ぎゅわんぶらあ自己中心派
 全7巻
片山まさゆき/講談社昭和57年8月10日初版/370円

 雀荘ミスチョイスには、持杉ドラ夫を始めとする雀ゴロが日夜たむろし、麻雀にあけくれていた。
更にそこにやってくる客は、変なやつばかり・・・。

 最も有名な麻雀ギャグ漫画の一つ。と言っても漫画がバカ売れしたというわけでもなく、コンピュータゲームの方でなじみ深い人の方が多いのではなかろうか。
勿論ゲーム化されるほどには売れていて、相応に面白いのも確かだが。

 内容は麻雀漫画というよりも、あらゆる事物に麻雀というフィルターを通したパロディ&ダジャレ漫画という感じで、主な登場人物の名前からして持杉ドラ夫(もちすぎドラお)、律見江ミエ(リーチみえみえ)、店野真澄太(みせのマスタ)ってなものである。
 ほぼ毎回登場する新たな雀師やシチュエーションは実に様々で、著者のアイデアの多才さに脱帽である。
1話丸々のパロディだけでも、スーパーボール、博多っ子純情、ウィンブルドンテニス、サーフィン、銀行預金、寿司麻雀(この漫画が初)、ブラックジャック、就職活動、プロレス、E.T.、ムツゴロウさん、ドクターモローの島、将棋名人戦、血液型、積み木くずし、サラリーマン金融、ユリ・ゲラー、ゲゲゲの鬼太郎、時をかける少女、受験勉強、ホットドック・プレス、カムイ伝、気くばりのすすめ、ボーイスカウト、オーケストラ指揮、アルプスの少女ハイジ、青年の主張、証券取引、北斗の拳、部屋探し、三浦氏の事件、確率論、糸井重里、警察取り調べ、ウルトラQ、晴れ、ときどき殺人、プロ野球ニュース、落語、自動車教習所、太平洋戦争、全共闘、キリスト、必殺仕事人、エベレスト登頂、バイクレース、古館一郎、森田健作、とんねるず、仁義なき戦い、徴税制度、空手バカ一代、トランプ、美味しんぼ、ふぞろいの林檎たち、結婚式(神田&松田)、カジノ、ターミネーター、ムーミン&わ哭きの竜、岡本太郎、戦国武将、ビーバップ・ハイスクール、星座占い、松下とソニー、うしろの百太郎、小泉今日子、アメリカ横断ウルトラクイズ
・・・と、並べてみただけでもすごいことに(汗)。
ちょっとしたパロディはまだまだあるし、ダジャレは数知れず、麻雀替え歌なんてのもある。

 変に味のあるあっさりとした画に、下品にならないギャグと、奇抜なアイデアがめいっぱい詰まった全7巻はなかなか読み応えがある。

20060512


 

恐怖症博士(ドクター・フォービア)
高橋葉介/秋田書店平成15年3月5日初版/390円

 「恐怖研究所」に今日も様々な恐怖症の患者がやってくる。
ドクター・フォービアと助手の千悟の行う治療は、不思議な結果を及ぼして・・・。

 毎回異なる恐怖症を扱い、不思議な物語に仕上げる著者の手腕は相変わらず冴えている。
例によって恐怖を扱ってはいるが、雰囲気はほとんどギャグで、博士と千悟の掛け合いが楽しい。
 「先端恐怖症&妻恐怖症」では、有名な話すと妻が化け物に変わるというシチュエーションを更に一歩押し進め、そう分かってしまった上で家庭生活を続けるという、なんとも奇妙な展開になっていて面白い。
「ストーカー恐怖症」では珍しく心温まるオチになり、あまりに意外で少し感動(笑)。
つづく「電波恐怖症」もほのぼのオチで、これまたいい感じ。
更に「水恐怖症」で実に切ないラストに持ってゆき、次の「記憶喪失恐怖症」ではドタバタギャグに。
最後は勿論人類滅亡・・・・って、やはり著者はただ者ではない(笑)。
 巻末には「穴」という「月」をテーマにしたホラーアンソロジーに収められた短編も。
これもなかなか味わい深い。

20060512


 

夢幻紳士 全10巻
高橋葉介/徳間書店昭和59年8月15日初版/450円

 第2次大戦を控えた昭和初期、猟奇事件から帝都を守る一人の少年探偵が存在した。
名を夢幻魔実也。ある時は女装して正体を隠し、ある時は華麗なアクションをこなし、ある時は照れ、ある時は怪談話に熱中し・・・(汗)???

