デュマレスト・サーガ16
野望の惑星ハラルド

小説/E・C・タブ著/沢万里子訳
創元推理文庫1983年10月28日初版

入手方法/古書店 オークション


 デュマレスト・サーガ第16作。
一見見事に管理され、清潔な世界のように見えるハラルドにデュマレストはいた。
ハラルドには巨大なコンピュータによる情報サービスがあり、手に入れたスペクトルを調べてその所在を知るためだった。
しかしハラルドでは金が全てであり、料金はデュマレストに払える額では無かった。
なんとかツテをたどり、候補の絞り込みを行うが、そこにはすでにサイバーの魔手が延びていた・・・。


おもしろさ 3

 前半はハラルドでのシティー・アドベンチャー。
中盤は宇宙船内でのサイバーとの駆け引き。
最後は惑星ザキムでの戦いと、めまぐるしい展開は相変わらず。
その中でも一番の見所は、やはりサイバーとの駆け引きである。毎回絶体絶命には陥るが、やはりサイバーが相手だとほんとに絶望的な状況に。
最後の舞台であるザキムは、色々な仕掛けが用意されている割には特に本編に関係が無い。
なぜかと思ったら次巻もザキムが舞台なのだった。
流石のデュマレストも、今回の危機脱出はしんどかったらしく、ザキムにとどまると言ってしまったのだ(笑)。
今までにない展開に、次巻が楽しみである。

 ところでこのシリーズでちょくちょく使われる技法に、デュマレストがその後到着する世界の、その後出会う人々の描写のカットインがある。
なにしろ変わった文化や社会が出てくるし、デュマレストが着いてからいきなり説明していたのでは物語に入り込みにくいので、カットインは実に効果的だと思う。
しかしデュマレストと(まだ)関わりが無い状態の世界や登場人物の物語は、時に退屈なのも確か。
しかも世界の奇妙な部分は特に説明せず、デュマレストが遭遇してから初めてそれがなにかを明かすパターンが多いので、余計に分かりにくい。
全体の構成としては、それで面白くなっているのは確かなのだが、そこを読んでいるときの退屈感だけはなんとなく勿体ないような気がする。


トラベラー度 4

 ハラルドの雰囲気は実にトラベラーっぽい。

 

レフリー度
 世   界 3  ハラルドはそれっぽいが、ザキムは幻想的すぎるか?
 ストーリー 4  ほとんどそのままシナリオに出来る。
最後の展開とかは傭兵にもピッタリ。
 フレーバー 3  やっぱり宇宙での死体処理はこうありたい(笑)。

お気楽度 3  上記カットインから始まるので、特にこの巻はシリーズ通して読んでないとわけが分からないだろう。

投稿者/化夢宇留仁 20070819


 


デュマレスト・サーガ17
死霊の惑星ザキム

小説/E・C・タブ著/鎌田三平訳
創元推理文庫1983年12月2日初版

入手方法/古書店 オークション


 デュマレスト・サーガ第17作。
とりあえずザキムにとどまることにしたデュマレストだが、一度目をつけられたザキムは、貪欲な者たちの羨望の場所と化していた。
やむなく新たな脅威と戦うことを決意するデュマレストだったが、彼は精神交換の後遺症に悩まされており、更にはまいたと思っていたサイバーの魔手も迫っていた・・・。


おもしろさ 4

 前半は傭兵ガートックと、彼の近辺で起きた宇宙友愛協会の僧侶殺人事件、そしてザキムで微妙な立場に立つデュマレストの様子がカットバックで描かれている。
面白いのは勿論殺人事件の方で、まさにミステリーな展開にワクワクさせられる。
後半の戦争状態に入ると少しトーンダウンするが、まさにSFな展開で飽きさせないのは流石。
謎のサンガリ族の正体も明かされるが、これは予想外のような、予想通りのような、中途半端なツボを押さえていて気持ちよかった(笑)。


トラベラー度 3

 前半のミステリーは実にトラベラーっぽい雰囲気。
後半もそれなりに。

 

レフリー度
 世   界 2  結局デルシアは単なる幻?
 ストーリー 4  シナリオに利用できるソースは多い。
 フレーバー 3  サンガリ族の描写は面白かった。

お気楽度 3  本作は特に前作を読んでいる必要がある。

投稿者/化夢宇留仁 20070821


 


