2015年10月3日 エルドリッチホラーをソロプレイ5

 


 続けざまにプレイ。
再び探索者視点で進めてみる。



 私の名はチェン・リリー。
秘密の寺院で修行を続けてきた私に、とうとう指示が降りた。
上海へ向かい、ローラ・ヘイズという人物の指示を待つようにと。
とうとう世界を破滅から救う戦いが始まったのだ。
 上海に着くと、東京に来ているローラからの手紙が届いた。
それによれば、忌まわしき旧支配者であるクトゥルフが永き眠りから目覚めようとしているという。


 クトゥルフとは、太古に地球に飛来した強大な怪物だが、なんらかの原因で活動を停止し、太平洋のどこかに眠っていると言われている。
ローラの手紙によると、世界中で発狂者が続出し、中でも感受性の強い者たちは口々に、翼があり無数の触手の生えた怪物の夢を見たと語っているという。
それはまさしく語り伝えられているクトゥルフの姿だった。


 更にローラがつかんだ情報では、今世界中の漁村が大嵐に襲われており、それはクトゥルフの眷属である「深きもの」の活動が活発化した証なのだという。
クトゥルフ復活を防ぐためには、まずは「深きもの」を見つけ出して出来る限り始末しなければならない。
現在「深きもの」の形跡が多く報告されているのは、太平洋と、大西洋の南部だった。



 またイスタンブールにて悪魔じみた姿の怪物が目撃されているという話もあり、これはローラの見たところ異世界と通じるゲートが開いたためではないかということだった。
このゲートを放っておくと、次々に怪物がこの世に入り込み、人類を滅亡に導いてしまうのだ。

 どちらに向かうにしろ、私1人では戦力が足らない。
私はローラの指示に従い、上海でも諜報活動のメッカと言われている酒場に足を伸ばした。
そこにはローラが説明した通りの女性がカウンターで飲んでいた。
教えられた通りの合い言葉を伝え、用意していた紙幣を握らせると、その女性は黙って立ち上がり、吸っていた煙草を灰皿に押しつけた。
名前を聞くと、ミンと名乗った。

 その後ローラから連絡が入った。
イスタンブールの怪物は、ローラの知り合いである東京のドラゴンロードの働きによって駆除されたということだった。
女優であるローラは世界中に知り合いがいるのだが、その交友関係は私以上に特殊なようだ。

 突然私に話しかけてきた男がいた。
カチカチと大きな音のする腕時計をつけたその男は、私に共産党をスパイする仕事を持ちかけた。
報酬には大いなる力が与えられると言う。


 私には一見なんの変哲もないその男が、ただ者ではない、いや人間でさえないのが分かっていた。
この男と取引をするということは、魂を売るに等しい行為だということも。
しかし私はそれを受けた。
今は私の魂を売り渡してでも力が必要なのだ。
※「闇との契約」状態になり、筋力+2


 イスタンブールで地震があったというニュースを受け取った直後に、ローラから連絡があった。
彼女がつかんだ情報では、この地震は魔術的なものであり、この世界に開いた門と連動することで世界中に大地震を起こす発端なのだという。
その儀式が行われているのは、ある貿易会社が所有する大西洋のど真ん中の小島であり、その儀式を中止させなければ世界はやがて致命的な打撃を受ける可能性があるということだった。



 世界は今や滅亡への道を歩み出していたが、それを知るものはまだ少なかった。

 私は更に力を求めた。
ミンを通じて上海の闇ルートに紹介してもらい、「45口径コルト・リボルバー」を手に入れた。
それでようやく準備が整ったと判断し、ローラがクトゥルフ復活に関する情報が得られるかもしれないと言っていたインドに向かった。