 夢幻紳士も色々あるが、これは「リュウ」や「キャプテン」などに連載された少年向けコメディ版。
最も最初は著者もその辺の棲み分けをはっきりしていたわけではないらしく、最初の内はまだ怪奇趣味も強い。
 執事のアルカード、警視庁猟奇課の江戸川警部、悪の権化(?)老博士と甲保(コホ)、そして下町の元ストリップ嬢福音温子という第1期主要登場人物は1巻で出そろい、猟奇の彩りを加えたアクションコメディーとして展開する。
1巻の巻末には書き下ろしの戯曲が掲載されているが、これが傑作。昔の筒井康隆風とでも言うか。
 2巻冒頭で魔実也の母が登場し、更に悪の権化(こっちは本当)の父親も登場。
まだ内容は猟奇事件が絡んでいるが、最後の「年末の夢幻紳士」あたりで、この後繰り広げられるアップテンポ不条理ドタバタコメディーの片鱗が現れる。
 3巻では猟奇事件は影を潜め、世界を又に掛けた夢幻一家の活躍(?)が描かれる。
最後のメインキャラクターである猫夫人もかっこよく登場し、 このあたりからが一番テンポもよくて内容が濃い円熟期の始まりと言える。
 4巻からユーラシア大陸を舞台に、雄大な冒険(???)が描かている。
魔実也のおやじのキャラクターが実に生き生きとしてきて、仲がいいのか敵同士なのかよく分からない夢幻一家の活躍も大盛り上がり。
 5巻でようやく日本への帰路につく夢幻一家だが、あえなく船は沈没。ボートで漂流することになるのだが、なんとその後3話にわたって漂流したままという信じがたい展開に(笑)。
もはやキャラには脂がのりきって、なにをしていても面白い状態。
魔実也と温子の関係も、ほとんど「うる星やつら」状態で楽しい。
またこのあたりから魔実也の両親の若い頃の話も挟まりはじめ、ますますキャラクターが生き生きとしてくる。
主人公魔実也の活躍はその分減りつつあるのだが(笑)。
 6巻後半あたりから、キャラクターの絵もなんとなく丸々としてきて、ギャグの暴走が激しくなってゆく。
最初にギャグに完全に取り込まれたキャラは魔実也の父親で、もはやなにを考えているのかさっぱり分からないコスプレマニアと化してしまっている。
金と女が大好きで場合によっては魔実也の敵ともなるキャラがいい感じだったのだが・・・。
 7巻では猫夫人がほとんどドロンジョ状態に。登場したときの怪しい魅力は完全に消滅(汗)。
更に主人公魔実也も目つきがおかしくなってきて、使う技も完全に不条理ギャグキャラのそれに。
そして「夏だオバケだ夢幻紳士」の怪談話でなにかが切れる(汗)。
 8巻では魔実也もおやじとのコスプレ合戦に完全に息が合ってしまい、温子との関係も緊張感のない単なるラブラブカップルになってしまう。
もはや最初の頃の突っ込み役の魔実也の姿はほとんど無く、完全に呆け役になってしまっている(汗)。
しかし「桜の下の夢幻紳士」は久しぶりにいい感じの話になっており、一安心。
 9巻では8巻の最後から始まった猫夫人の若い頃の冒険が描かれるが、すぐに終わり。どうせだったらもう少し続けてほしかった。
魔実也はもはや完全に理解不能のキチガイ状態で、少年探偵どころか、魔実也の方が事件を起こしている始末(汗)。
で、そのままラストまでなだれ込んでしまうのだが、最後は魔実也と温子の娘が出てくるのはいいが、ヒットラーに捉えられて銃殺されそうになっていた父親と母親がどうなったのかは分からないまま(汗)。
う〜〜〜む。どうせそんなことで死ぬキャラクターではないのだが、気になる。

 というわけで、だんだんと内容が充実して最高に面白い漫画だった時期もあるのだが、ノリが暴走しすぎて空中分解に近い終わり方になってしまったという珍しい作品だった。
ま、後半のハチャメチャぶりも、それなりに好きなのだが、やはり魔実也は突っ込み役に徹しつつ、たまにかっこいい見せ場があるという風にしておいてほしかった。

20060515


 