デュマレスト・サーガ18
希望の惑星アス

小説/E・C・タブ著/大西憲訳
創元推理文庫1983年12月30日初版

入手方法/古書店 オークション


 デュマレスト・サーガ第18作。
惑星ジューバの<迷宮>と呼ばれるスラム街を歩くデュマレストは、女の悲鳴を聞きつける。
傍観から助け出された女はサーディアと言い、元ダンサーの美術商だった。
彼女は掘り出し物の画家を捜しているのだと言い、1枚の絵をデュマレストに見せる。
サイクランが迫っているのを感じ、宇宙港へ急いでいたデュマレストだったが、その絵に描かれていた衛星に目が止まった。
骸骨のようにも見えるその表面は、彼が幼少の頃に見覚えた月だとしか思えなかったのだ。
やがて彼女と共に惑星アスにたどり着いたデュマレストは、 アーシュラという女性が地球のデータを覚えているのに驚き、なんとか場所を聞き出そうとするのだが・・・。


おもしろさ 3

 色々な意味で、シリーズの中でも少し毛色の変わった作品。
とりあえず女性キャラが多いのと、アスの生活がぶっとびすぎていて想像できないのと(笑)。
それでも最後まで飽きることはなく楽しめるのは、シリーズの骨格がしっかりしているからだろうな〜。
今まで数え切れないくらい乗っているのに、本作の船旅だけは旅行気分が味わえるのも変(笑)。
サイバーが出てきたと思っても、結局デュマレストの前に登場しないのも変(笑)。


トラベラー度 3

 アスの変さはトラベラーと言うよりも、スタートレックっぽい?

 

レフリー度
 世   界 3  
 ストーリー 3  メインのトリックは一度利用してみたい。
 フレーバー 3  様々な芸術(?)描写?
そう言えば作中のミュージックキューブは、なかなか大した宝のようだったが、 1000曲収録って初期型i-Podと同じですな(笑)。

お気楽度 3  変なので少し読みにくいかも(笑)?

投稿者/化夢宇留仁 20070826


 


雨ぞ降る

小説/光瀬龍
短編集のタイトル/−調査船報告−オーロラの消えぬ間に
早川文庫1984年6月15日初版/420円

入手方法/古書店 オークション
普通では手に入りません


 270年に一度、雨季を迎える惑星スーサ。この星の開発基地からの通信が途絶えた。状況確認を指令された調査員リトルバラは激しい雨と風、開発基地に辿り着くが、そこで見た基地の内部は・・・。


おもしろさ 4

 自然の猛威と開発基地の謎と、やはり寂寥感。この感覚はやみつきになります。


トラベラー度 4

 偵察局のダンジョンもの。デス・ステーションみたいな感じ。

 

レフリー度
 世   界 5  その設定はまんま使える。 
 ストーリー 4  冒険型シナリオで迷宮ものとして、そのまま使える。オチに工夫が必要。
 フレーバー 3  雨の惑星と荒廃した基地の雰囲気は、そのまま使える。

お気楽度 4  20ページの短編です。

投稿者/masakiさん


 


デュマレスト・サーガ19
砂漠の惑星ハージ

小説/E・C・タブ著/沢万里子訳
創元推理文庫1984年3月2日初版

入手方法/古書店 オークション


 デュマレスト・サーガ第19作。
デュマレストが船客として乗り込んでいた貿易船ウルシャ号は、突然コースを変更し、砂漠の惑星ハージに客達を放り出した。
文句を言う客達の中で、ただ1人デュマレストだけは、これがサイバーが自分をっつかまえる為に行った計略だと分かっていた。
計略は完璧だった。
ハージの砂漠では宝石の砂嵐が吹き荒れ、あらゆる物は削り取られてしまう地獄であり、バリヤーで守られた街の中はトイチの金利が人々を縛り、払えない者は砂漠に追放されてしまうと言うこれまた地獄だったのだ・・・・・・。


おもしろさ 4

 同じような境遇となったせいで、デュマレストと他の乗客達が仲間として行動するのが新鮮で楽しい。
すごくRPGっぽくもある雰囲気。
みんなで繁華街で店を冷やかしたりサギで金を儲けたりしているところは「盗賊都市」のノリ(笑)。
後半は砂漠での宝探しになるが、これまた実にTRAVELLERっぽく、ヘックスマップを用意してチェックしてゆきたくなる(笑)。


トラベラー度 5

 「TRAVELLERはこんなゲーム」と言って手渡せるレベル(笑)。
特に初期のシナリオの雰囲気に近い。

 

