イフェイト会戦

帝国暦578年第122日、ゾダーン・ソードワールドの連合艦隊は「タヴォンニ会戦」において帝国ランス星域艦隊を撃破した。  
翌第123日、フレンジー星系もゾダーン軍の手に落ちた。  
これらの戦いで、ゾダーン軍はわざと帝国のXボートの離脱を妨害しなかったと言われている。それらのXボートがもたらす敗北の情報により、帝国の士気が低下するのを見越してのことだった。  
同日、イフェイト星系では、偵察局ステーションを巡る攻防戦が始まっていた。
最初に戦闘に参加していたのは、帝国側が軽巡洋艦2隻と防衛艦2隻、ゾダーン側が重巡洋艦4隻にすぎなかった。  
しかし、両軍は次々と増援を同空域に派遣し、最終的には帝国側が戦艦2隻、重巡洋艦4隻、軽巡洋艦2隻、駆逐艦4隻、防衛艦2隻という兵力になり、ゾダーン側も戦艦1隻、空母1隻、重巡洋艦4隻、軽巡洋艦5隻、駆逐艦1隻が戦闘に参加した。  
これをゾダーン軍司令部は、開戦以来ずっと全面衝突を避け、増援が来るまで持ちこたえようとしていた帝国軍を無力化する、絶交のチャンスと捉えた。  
ここに「イフェイト会戦」が始まる。  

ゾダーン艦隊は駆逐艦を先頭に、最後尾の戦艦まで順に排水素量が大きくなっていく形で一列の単縦陣を敷き、帝国艦隊を右舷上方に見る形で布陣した。  
一方の帝国艦隊はこれを包囲しようと、戦艦2隻を中央に据えてV字の陣形で展開した。  

第123日10時21分、相対距離33万Kmの時点で、まず帝国の戦艦「ポルメルン」と「ハノーバー」が主砲による攻撃を開始した。これに対してゾダーン側も戦艦が応射、全艦がこれに続いた。  
その後は両軍の陣形は入り乱れ、それぞれが手近な敵艦を攻撃するという乱戦になっていった。  
接近して全火器による乱射を行おうとする帝国艦艇を、ゾダーン艦艇が避けつつ応射し、そこに空母からの戦車部隊が突撃するという戦いが、延々と4時間続いた。  
途中、敵中に孤立した帝国の重巡洋艦「ボールドウィン」が、ゾダーンの軽巡洋艦と2000Kmの至近距離で戦闘するという事態も発生したが、有効弾は少なく、どちらも撃沈に至らないままに離脱した。  
その後も両軍の射撃戦は継続したが、やがて帝国艦隊を逆包囲したゾダーン艦隊が徐々に圧倒し始め、15時10分には「ポルメルン」が機関を破壊されて航行不能に陥り、同18分に重巡洋艦「バーラム」に衝突、これを巻き込んで爆発した。  
ここに至って「ハノーバー」を始めとする帝国艦隊は後退を開始、惑星イフェイトへ向かって転回を始めた。  
これに対応してゾダーン艦隊は軽巡洋艦5隻を突撃させ、先頭の「ハノーバー」に攻撃を集中して帝国艦隊の退路を断とうとした。  

15時45分頃に「ハノーバー」は8発の命中弾を受けて四散した。続いて15時55分頃には軽巡洋艦「サロベツ」が、16時過ぎには駆逐艦「ロンベルタ」が撃沈された。  
さらに傷ついた重巡洋艦「ボールドウィン」が航行不能となり、ゾダーン軍に降伏、戦車隊に機関を破壊された防衛艦「ロズウェル4号」もこれに続いた。  

結局、帝国軍はこの戦闘で戦艦2隻、重巡洋艦2隻、軽巡洋艦1隻、駆逐艦2隻、防衛艦1隻と、14隻中8隻を失い、対するゾダーンに与えた損害は軽巡洋艦の大破1隻と戦車数台撃破だけという、一方的な敗北に終わった。

By 龍太郎氏

龍太郎氏による、辺境戦争史第4回。

戦闘は山場を迎え、両軍の主力が衝突!
どこか懐かしい雰囲気の艦隊戦は燃えるものがあります。

化夢宇留仁

NEXT