 インドに着いて数日調査を続けていると、ある日どこか魚じみた顔をしたマーシュという老人が面会を申し込んできた。
彼は私たちがクトゥルフについて嗅ぎ回っていることをよく知っているようだった。
彼は取引を持ちかけてきた。
私が欲している情報と引き替えに、いつでも連絡が取れるようにしてほしいということだったが、これは新たな闇との取引に違いなかった。
私は左掌を見せた。
あの日以来浮き出してきた奇妙な印のような形の火傷の跡である。
マーシュはそれを見ると激怒し、「もう奴の手が回っていたか」と叫ぶと、奇妙な甲高い雄叫びを挙げた。
すると周りの路地から彼と同じくどこか魚じみた顔の男女がぞろぞろと現れた。
リボルバーを出して威嚇しても、彼らは動じなかった。
 病室で目が覚めた私にミンが言うには、私を路地で見つけた時にはてっきり死んだと思ったらしい。
酷い目にあったものだ。
※体力を3点失った。

 私たちのもう1人の仲間はレオ・アンダースンという探検家で、彼もローラと連絡を取り合って行動している。
今レオはコロンビアにいて、図書館でクトゥルフについて書かれているとおぼしき本を借りようとしたところ、マーシュという男に貸し出し中だったという。
彼はその本が失われることを危惧し、マーシュという男のホテルを探し出してその本を盗み出したという。
その本には期待通りクトゥルフに関する情報が記載されており、それによればクトゥルフに敵対する「ミ・ゴ」というものが存在していたということだった。
しかし今気になるのはマーシュという名前である。
これは単なる偶然なのか。
まさか同一人物ということはないと思うが、調べてみる必要があるだろう。

 数日前から海水のような匂いのする雨が降っていた。
そして時折肌を切り裂くような冷たい強風が吹き、それは世界が終末に近寄っているのを意識させないではおかない不吉な風だった。
遅い夕食をとった帰り道、その雨と風の音が耳を聾するほどに大きく響いたと思ったら、夢の中独特の落下感が私を襲った。
 はっと気付くと私は見覚えのない場所にいた。
ここにも雨が降っていたが、空気は生暖かく、薄暗かったが太陽は真上にあった。
目に入るのは南国風の木々と、岩山。波の音に振り返れば、背後10mから先は海だった。
すぐ近くには頭を振っているミンと、そのそばに見覚えのある女性が立っていた。
彼女の名前はローラ・ヘイズ。
実際に会うのは初めてだが、写真では何度も観たことがあった。
彼女も私たちと同じように、いきなりここに連れてこられたらしい。

 あとで分かったことだが、そこはバミューダ・トライアングルと呼ばれている大西洋の海域にある無人島だった。
船が通りかかるまで野宿し、なんとか文明社会に戻るまでには約1週間を費やした。
これは明らかに「敵」による妨害工作だが、ローラはこれこそ私たちの活動が「敵」にダメージを与えている証拠だと言い、しょげていた私を元気づけてくれた。



 レオと連絡をとると、彼はサンフランシスコで「ダゴンの盟友達」という奇妙な教団が活発に活動しはじめており、奇怪な目撃情報も増えていると報告した。
また門が開いたのかもしれない。

 私はもう少しバミューダ・トライアングル周辺を調べてみるというローラと別れ、クトゥルフ復活を防ぐための情報収集のために船に乗った。
その船が夜霧に包まれると、迷信深い船員達は恐怖に捕らわれていた。
場所が場所だけに説得力もある。
奇妙な浮遊感があった。
霧が晴れると、なぜか船は数百マイルも移動し、コロンビア近くの海に来ていた。
そういう私も自分がすでに発狂しているのではないかと疑わずにはおれなかった。