レフリー度
 世   界 4  高金利惑星(笑)
 ストーリー 5  この行き当たりばったり感はまさに(笑)。
 フレーバー 4  歌う石、宝石嵐の砂漠、巨大砂トカゲ、地下の別世界

お気楽度 4  久しぶりに直球のストーリー。

投稿者/化夢宇留仁 20070901


 


デュマレスト・サーガ20
刺客の惑星ヒアカーヌ

小説/E・C・タブ著/佐治弓子訳
創元推理文庫1984年4月6日初版

入手方法/古書店 オークション


 デュマレスト・サーガ第20作。
惑星イーリアスの土木工事現場で働いていたデュマレストは、突然大量の土砂に生き埋めにされる。
なんとか掘り出されて命拾いするが、パワーショベルのパイロットだった男、メンサーは執拗にデュマレストを狙い、今度はシャワールームで襲いかかってくる。
やむなくメンサーを殺したデュマレストは、自由貿易船エンティル号の乗組員としてイーリアスを離れる。
そこに船客として乗り込んできた者たちの中に、レオ・ボクナーという男がいた。
彼はサイバーに雇われた追跡者だった・・・・・・。


おもしろさ 4

 デュマレストがサイバーの刺客に狙われる話はいくつかあるが、本作ではその刺客レオ・ボクナーの視点が多いのが変わっていて面白い。
またデュマレストに近い能力をも備えた男の眼で見ることで、あらためてデュマレストのすごさが浮かび上がるのもいい。
それ以外では、ヒアカーヌでのサバイバルぶりがやっぱり楽しい。
まさに冒険物語の王道な展開です。


トラベラー度 4

 貿易船のクルーの雰囲気や、後半のサバイバルなどは、実にそれっぽい。

 

レフリー度
 世   界 3  
 ストーリー 3  
 フレーバー 4  自由貿易船のクルーとしての生活、サバイバル、厳しい自然環境、肉食水棲動物、肉食巨大昆虫

お気楽度 4  ボクナーが変で先が気になる(笑)。

投稿者/化夢宇留仁 20070901


 


デュマレスト・サーガ21
空想惑星エスリン

小説/E・C・タブ著/鎌田三平訳
創元推理文庫1984年5月24日初版

入手方法/古書店 オークション


 デュマレスト・サーガ第21作。
惑星オノールディに身を寄せていたデュマレストだが、平和な日々は奴隷商人の襲撃によって終わった。
惑星エスリンの女皇に買われたデュマレストは、命と引き替えに彼女の娘を助け出すことに。
その娘は何年も前に、古代の異星文化の産物と思われる物体に、精神を取り込まれているらしかった・・・。


おもしろさ 4

 TRAVELLER専門だと思っていたデュマレスト・サーガだが、実はナイトメア・ハンターでもあったのだ(笑)。
しかしやっぱりデュマレスト。少女の夢も一筋縄ではいかない。
印象的だったのは、ドアを開けた瞬間の奇怪なビジョン。
実に不吉で、はっきりとしたビジュアルが楽しい。
オチも工夫されていて、なかなか意外で面白かった。
宇宙友愛協会の見せ場もあり。


トラベラー度 2

 それっぽいところは多いのだが、メインはナイトメア・ハンター(笑)

 

レフリー度
 世   界 3  
 ストーリー 3  意外にシナリオにしやすいような気がする。
特別ルールが色々必要そうだが。
 フレーバー 4  奴隷商人の襲撃手段、女性上位世界、疫病の伝播、狂った世界

お気楽度 4  変化に富んでいて目が離せない。

投稿者/化夢宇留仁 20070905


 


デュマレスト・サーガ22
秘薬の惑星エリシウス

小説/E・C・タブ著/大西憲訳
創元推理文庫1984年6月22日初版

入手方法/古書店 オークション


 デュマレスト・サーガ第22作。
サイクランの最高責任者であるマスター・ネクァルは、デュマレストが秘密を隠したまま死んでしまったことの責任をとり、文字通り処分されようとしていた。
ネクァルは自分が中央知性体に接続される最後の望みとして、変調をきたした脳に接続され、その原因を探ることを決意する。
 一方デュマレストは、心を読む力を持つ男、ハンス・ザルマンと出会い、彼が地球の場所を知っている男を知っていると言われ、その男のいる星へ向かう。
その惑星エリシウスは、誰も働こうとしないのに飢えもない、平和な世界だった・・・・・・。


