一緒にアクシア 大遺産を探せ!
光文社文庫/若桜木虔
パラグラフ数 342

 あこがれの西条優貴ちゃんと喫茶店で待ち合わせ・・・と言ってもサークルの会合なのだが、部長の特権を活かして彼女にだけ時間を1時間早く伝えておいたのだった。
1時間は二人きりだと思っていたのだが、そこにいきなりフランス人の男が現れ、彼女にもたれかかるようにして死んでしまった!
男は弁護士で彼女宛の封書と6つの鍵を持っており、封書には彼女に遺産を譲渡するという手紙が。
ただし遺産を横取りしようとしている勢力がおり、奪われるのを防ぐために遺産に至る地図を5つに切ってそれぞれ違う駅のコインロッカーに隠し、更にその先の謎を録音したカセットテープも違う駅のロッカーに入れてあるということだった。
鍵はそれぞれのロッカーのものだったのだ。
そしてカセットテープは今日の午後5時には時限式発火装置で燃えてしまうと言う・・・。

 システムは無し。要するにパラレル小説というやつか。
しかしその代わりに物語の内容その物がゲームっぽいミステリーに仕上げられており、充分にゲームブックらしい作品と言えると思う。
 イラストがまた時代を感じる雰囲気のあるもので、まさに赤川次郎世界から抜け出したような感じで実にいい。
表紙も同時代を思わせるものだが、こっちは・・・(汗)

 ちょっとやってみたら、いきなり時間内に駅のロッカーを回らなければならないのだが、これが化夢宇留仁がまったく知らない東京が舞台で、しかもロッカーの位置まで影響してくるので絶望的な気分になったが、意外にあっさり間に合った。
やはり地方の人間を意識して簡単にしてあったのか(笑)?
しかし巻末では著者あとがきで、読み始めて10日以内にクリアできたら脱帽だと書いている。
どうもこの後が一筋縄ではいかないらしい。
ちょっと燃えてきた(笑)。

 ちょこちょことプレイしていたら、途中の地下道迷宮で少しつまった。
なにしろ同じ場所は1つのパラグラフで処理しているのに、進行方向の説明は前後左右という理不尽さ。
そりゃあマッピング無しでは迷うわ(汗)。
しかも単なるL字路でも「分岐点」と書かれていたりする。
川を渡るという描写があってから、どちらから来ていても同じ2方向に進んだりも(汗)。
著者の思考能力に疑いを感じる。

もうちょっとやってみた。


妖魔館の謎
光文社文庫/菊池秀行原作
塩田信之・飯野文彦著/スタジオ・ハード編
パラグラフ数 400

 魔樹に生贄にされようとしている娘たちと自分を助け出して欲しいという母親の依頼を受けた工藤明彦は東北へ。
しかし妖魔はずでに彼にも魔手をのばしていた・・・。

 と、いうわけで菊池秀行の妖魔シリーズのゲームブック化。
化夢宇留仁は原作は読んでいないが、だいたい想像は出来る(笑)。
ゲームブックには珍しく濡れ場があり、エッチなイラストもついているのはそれらしい。
 著者は・・・「ルパン三世 暗黒のピラミッド」を書いた塩田氏。しかも17歳のデビュー作だそうな。
もうこの時点で期待はゼロ。どんなくだらない内容になっているかと思いきや・・・
・・・・・・
想像以上でした(汗)。
 文章滅茶苦茶、ストーリー破綻、キャラクター全員キチガイ、状況&情報管理穴だらけ、ゲームブックになってないし、おまけにパラグラフ番号も間違いまくり(汗)。
疑いようもなく、化夢宇留仁が今まで読んだゲームブックの中でワースト1である。
もしかしたら全ての本の中でもワーストかも(汗)。
 プロローグ2行目にして「うたたねしたくなるような午後の昼下がり」とボディーブロー。午前中の昼下がりなど聞いたこともない(笑)。
この後も
「『魔樹の間』には誰もいなかった、ように見えた。誰もいないように見えるのに、黒梛家の下男が数人、どこからか現れた。」
など、クラクラするような文章の攻撃に、化夢宇留仁の生命点と正気度ポイントが削られてゆく。
 いきなり狂ったような依頼内容を受ける主人公にもクラクラだが、重要なキャラクターである3人娘との関わりがほとんど描写されず、描写したと思ったらいきなり肉体関係だったり。
屋敷に乗り込んでいよいよ情報収集&状況把握だと思ったら、やれることと言ったら濡れ場くらいで、入ってくる情報やアイテムは作者だけが知っているキーアイテムであり、それがなぜそこで渡されるのか、主人公はそれをどう考えているのかは一切不明で、伝えるべき所は一切伝わってこない。
戦闘シーンでは、倒した相手がどうなったかは描写されるが、どう倒したかはほとんど描かれない(汗)。
とにかく肉片にしてゆくのだ。とにかく(笑)。
 障害になるものは老若男女皆殺しにする主人公。見も知らない男と会った次の瞬間肉体関係になっている処女。必要もないのに唐突に正体を現す怪物。
登場人物全員見事にキチガイで、感情移入どころの話ではない。
 3両編成の電車の真ん中に乗って、前の車両に移動してから再び前の車両に移動したり(汗)、まったく知らない男の名前を突然呼んだり、探している対象の人物がいつの間にか代わったり・・・(汗)
ちゃんと管理できないなら分岐を作るな(汗)。
 他でも書いたが、選択肢の内容が読者の視点に合っておらず、選びようが無いというのはゲームブックの致命的な欠点だが、本作の選択肢はまさに狂っており、まともに選べる選択肢がほとんど無い(汗)。
依頼をしてきたおばさんが屋敷を案内しようと言っているのに、いきなり娘の方に案内してもらいたいと言い出すなんてあり得る行動か?
客が来たというので座敷に顔を出したばあさんが怖い顔をしていたからと言って、いきなり攻撃するか?
なんとかまともな行動に近いものを選んで進んでいっても、パラグラフ番号間違いで辻褄が合わなくなったり、そもそも辻褄のあうような内容が書かれていなかったり(汗)。
 またルールの適用も滅茶苦茶で、本来読者が選択すべき所の多くを能力値の上下の判定で進むようになっており、ストレスがたまる。
地下の暗闇の中を歩いていて、墓所らしきところを見つけ、そこに入ってみるか、素通りするかの分岐が能力値で判定である。
こんなのが山ほどあるのだ(汗)。
そして選択できると思ったら、上記のような狂った選択肢が並んでいるのだ(汗)。

 とにかくこんな酷い本はなかなか見ることが無いという意味では、価値ある1冊と言えるかもしれない。
映画で言えばZ級?「死霊の盆踊り」みたいなものか(汗)。
そしてあとがきで、著者は「このゲームブックは、(日本のゲームブックの中で、群を抜いているとは言いませんが、)かなり面白いものにできたと思います。」とのたまっている。
出た当初に定価で買っていたら殺意が芽生えたと思う(汗)。

 ところで本書のイラストは素晴らしい。
表紙は生頼御大だし、挿し絵も新人ながら菊池秀行世界らしい雰囲気満点の絵で、こんな内容にはもったいない。
少なくともこの二人には内容が酷いということの責任は無い(笑)。

20070708


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