カタンの開拓者たち

1995年ドイツゲーム大賞受賞



 言わずと知れた超名作。
このゲームがあったから今のドイツゲームがあるのは間違いない。
※画像はアメリカのメイフェア社が出している版(20100429現在)


 「カタンの開拓者たち」は、6角形のタイルを組み合わせて作るカタン島を開拓するゲームである。
画像はその組み合わせ例の1つ。全ての地形は別々のタイルであり、更にタイルの上にある数字も個別のタイルになっている。
これらを自由に組み合わせることで、様々なバリエーションが楽しめるようになっている。
ちなみに画像は「砂漠」地形が左下に配置されているが、カタンのバージョンによっては「砂漠」は必ず中央に配置するように決まっている場合もある。


 ゲームの手順は、まずサイコロを2個振って出た目の地形から資源を受け取り、その後交渉と貿易、最後に開拓地の開発という流れになる。
 資源の生産は、手番プレイヤーか否かに関わらず、出目の地形に隣接して開拓地を持っているプレイヤー全員が受け取れる。
このルールのおかげで待ち時間もサイの目に一喜一憂して盛り上がるように出来ている。
 もちろん資源がたくさん手に入った方が有利なのだが、7の目が出ると、資源の手札が8枚以上のプレイヤーは全員半分(切り捨て)の資源を捨てなくてはならず、7を振ったプレイヤーは盗賊(画像のコマ)を移動させる。
移動させた地形に隣接する場所に他のプレイヤーが開拓地や街を作っていたら、そのプレイヤーからランダムで1枚資源カードを盗むことが出来る。
また盗賊がいる地形タイルからは資源が生産されなくなる。
 6面体サイコロ2個の出目合計は7が6/36の確率であり、それ以外は小さく、または大きくなるに連れて1/36ずつ確率が低くなる。
したがって7に近い目の地形タイルを確保したいが、そういう場所は盗賊に狙われやすいというリスクもある。

 ゲームはプレイヤーの誰かが10勝利ポイントに達した時点で勝利して終了する。
勝利ポイントは、大きく3つの要素から得ることが出来る。
 1つ目は開拓地で、開拓地と街の2段階があり、それぞれ1点と2点になる。
各プレイヤーは初期配置で開拓地を2つ配置しているので、ゲーム開始時から勝利ポイントを2点持っていることになる。
 もう一つは画像のようなチャンスカードで、そのまま書かれている通りの勝利ポイントとなる。
 最後は最大騎士力と最長交易路で、最大騎士力はチャンスカードの騎士を3枚以上公開した上で一番数多く公開しているプレイヤーが該当し、2勝利ポイントになる。
最長交易路は、開拓地をつなぐ交易路を5つ以上続けて配置した上で、一番長くつなげているプレイヤーが該当し、同じく2勝利ポイントとなる。
 このように勝利ポイントの得方がいくつも用意されているおかげで、ゲームの状況によって勝利ポイントを稼ぐ方法が選択でき、結果最後まで逆転の可能性のあるゲームバランスになっている。
ここは現在のドイツゲームの基礎とも言える重要な部分だと思う。

 資源カードの一部。
左から「小麦」「羊」「鉄」「木材」
他にも「粘土」がある。
 手番の最初に振ったサイコロによって、各プレイヤーは地形に応じた資源を手に入れる。
カタンではなにをやるにも資源が必要なので、生命線とも言えるカードである。

 資源の生産が終わったら、交渉と貿易が行える。
 交渉は他のプレイヤーとのやりとりであり、主に資源カードを交換する。
 貿易は3種類ある。
1つは国内貿易で、同じ資源カード4枚を出すことで、好きな資源1枚と交換できる。
 もう1つは海外貿易で、専用の港の場所に開拓地があれば行える。
海外貿易では同じ資源3枚で、好きな資源1枚と交換できる。左の画像がその港。
 最後が専用の港による貿易で、これもその港に開拓地が必要。
専用港による貿易は、その港に記されている資源2枚を出すことで、好きな資源1枚と交換できる。 
左の画像は木材専用の港である。

