美女と野獣探訪記08
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次の朝、幸せの余韻に浸って惰眠を貪っていた僕は、マスターに蹴られて目覚めた。 |
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資料はどんどん集まった。 |
要するに、考古学とは世間的にはどうでもいい、と思われている学問で、そのせいで全体的な真剣みに欠けるのだ(もちろん、個々の研究者は真面
目に研究に取り組んではいるが)。 確かに明日のパンにつながる学問ではない。世間一般の人にとっては、ラチャテスイリ遺跡がゼラキ王朝期のものか、それともレタテイラ王朝期のものかなど、どうでもいいことなのだ。 そんなことよりも、遺跡に眠る秘宝や、無限のエネルギーを作り出す幻の古代文明の失われた技術、といった夢物語を語ることのほうが、楽しいのだろう。 それに、愛国心の行き過ぎからか、自分たちの惑星には太古すでに文明が存在していた、と言い張る輩も後を絶たない。 マスターは、こういうのを一番嫌がる。 「今の自分が情けないから、ご先祖様に立派であってほしい? バカじゃないの! それよりも、まず明日の自分が誇れるようになれってのよ!」 言葉はきついが、正論だと思う。 大体、自分の祖先の経歴を詐称するなんていう行為は、個人がやったならばウソツキと軽蔑されるだろう。“自称第2帝国時代の貴族の末裔”という詐欺師が捕まって、笑い者になった事件もある。 ところが、これが国家単位、惑星単位、文明単位となってしまうと、堂々と歴史の改竄や経歴詐称がまかり通 り、それどころか、反論する者を頭でっかちの非愛国者などと、まるで悪者のように扱ったりする恥知らずもいる。 愚痴を言っても仕方ないけれど、そんなこんなで玉石混交な資料を整理するのは、けっこうな重労働だった。 |
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おまけに、研究助手というと聞こえはいいが、僕はまだまだ大学の3回生に復学したばかりなのだから、所詮は趣味でかじった程度の素人だ。 あんまり役に立てていたとは思えない。 それでも、僕はマスターと学時代のように楽しく考古学の研究に没頭していられたのだから、とても嬉しかった。 |
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そのうち、マスターは資料を渉猟するだけでは駄目だと言い始めた。 実地検分が何より大切なのだ、と。 それは僕もその通りだとは思った。けれど、他の星系というのは、行きたいからと言って、そう簡単に行ける場所でもない。 特等チケットは1万Crもするのだ。 僕は、そうですね、と口で言いながらもあきらめていた。 こうして2人で一緒に生活し、好きな本を読んだり、伝説の話をしたりしているだけでも、僕は十分だと感じていた。 それでも、マスターはお金持ちだから、その内近場のいくつかの惑星程度ならば、一緒に旅行することが出来るかもしれない、そう考えてはいた。 ところが・・・。 マスターは僕が想像していた以上のバイタリティの持ち主だった。 しばらくして、マスターは宇宙船を手に入れるための活動を始めたのだった。
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