高飛びレイク
惑星カリブの罠
ハヤカワ文庫/昭和62年1月31日初版
火浦功・原作/多摩豊・著
パラグラフ数 251
火浦功のスペオペシリーズを原作に、オリジナルストーリーでゲームブック化。
リゾート惑星カリブに自分の偽物が出没していると聞いたレイクは、そいつを見つけだして痛い目に合わせてやろうとカリブにやってきた。
ところが事件はそんな単純なものではなかった・・・。
ハヤカワ文庫のゲームブックは、5冊の内2冊が火浦功原作、多摩豊著なのね。
今気付いた(汗)。
それはさておき、本書のシステムだが、能力値は「要領ポイント」と「体力ポイント」の2つ。
実に大雑把だが、その辺いかにも火浦功っぽくていい。電車でもプレイ可能。
しかし、化夢宇留仁は原作を読んでいないのだった(汗)。
物語はレイクがカリブに乗り込み、情報を集めるところから始まる。
なんとなく呑気な雰囲気で進んでゆき、あっちにフラフラ、こっちにフラフラしている内に船に戻らないとやばい状況になり、なんとか逃げ出して終了・・・って、えらいあっけないでないの。
しかも事件の全貌も全然分からない。
それでやり直してみると・・・・・・
なるほど。本書はゲームブックと言うより、パラレル小説の要素を強くしてあるのだ。
事件は様々な勢力が複雑に絡み合っているし、それらの情報もレイクがたどる道によって出たり出なかったり。
何回かプレイしてゆく内に事件のあらましが分かってくると言う仕掛け。
ちょっと文章の繋がりが悪かったり、情報の管理が甘いところも目につくが、なかなか悪くない。
またパラレル小説っぽさが強いとは言え、カリブに眠るお宝を手に入れるのはなかなか難しいようだ。化夢宇留仁はまだ見つけていない(汗)。
実はゲームブック面でもなかなか頑張っているらしい。
その辺は宝を見つけたらまた報告したい。
とりあえず現状の化夢宇留仁の評価は「良」。
20070703
手軽にできる絶体絶命
ハヤカワ文庫/昭和62年10月15日初版
火浦功・原作/多摩豊・著
パラグラフ数 284
火浦功のスラップスティックSFコメディシリーズのゲームブック化。
読者は記者の山下となり、みのりちゃんの発明品である「選択機」の暴走に巻き込まれ、わけの分からない世界をみのりちゃんと共にさまようことになる。
その世界はみのりちゃんが適当なビデオソフトを選択機に学習させた影響で、色々な映像作品のパロディになっており、元を知っていると結構楽しめる。
しかし・・・スラップスティックというのはあくまでノーマルな状態と比較が出来る状況で成り立つものではなかろうか?
例えば行き先のパラグラフ番号を間違えた時のことを思い出して欲しい。
突然話が繋がらなくなり、混乱すると思う。でもそれを無理矢理繋がってるということで進めたとしたら、それこそスラップスティックである。
つまりゲームブックは最初からスラップスティックの要素を持っているのだ。
したがってゲームブックでスラップスティックな展開というのは、面白いようで今ひとつ楽しめない。
どうせなら作者の頭もネジが外れていて、ほんとにクラクラしながら書いているなら別
なのだが(そういう作品もいくつか実在する)。
本作の場合は作者は完全に確信犯なので、そこかしこでスラップスティックにしようという意図が垣間見えてしまい、もう一つノリ切れなかった。
ちょっとやってみた。
ゲゲゲの鬼太郎
講談社X文庫/昭和61年5月28日初版
原作・絵/水木しげる、ゲーム構成/清田充規、文/吉岡平
パラグラフ数 250
西洋妖怪に占領された南の島の生き残りの子供の頼みで、鬼太郎をはじめとした日本妖怪が島に向かい、西洋妖怪と対決する。
読者は鬼太郎となり、日本妖怪を率いて島に向かう。
ルールは鬼太郎の妖能力(初期値10)のチェックのみで、実に軽快に読める。電車の中でも大丈夫。
水木ワールド独特の軽妙でとぼけた会話や描写が実にいい感じで、自然に入り込めた。
例えば仲間に入ろうとするねずみ男を追い払った場合、ただ「ねずみ男を追い返した。」とすればすむところを、「500円玉
を1枚にぎらせて追い返した。」といい感じの描写を付け加えてある。
見れば著者は人気作家の吉岡平である。多分この本が出版された当時(昭和61年)、まだかけだしで、アルバイトのような感じで書いたのだろうが、さすがは本職と言ったところか。
考えてみればイラストも水木大先生本人だし(まあこの人は頼まれればなんにでも描くのだが/笑)
、実に豪華なスタッフだ。
