@TRAVELLERの世界

この章では、プレイヤーのロールの参考になる典型的なTRAVELLERたちの生活や、日常を解説してゆきます。
もちろんここに紹介する以外の日常もあれば、生活もあるのですが、この章を読むことで、TRAVELLER世界の常識が感覚的に理解できると思います。

TRAVELLERの宇宙生活。

TRAVELLERの宇宙空間での生活・・・・と言っても、真空中で宇宙服を着て、というものではない。
もちろんそういう機会もあるが、、ここでは宇宙船に乗って旅をしている時の、典型的なTRAVELLERの生活を解説する。

大きく分けて、TRAVELLERで宇宙旅行をする場合の生活は、2つに分類できる。
まずは普通の乗員、旅客、密航者など。
もう一つが、コールド・スリープの利用者。
コールド・スリープを利用するケースは、いくつか考えられる。
代表的なのが、2等チケットを買って乗り込んだ船客。
2等チケットは、1等、特等に比べて桁違いに値段が安いので、旅費を安くしたい人の利用が多い。
他にコールド・スリープを利用するケースといえば、予備乗員の口減らしであるとか、スペースの節約など、重要な任務を負っている軍艦などで見られるようだ。
なぜ重要な任務なのか?またなぜ値段が安いのか?
この理由ははっきりしている。コールド・スリープを行った場合、そのまま命を落とす可能性があるのだ。
特に身体の弱い人、心臓に欠陥のある人などは止めておいた方が無難だろう。
本題に戻る。
コールド・スリープを利用した場合、船旅は一瞬で終わる。
冷凍処置室で眠り、同じ部屋で目覚めたら、もう目的地に着いている。

ではもう一つの普通の船旅をする場合はどうか?
ここでは最もプレイヤーが経験する機会が多いであろう、自由貿易船の乗組員を一例にあげて解説する。


自由貿易船ドンキホーテ号のパイロットで、一応船長ということになっているマルコ・ロイドは、出発に際して、パイロット席に付き、機関室からの報告を待っていた。
メインモニターにウィンドウが開き、機関士ジャニアスの顔が映った。
「パワープラント点火終了。ノーマルドライブ点火に入ってよいかの?」
マルコは了解すると、エネルギーゲージに目をやる。
パワープラントで生産されたエネルギーが、ノーマルドライブに注入されて行く様が表示されている。
一応予定通り進んでいるようだ。
船のエンジン関係は、大規模な設備の割にナイーブで、ちょっとした事ですぐ問題が発生する。
この前の出航の時には、ノーマルドライブが言うことを聞かず、点火が20分も遅れて客が騒ぎ出して大変だった。
「ノーマルドライブ点火終了」
機関士の報告にゲージに目をやると、確かにドライブがアイドル状態で点火されていた。
耳をすますと、パワープラントからの静かで重い低音に加えて、ドライブがアイドル状態であることを示す可聴域ぎりぎりの高音も聞こえてきていた。

これからはマルコの仕事である。
隣の席で乗組員のアリスが乗客向けのアナウンスをしているのを聞きながら、反重力プレートにエネルギーを送り、船を離陸させた。
メインウィンドウの眺めがゆっくりと眼下へ消えてゆき、青い空しか見えなくなった。
EMSでチェックしたところ、コース上に障害物はない。
宇宙港管制室も、離陸OKのサインを送ってきている。
マルコは船内反重力制御パネルに目をやり、正常なのを確かめると、 一気にスロットルを全開にした。
ノーマルドライブが巨大なエネルギーを推進力に変え、船尾スラスターから射出される。
船は一気に最高加速度の1Gに達し、 どんどんスピードを上げながら成層圏へ・・・・・・・・・

視界が星空で埋め尽くされた頃、ブリッジ左の航法パネルにロボットサンチョがつき、目的地へのジャンプに必要な航法計算を始めていた。
ジャンプは、重力波の影響を受けやすいために、少なくても近隣惑星と直径の100倍の距離を置かなければならない。
ジャンプ可能域まではまだ数時間かかる予定だったが、慎重派のサンチョのことだ。出発時の星系データを既存のデータと照らし合わせ、少しでも誤差のないようにしているのだろう。


ここに登場したロボットのサンチョは、帝国でも高性能な部類に入る万能ロボットである。
本来なら彼ら貧乏な貿易商人に買える代物ではないが、ある仕事をこなしたことで、メガコーポレーションの関係者から譲りうけたのだ。
「慎重派の」という書き方がされているが、これはあくまでマルコの感想である。
人工知能に慎重派もめんどくさがりも無い。
高性能なロボットは感情があるように勘違いしやすい。しかしTRAVELLER世界の住人は、ロボットに感情が無いのは当たり前のこととして知っている。
それはプレイヤーキャラクターも同様の筈である。この辺の微妙なロールプレイは、うまくいくと未来のテクノロジーを表現すると共に会話の面 白さも増すだろう。

