2015年10月3日 エルドリッチホラーをソロプレイ3

 

 さらに再プレイ(笑)
これまででルールは一通り説明したので、今回は探索者の視点で進めてみる。




 私の名はレオ・アンダースン。
探検家として一部ではよく知られている。
ユカタン半島での探検行を終え、ブエノスアイレスにたどり着いたのだが、当地では怪奇現象が相次ぎ、不気味な空飛ぶ怪物の姿も目撃されていた。
 これは間違いなく私が追い続けてきた太古の邪悪なもの、旧支配者が関わっており、それらの世界とこの世界が繋がる門がブエノスアイレスのどこかに開いているのに違いない。
私はすぐさま用心棒のアーロンを雇い入れ、情報収集を開始した。
また世界各地に散っている私の仲間達にも、いよいよ始まったという電報を送った。


 情報収集の結果、この世に現れようとしているのはシュブ・ニグラスと呼ばれるものらしいということを突き止めた。
詳しいことは分からないが、シュブ・ニグラスは次々と怪物を生み出す存在らしい。
門を通じて世界中に怪物が闊歩するようになった時、シュブ・ニグラスが復活するのだと言う。


 やつらは人気の少ない山間部などに、少しずつテリトリーを広げているらしい。
奇怪な現象が噂されている地域を調査してみなければならないだろう。


 情報収集の間に、新たな協力者も得ることができた。
神秘学者のイスマエルは、当地で旧支配者に関しての研究を続けてきた男で、知識の面で心強い味方と言えた。
※レオの特殊能力で影響力判定に成功すれば、助力カード置き場にある協力者を仲間にすることができる。
 更にこれからのことを考え、船のチケットを入手する。

 3人で郊外の奇怪な目撃情報が集中している地域を探索したところ、夜闇を飛び回る巨大な蜂のような怪物と遭遇した。
イスマエルはその怪物のことを「バイアクヘー」と呼んだ。
なんとか退治しようとしたのだが、怪物の動きは速く、傷を負わせたものの、私もやつの鋭い爪で傷を負ってしまった。


 オーストラリアにいる私の仲間であるサイラスからの手紙が届いた。
オーストラリア中央部の山岳地帯にて、怪しげなカルト教団の動きを張っていたところ、奇妙な儀式に巻き込まれそうになり、なんとか脱出したという。
その教団の名前は「大いなる黒山羊の仔ら」と言い、彼らの言う「大いなる黒山羊」をこの世に復活させるための儀式を繰り返しているのだという。
シュブ・ニグラスに関わる教団に違いない。
これは最初の収穫だと言えるだろう。
しかしまだ情報が足りない。


 そこに新たな連絡があり、極東ロシアの山岳地帯で怪奇現象が繰り返され、怪しい怪物を見たという目撃証言も出始めているらしい。
あのような人も少ない場所でここまで伝わって来るというのは、余程事態が進展していると見て間違いないだろう。
なんとか近い内に調査しなければならない。

 私は出発に備え、船のチケットを追加。
更に脈のありそうな宣教師に声をかけたが、多忙な男で当地を離れることは不可能だった。



 その夜、我々3人は再び郊外の怪物の住処へ向かった。
やはり怪物はそこにおり、こっちのことを覚えているのか襲いかかってきた。
激しい戦いの末、私はまたしても傷を負ったが、怪物を倒すことに成功した。
怪物の住処をよく調べてみると、廃屋の奧の壁に奇妙な光を発する円盤のようなものが口を開けていた。
これこそ異世界に繋がる門に違いない。
我々はその門の奧にあるものを突き止めようと、円盤の中に足を踏み入れたのだった。


