美女と野獣探訪記10
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陽光の下、『シュペトレーゼ(遅摘み葡萄)号』の白銀の船体が輝いていた。 |
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S型偵察艦は、Xボートと並んで偵察局のシンボルといえる船だ。 |
僕が一般にS型と呼ばれる「SEVEN」ではなく、古い「MkVI」を好きなのは、俳優のラル・ブランセンがやっていた1050年代のTVドラマ『裂溝の彼方で』を子供の頃、再放送で見た影響だ。 毎週、ラル・ブランセン扮する偵察局員と、相棒のヴァルグル人カカが、色々な惑星を「MkVI」で冒険するのをワクワクして観たものだ。 特にアメーバ生物が偵察艦の中に侵入し、どんどん増殖していく話は怖かったのでよく覚えている。 最初、その生物は検疫で見落とされた、たった1個の細胞だった。 だが、その細胞が分裂を繰り返し、2個、4個、8個、16個、32個・・・と増えて、やがて異常を感じて貨物室を覗いたカカを襲う。 生物にはどんな攻撃も効かず、倒すには宇宙港にある消毒薬をかけるしかない。 どんどん増殖を続ける生物は、わずか3時間後には船全体を覆ってしまう。 その前に宇宙港まで着けるのか・・・。 思い出すと今でもドキドキする。 |
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「バカね! どんな攻撃も効かないのに、何で消毒されただけで死ぬのよ? それに、有機細胞なんて、高熱を加えれば絶対に死ぬ
んだから」 この話をマスターにしたのが間違いだった。 「第一、エネルギー源になる有機物が無いのに、そんなに生物が増殖できるわけないでしょう?」 また始まった・・・。 「偵察艦1隻分の有機物なんて、人間2人と食料、カビとか空気中の微生物ぐらいよ。それを完璧に取り込んで、自分の体に100%変換させたとして、せいぜい300Kgがいいとこ」 僕はただ、あの怖さを伝えたかっただけなんだ・・・。 「宇宙船をウネウネっと覆い尽くすなんて、とてもじゃないけど・・・あれ、でも平均の薄さ1mm位 なら内隔全てを覆うことぐらいは・・・」 マスターは何やらブツブツと呟き始めた。 「大体、そのアメーバがいた元の惑星ってどうなってるの? 先にそっちが覆われてんじゃないの? 1個の細胞が30分で2個に分裂すると仮定して、1日を地球と同じ1440分に設定すると、1年後には2の17520乗個の細胞が・・・」 あんなにバカにしていたくせに、今は自分がもっと夢中になって架空のアメーバ生物が惑星を覆い尽くすところをシミュレーションし始めている。 |
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僕は完全に自分の世界に入ってしまったマスターを置いて、コクピットに行く事にした。 |