今回はスチュワードのクルスから、連絡がない。多分何とかうまくやっているのだろう。
前回は出発が遅れたこともあり、怒ったお客をなだめるのに手を焼いて、ブリッジにまで泣き言を言ってきたのだ。
今ごろ各部屋にコーヒーでも配っている筈だ。

惑星の100倍点に着いた。
サンチョが計算の最終チェックを終え、現在の船の方向と速度も計算通りだと告げた。
ジャンプドライブも点火準備は整っている。
マルコは後を機関室に任すと、エネルギーゲージに目をやった。
ジャンプドライブが大量の燃料を消費しながら臨界へと近づく様が映し出されていた。
秒読みが始まる。
頼むぞ、ジャニアス・・・・マルコは心中で祈った。
ジャンプ航法は約1週間で数パーセクの距離を飛ぶ、銀河帝国になくてはならないテクノロジーだが、それだけに危険も多い。
失敗すれば何処に飛ばされるかも知れず、船が破壊される可能性もあった。
3・・・2・・・1・・・ジャンプ。
メインウィンドウに広がっていた星空が、一瞬後方へ向けて伸びたかと思うと、次には前方からオレンジ色の光が迫り、あっという間にすべてのウィンドウがオレンジ色の空間(?)で満たされた。
ジャンプ・スペースである。
ジャンプインは成功したようだ。

ジャンプに入ってしまえば、パイロットの仕事は機器のチェックくらいである。
マルコは大きく伸びをすると、席を立った。
今日は出航準備に追われて日課である筋肉トレーニングのメニューをこなしていない。
今から続きにかかるとしよう。



約1週間のジャンプ期間中は、船の操作もほとんど必要なく、旅客のいない自由貿易船では乗員に自由な時間が余るほど出来る。
この時間をどう使うかで、プレイヤーキャラクターの個性も出てくる筈。

場合によっては、ファストドラッグという代謝と神経機能を60分の1に下げる薬を飲む場合もある。これを飲めば、キャラクターにとっての1週間のジャンプ期間は、約3時間で終了する。
食料その他の節約にも役に立つファストドラッグだが、保安上の問題がある。
ドラッグを飲んだ人は、 動きが通常の60分の1の速度になってしまうわけで、問題が発生した場合に対処できないのだ。

多くの場合、ぎりぎりの人数で運営している自由貿易船は、いろいろな作業をクルーで手分けして行っている。
パイロットだからといって、操縦が終われば仕事が終わりというわけではない。
設備管理はもちろんのこと、旅客が乗っている場合はホテルとしての業務も必要になってくる。
特等チケットの値段は1万クレジット。日本円にして約100万円である。
恒星間旅行とはいえ、 高いのは間違いない。
客はそれなりのサービスも、当然なされるものと思って乗り込んでくるのだ。

参考までに化夢宇留仁が今までTRAVELLERをやってきて、遭遇したジャンプ中の事件をいくつか紹介する。

乗員が一人ずつ殺されてゆく・・・・・・
密航者の仕業であろうと船内を捜してみたところ、それぞれ自分の都合で乗り込んだ密航者が3人も見つかる。殺人犯はそのうちの一人、壊滅した海賊団の首領で、すでに気が変になっており・・・・

船内カジノで客が暴動・・・・・・
退屈なジャンプ期間を楽しんでもらおうと、ブラックジャックを用意。楽しく盛り上がっていたが、欲をかいた乗員がイカサマをやったのがばれ、一番負けがこんでいた乗客を中心に暴動が発生。乗員はブリッジにたてこもり、船内はめちゃくちゃに・・・・

妙なサイボーグ貴族・・・・・・
二人の子供を連れた貴族が乗り込んできた。彼らは自分たちの世界の風習でサイボーグ化しており、風習にはその強力な身体機能をぶつけ合う遊びも含まれていた・・・船室はめちゃくちゃ。最初に遠回しに奇行があると言われていたので、船長は泣き寝入り・・・・・

 

ジャンプが終わると、船は目的の惑星の直径の100倍の位置にジャンプアウトする(航法計算が合っていれば)。
その後は出発の時と逆の手順で、宇宙港などへ向かう。
多くの設備の整った星には、宇宙港は静止軌道上と地上に存在する。
一般的な決まりとして、軌道上で積み込んだ荷物は軌道上で、地上で積み込んだ荷物は地上で降ろすことになっている。もちろん例外はあるが。

宙港に到着したら、船客をおろし、積み荷を届け先の代理人に引き渡す。
さらにTRAVELLERでは投機品目を扱うことも出来る。
貿易船が積み荷を買って、目的地で売るのだ。
投機品を扱った場合、うまく行けばただ運ぶよりも儲けが出るが、売れなかったらそれまでである。
そのため投機品を購入する時は、それがどのような物で、目的地での需要はどの程度あるのか、調べておくのが望ましい。
またブローカーを雇うことで、この辺の駆け引きを引きうけてもらう手もある。
しかし多くの場合、ブローカーには投機品の売り値の何割かという形で、多額の報酬を払わなければならないので、雇う時にはよく考えた方がいい。

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