 そこは見たこともない広大な図書館だった。
窓は無く、外がどうなっているのか分からない。
多数の何者かの存在は感じるのだが、直接目に入ってくるのは、ただひたすら大量の本が並べられた本棚の列である。
その中に今回の事件に関わる書物が無いかと探そうと思ったところ、いつの間にか私の手には1冊の本が握られていた。
何語で書かれているのかも分からなかったが、なぜかその本を読むことができ、それには複雑な儀式の内容が難解な文章で書かれていると分かった。
これまでに得た超自然的な呪文の知識も総動員し、集中して解読すると、それは遠く離れた場所を行き来できる呪文の儀式だと分かった。
これを使えばブエノスアイレスから極東までも一瞬で移動できるだろう。
私はこの成功に有頂天になっていたが、アーロンが帰り道はどこだと言い始め、入ってきた門が見あたらないことに気付いた。
慌てて門を探すが見つからない。
仕方なく周囲にいる何者かの気配に出口はどこだと問いかけてみた。
しかしなんの変化も無く、我々は図書館をさまよい続け、ブエノスアイレスで目が覚めた時には1か月あまりも経過していた。
※行動不能

 その間に世界は破滅への1歩を進めたらしい。
東京でも巨大な怪獣の目撃談がかわされ、極東ロシアでも何人もの人が怪物に食い殺されたという情報が伝わってきていた。

 早く極東にも調査に向かわなければならないが、ブエノスアイレスに開いたままの門もなんとかしなければならない。
そんなことを思っていた夜、私は夢を見た。
 大きな歯車がいくつも回り、それが巨大な時計に繋がっている。
時計は1時を指しており、見ている前で重々しい音を立てて短針が2時に移動した。
この時計が12時を指した時、この世界にシュブ・ニグラスが復活するのだとなぜか私は知っていた。
ふと気付くと、すぐ隣に黒ずくめのスーツ姿の男が立っていた。
男は巨大な時計を見ながら言った。
「あなたがやっていることは、この巨大な歯車を止めようとしているということです。そんなことが可能だと思いますか?」
私は男の顔を見ようとしたが、帽子の影になっていて、見えたのは冷笑的な口元だけだった。
「止めるどころか逆回しにして無に返してやるよ。」
私の強がりに、男は更に口元をゆがめた。
「今からあの針をもう1時間分進めようかと思います。しかし特別に、あなたが条件を呑めば今は進めないでおきましょう。」
「条件とはなんだ?」
「簡単な契約です。あなたはこの時計を止めるために、魂まで差し出す勇気がおありかな?」
「よかろう。魂でもなんでもくれてやる。時計を進めるのをやめろ」
「いいでしょう。では契約成立です」
男はこっちに振り返った。


 私は大声を挙げて目を覚まし、隣のベッドで寝ていたアーロンも驚いて飛び起きた。
体中に冷たい汗が流れ、左の掌に鈍い痛みがあった。
見てみると、そこには見たことのない印のような火傷がついていた。

 その日我々3人は三度怪物の住処に向かった。
今度こそは門を閉じなければならない。
しかしあの広大な図書館で、門を閉じる方法を見つけることができるだろうか?
不安な思いを抱きつつ門を越えると、そこは初めて見る場所だった。


 暗くしめったその世界は、どう見ても人間の住む場所ではなかった。
我々がいるのはある種の森のようだった。
見たこともない粘液にまみれた木々が乱立している。
目の前にいきなり現れたのは、先日苦労して退治したあの怪物だった。
しかしどうやら怯えているようで、襲いかかってくる様子は無かった。
そこでこの怪物はなにを考えているのか、精神を集中して読みとろうと試みてみた。
するとぼんやりとながら、怪物の考えが分かったような気がした。
この怪物はなにかに使役するために生み出されたもので、指示が無ければ不安に襲われるのだ。
私はこの怪物に門を閉じて元の世界へ戻る手伝いをさせた。
最後に閉じていく門の向こうに見えたのは、立ちつくしているあの怪物の姿だった。


