Step.2 新天地への旅立ち

Step 2.1 移民船の旅

 移民船での人員輸送は、二等寝台による冷凍睡眠が基本である。そして、冷凍睡眠には死の危険が常に付きまとっている。
二等寝台のおける死亡率は実用品としては許容しがたいレベルであり、廃止すべきなのだが、廃止を求める声は大きくない
し、移民の懐具合と言う現実もある(妊婦や、15才以下の子供特に小児の冷凍睡眠輸送は、体力的な問題から危険が大きいことが予想されるが、
残念ながらこれも斟酌されることはほとんど無い)
 冷凍睡眠を避けたい移民には、特等チケット、一等チケット、雇用船客、密航(オイ)以外に手段はなさそうなのだが、他にも以
下のクラスや旅行方法がある。

Table. 5 恒星間旅行
・ツーリストクラス : 一等と二等の中間にあたる。船室は、与えられても4人の相部屋、そうでなければ一人につき寝台1つのみ。料金は1ジャンプ3000Cr - 4000Cr。生命維持経費は1ジャンプ2000Crとなる。食事や衛生設備については、一般の船客と同じ扱い。荷物の持ち込みは手荷物程度しか許されず、それ以上は有料となるが、移民の場合は気にしなくてよい(後述)。

・カーゴホールド・パッセンジャー: デッキパッセンジャー(※1)の流れをくむ方法。食料を中心として、空気以外のジャンプ中の消費物資(6 - 8日分)は乗客が自前で用意した上で、船倉の空きスペースへの乗船が許される。ただし、飢餓の危険や不衛生と言った問題から避けられることが多い。料金は1ジャンプあたり800-1000Cr。生命維持費用は650Cr(空気代のみ)。荷物の持ち込みは手荷物程度しか許されない。
 カーゴホールド・パッセンジャーは、緊急事態以外での船内への立ち入りは認められない。そしてトイレは緊急事態とは見なされない(笑)。しかし、よほど偏屈な船長でない限り、トイレに行くくらいは許されるし、水が余っていれば風呂にも入れる(それくらいの親切心が無い船長は、最初からカーゴホールド・パッセンジャーは乗せないだろう)。大手でない会社や個人の宇宙船では、船長の親切さにもよるが、客室に空きがあれば、料金そのままで普通の船客並みに扱ってもらえることが多い。逮捕されそうになった密航者を、カーゴホールド・パッセンジャーだと言い張って助けた男気あふれる船長もいる。 
(※1)20世紀初頭の東南アジアにおける短-中距離航路の客船に、食料は自前で持ち込み、船内への立ち入りは禁止と言う条件で上甲板に乗せていた客のこと。エアコンが無い当時では、甲板の方が快適だったとも(笑)

・ドラッグパッセンジャー: ジャンプ中、ファーストドラッグを投与されて転がされている状態の船客。床ずれにならないように時々ひっくり返さねばならないが、重力を切って血液の流れを均等にするのでもよい。ファーストドラッグ(200Cr)とその解毒剤(900Cr)の実費に加えて、1D6 x 100Cr程度の料金。薬物投与のため、宇宙船側には医学技能を持った乗組員が必要。

・自分の宇宙船で移動: お金持ちですね。移住先で苦労すればいいんだ・・・(呪)
 なお荷物や貨物は、人間が上記の方法で移動したとしても、不法移民でない限り無料で運んでもらえる(つまり、荷物は正規
にチャーターされた別の船で運ばれると言うこと)。不法移民や、荷物の扱いが心配な人は正規の料金を支払うこと。残念なが
ら、貨物輸送の料金を減らす方法は知られていない。

Step.2.2 嫌な受け入れ体制

 Step1では受け入れ体制による恩恵を決定したが、ここではデメリットを決定する。こういうものは概して、現地に到着してか
ら判るものである。
 条件を満たしている限り、必ず全部判定のサイコロを振らねばならない。それぞれについて2D6を振って判定する。不法
移民にはこうした申請を行う資格が無いため、恩恵もデメリットも受けることは無い。政治コード0の世界では、ありがたいこと
に貸した金のことを忘れてくれる可能性が50%ある。
Table. 6
嫌な条件
・強制的な資金貸し付け(11+): 一世帯あたり2D6 x 10,000Cr。年利5%。事前の説明は無いことが多い。ただし、取立てはゆるい。要するに、強制的にきっちり働かせるための措置である。

