アドベンチャーノベルズ

 JICC出版局から出ていた新書版のシリーズ。
特に内容に関わりはなく、様々なタイトルが出ていたが、ノベルズと言うだけあってゲームと言うよりパラレル小説っぽいものが多かったようだ。
同時に新書サイズのゲームブックはろくな物が無いという噂の発生源でもあったわけだが、化夢宇留仁はそのへんは未確認である(汗)。


妖法記
JICC出版局/1987年3月1日初版
辻真先
パラグラフ数 276

 大学生の結城隼人は、同じ大学の榊みのりをなんとか口説き落とそうとしていた。
そこに強烈な光が。
はっと気付くと、隼人は現代なのにまだ幕府が権力を握っている別世界に。しかも自分は隼人之介という倒幕に燃える忍者となっていた。
どうやったら元の世界に戻れるのだろうか?
またみのりの行方は?
 と言うわけで、なんでもやりたがりの辻真先が書いたゲームブック。
戦闘システムは無し。
ゲームっぽいのはアルファベットのチェックによる情報管理くらいで、ゲームブックと言うよりもパラグラフ小説というイメージが強い。
これは元々作家である著者が興味の赴くままに書いたからだと思うが、だからと言ってそれがいいとは限らない。
 化夢宇留仁の見たところ、著者はゲームブックという物を分かっていない。
主人公の描写を三人称で行っているところからして勘違いしていると思う。
勿論三人称で書かれるゲームブックもあっていいのだが、それにはそれなりの理由が必要である。
少なくともそれを意識している必要はある。
シリーズ名がアドベンチャーノベルズだからと言って、ゲームブックには違いないのだ。
しかし本作は読者を楽しませるために三人称を選んだと言うよりも、なにも考えずに書いたらそうなったというように見える。
他の描写や設定、ストーリー展開からも感じるのだが、著者は小説のルールそのままでゲームブックを書いてしまっているのだと思う。
結果主人公に感情移入する前に次々と事件が発生し、コミカルな展開やアクションが繰り返されると共に、どんどん読者と主人公の距離が離れてゆくように感じてしまうのだ。
やりたがりなのはいいが、新しいことにチャレンジする時には充分に研究してからにしてもらいたいものである。
いい加減な気持ちで挑戦するのはおごりであり、失礼だ。
最も最後には著者もそれを感じたのか、あとがきでそれっぽいことを書いているが、勿論手遅れである。

 小説としては、まあまあ悪くない。よくも無いが(笑)。
しかしエロい描写はさり気ないながらも生々しくて、流石はプロ作家とうならされたりしたのだった(笑)。
 また本書の挿し絵は表紙のモンキーパンチを意識しつつも、オリジナルの色気のある絵で、なかなかいい♪
イラストレーターは誰かと探してみたが、モンキーパンチ・プロダクションとしか書かれていなかった。
そうかアシスタントか。

 と言うわけで、いつもより辛口で書いてしまったが、すでにある程度成功している作家がちょっかいを出して書くからには、それなりの覚悟はしてほしいという気持ちからである。


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