航海日誌番外編8
地対空ミサイルに仕掛けられた爆薬が爆発した。
誘爆が起き、基地内が混乱に陥っている隙をついて、ジュリエッタはチームを離脱させた。
とはいえ、敵の追撃をまともに食らえば全滅しかねない。
それに、負傷したウェンインと捕虜も迅速な移動の重荷になっていた。
ジュリエッタは救援を呼ぶための戦術ビーコン発信器のスイッチを入れた。
だが、空軍の到着にはまだ20分はかかるはずだ。
「ここでカウンターを仕掛ける! スティットソンとフィナンは、ウェンインと捕虜を連れて先行しろ!」
バックパックから指向性地雷を取り出し、素早く木陰に設置する。
クライフが木と木の間にワイヤーを張り、両端に手榴弾を仕掛けた。
「来ます」
暗視スコープを覗いていたゲイルが警告を発する。
ジュリエッタが手を振り、チームがさっと散開する。
追っ手の先頭が、クライフの仕掛けたブービー・トラップに掛かり、爆発が起こった。
悲鳴が上がり、火ダルマになった敵が転がる。
「撃て!」
射撃を加えつつ、ジュリエッタは地雷を爆発させた。
3人ほどの敵が吹き飛ぶ。
「よし、撤退!」
敵に効果的な一撃を加え、萎縮させた隙に全力で逃走する。これが対追跡戦の定石だ。
ジュリエッタは追跡路に15秒と30秒にセットした2個の遅延爆弾を置き土産にしてきた。
敵が追跡を再開しようとした時に一発、続けて身を伏せた敵が立ち上がった時に一発。
これだけでも1分以上は時間を稼げるはずだ。
背後で爆発音を聞きながら、ジュリエッタは走り続けた。
レーザー無線には接近しつつある味方空軍の情報が入ってくる。
「あと5分で爆撃だ。それまでに対岸に出るぞ!」
今度の渡河には時間をかけてはいられない。
チヘームを二手に分けて、片方が警戒している間に一気に渡らなければならない。
先日の渡河で川底にトラップが無いことを確認しているとはいえ、渡河の最中に攻撃を受ける危険を考えると不安は残った。
とはいえ、他に方法も無い。
「2名、私とここで敵を食い止める!」
後から渡河するグループには大きな危険がある。対岸からの援護があるとはいえ、無防備な背中を守ってくれる者はいないのだ。
だから、あえて誰が残るのかは指定しなかった。
全員が振り返ったが、いち早くジュリエッタの隣まで来たのはゲイルとジャイディだった。
「よし、ゲイルは右、ジャイディは左、余分な装備は捨てろ。他は早く川を渡れ!」
ジュリエッタは手早く命令を下し、弾が残り少なくなった弾倉を捨て、新しいものに取り替えた。
オクパラが、グレネードランチャーと拳銃をジュリエッタの横に置いた。
「使ってください。向こう岸からでは、どうせ届きませんから」
「ありがとう。気をつけてな」
オクパラは敬礼して駆け出していった。