学校怪談 全15巻
高橋葉介/秋田書店平成7年8月15日初版

 学校を舞台にした怪奇短編シリーズで、5巻まではそれぞれが独立した話だが、6巻からはキャラクターが確定して怪奇&アクション&コメディのシリーズ物となる変わった構成になっている。
しかしどちらも面白いのは流石。
 6巻からの主役は霊能力を持った若い女教師九段九鬼子先生で、途中で彼女は「夢幻紳士」の夢幻魔実也の子孫だっったのが明かされる。
この辺の世界のつながりも楽しい。

 1巻からメインキャラクターとして中学生の山岸君が登場しているのだが、なにしろ5巻までは読み切りホラーコミックなので、何度も死んでいる(笑)。
また彼女もコロコロ変わり、なかなかのモテモテ具合・・・って違うか(笑)。
そう言えば3巻の「白と黒」で彼はブリーフをはいているが、10巻の「おめでとう 当選です」ではトランクスになっている。これもどうでもいいな(笑)。
 もう一人のメインキャラクター、図書委員の立石さんは2巻の「掘れ[Dig!]」から登場。UFOマニアの玉川も同時に登場している。
立石さんが図書委員だと分かるのは4巻の「怪物大百科」。

 6巻からはいよいよ九段先生が登場し、新たなストーリーが展開する。
この九段先生、夢幻魔実也の子孫とは思えないくらいがさつな性格で、魔実也は魔実也でも少年探偵の方ではないかと思ってしまう(笑)。
しかし登場した途端に魅力にあふれているのは流石で、アッと言う間に世界が出来上がっている。
更にどんどん登場してくるキャラクターもどいつもこいつも味があり、立石さんの両親の離婚問題など、今まで出ていたキャラクターも深みを増してゆく。
と言っても基本が読み切りホラーコメディ(?)なので、さらりと読めるのがまたいいのだが。
 7巻では謎のキャラクター、峠美勒が登場。
彼女(?)の所業のせいしばらくはでホラー味が強まるが、九段先生との関わりが明かされ、一段落。
この頃から山岸の不思議な能力も開発されてゆく。
 8巻ではとうとう夢幻魔実也が登場。どうやら怪奇編か外伝の魔実也らしい。それって同じか?
このあたりでキャラクターはみな魅力を備え、円熟期を迎えたかに見えるが、更なる盛り上がりが。
決定的なのは「迷惑な転校生」で登場した新キャラ、八千華の存在である。
こいつが可愛い上にちゃらんぽらんな性格で、これまでのキャラクターの関係を引っかき回し、新たな面白さを発掘してゆくのである。
もはや世界は完成しているし、作者も悪ノリも含めて実験的な試みもどんどん取り入れてくるし、もう滅茶苦茶に面白い。
「夢幻紳士」の時はやりすぎで空中分解気味だったが、こっちは「学校」という制限があるせいか、殻を壊しつつもバランスは維持された。

 実験的試みは、まず八千華が登場した話からしてもう始まっていた。
これ以降5話にわたって全然別の話なのに、同じ1日の話になっているのだ。しかもこれがすごく効果的に働いていて、読んでるこっちも疑似体験しているような気持ちにさせてくれる。
しかし週刊連載とは言え、5話も進んだら季節も変わろうというもの。次の話ではいきなり冬服に替わっているのが笑える。
 また9巻では、4話にわたって同じ場所の異なる事件を、交差し合う異なるキャラクターの視点で表すという試みも。
これまた実に楽しく、オチは意外にしっかりはまってお見事。
 更にこの巻ではなぜか九段先生にぞっこんの奇妙な男、溝呂木も登場。こっちは1回限りの使い捨てキャラかと思いきや、まさか最終話まで頑張るとは・・・(笑)。
 10巻では溝呂木は完全にコメディリリーフと化し、あの手この手で九段先生にアタックするが、その都度半殺しの目にあっている。
しかし溝呂木というキャラクター、考えてみれば恐るべき能力をもった魔術師(?)である。
「学校怪談」の中でも恐らく最強の能力を持っている。下手したら夢幻魔実也も敵わないかもしれない。
そんな世界を手中に収めようと思えば出来るほどの能力を持ちながら、あの行動というのはすごすぎる。逆に言えば九段先生という目的があって出てくる能力なのだろうが。
それにしても普段はなにをしているのだろうか(汗)?
 11巻と13巻では夢幻魔実也が再登場。
お盆になると帰ってくるのだ(笑)。
 14巻あたりになると山岸君が本格的に能力に覚醒。少しエスパー漫画の雰囲気も加味。
 最終15巻では九段先生の恩師、棟方(助)教授が登場。
なんとなく妖怪ハンターっぽい雰囲気で、物語もフォークロアっぽさが強くなるのが面白い。