 アーカムに来ていた私の仲間であるトリッシュから連絡が入った。
調査を進めていた邪教の司祭ブラザー・トリスタムの死の床に立ち会い、「聖エロニムスの剣」を手に入れたという。
しかしその結果、彼女の左掌には奇妙な印の形の火傷が現れたという。
なんということか、彼女までも闇との契約を交わしてしまったのだ。
しかし諜報員である彼女の調査は流石に徹底したもので、その教団が各地でシュブ・ニグラス復活のための儀式の手配をしていたことが判明した。
大きな前進だが、まだ情報が足らない。
全てのシュブ・ニグラスを復活しようとする陰謀をつぶさなければならないのだ。


 極東に調査に向かっていたサイラスからも連絡が入った。
極東ロシアの山間部にて、冷気をまとった人食いの怪物と遭遇。
これと戦い、傷を負わせたものの逃げられたという。


 その連絡を受けたすぐあとに、我々は地元の警察に取り囲まれていた。
有無を言わさずに捕まえられ、警察署の1室に放り込まれる。
どうやらここ数日の怪物騒ぎを、その近辺でうろつき回っていた我々のせいだという証言が誰かによってなされたらしい。
 しばらく待たされた後、部屋に入ってきたのはビジネスマンっぽいスーツ姿の男だった。
「警察と税関には話がついています。必要な支払いも、全て終わっています。ここにサインをしていただければ、あなたは義務を受け入れたとみなされ、自由になれます」
誰かが手を回し、我々を罠にはめたのだろう。選択肢は無かった。
サインした後に渡された書類には、私の記憶にはない多額の債務が記されていた。

 警察署から出るとすぐに、ローマにも奇妙な怪物が現れたという連絡が入ってきた。
いよいよ世界は破滅に向かっているのだ。

 もうブエノスアイレスには用は無い。
我々は海路を南アフリカへ移動した。
現地で起こっている連続殺人事件に、普通でないなにかを感じたからだった。


 ある殺人を生業にしている兄弟団の団員が捕まえられたというので、急いでつてをたどり、その尋問に立ち会うことができた。
すると彼らがシュブ・ニグラス復活のための生け贄を集めていたのだと分かった。
更に情報を聞き出そうとしたところで、彼は毒の入ったカプセルを飲み込んで自殺した。
 邪教徒達は犯罪組織にまで手を伸ばしていたのだ。
これで一通りシュブ・ニグラス復活をたくらむ陰謀の全容が見えてきた。

 サイラスから連絡が入った。
極東ロシアの怪物を退治し、怪物達を呼び込もうとしていたらしい魔法陣も見つけて破壊したということだった。

 突然目の前に3人の男達が手に銃を持って現れた。
どうやら早速債務を取り立てに来たらしい。
もちろんそんな金は無いので、逃げ出すしかない。
我々はものも言わずにきびすを返し、路地に逃げ込んだ。
やつらは手分けしてこっちを探し出したようだったが、こうなれば普段から狩り、狩られることには慣れている我々の敵ではない。
1人ずつ背後から捕まえ、2度と取り立てに来ようなどとは思わないような目にあわせてやった。

 アーカムでは幽霊が出たという噂が流れ始めていた。
また門が開いたらしい。


 情報を整理し、我々は状況が第2段階に入ったことを知った。
シュブ・ニグラス復活をたくらむ組織の全容はつかめた。
これからはその組織の陰謀をつぶして回るのだ。
集まった情報の中でまず我々が注目したのは、アマゾンにいるというナグと呼ばれる正体不明の怪物だった。
この怪物は別名を「黒山羊の落とし子」と言い、シュブ・ニグラスが復活するために大きな役割を果たすらしい。
こいつは一刻も早く退治する必要がある。
私はトリッシュを呼び寄せ、アマゾンで合流することにし、アマゾンへ向かうためにブエノスアイレスに舞い戻った。
サイラスは東京の巨大怪獣の調査に向かった。

 ブエノスアイレス大学の図書館に「ネクロノミコン」の写本が所蔵されているという情報が入った。
なんとか見せてもらえないかと交渉するが、公開できないの一点張りだった。
※影響力判定失敗