 そしていきなり来るべきものが来た。
契約を履行する時が来たのだ。
あとでミンが語ったところによると、私は一言うめいて意識を失ったらしい。
しかし私の記憶では、私は突然カルト信者達の集会の場におり、その中央にある椅子に座らされていた。
リーダーらしいフードを被った男が、私の背後に回り込み、その手で私の目を覆った。
私は全く身動きできず、冷や汗を流すのが精一杯だった。
「時は来たれり黒い子山羊への負債を血にて支払うのだ」
それは明らかに私が契約した相手とは異なる集団だった。どうやら契約を横流しされたらしい。
そんなことを考えながら、目をふさがれた闇の中に、2つの選択肢が浮かんでいるのが分かった。
それは形もはっきりしないぼやけた色に見えたが、それがローラとレオを示しているのははっきりと分かった。どちらかを選べというのだ。
「どちらも選べない。血が欲しいなら私の血で支払う」
私がそう言うと、周りから嘲笑が起こり、フードの男が言った。
「それでは血が債務に見合った価値を持たぬ。おまえが選ばないのであれば、2人ともを選んだものとする」
私は目の前のエサに釣られて闇との契約を交わしてしまったことを言葉に出来ないほど後悔していたが、もう手遅れだった。
私は青白く燃えるような色を選んだ。
それはローラだった。

 意識を取り戻した私は、絶望の大波に捕らわれ、精神的にも体力的にも立ち上がることさえ困難な状態だった。
私には分かっていたのだ。もうローラはこの世にいないことを。
私に残された道は、ローラの遺志を受け継ぐことだけだった。
 ローラは彼女になにかがあった時に力になってくれる仲間の連絡先のリストを私に教えてくれていた。
その中に気になる名前があった。
サイラス・マーシュ。
あのマーシュとなにか関係があるのだろうか?
シドニーのサイラスに手紙を送ると、すぐに返信があった。
彼はローラの死を悼み、こんな事態になる前にもっと早く声を掛けてほしかったと告げた。
またマーシュという名前に関しては、アメリカ東海岸の古い漁師町を起源とする一族の名前で、自分もその一員であると同時に、それが自分にとってどういう意味を持つのかを知りたいと思っていたということだったが、どうも奥歯に物がはさまっているような感じで、手紙には書きにくいことがあるように感じた。
そして彼はすでに我々の使命を果たすための一員として振る舞っていた。



 コロンビアでしばらく休養した後、ようやく動けるようになった私は、サンフランシスコに渡り、調査を開始した。
するとまるで私の行動を予測していたかのようにカルト信者達の待ち伏せにあった。
しかしその時私はそれまでにたまったストレスやらなにやらの精算が必要な精神状態だった。
なにも教団本部まで乗り込んでいって1人残らず叩きのめして再起不能にまですることではなかったのではないかと思ったのは、しばらくあとだった。
 教団の建物の地下は下水道に繋がっており、そのすぐ近くの壁面には光る円盤のようなものがあった。
異世界とつながる門に違いない。
私はためらうことなく門をくぐった。

 そこは玄武岩でできた街路だった。周りには同じく玄武岩で出来ているらしい塔が建ち並んでいる。近くに海があるらしく、潮の香りがした。
突然暗い色のローブを着た怪しげな男が、息を切らせながら近寄ってきた。
その男からはここがダイラス・リーンという玄武岩でできた都市だということが聞き出せたが、彼は王子の配下に追われているとかで、とてもじゃないがゆっくり話を聞く雰囲気ではなかった。
それどころか私に保護を依頼してきた。
返事をする間もなく、数人の追っ手が現れた。しかも見慣れない私をすでに逃げてきた男の仲間だと思っているようだった。
仕方がない。
6人の追っ手全員を叩きのめしたところ、男は感謝し、彼のガレー船で私を元の世界に戻してくれた。
ガレー船で男からいろいろな話を聞いた。
ここがドリームランドと呼ばれる世界であること。
ダイラス・リーンはドリームランド最大の港町だが、犯罪が多く、王子が秘密警察を編成して輪を掛けて危険になったこと。
ドリームランドと意識して行き来しようと思えば、ある鍵が必要なこと。
その他呪文のことや、古き神々のこと・・・
いつしか私はまどろみの中にあった。
なにが夢でなにが現実なのか分からない。
 ふと気付くと私は元の下水道に立っていた。
振り返ると、門は小さくなって消えるところだった。
地上に出ると、私は思っていたより遙かに長くドリームランドにいことが分かった。
しかしそのおかげで多くの知識を得ることができた。
※行動不能になって知識+2