 長々と書いたが、一言で言えば、今のところ化夢宇留仁はこの著者の作品では本作が一番気に入っている。
以上(笑)。

20060518


 

猟奇博士
高橋葉介/朝日ソノラマ平成7年4月20日初版/388円

 猟奇博士シリーズ3話をはじめとする短編集。

猟奇博士「見世物小屋」
  猟奇博士と助手のユン・ピが診療したのは、身体が縦に真っ二つになり、それでも生きている少女だった。しかし患者を見た猟奇博士は少しも慌てず、患者を接着剤で治療する。
それもその筈、奇術師に化けて彼女を真っ二つにしたのは博士だったのだ。しかし・・・。
 極悪非道な猟奇博士。
あまりにも極悪非道すぎて、これで主役が張れるのかと少し心配になるほど(笑)。
ユン・ピも被害者だし。

猟奇博士「街になった男」
 インチキ薬を売りつけて汽車から放り出されてしまった2人は、不思議な街にたどり着く。
泊まったホテルではシャワールームには巨大な眼が現れ、エレベーターの通路には心臓が・・・。
 街がアイデアは面白いが、どんなサービスも元を思うと喜べないのが切ない。

猟奇博士「崖の上病棟」
 崖の上の病院に就職することになった猟奇博士とユン・ピだが、そこは滅茶苦茶な彼らからしても滅茶苦茶なところだった・・・。
  ほんとに滅茶苦茶(笑)。
化夢宇留仁はこういう問答無用で滅茶苦茶になってゆくノリは大好き♪

影一号指令
 物理学の世界的権威である一ノ谷虹夫博士が誘拐された。
某国秘密情報部の仕業と見た日本帝国政府は、特務機関「影」の機関員、影一号に博士の行方の捜索と、身柄の奪還を命じた・・・。
 戦前の満州を舞台にした、紙芝居風ウルトラQ風仮面の忍者赤影風冒険絵巻(笑)。
なんだかノリがよくてわけが分からない内に世界に放り込まれてしまう。
キャラクターも魅力的だし、もう少しシリーズで読みたかった。

影男”独裁者を撃て”
 独裁者ヨグ・ソトゥート4世の統治する某国に、影男が潜入した。彼の狙いは皇帝の持つ「ティンダロスの指輪」だった。
変装の名人である影男だが、皇帝に見破られて捕まってしまい・・・。
 冒頭はルパン三世風だが、捕まってからは意外な展開に。
しかしシリーズ物の第1話風の話なのに続きがないのが残念。

獣太郎とあたし
 みち子の弟は、変だった。一言で言えば怪物なのだ。
しかし両親をはじめとした周りの人は、獣太郎が変だと思っていないようだ・・・。
 傑作。こんな話が描けるのは高橋葉介しかいない。ハラショー(笑)。

お狂さん
 8歳のトオルは、電車に乗って山奥のお爺ちゃんの所に遊びに来た。
しかしトオルの前に現れたのは、妖しく美しいお狂さんだった。彼女は山に棲むもののけで・・・。
 これまた傑作。お爺ちゃんのキャラがすごい。お狂さん可哀想。でもが可愛い(笑)。

遠い道
 トオルは一人、夜道を駅から家までの寂しい道を歩く。やがて姉が、そして両親が合流する。
家に帰ると、お婆ちゃんが仏壇に向かっている。
トオルは一人で夕食を食べる・・・。
 これまた実に切ない傑作。
こういう雰囲気を創り出せる著者の実力たるや怖ろしいものがある。


 変なものが見え、熱が出て学校を休んでばかりの「僕」は、田舎のお婆ちゃんのところで静養することになる。
お婆ちゃんちの寝室には、虎の掛け軸がかかっていた。それはお爺ちゃんが昔中国で買ってきたものだった。
「僕」は眠り、いつものように夢の中で化け物達に襲われる。そこに・・・。
 またまた傑作。なんだかほっとする。
虎とお爺ちゃんがかっこええ。