 ところがそこにトリッシュからの驚くべき報告が入った。
南米の入り口であるコロンビアの古書店で「ネクロノミコン」を手に入れたというのだ。
なんという偶然。

 サイラスからは、東京の地下で巨大な怪物と遭遇したという連絡が入った。
予想以上の巨大な怪物で、なんとか傷を負わせたものの、サイラスも手傷を受けたということだった。

 上海にも怪物が現れたという連絡があった。
神出鬼没の怪物で、その話を聞いた神秘学者のイスマエルは、「ティンダロス・・・」とつぶやいた。
その直後大気に禍々しいなにかが混ざったような、不吉な気分に襲われた。

 そして私は悟った。
なんらかの力が働き、もっと先だったはずのあの契約を果たす時が今来たのだと。
私は全ての時空に存在するある存在に透視されているのを感じた。
そして私の中にある異界の図書館で見つけた知識「虚空拡張」の呪文を見つけ出した時、それは喜びのような感覚を私に与えた。
そしてその瞬間、シドニーで新たな門が開いたことを感じた。
なんてことだ私のせいで新たな門を開いてしまったのだ。
掌を見ると、あの火傷の跡が消えていた。

 そしてトリッシュからの手紙が届いた。
彼女の契約も完了したらしい。
彼女になにが起こったのか、それを訊いてもはっきりした答えは無かったが、彼女は力無い声でサイラスが身代わりになったとだけ告げた。
それ以降サイラスとは一切連絡が取れず、その消息も分からないままだった。


 私は新たな仲間が必要なのだと悟った。
そこでアメリカで出会ったトランペット吹きの男に連絡をしてみることにした。
トランペット奏者ジム・カルヴァーには超自然の敵と戦うことができる不思議な能力が備わっているのだ。

 トリッシュはコロンビアで興味深い人物と遭遇したと連絡してきた。


 その男を仲間に引き入れるのには金がかかり、債務を背負うことにもなったが、充分な見返りがあった。
世界各地に現れる怪物や邪教について研究していたロドリゴという男を仲間に加えることができたのだった。
彼の深い知識は、新たな怪物と遭遇するたびに活かされるだろう。
※モンスター1体を倒す毎に正気度を1点回復し、さらにクルートークン1個を得る。

 準備が整ったと見た私たちは、アマゾンへ向かい、トリッシュと合流した。
もう少しすればジムもやってくる筈だったが、それより先に我々はおぞましき怪物と遭遇してしまった。


 ジャングルに入り、辺りが暗くなった途端に襲いかかってきたその怪物は、まさに悪夢から抜け出したかのような黒い枝の固まりで、それら全てが我々を食い尽くそうとするかのようにうごめいていた。
我々は必死で戦ったが、その枝を数本切り落とすのが精一杯で、更に私はその枝に肩に巻き付かれ、もぎとられそうになった。なんとかアーロン達がその枝を切り離してくれたが、私の左腕はしばらく使い物になりそうになかった。
 トリッシュも「聖エロニムスの剣」を振りかざして勇敢に戦っていたが、やはり傷を負い、怪物を仕留めるには至らなかった。


 這々の体で宿に戻った我々を待っていたのは異常気象だった。
世界中を異常な熱波が襲い、それが何日も続いたのだ。
怪物との戦いで傷ついていた我々は身動きもままならない状態に追い込まれた。
※行動不能

 ジムから連絡が入った。
体力を消耗しながらも合流を急いでいたジムのところには、更なる事件が発生していたのだ。


 イスマエルが言うには、彼を襲ったのは上海にいるはずだった「ティンダロスの猟犬」という怪物だという。
一瞬にして上海からコロンビアに跳んでくる怪物など想像もつかなかったが、この状況では信じるしかなかった。
 なんとか怪物に手傷を負わせてその場はしのいだジムだったが、彼も傷ついたところに熱波が襲い、彼もしばらく身動きが取れない状態に追い込まれたということだった。