・押しつけ女房/婿(8+): 嫁/婿不足の世界で、独身の移民に対して発生。異性と強制的に結婚、もしくは結婚を前提にした付き合いをさせられる(※1)。事前説明が無いこともある。説明があった場合も、良きにつけ悪しきにつけ、写真と実物が違うことが一般的。相手は地元民、移民の同期のどちらでもありえる。発生しなかった場合でも、頻繁に地域主催の合コンに呼び出されたり、「頼れる先輩」に同年輩の異性があてがわれたりして圧力が加えられる。なお、出目が12だった場合、相手はしっかりした働き者の美男/美女と言う、とてもうらやましいことになるが、判定の出目がピンゾロだった場合は同性が押し付けられる。これが単なる手違いか、意図的なのかはレフリーが決定すること。押しつけ女房/婿の人物設定は自由にしてよい。ただ一般的に言って、裕福な人がこういう役回りを引き受けるケースは少ない。

・子作りプレッシャー(8+): 過疎化に悩む世界で発生。高TL世界における生殖細胞の提供義務、低TLにおける安産祈願の義務化、子供がある夫婦に対する税制上の優遇措置など。発生しなかったとしても、無言のプレッシャーがある。

・専門技術の提供(4+): 人材不足の世界で発生。キャラクターの技能に応じて、医療、治安維持、教員、メカニックなど専門性の高い仕事において、移住後1D6+1年の間、無償の労働を求められる(年間30日程度)。事前の説明はきっちり行われていることが多い。なお、高い技術を持った専門家だからと言って、専門職に就くための移住が歓迎されると思うのは幻想に近い。よほどの著名人で無い限り、仕事を奪うライバルとされ、少なくとも地元民みんなが歓迎してくれることはありえない。かつてアメリカでは、大病院の勤務医の不足で外国人医師を受け入れたが、保守派を怒らせただけだった。

・孤児の養育義務(11+): 過疎化に悩む世界で子供の居ない夫婦に対し、移住して1D3年後から、もしくは独身者が現地で結婚してから発生。以後、子供が出来るまで毎年判定を続ける。特に養育を希望する場合は+5。国内や外世界からの孤児や、虐待等で親元を離れることになった子供の養育をさせられる。通常は一人だが、兄弟がいれば分離され無いため、負担が増える(※2)。

・兵役(10+): 政治コード0かE以上の世界で発生。いきなり徴兵されたり、内戦に巻き込まれたりして1D3年の間、兵隊ごっこをやらねばならない。生き延びさえすれば、財産は保証されることが多い。

・強制収容所(12+): 政治コードB、D以上の世界で発生。持ち込んだ財産は全て没収され、強制労働させられる。その後の展開はレフリーが決定すること。

(※1) 相性が良さそうな組み合わせが選ばれるが、移民、地元民双方ともに元来の人間関係の事情はあまり考慮されない。これによって問題が生じるかどうかは、レフリーが判断すること。
(※2) ヒドイ場合には、実子が生まれる前に押し付けられることがある。これが更なる虐待や育児放棄を生み出していることは、敢えて無視されている。
 強制収容所以外、嫌な条件は拒否しても良いが、それは即ち、移住資格の取り消しになる。生まれ故郷を捨てるリスクとは
そう言うものであり、理不尽であっても結果は受け入れねばならない。不法移民としてそのまま居座ることは可能。実際の
ところ、いったん国籍を与えた以上、原住の国民との間に差別をもうけるのは、例え移民側が得をする内容だとしても
許されることではない。しかし、移民絡みでは往々にしてそういうことが起こるので、問題化しやすい。

例) ダニエル・マラク氏、1313番(仮)に到着
 1313番に到着したダニエル・マラク氏(ちなみに、冷凍はイヤなのでツーリストクラスでした)は、移民局に出頭。今後の説明を受けました。良い条件とし
て、(2D6の結果)住宅支援農業機械一式、なぜか重火器(50口径の機関銃)、頼れる先輩の支援を受けていました。農地分与が無いことに、ちょっと
がっかりのマラク氏です(しかし、彼の資産を考えれば分与されないのが公平でしょう)。さて、問題は嫌な条件ですが…。強制的な貸付はなし。そして、この
嫁/婿不足の世界では…、あっ、出た! 出目10!! 押しつけ女房です! 移民局の担当者は、一人の女性を連れてきて、気の毒そうに言いました。
「マラクさん、あなたはこの人とお付き合いして、ゆくゆくは結婚して下さらねば…。」(ちなみに、資金貸し付けの出目がピンゾロだったので、統計学的にいっ
て彼は同性を押し付けられる危機でした)
 さらに、人材不足でもあるので、年間30日、警察か陸軍で任務につくことを求められました。

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