ジャングルボーイ
 ジャングルで化け物に囲まれてくらしているジャングルボーイ。
そこに飛行機が墜落。墜落現場には少女が一人倒れていた・・・。
 著者のよくやる無言劇。 ちょっぴり切ない佳作。

 一冊の本としてみると、実に粒よりの面白い短編集だったと思う。少々一貫性には欠けるところがあるが。


 

金目童子
高橋葉介/朝日ソノラマ平成5年1月20日初版/379円

 金目童子の母親は、山奥で童子を生んで死んだ。
彼を拾ったのは山野の女房だったが、彼女とその旦那は童子をいじめ抜き、童子の眼を火箸でくりぬいた。
山へ逃げ込んだ童子の前に、母親の幽霊が現れ、自らの眼を童子に与えた。
与えられた眼は金色に輝き、普通には見えないものも見える眼だった。
成長した童子は、眼の力を使って悪いやつらを倒しながら、父親を捜す旅に出る・・・。

 全10話のシリーズで、第2話で旅の道連れの坊主の紫銅と銀姫と出会い、最終話で童子が父親と相対し、運命の輪廻を形作る。
これがもう見事な出来で、たったの10話で終わっているのが残念でならない。
内容的には「どろろ」を「犬夜叉」の雰囲気でやってる感じ?
 とりあえずはキャラクターが魅力的で、紫銅も銀姫も実にいい感じ。
たった10話しかないので、それぞれのバックグラウンドに触れるまではいかないが、それでかえって旅の行きずり感も出ているような気がする。
もっと続いて更にキャラを起ててくれた方が嬉しいのは言うまでもないが。
 同じく第4話で出てくる4姉妹は、如何にも後で出てきそうだったのに、回想シーンでしか出てこないのは、どうも著者の予定よりもシリーズが早く終わった結果のように思える。
こんなによく出来た内容で打ち切りというのも考えにくいが、この辺の雑誌(掲載紙は月刊ハロウィン)は移り変わりも激しいので、やむにやまれぬ事情があったのだろう。
せめて全5巻くらいで読みたかった・・・。

20060522


 

怪談
高橋葉介/朝日ソノラマ平成3年12月25日初版/922円

 タイトル通りの怪談を集めた短編集。

あぶな坂
 あぶな坂を下から登ってゆくと、坂の上に女の幽霊が見えることがある。
昔坂の上に堕胎を専門にしていた病院があり、荒っぽい治療で何人もの女性が命を落としたという。
ある日男が見た女の幽霊は・・・。
 ベーシックな怪談に、一工夫してある。 少々分かりにくいが、化夢宇留仁の人生経験の薄さのせいかも(汗)。

河童
 好きな男が東京から来るのを、道中の沼で泳ぎながら待つ少女。沼の中で彼女の身体を触る者が。
その夜、彼女の寝室に入ってきた人影は・・・。
 怖いと言うよりエロい(笑)。
いつもにも増してエロいので、初出を見てみたら「SMスナイパー」だった(笑)。

影男
 額に収まった真っ白なカンバスを見ている女性。彼女に話しかけたのは、ムンクの絵から出てきたような不気味な男だった。
彼はその絵は光を当てて影を見るのだと言うのだが・・・。
 これまたエロい(笑)。
それにしてもいつも出てくる曲がった階段のある場所はどこなのだろう?

双子
 見世物小屋の舞台で、中国服の少年がナイフ投げの妙技を披露している。的は彼とは双子の少女。
しかし少年の手元が狂い、ナイフは少女の心臓に・・・。
 よくある双子リンクもので、ショーとして盛り上がる部分以外は特に工夫もないのが残念。

壜の中
 海辺で少女が拾った壜に入っていたのは、奇妙な泥だった。泥は少女そっくりに変身する。
少女は男の子に恋をしていたが、会いに行く勇気が出ない。
代わりに壜の中から出てきた少女が会いに行き・・・。
 やった後悔よりもやらない後悔の方が大きい・・・などということはどうでもよく(笑)、なかなか不思議な感じで面白い。

おとうと
 久美は小さな弟が生意気なので木の枝でぶった。木の枝は弟の目に当たり、病院に運び込まれる。
久美は後悔し、弟の目が見えなくなってしまったらどうしようと悩むのだが・・・。
 先の展開が分かるのがかえって怖い。そういうのも怪談ではアリだと思う。