 翌日トリッシュが青い顔で告げたところによると、ロドリゴを雇うために金を借りたところから取り立てがあったということだった。
こんなジャングルの近くまでやってくるとはただ事ではなく、それは普通の借金取りではないことを示していた。
そして彼女は左掌を見せた。
そこには消えたはずのあの火傷が現れていた・・・。

 新聞を見ると、サンフランシスコの路上をミイラのような姿が歩いているのが目撃されたというニュースが載っていた。
また新たなゲートが開いたのだ。

 

 ここまではレオの手記である。
その後の記録は、私トリッシュ・スカボローがつけることになった。

 その夜、私は寝ずの番をしていたのだが、いきなりレオの部屋の方でガラスの割れる音がしたのに驚いて部屋を飛び出した。
ロドリゴもあとについてきた。
レオの部屋のドアは開いていた。部屋に入ると、そこには窓から侵入した大量の黒い枝のようなものがうごめき、アーロン達が必死に戦っているところだった。
レオが黒い枝に巻き付かれたまま窓の外に運び出されるのを見、私は階段を駆け下りた。
レオを締め上げている枝の元をたどると、そこに真っ黒な球根のような、そして軟体動物のような巨体がうごめいていた。
私は「聖エロニムスの剣」でめったやたらにそれを突き刺した。
それが動かなくなった時、あたりは日の出を迎えようとしていた。
なんとかこの恐ろしい怪物の息の根を止めることができたらしい。
助け出されたレオは無惨な有様だったが、まだ息があった。
なにか言おうとしているレオに救急手当を施し、南方の都市へ搬送した。
あとは医者に任せるしかない。

 私はこの怪物が出てきた場所がどんなところか興味を持った。
そこでアマゾンのジャングルの奥地を調査してみた。
奇妙な巨石が木々の中に隠されているのを発見した。その近くにあるはいずったような跡は、間違いなくあの怪物のものだった。
その石に触れると、奇妙な感覚があり、周りのジャングルの様相が変化したような気がした。
更に目をこらすが、それ以上なにも見つけられなかった。
背後に気配を感じ、振り向くとそこには巨大な幼虫のような怪物が巻きひげのようなもので私につかみかかるとしているのが見えた。
とっさにかわしつつ、剣を振るうと、怪物のひげが切り取られ、怪物は悲鳴のような甲高い声を発してすごい勢いで地中に潜ってしまった。
あとにはひくひくと動いているひげが残った。
これを調べればなにかが分かるだろう。

 ジムの方は彼が独自に会得した怪物にダメージを与える曲の演奏によって、ティンダロスの猟犬を退治したらしかった。
※呪文「衰退」

 世界の終末が着実に迫っていることを感じる。
頭の中に巨大な時計のビジョンが浮かぶ。その時計は6時を指していた。

 情報を整理し、あの怪物を倒したことで、状況が次の段階に進んだことが理解できた。
あの怪物が倒れたことにより、すぐにシュブ・ニグラスが復活するはずだった計画は阻まれた。
しかしもはや世界は破滅に向かって突き進んでおり、あとは次々に怪物にゲートをくぐらせるだけで、やがてシュブ・ニグラスも復活するだろう。
これから我々はモンスターハンターとなり、片っ端から怪物を殺して周る。
怪物どもにこの世界が棲みにくいところなのだと思い知らせ、ゲートから出てくる気を無くさせるしか道は残されていないのである。

 私はレオの収容されている街に来た。
まずは上海のチェンに連絡を取る。超自然の相手と戦える彼女は、生まれついてのモンスターハンターであり、今の我々の任務にどうしても必要な人物だった。
あとからジムもこの街に駆けつけた。
しかしレオは病院から抜け出してしまっていた。
私はレオの行き先の見当がついたので、ジムにそれを教え、彼との面会はジムに任せることにした。
私にはレオが病院を抜け出した気持ちが分かるような気がしたのだ。