 ローラの情報網を通じて、極東ロシアで奇怪な目撃証言が頻発し始めたという情報が入った。
ローラは自分になにかがあったら代わりに私に連絡するように言ってくれていたのだ。
しかしもたらされた情報は、一刻も早く極東ロシアでの調査が必要なことを物語っていた。


 怪しい貿易会社が所有する大西洋の小島に調査に向かったレオからの連絡が途絶えている。
なにかあったのでなければいいが。
※超自然トークンのあるマスに入ったので、その時点で行動不能となり、次のレオのアクションフェイズまでなにもできず。
しかしこれはあとでルール間違いだと分かった。
アクションフェイズ中に行動不能になった場合は、探索者コマは倒されることはなく、次の遭遇フェイズから普通に活動できる。


 私はサンフランシスコでボロボロの身体を休めていたのだが、突然黒熱病にかかってしまい、入院することになった。
そういえば道を歩いていて見知らぬ男とぶつかったとき、腕にかすかに針で突かれたような痛みを感じたが、あの時に病原菌を移されたらしい。
担当医のミラー医師は、話を聞いて私にそのような策略を見抜くための訓練まで施してくれた。
おかげで観察力にも自信を持つことができた。
※観察力+2

 退院して次の目的地を検討しているところに、「銀の黄昏教団の使者」を名乗る男から、教団の代表が面会したいと言っていると言ってきた。
「銀の黄昏教団」と言えば、裏になにか忌まわしいものを隠している可能性の高い大規模なカルト教団の筆頭と言える怪しい存在であり、私たちもマークしていた。
しかし彼らの崇める神は、今私たちが追っている「クトゥルフ」とはまた別の「なにか」であるらしということで、優先順位的には高くなかった。
そんなカルト教団が私たちにどんな用があるというのか?
私たちの活動が彼らに敵対していると捉えられたのか。
それともそれぞれ敵対している場合もある様々な旧支配者の力関係の中で、私たちの存在に価値が見いだされたのか?
 使者についていくと、黒塗りの立派な車が待たされていた。
連れて行かれたのはサンフランシスコの中心街にある最近建てられたばかりらしい豪華な屋敷で、どうやら教団の集会所のようだった。
案内されるまま邸内に入り、階段を上る。
数人の団員が驚きの眼差しでこっちを見ている。普段部外者が立ち入るような場所ではないのだろう。
行き着いたのは図書室だった。
見慣れぬ稀覯本で満たされたその部屋で使者は立派な机の向こうに座り、こっちにはそれに向かい合う形のソファを薦めた。
「さて、どのようなお手伝いが必要なのでしょうか」
 彼の言葉に面食らった私の質問のほとんどには返事が返されなかったが、僅かな返事で分かったことは、彼らが私たちの行動を賞賛していること。
「ダゴンの盟友達」の壊滅は見事だったということ。
そして教団の代表が力になるように指示したということ。
その3つだった。
こうして私たちは人の精神を安静に保つ技術(「育まれた勇気」の呪文)、治療を早める技術(「治癒」の呪文)を手に入れ、更に「深きもの」を呼び寄せる方法を教わった。この知識は太平洋にいるはずのサイラスに伝えてやらなければ。
また東京で「ダゴンの盟友達」の系列のカルト信者達が活動を開始したという話も聞いた。
どうやら向こうでも門が開いたらしい。

 シスコを離れる時が来た。
私たちはまず東海岸へ向かった。
アーカムにあるミスカトニック大学の図書館を調べてみたかったのと、できればマーシュ一族の発祥の地だというインスマスの街にも行ってみたかった。