 手番の最後に開発を行う。
開発は条件に合った資源カードを支払うことで行われる。
 交易路を延ばすには、「木材」と「粘土」が必要。
 新たな開拓地を建築するには「木材」「粘土」「羊」「小麦」が必要。
 開拓地を街に発展させるには「小麦」2枚と「鉄」3枚が必要。
 開発時に、チャンスカードを手に入れることも出来る。
チャンスカードを手に入れるには「鉄」「羊」「小麦」を支払わなければならない。
 開拓地と街は直接勝利ポイントを稼ぐことが出来るので重要である。
また街は、開拓地なら隣接している地形の資源を1枚手に入れることが出来るところを、2枚手に入れることが出来るようになる。
 画像では青が開拓地を4つ、街を1つ、そして交易路を9本つなげている。
手番の最初のサイの目で10が出れば、青は小麦を開拓地と街の合計で3枚手に入れることができるわけである。
 開発の時に注意しなければならないのは、開拓地は道でつながったところにしか建てることができず、かつ開拓地同士はプレイヤーに関わらず隣接して建てることができないということである。
このルールによって、熾烈な陣取りが繰り広げられるのだ。
 また交易路を5本以上つなげて、プレイヤー全員の中で最長の道を作れば、2勝利ポイントになる「最長交易路」カードが手に入るのも忘れてはならない。

 チャンスカードを引くと、多くの場合画像の「騎士」カードが手に入る。
「騎士」カードは公開することで、「盗賊」を好きな場所に移動して、資源カードを1枚奪うことができる。
 主に自分の地形タイルにいる盗賊を移動させるのに使う「騎士」だが、このカードを3枚以上公開し、かつ全プレイヤーの中で一番多く公開していれば、2勝利ポイントになる「最大騎士力」カードが手に入る。
 チャンスカードには他にも一種類の資源を独占できるカードや、無条件で交易路を2本のばせるカード、そしてそのまま勝利ポイントになるカードなど、強力なものがそろっている。
開拓地が少ないからと言って甘く見ていたら、チャンスカードで一気に逆転勝利されることも多いのだ。


 3人プレイのゲーム終了状態。
盤上では赤が3点、青が6点、黄が6点で勝利条件の10に達していないが、実は青が「最大騎士力」と「最長交易路」を手に入れており、合計で10点に達しているのだ。

 「最大騎士力」と「最長交易路」カード。
 ゲームに勝利したプレイヤーが、このどちらも所持していないというケースは非常にまれである。
逆に言えば、勝利のためにはこのどちらかは必ず手に入れなくてはならないのだ。


 こんな感じで実に多様な要素を含み、それらが見事なバランスで組み合わされた奇跡のようなゲーム。それが「カタンの開拓者たち」である。
1995年にこのゲームが発表され、ドイツゲームの行き先を決定づけた。
このゲームがなければ現在のドイツゲーム市場は無かったのだ。

気楽さ 4
言語依存 2
ソロプレイのしやすさ 3

 ソロプレイは難しくないが、交渉の面白さはもちろん味わえない。
化夢宇留仁の好き度 5

「カタンの開拓者たち」には様々なバリエーションが存在する。
他にもいくつものバリエーションを持つゲームは多いが、「カタンの開拓者たち」の場合は、その多くが日本語で遊べるというのがすごさを物語っている。
ここではそれらをいくつか紹介する。

メイフェア版
 まずは説明に使ったアメリカのメイフェア社版。現在日本語説明書をつけたセットが販売されている。
 地形タイルは同じ地形でも1枚ずつ絵が違ったり、コマも木製で美しく、コンポーネントは最高。また英語版なので、カードに日本語シールを貼らなくてもプレイしやすいというのもある。ドイツ語の方が雰囲気があっていいという意見もありそうだが。
フルサイズで日本語で遊べ、普通に売っているのはこのメイフェア版だけなので、貴重な存在でもある。
唯一の問題は価格の高さ。5000円以上する。

 ※2012年に入り、GPゲームズから日本語版が発売された。
KOSMOS版を元にしており、プラスチック製のコマだがフルサイズで楽しめ、価格も抑えられている。


トライソフト版
 ドイツコのスモス社の旧版を、トライソフト社が日本語版として出していたパッケージ。
一時期は大量に出回っており、化夢宇留仁はオークションで2000円で購入した。
タイルはメイフェア版と同じく大型で、コマは木製。視認性もよく、最もコストパフォーマンスに優れたバージョンだと思う。
ただし最近はほとんど見かけなくなってしまった。

 トライソフト版のゲーム風景。
地形タイルの絵は美しいとまではいかないが、視認性は様々なバージョンの中で最も優れていると思う。
完全日本語版なので、全て日本語で書いてあるのも助かる。
ゲームに集中したいなら間違いなくこのトライソフト版がお勧め。