おもしろさ 3

 奇妙な男、ザルマンとのやりとりが面白い。
またサイバーのドタバタも面白い(笑)。
しかしデュマレストがエリシウスに着くと、なんとも言えない気持ちの悪さ、悪夢の中をもがいているような気分にさせられる。
と言うのも、デュマレストが次第に狂っていっているのを主観的に描いているからで、これは作者の狙い通りだろう。
それにしてもデュマレストがあんな事を言うなんて(笑)。
 後半は鉱山発掘大冒険となるのだが、なかなか雰囲気があって楽しい。
しかしオチはもう一つか。
感情的なキャラクターの行動がメインストーリーに絡むのは、このシリーズでは珍しいと思う。
ザルマンのオチの付き方も肩すかしなような。


トラベラー度 3

 エリシウスの設定が変わっているので、いつもよりはトラベラーらしくない。

 

レフリー度
 世   界 3  
 ストーリー 3  ストーリーとしては難しいかもしれないが、シナリオとしての見せ場は多い。
 フレーバー 4  心を読む男、空の色、生物原料の麻薬、鉱山試掘

お気楽度 3  キャラクターが全体的に少し悪夢っぽい。

投稿者/化夢宇留仁 20070908


 


ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]

映画/2005年アメリカ/ティム・ストーリー監督

入手方法/廉価版DVD発売中


 太古の昔に地球をかすった宇宙嵐。人類の発祥はそれが原因であるという仮説を立て、再接近しようとしている宇宙嵐のデータを修得しようとする科学者リード・リチャーズは、資金難の中、旧知の仲だが、権力欲の強いビクターに資金援助を要請する。
ビクターの所有する宇宙ステーションで、宇宙嵐観測の準備をするが、なぜか宇宙嵐は予想を遙かに上回るスピードで接近し、彼らは特殊な宇宙線を浴びた・・・。


おもしろさ 3

 お気楽スーパーヒーローものとして、それなりによく出来ていて、最後まで退屈することはなかった。
詳しくは「記録&感想」コーナーで(笑)。


トラベラー度 1

 近未来の地球が舞台のアメコミ。

 

レフリー度
 世   界 0  
 ストーリー 2

 宇宙嵐でDNAが変化して超人になるというシナリオも・・・・無理かな(笑)?

 フレーバー 3  冒頭の宇宙ステーションで、その物ズバリ、アイリスバルブが動いているところを見ることが出来ます。

お気楽度 4  お気楽だけど、ジェシカ・アルバファンでないときついかも(笑)。

投稿者/化夢宇留仁 20070911


 


デュマレスト・サーガ23
異形の惑星クルディップ

小説/E・C・タブ著/大西憲訳
創元推理文庫1984年9月28日初版

入手方法/古書店 オークション


 デュマレスト・サーガ第23作。
行きずりの家族の女の子にぬいぐるみを買ってやるデュマレスト。
しかしその直後、女の子は凶暴な人工の獣に襲われていた。
なんとか女の子は助け出すが、彼も傷を負い、学術惑星アッセリウスに行く船に乗り遅れてしまった。
デュマレストはアッセリウスで、鉱山で死んだ男が地球の座標を手に入れた過程を突き止めるつもりだったのだ。
獣を作ったチテーム研究所の所長シャリス・チテームの援助でアッセリウスにたどり着いたデュマレストだが、そこは大学がひしめき合って学生を取り合いしている奇妙な世界だった・・・。


おもしろさ 3

 変てこなアッセリウスの社会は面白く、そこでのミステリーも興味深いが、もう一つ物語に一貫性が無いような。
クルディップでの逃走劇はなかなか壮絶。
ミステリーあり、アクションあり、SFトリックありで、要素的には満載。怒りっぽいサイバーも初登場(笑)。
それにしてもデュマレストって、こんなに子供に感情移入しやすいやつだっけ(笑)?


トラベラー度 3

 ちょっと特殊すぎ?

 

レフリー度
 世   界 3  大学惑星とか生物研究所が一番の産業の惑星とか。
 ストーリー 3  ピックアップして利用できそうな部分は多い。
 フレーバー 4  人工の猛獣の見世物、大学運営の裏側、祭り、様々な人工生物、人工生物のバイヤー、超能力による擬態

お気楽度 3  

投稿者/化夢宇留仁 20070916


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