 コロラド州デンバーにて、なにかに取り憑かれているという伝説のある墓地に立ち寄り、墓石を調べていると、突然身体全体が凍り付いたような感覚に襲われた。
そして前を見ると、いつの間にか亡霊がすぐ近くに立っていた。
半分頭の中に直接届くような感じで、亡霊の声が聞こえてきた。
昔なんらかの裏切りに合って殺されたらしい。
私がそれに同情を示すと、亡霊は喜んだようで笑顔になり、消えた。
普通は発狂しそうな体験だが、色々な経験を経てきた私の場合は、この体験は精神の安定に役立った。
※正気度を2点回復


 レオから連絡が入った。
大西洋の例の貿易会社の所有する小島に潜入を試みたが、不首尾に終わったので、更にチャンスを待つということだった。
手紙は近くを通りかかった船に言付けたようだった。
とりあえず無事が確認できてよかった。


 ローマが異常な寒波に襲われ、吹雪の中で怪物の咆吼のような声を聞いたとか、行方不明者が続出しているというニュースが入ってきた。
また門が開いた可能性が高い。
世界は着実に破滅に向かっている。
私はどうしたらいいのだろう。ローラさえいてくれたら。

 私たちはアーカムに到着した。
地元の新聞を見ると、カルト勢力の活動についての暴露記事を掲載していた。
しかしその記事にはあえて掲載されていない重要な情報が隠されているように感じた。
私はその記事のレポーターを調べ、サンフランシスコのカルト教団の壊滅についての情報を餌に面会した。
予想通り彼は詳しいことを話したがらなかったので、隙を見てミンが彼のコーヒーに睡眠薬を入れ、眠り込んだところでメモ帳を拝見した。
思っていた通りそれには記事に書かれていなかった様々な記録が書かれていた。
中でも秘儀の言葉が繰り返されているところが気になったので記憶した。
あとで試してみよう。
※呪文「衰弱」を覚えた。

 レオからとうとう小島に潜入成功の報が届いた。
そこはチョー・チョー人の神殿であり、世界中に開いた門を通じて時空の裂け目を増長し、地震を発生させていたという。
彼は神殿を破壊して火を放って脱出してきたそうなので、当分儀式はできないだろう。


 東京のカルト信者の活動がますます活発になり、墓を荒らす化け物の噂まで聞こえてきたある日、それは起こった。
それは突然のことで、私は予想もしていなかった。
ミンの様子が少し前からおかしいとは思っていたのだが、なにしろこんな毎日を送っていたのでは様子がおかしくならない方がおかしいくらいである。
しかし彼女は人類が滅亡しても自分だけが生き残る道を選んだようだった。
私は彼女の放った銃弾で重傷を負ったが、彼女を責める気にはならなかった。
私もこんなことはやめてしまいたいといつも思っているのだ。しかし私はローラを殺したあの日から、その選択肢を捨て去ったのだ。

 レオの連れていた用心棒も、彼を裏切って重傷を負わせ、姿を消したということだった。
あっちも事情は似たようなものだろう。

 アーカムで傷を癒している間に、船のチケットの手配をした。
今までならミンがやってくれていたのだが、これからはそうはいかない。
 ようやく散歩くらいはできるようになり、アーカムの街をぶらついていると、1軒の骨董品店が目についたので立ち寄ってみた。
店内では店主が今ちょうど新しい仕入れ品を開封したところだった。
私は商品よりもそれを包んでいた汚らしい紙に注意を引きつけられた。
ルーンのような奇妙な文字が並んでいる。
私は店主に言ってその紙を引き取って解読を試みた。
が、やはり断片的すぎて何も得るものは無かった。
※知識-2判定に失敗