戦いが始まると、仲間の日本妖怪達がエネルギッシュでやる気満々な描写
が楽しめる。
例えば敵であるフランケンシュタインと遭遇すると、鬼太郎がなにか言う前に子なきじじいが飛び出してゆき、得意の重量
攻撃でフランケンを押さえつけたまま崖から転落して川の中へ。
そこに河童がいれば、これまた鬼太郎がなにか言う前に「まかせとけ!」と言って飛び込んで子なきじじいを助けるというパワフルさ(笑)。
もちろん鬼太郎は鬼太郎で、基本的には司令官として日本妖怪を率い(もちろん参謀は目玉
親父/笑)、強力な敵には自ら戦うことになる。
ストーリーは一本道に近いが、連れてきた妖怪やアイテムなどによってバリエーション豊かな展開を見せる。
バッドエンドは多めだが、そのパラグラフに「再チャレンジは●●番へ」とすぐに元の選択肢に戻れるようになっているので苦にならない。
最後の決戦のシーンでは、化夢宇留仁の頭の中ではテレビ版の合戦シーンの音楽が鳴り響いていた(笑)。
謎解きやゲーム性は乏しいものの、原作の雰囲気をゲームブックという疑似体験手段によって、より親しみやすく楽しませてくれるという点で、ある意味原作つきゲームブックの見本のような作品でした♪
・・・最初にねずみ男を仲間に加えてください。
情けなくていい感じのバッドエンドにたどり着きます(笑)。
魔法陣グルグル
エニックス文庫/1995年12月12日初版
原作・監修/衛藤ヒロユキ、構成・文/澤藤健
パラグラフ数 417
人気ファンタジーギャクコミックを原作にした作品。
勇者・・・らしき少年と、魔法使い・・・らしい少女が、魔王・・・らしい敵を倒すために旅に出るのだが、その旅路はさっぱりで、成り行き任せの上に、キタキタ踊りの恐怖が迫る・・・と、言うわけで、わけが分からない内容である(汗)。
しかしそれはなんの問題でもない。なにしろ原作がそんな内容なのだ(笑)。
読者は主に勇者ニケか魔法使いククリとなって、旅を続ける。
戦闘ルールはなく、指示によってHPを増減するだけ。なぜかHPが無くなったらどうなるのかの説明が無いのだが(汗)。
他にも能力値が2つある。「さっぱり度」と「なりゆき度」である。これらは読者の選択や、その結果
によって変化し、場合によってはこれらの能力の参照によって、進むパラグラフが決定される。
更にフラグのチェックシートも用意されている。
上記のように、戦闘ルールが無い代わりにパラグラフを分岐させる要素は多く、結果
総パラグラフ数417と、この手の作品にしては妙に多い。
パラグラフを増やす理由はまだある。
この作品は状況によってニケとククリが別行動をとり、その場合はあらかじめロールプレイをすると決めたキャラクターの視点で進んでゆく。同じ状況でも視点によって別
のパラグラフになっているわけ。
さて実際にプレイしてみると・・・つまらない(汗)。
ゲームブックの基本部分がなっていなくて、読者の立場が定まらないのだ。
冒頭でニケが父親に無理矢理勇者として旅立つように言われ、どう答えるかが選択肢になっているところがある。
選択は「勇者になるぞ!」と「勇者なんていやだ!」の2種類なのだが、その前にニケのセリフがこう書かれている。「オレ、勇者になんかならないよーん」
どうしろというのだろうか(汗)。
ニケのセリフの通りにするなら選択肢の必要がないし、セリフの逆を選ぶとしたら、ニケを演じていないことになってしまう。
また上で主にニケかククリのどちらかになると書いたが、これも中途半端で、二人が一緒にいるときの多くは同じパラグラフを使い回しており、状況によって視点がころころ変わってしまう。それどころか場合によってはククリの育ての親の魔女のおばばの視点で、ククリの修行に許可を出すかどうかの選択をさせられてしまうこともあるのだ。
下手に感情移入して読んでいたら、読者が多重人格になるのは間違いない(汗)。
どうせなら割り切ってこれもギャグのうちにして、敵の行動選択までやるくらいなら面
白かったと思う。
それ以外にも文章や情報のつながりのおかしな箇所が目立ち、なんのためにフラグチェックまでしているのか理解できない。
文句ばかりになってしまったが、原作物だから原作を知らないと面 白みが分からないというのは逆である。化夢宇留仁は原作は結構好きなのだ。
逆にほぼ原作にそったニケ視点よりも、原作では語られなかったククリ視点の展開は興味深く、まだしも楽しめた。まだしもだが(汗)。
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