美女と野獣探訪記07
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その日街へ出たのは、全くの偶然だった。 事故で足の骨を折った職員の代わりに、反重力トラックを運転してメーカーチェックに回していた整備機材を受け取りに行った。 そして、帰り道にどこかで昼食を取ろうと思い、それならちょっと足を延ばして・・・単にその場の思いつきで大学のあった場所の近くまで来た。 またガレキの山か、あるいは片付けられて更地になっているのか、それを見つめて少し感傷に浸ってみるのもたまには悪くないかな、そう思ったのだ。 ところが、大学は校舎の大部分が再建されて活動を再開していた。 そこで、僕はふとあることを思いついた。 僕はすぐにトラックを止め、駆け出していた。 学生事務局に飛び込んで、卒業生と在学生の名簿を見せてくれるように頼んだ。 そう、もしマスターが生きて無事に卒業したか、まだ大学にいるのならば、名簿に名前があるはずだ。 「外部の人間には見せられない規則です」 職員は事務的な口調で言った。 僕は、元ここの学生で戦争で音信不通になった先輩を探しているんだ、と怒鳴った。 |
その直後、僕は突然誰かに突き飛ばされた。
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そうして、僕は次の日に整備士を辞めて、マスターの新しいマンションに転がり込んだ。 |
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そして、ちゃんと僕の部屋も用意してくれていた。 マスターは終戦以来、大学の廃墟前で僕のことを毎日ずっと待っていてくれたらしい。 もっとも、その話題は自分で言った途端に後悔したのか、耳まで真っ赤にしたマスターに蹴られまくったので、ちゃんと確認できたわけではない。 僕が戦死していることは考えなかったのか、と聞いた時のマスターのセリフ・・・。 「あんたが死ぬわけないでしょう? あたしは死んでいいって許可してないもの。あたしが許可しない限り、あんたはあたしより先に死んだり出来ないの!」 すごい言われようだ。 だけど、何だか嬉しくて涙が出た。 「ところで、あんたさっき事務局で“先輩”って言ったわよね。フーン・・・あたしは単なる“先輩”なわけ?」 どうも、これがご機嫌を損ねたらしい。 「あんたはあたしの弟子でしょう? 奴隷だって言ったわよね? だったら、あたしを本当は何て呼ばなきゃいけないの?」 僕は観念した。 「僕の一番大事なご主人様です」 そう、僕はやっぱりどこに行ってもマスターの忠犬で、奴隷なのかもしれない。 「よろしい」 マスターは微笑んで、それからそっと僕のアゴを手でさすった。 「今、ヴァルグル人の発情の時期よね」 マスターが僕の耳元で甘い声を出した。 「婚約指輪の答え、聞きたい?」 マスターは僕の返事も聞かず、僕の唇に熱いキスをした。 その夜、僕達は初めて結ばれた・・・。 これで僕の残りの人生は、マスターと一蓮托生だと決定したようだった。 |