 突然レオの精神が大きな衝撃を受け、よろめいているのが感じ取れた。
「銀の黄昏教会」で得た技術を活かす時が来たらしい。
私はレオの精神を安定させるように、目を閉じて意識を集中してつぶやくように詠唱した。
するとレオの精神が力を取り戻し、自信を深めたのを感じ取れたような気がした。
しかしそれと同時に恐ろしいまでの疲労感が私を襲い、立っていられなくなってそのままホテルのベッドに倒れ込んだ。
どうやらこの呪文は体力を消費するらしい。
 この一瞬で感じたレオの精神の中には、半漁人のような怪物が船の舳先に上がってくる様子があり、それが彼の精神に衝撃を与えているようだった。
どうやら最初の目的である「深きもの」との遭遇に成功したらしい。
首尾よく倒せていればいいのだが。
 あとで連絡があったが、レオは「深きもの」に傷を負わせたものの、取り逃がしたらしい。
任務の達成はまだ遠い。


 極東ロシアでは空を飛ぶ怪物の目撃が相次ぎ、シドニーには巨大なアメーバ状の怪物が現れたという噂が流れた。
 流石にこの世界が異常な事態に陥りつつあるというのを皆も感じ始めたのか、先日の新聞記事の効果も影響してか、危険なカルトを野放しにしてはいけないとか、世界中で発生している怪奇な事件に真面目に取り組むべきだとか、我々の行動に味方するような世論が増えてきた様子がある。
 私は病院で特別待遇を受けることができ、急速に傷を癒すことができた。
このまま世界が歩調を合わせられればと思うが、それは無理だろう。これはあくまでも一時的なものだ。


 私はまたここに来てしまった。
ローラがどうなったのか、どうしても知りたかったのだ。
彼女の足跡をたどる内、最後に彼女が1泊したと思われる小屋に行き当たった。
私はその後の彼女の行方をたどれるかもしれないと思い、私もそこで夜を過ごしてみることにした。
寝ずに夜を明かすつもりだったのだが、うとうととしかけていた時、砂浜からこっちに近寄ってくる足音が聞こえた。
それはローラの足音のように思えたが、勿論それは私の錯覚だった。
小屋の前に現れたのは、半漁人じみた怪物だった。
私はその怪物を倒したが、その時具体的にはどうしたのか、よく覚えがない。
朝になって見てみると、怪物の死骸は見あたらなかったが、辺りに怪物のものらしい血の跡と、そこから砂浜まで引きずったような跡が残っていた。


 その後サイラスから、インド洋のど真ん中で「深きもの」と遭遇し、これを退治して定められた儀式も完了したという連絡が入った。
これでようやく任務の最初の1歩を記したことになる。 
しかし世界はますます怪物の目撃情報が増加し、日々行方不明者リストの名前も恐ろしい勢いで増え続けていた。


 私は再びアメリカ中央部に戻ってきた。
この後西海岸から船に乗って極東ロシアへ向かう予定である。

 突然謎めいた人物に、一切の質問なしで武器を売ると持ちかけられ、38口径リボルバーを入手できた。
怪しかろうがなんだろうが、使えるものはなんでも使わなければ生き残れない。


 レオから手紙が来た。
彼は陰謀論者と神秘学者を仲間として連れ歩いているのだが、最近彼らが前の用心棒のように裏切って自分を殺すのではないかという不安につきまとわれ、とうとう白昼夢のような幻覚まで見るようになってしまったという。
ただしだからと言って彼がこの探索をやめたいというわけではなく、もしなにかがあったらあとを頼むという、一種の遺言だった。



 私は極東ロシアの凍てつく大地に足を降ろすと、すぐさま怪物やカルト信者がのさばっていると言われている山間部の小さな街に向かった。
街に着いて宿をとると、探すまでもなくカルト信者達と怪物の襲撃に遭った。
私はそれらを叩きのめし、空飛ぶ怪物の翼をもぎ取り、凍った川が見える谷底にたたき落としてやった。
その後周辺を探索したところ、大きな岩で作られた魔法陣が見つかった。
ここから怪物が湧き出していたのに違いない。
魔法陣を破壊した後、その近くの洞窟で大昔に死んだらしい探検者らしい遺体を見つけた。
装備品はまだ使えそうだったのでザックを漁ると、実に意外な物が出てきた。
それは宝石のちりばめられた見事なドレスだった。
年代物だが密封された袋の中に入っており、傷んではいないようだった。
なんでこんなところで死んでいる探検者のザックの中にこんな物が入っているのかは謎としか言いようがないが、故人は文句を言わないだろうからもらっておくことにした。