 結婚初夜を迎えた二人。新妻の登美子は裸を見せるのを恥ずかしがる。
そんな彼女のことを可愛いと思う新郎だが、彼女の話はだんだんおかしな方向へ・・・。
 これも上の「おとうと」と同じく先の展開が読める怖さ。
明らかに怪談とはニュアンスの違う怖さだが(笑)。

怪奇影男
 ボーイフレンドと美術館を見ていた智絵子は、真っ白な絵の前で立ち止まる。
タイトルは「影男」となっているが・・・。
 「影男」の続編かと思えば、そう言うわけでもないらしい。「影男」に登場した女性もそのまんまで出てくるのだが。
そして階段のあるあの場所も。
掲載紙が異なるので、エロくは無くなってしまった(笑)。

イケニエ
 寂しい沼に浮かんだ小舟には、白い着物を着てうつろな目をした女性が座っていた。彼女は自分がイケニエになると思いこんでいる狂女だった・・・。
 たったの4ページだが、それなりに雰囲気があっていい感じ。
夢幻魔実也氏もゲスト出演。

八雲館の怪
 海辺の宿である八雲館に、男3人が泊まりに来た。
そこに美しい女性が泊まっているのを知った3人は、思わず彼女を麻雀に誘う。すると意外なことに女は部屋についてきて・・・。
 怪談と言えば実に怪談らしい話なのだが、同時に完全にギャグでもある。
変に麻雀にこだわると思ったら、初出が「近代麻雀ゴールド」だった(笑)。
麻雀雑誌に載っている漫画だと思うと、今度は逆に麻雀が脇役すぎるような気が(笑)。


 道で眼にゴミが入った女性に話しかける男。彼はゴミをとってやりながら、それが今火葬場で焼かれている妻の灰が飛んできたのではないかと言う。
やがて女性は男の妻になり、幸せそうにしていたが・・・。
 なんとも不思議な作品。
犯罪なのか、超自然的出来事なのか、はっきりしない。表現手法も、この著者には珍しい映像的な処理を行っていたり。
とにかく色々な面で不思議な作品だった。


 愛人の夢、そして妻の夢を見る。 しかし愛人と妻の顔は同じ。
また夢の中に夢を見ているはずの男の顔は無い・・・。
 著者はものすごい寂しがりやなのかも(笑)?

血!
 ナイフで女の喉をかき切ると、大量の血が噴き出す。やった男は部屋から逃げ出すが、血は扉の隙間から流れ出て・・・。
  いまいちピンと来ないオチ。

月夜
 満月の夜、海辺で涙を流しながら踊る若い女性。彼女は船乗りの恋人が出航する見送りに間に合わず、泣いていたのだ。
話を聞いた男は・・・。
 ほのぼのロマンティックストーリー・・・って、怪談じゃなかったの(笑)?
初出「SMスナイパー」なのに全然エロくもないし(笑)。

混沌の島
 裸の女が砂浜に打ち上げられている。女は生きており、彼女を見つけた男はテントに連れて行く。
彼女は男の別れた妻の若い頃にそっくりだった。
やがて男は、島の洞窟の奥にあるものを彼女に見せる。
それは混沌そのものだった・・・。
 完成度の高いクトゥルフ神話もの。アブホースかウボ・サトゥラか。
物語はソラリス風でもある。


 海原にぽつんと出ている岩に倒れている少年。
彼に話しかけたのは、巨大な女。彼女は海そのものだった・・・。
 バイキングに伝わっていた昔話と言われれば信じそうな雰囲気で楽しい。
しかし月が引き寄せられたら、月に近い海は満ちるのでは・・・(汗)?

 なんとなくまとまりに欠けるが、それがかえっておもちゃ箱的な面白さになっていると思う。
傑作と言えるほどの作品が無いのは少し残念。

20060523


 

マンイーター
高橋葉介/ぶんか社1997年8月1日初版/857円

 ホラー短編集。

人喰い(マンイーター)
 さびれた通りで男を漁る女。
しかし彼女はコールガールではなく、人を食料として何百年も生きてきたマンイーターだった。
しかしある日、彼女はどことなく惹かれるところのある男に出会い・・・。
 設定の割にキャラが起っていて、彼女が主人公のミニシリーズがあったら読んでみたいほど。
少しインタビュー・ウィズ・バンパイアっぽいところも。