 あとで戻ってきたジムによると、レオは病院に戻ることを納得したらしい。
そして彼はレオが描いた何枚かの地図を受け取ってきていた。
今までにレオが調べた怪物の住処に違いない。

 上海のチェンから返事が来た。
やはりなにか不吉な事が起こっているというのは彼女も感づいており、早速上海に開いていた異界へのゲートを発見し、それを閉じたという。

 その夜、久しぶりに羽根を伸ばそうとみんなで飲みに来ていた酒場で、口論していた客の声が突然悲鳴に変わった。
何事かと見てみれば、客の1人がどこか魚じみた顔つきになり、もう片方の客に食らいついていた。
見る間にその客の服も破れ、鱗に覆われた身体があらわになった。
店内が悲鳴と怒号に包まれる中、私たちは迅速に行動に移った。
私はケースの中から「聖エロニムスの剣」を取りだし、怪物に迫った。
怪物は口論していた客の首筋を食いちぎり、血を吹き出すその身体をカウンターに放り込み、更に他の客に襲いかかろうとしていた。
アーロンがその間に立ちふさがると、怪物は店の外に走り出た。
私は怪物を追い、怪物が向き直ったところで「聖エロニムスの剣」を突き立てた。
怪物が息絶えると、店主の1人が鎧戸式の窓の隙間から外をうかがった。
店主は私が無事らしいことに驚いた様子で、大声で叫んだ。
「終わったのですか?もう大丈夫なんですか?」
私は手を振った。
店から1人の男が出てきた。店の奥で1人で飲んでいた客だった。
彼はレネと名乗り、力になりたいと申し出てきた。
一見優男にしか見えないレネは、各都市のシンジケートに顔の利く情報屋だった。

 翌日、ロンドンに巨大な怪物が出現したというニュースが流れた。
新聞を見ていた私は、同時にあのビジョンを見ていた。
時計の針は8時を指していた。
とにかく怪物を倒して回らなければならない。
私はブエノスアイレス近くの街の地方行政府でシュブ・ニグラスについての情報が得られるかもしれないと言うジムと別れ、ミイラが出現したと言われているサンフランシスコに向かった。

 サンフランシスコの町中を噂をたぐり寄せるようにさまよった挙げ句、路上で本当に生きて動いているミイラと遭遇したのには驚いた。
「聖エロニムスの剣」で切り伏せると、のこぎりで金属を切っているような悲鳴を挙げ、塵となって四散した。
私は今までに得た情報を活かし、そのミイラの消滅をシュブ・ニグラスに伝える儀式を行った。
これを復活を諦めるまで繰り返すのだ。
 そしてミイラの目撃場所を表にして、その中心部を思える場所を探索した結果、やはりそこにゲートがあった。
ゲートを抜けると、そこは図書館だった。
前にレオ達が訪れたというセラエノの図書館に間違いないだろう。
そこでは見つけるべき本が自然に自分の手の中に現れると聞いていたが、私の場合はそうはいかないようだった。
広大な図書館で少しでも役に立ちそうな本を探すが、全く手がかりも得られない。
通常の探し方では見つからないのかもしれない。
そう思い、探し方を変えたところ、棚の背後に隠されている本を見つけた。
その本をペラペラとめくると、余白部分に殴り書きのゲートを閉じる方法らしき指示らしきものが見つかった。
それをなんとか解読しようとしたが、学者ではない私には荷が重かった。
ふと気付くとゲートの前に立っていたが、酷い疲労感と前にも増して強くなった焦燥感に悩まされるばかりで、今日のところは引き揚げることにした。

 ジムが捕まったという連絡を受けた。
地方行政府の一員が教団の一味だとかぎつけたジムは、彼に教団の秘密を明かすように迫ったのだが、逆に犯罪者に仕立て上げられてしまったらしい。