 サイラスから連絡が届いた。 
彼は調査をしていた南極近くの小島で、「境に待つもの」と遭遇したということだった。
それがなんなのかは分からないが、彼がなんらかの契約をさせられたのだけは分かった。
彼の左掌に奇妙な印のような火傷の跡が現れていると言うのだから間違いない。

 あの契約のことを思い出した時、突然私は暗い水の中にいた。
そこは太陽の光が届かないほどの深い海の海底だということをなぜか理解していたが、なにもかもがぼんやりとした光に照らされているように見ることができた。


すぐ目の前には巨大な神殿が建っていた。
周りに泳いでいる深きものらしき影が豆粒のように見える。
その神殿の中央に、建ち並んだ柱があり、その奧になにかがいた。
見ている間に巨大な柱の1本がゆっくりと倒れた。
よく見ればその柱が倒れたところから私の足下を通り過ぎ、倒れた柱の列は果てしなく続いていた。
今まで想像も出来ない時間を掛けて少しずつ柱が倒れていったのだと分かった。
そして残った柱はあと5本になっていた。
私には分かった。
あの柱が全て倒れた時、あの奧にいるなにかが復活するのだ。
そう。あのクトゥルフと呼ばれているものが。
※イラストはゲームのコンポーネントには含まれません

 はっと気付くと、私は新聞を広げたままでホテルの部屋に立ちつくしていた。
新聞には東京が怪物の跋扈する魔都と化したというニュースが載っていた。
ロンドンもゾンビの群に乗っ取られつつあるらしい。
まさに人類の破滅はすぐそこまで迫っているのだ。
 そこにノックがあり、私は飛び上がった。
やって来たのはスーツ姿の男で、言葉少なに何枚かの資料を見せてきた。
それには私がサンフランシスコのカルト教団壊滅と、極東ロシアでの同じような暴挙の証拠となる情報が記されていた。
男は言った。
「警察と税関には話がついています。必要な支払いも、全て終わっています。ここにサインをしていただければ、あなたは義務を受け入れたと見なされ、自由になれます」
私はサインするしかなかった。
※「債務」状態になった。

 私は再びアメリカ大陸に戻ってきた。
アラスカで買い物をしていると、店に物騒な雰囲気の2人組が入ってきたと思った途端、2人はナイフを出した。
強盗である。
その時私は完全に油断していた。
やつらの1人は私の顔を見るなりいきなり殴りかかってきた。
まさかの展開に、反撃する暇も無かった。
目が覚めると私の持ち物から45口径コルト・リボルバーが無くなっていたが、それだけですんでよかったと思わなければならないだろう。

 その夜、私はまた海底都市の前にいた。
それが夢だということは自分でも分かっていたが、目を覚ますことは出来なかった。
柱がまたゆっくりと倒れていき、残りは3本になってしまった。
神殿の奧から、忌まわしい触手が伸びてきている・・・
 私は悲鳴を挙げて目を覚ました。そして直後に吐いた。
これまで衛生観念とは無縁の場所ばかり探索してきたつけが回ってきたらしい。
私の身体は毒に犯されていた。
 その内治るだろうと薬で症状を抑えていたのが悪かったらしく、やがて私はまともに身動きもできない状態に陥った。
幸い今私がいるのはアラスカの中心地であるアンカレッジであり、設備の整った病院には事欠かなかった。
病院で私の身体から毒は取り除かれた。
その後私はサンフランシスコへ向かった。