肉蟲
 恋人を奪い取られた女は、一心不乱に物を食べ、肥え太っていった。それは単なるヤケ食いではなく、 ある目的があったのだ・・・。
 化夢宇留仁は脂肪関係の描写は苦手で、美容整形の脂肪吸引とかも聞くだけで気分が悪くなる。
と言うわけで実に気分の悪くなる作品だった。そういう意味では成功作か。

お気に召すまま
 クールでかっこいいタカヒコのためにはなんでもする少女ヒロミ。しかしタカヒコはわがままで、彼に気に入られようとする努力は並大抵のものではなかった・・・。
 滅茶苦茶パワフルなヒロミが破壊的なノリを生み出していて楽しい。ラストのオチもいかす。

双子の恋
 双子のケンイチとケンジと同時に付き合っているヒトミ。
双子の二人は彼女にどちらか決めるように言うが、なにもかもがまったく同じ二人のどちらも選べない。
やがて二人は彼女のためにある決心をする・・・。
 なんか髪と櫛の出てくる昔話のような・・・勿論すれ違いはあんな生易しいものではないが(笑)。

パパはあなたが嫌いみたい
 付き合っている安達美和子の家へ行く途中、彼女の父親に出会う。父親の手には斧が。
彼は娘可愛さに、彼女に恋人が出来ると家に呼んでは道中で殺していたのだ。
怪しんだ美和子は男に変装し・・・。
 2段落ちが楽しい。どことなく落語っぽくもあるな。

きつね
 夜道を歩く女と、その後を歩く男。
女は男が痴漢ではないかと怪しみ、男は女が自分を痴漢だと誤解しているのではないかと不安だった。
やがて女は走り出し・・・。
 モヤモヤした不安をあおる展開が面白い。オチはドタバタだが(笑)。

似たもの同士
 黒岩比喜子と白川多恵子は幼なじみだったが、二人とも似たもの同士で、友達と言うよりもライバルだった。
しかしある頃からお互いの状態が相手にも影響しだし・・・。
 激しい女の戦いは、自己破壊の破滅的小宇宙に(笑)!
学校怪談の立石さんそっくりの女がいい感じ。

首を吊っているのは誰?
 怪談話に花を咲かせる女学生達。夜の学校で首を吊っている幽霊が出ると言う。
その首を吊っていたのは誰かと言うと・・・。
 「むじな」の展開を首吊りの怪談話に組み合わせたような、なんとも不思議な内容。
著者もあとがきで「なにがなにやらさっぱりわからん」と書いている(笑)。

猫の実
 強姦されて殺された女の死体を見つけた女子高生の「私」。
彼女はそこに通って死体が腐り果ててゆくのを観察していたが、ある日死体の口から奇妙な草の芽が生えているのに気付き・・・。
 化け物も出てくるが、一番怖いのは主人公の「私」(双葉という名前)。
マジでいそう。

フタバ
 女学生フタバが学校から帰る準備をしていると、キタガワユミコが近寄ってきて彼女の手を握る。
更に彼女がフタバにキスしようとすると、フタバはユミコの小指を折る。
フタバはユミコの想いと指の痛みを思い、愉悦に浸る。
またユミコが見ているのを知りつつ、フタバが男と仲のいい振りをしてみせると、ユミコは男を刺し殺す。
そしてユミコは最後の手段に出るが・・・。
 「猫の実」で登場した双葉がフタバとなって再登場。
相変わらず怖い女だが、本作ではオチがもう一つ外しているような気がする。

コイン・ロッカー・ベイビー
  フタバがいつも使うコインロッカーの中に、赤ん坊が捨てられていた。赤ん坊はまだ生きていたが、彼女は躊躇なく「それ」を池に捨てる。
しかし赤ん坊は水中生活に適応して生き残り、インプリンティングによってフタバを親だと思いこむ。
しばらくは化け物と化した赤ん坊を使って遊ぶフタバだが・・・。
 相変わらず怖ろしいフタバ。
本作では赤ん坊の化け物の描写も切なく怖ろしく、オチもいい感じでほぼ傑作と言えると思う。
フタバが主人公の話をもっと読みたいような読みたくないような・・・(笑)。

 バラエティーに富んだ作品が並んだお得な1冊だったと思う。
最高によくできた作品というのは無いが、佳作以上の作品が多い。

20060527


BACK NEXT

HOME