 突然北方から、今度は異常な気温低下の報がもたらされた。
何もかもが凍り付き、強風に当たって砕け散ってしまうという話で、ただ事ではないのは確かである。
サンフランシスコのゲートも放ってはおけないが、緊急を擁しそうな北方の調査のために飛行機をチャーターした。

 雪山の中で巨大な人影を見た時には自分の目が信じられなかった。
それはまさしく巨人だった。
その人影はだんだんと輪郭をはっきりさせ、白い髪をのばした氷の巨人として実体化したのだ。
「聖エロニムスの剣」の力を信じるしかなかった。
斬りかかると、怪物は悲鳴を挙げて後ずさった。
そのままとどめを刺そうと思ったのだが、怪物の姿はみるみる薄まって、その存在感を消していき、やがて風の中に消えた。

 ジムとチェンは怪物を倒した時の儀式を行うための情報収集に散っていた。
しかしもう時間がない。
私の中に、またあのビジョンが見えた。
時計の針は10時を指していた。
そして世界はますます勢いに乗る怪物達に席巻されようとしていた。
そこに更になんらかの力が加わったのを感じた。
世界中に開いたゲートが、次元を不安定にしたのだ。
世界のどこかでゲートが2つ消滅するのを感じると同時に、ビジョンの中で時計の針が進み、12時を指した。
この世界のどこかにシュブ・ニグラスが復活したことを私は知った。



 いち早くシュブ・ニグラスがアフリカに復活したということを突き止めたのはジムだった。
彼は霊界からの知識も総動員し、シュブ・ニグラスの居所を特定すると、それを私たちに告げ、すぐにアフリカに向かった。
 
 遠く離れた私たちにはジムの無事を祈りつつ、そこへ急ぐしか方法がなかった。
 生き残ったジムの仲間達の証言によれば、ジムがたどり着いた時には、アフリカはモンスターの巣と化していたという。
彼らは力の限り戦い、とうとうシュブ・ニグラスにも手が届くところまで迫ったらしいのだが、シュブ・ニグラスはなにかの防御壁のようなもので護られているらしく、傷1つつけることができなかったいう。
彼らは目に狂気をたたえて怪物に取り囲まれながらトランペットを吹き鳴らし続けるジムを無理矢理連れ出し、南アフリカの街に退却した。


 この連絡を受け、私は怪物を倒してそれを儀式によってシュブ・ニグラスに伝えるという今行っている行動が、ある一定の成果を挙げなければシュブ・ニグラスは半実体という形で存在し続け、ダメージを与えられないのだという結論に達した。
しかしジムが時間稼ぎをしてくれたとは言え、残された時間はあまりにも少ない。

 そこにチェンが捕まったという連絡が入ってきた。
偽装警官に武器を売るとだまされて釣られたらしい。
彼女は超自然的な敵には強いのだが、現実世界の駆け引きは苦手なのだ。

 世界ではカルト信者達がアフリカに向かっているというニュースが流れていた。
彼らは自ら主たるシュブ・ニグラスの生け贄になろうとその身を進めているのだ。

 私はまず北方の巨人にとどめをさすことにした。
シュブ・ニグラスを放ってはおけないのは勿論なのだが、こっちを放っておいても世界が酷寒に包まれ、人類が滅亡するのは目に見えているのだ。
結果なんとか氷の巨人を倒すことができた。


 その時私はシュブ・ニグラスの準備が整ったことを知った。
この瞬間、世界を救う努力はもはや手遅れになったのだ。
なぜともなく、それが分かった。
ビジョンの中でシュブ・ニグラスが怪物達に囲まれ、歓喜に打ち震えている様子が見え、その時私の正気もはじけ飛んだのが自分で認識できた。

 途中までは調子よく進んでいるかに思えたのだが、後半のモンスターが盤上に増えてきてからのシュブニグダッシュ(笑)が猛烈で、全然追いつかなかった(汗)

20160102


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