 夜のサンフランシスコの街を歩いていると、暗闇から夜警が姿を現した。
彼は私の姿を上から下まで眺め回した後で、にやりと笑ってこう言った。
「おれの働いている倉庫で武器の入った木箱が行方不明になった。あんたはその行方に興味がりそうだな。」
私は男に金を渡し、もう少し情報を聞き出そうとした。
しかし少しでも怪しいそぶりを見せたら叩きのめしてやろうという私の内心が読まれたのか、武器の隠し場所まで案内する途中、それまで男は意味も無い話をしていたのが、突然甲高い口笛を吹いた。
突然路地の脇から人影が出てきたと思うと、風を切る音の直後に固い物が折れるような音がし、脚に激痛を感じた。
 どうやら低い位置からバットで脚を横殴りにしたらしい。
私のすねの骨は少なくともヒビが入ったようで、絶対に追いかけていくことは出来ないし、これはなかなか効果的な不意打ちだと感心しそうになったが痛みでそれどころではなかった。

 脚の痛みと高熱にうなされている時、いつの間にか私はまたあの海の底にいた。
今ちょうど柱の最後の1本が倒れるところだった。
私はそれを醒めた目で見つめていた。
忌まわしい存在が戒めから解き放たれたのが分かった。
今、これまでとは違う世界が始まったのだ。

 次の日の朝、目覚めると世界は確かに変化していた。
目で見える変化は無いが、追いつめられるような焦燥感、歌い出したくなるような高揚感、背筋が凍り付くような恐怖感、その他あらゆる感情が同時に襲いかかり、一瞬たりとも気を落ち着けることができないのだ。
長い修行を積んだ私でさえこんな状態では、これが全世界の人間に同じように起こっているとしたら、世界はいったいどうなってしまうのだろうか。


 レオとサイラスからの連絡もあったが、2人とも同じ思いを味わっているらしく、同じようにいつまで正気を保てるのか自信がないと書いていた。
その直後からレオとは連絡が取れなくなった。


 もはや我々人類には勝ち目はないことは分かっていた。
しかし私はローラに誓った約束がある。
最後まで諦めることだけはできないのだ。

 私はサンフランシスコから太平洋に旅立ち、「深きもの」を探した。
まさにこここそ「深きもの」が現れるにふさわしいと思われる海域に船が到達した時、上空から飛来するものがあった。
それは顔のない翼を持つ化け物だった。
怪物が私につかみかかり、持ち上げて上昇しようとした時、私は怪物の爪に捕まれたままでそいつのアゴに裏拳をたたき込み、腕を放したところに後ろ回し蹴りを喰らわしてやったらそのまま海に落ちて見えなくなった。
 これで一段落かと思いきや、ブリッジの方で叫び声が聞こえた。
行ってみると、いつの間に上がり込んだのか、お待ちかねの「深きもの」が船長に襲いかかっていた。
私は精神の安定を助ける呪文をつぶやきながら(※「育まれた勇気」の呪文を使用)やつに近づき、まずはそのぬるぬるした腕をつかんで船長から引っぺがし、やつが重心を崩し掛けたところで脚を払って仰向けにひっくり返した。
起きあがろうとするところに、38口径リボルバーを全弾たたき込む。
まだ動いていたので頭に飛び乗って踏みつぶした。

 これでようやく最初の任務の2/3が終わった。
更にサイラスから、イースター島近くの海域で「深きもの」を退治したという連絡が入った。
これでとうとう最初の任務完了の条件を満たした。

 その直後、世界の人口の80%近くが狂気に陥った。
その中にはチェンもサイラスも含まれていた。
そのしばらく後に世界はクトゥルフの大いなる意志に包まれた。


 クトゥルフが目覚めてしまっては、ほぼ100%勝ち目はない。
とにかくあっという間に全員発狂してしまうのだ(汗)

20160119


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