛を吹いた。
全員が一斉に射撃を止めて撤退に移る。
ジュリエッタは後衛を務めながら、威嚇に数発発砲した。
今度は射撃が止んでも姿を現わす敵は一人もいなかった。
ジュリエッタが後退すると、代わりにゲイルが後方を警戒する。
チームは追撃を受けることもなく、戦場を去ることに成功したのだった。