カプコン版。
友人のT夫婦所有のもの。リサイクルショップで500円で買ったそうな(笑)。
 こちらも完全日本語版で、更に日本に合わせたアレンジを加えている。
と言ってもルールなどはほとんど変わっていないので心配無用。
 カプコン版の特徴はコンパクトさで、地形タイルも半分つながっているのでゲームの準備が楽。やりたいと思ったらすぐに始めることができる。

 カプコン版のゲーム風景。
タイルは他の版よりも一回り小さいので、他の版の拡張セットなどは使用できない。
コマがプラスチック製なのは残念だが、コンパクトで低価格を実現していたことを考えれば当然だろう。
 問題は視認性で、地形をパターンデザイン化しているのだが、それのコントラストがきつすぎて少々見にくい。ゲームを始めてしばらくすれば慣れて問題なくなるが、上のトライソフト版と比べるとその差は歴然である。
 またタイルや数字チップが半固定なのも好き嫌いが分かれるところである。

ポータブル版
 こちらもカプコンが出している完全日本語版。
ポータブルという要素を突き詰め、マグネットの利用やカードの長方形化など、コンパクトでもゲームしやすいように工夫されているのが特徴。
通常カプコン版よりも更にコンパクトでまさに持ち運びサイズなのに、プレイはほとんど遜色なく行えるのは見事。
しかし大きな問題が1つ。
コンパクトなケースに全てを詰め込んだおかげで、ゲームが終わった後にしまうのが非常に困難なのだ。
この困難さはただ事ではなく、ほんの少しのずれでも蓋が閉まらないので、ゲーム自体よりも緊張感があるほどである(汗)。
この欠点さえなければまだ全国の量販店などで手に入るので、万人にお勧めしたいところだったのだが、非常に残念である。
しかし通常サイズの物が手に入らず、家で遊ぶだけということなら、買って別な箱に収納すれば問題ないので、他にカタンを持っておらず、試してみたいという人なら買っても損はないと思う。



 ポータブル版のプレイ風景。
やはり道や開拓地が平面なのは寂しいが、コンパクトで最安値なんだから文句は言えないだろう。


 2012年に入り、約10年ぶりに日本語版が発売された。
GPゲームズという、これまでとまた違う会社から(笑)
しかし今回は気合いが入っていて、拡張セットも全て発売するということなので、この先の展開が楽しみ。
ちうかそう言っておいて最初のやつで力尽きるのではないかと思っていたら(笑)、しっかり「航海者」を発売してくれたので、両方とも購入に至った。


 ボードはパッと見メイフェア版に似ているが、同じ地形で画が異なるということはなく、港は半固定式。
数字チップは別になっている。
視認性はまあまあで、メイフェア版より少しいいかも。
しかし紙質は少し落ち、昨今のドイツゲームの紙質がいかに優れているかを思い知らされる。


 コンポーネントは基本KOSMOS準拠で、コマはプラスチック製になっている。
ここは好みが別れるところだが、化夢宇留仁はやはり木製の方が断然いい。
特に開拓地と街の見分けがつきにくいのと、街道が変に盛り上がってて気持ち悪いのも好きになれない。
 また箱の形が微妙に正方形ではないので、間違った方向にかぶせるとフタが外れなくなるのはいただけない。

 文句も書いたがなにしろ日本語版で、価格も抑え目で発売してくれたのは大きい。
今後もシリーズが続々と登場するよう、売れてくれることを希望。

 ここでおまけ。
拡張セットを用意するにあたって、絵柄の違いは我慢したとしても版によってタイルのサイズが異なるので、どうしていのか分からないケースがあると思う。
そこで分かっている限りで各版のタイルの対角線の長さを表記しておく。

 トライソフト版 91mm
 メイフェア版 90mm
 カプコン版 52mm
 カプコン版ポータブル 40mm
 GPゲームズ版 90mm

 だいたい普通のタイル型のやつは90mmだった。
でもトライソフトの91mmって・・・・・(汗)


 上でも少し触れたが、「カタンの開拓者たち」には様々な拡張セットも出ており、さらには舞台やルールを変更した似て非なるゲームも多数存在している。
それだけ支持を得、また拡張性に富んだ内容だと言える。
その一部をパッケージのみ紹介しておく。

 

 

20100429
20120430追記