1999.6.2読了
TRAVELLERのリプレイ用イラストの資料に服に関する本を3冊、爛柯GamePlanningのMad-hatter氏にお借りした。
そのうちの1冊。
イラストとエッセイ(?)で、アルファベット順に服飾に関する辞典を形作っている。
元々服装とかにはほとんど注意を払わず生きている化夢宇留仁には、日常的なアイテムに知らないことが多数有り、この本で目から鱗が10枚くらい落ちた。
惜しいのは内容の踏み込みの浅さだが、なにも知らない化夢宇留仁にとっては丁度よかった。それにイラストがメインと思えるところもあり、これはこれでOKだろう。
関係ないけどこの本読んでから行った店で、前に目を付けていたけど売れてしまっていたTシャツを再発見して買った。
あ、ほんとに関係ない。
1999.6.4
1999.6.12 読了
ある日読み終えた本が積まれて出来た塔が、なんの前触れもなくドウと音をたてて倒れた。
化夢宇留仁はびっくりして飛び上がり、あわてて積み直し始めた。
不思議なもので、一度崩れたバランスというものはなかなか取り戻せない。ある程度積んではまた倒れてくる塔に辟易していると、唐突に本書が目に入った。
表紙に見に覚えがない。
化夢宇留仁は妙に几帳面なところがあり、所有している本には奥付のところに、買った日付と読了した日付を書き込んでいる。
もしやと思って見てみると、案の定読了の日付が書いてない。
読み終えた本ばかりでそびえていた筈の塔に、いつの間にか紛れ込んでいたらしい。
表紙では禿艦長と超能力近眼ねぇちゃんが、こっちに勝ち誇ったような笑みを向けていた。
これは読まなきゃしょうがない。
あきらめて帯をめくると、青いターバンのようなものをつけた見たことのない女性が、鳩が豆鉄砲喰らったような顔でこっちを見ていた。
こっちも同じような顔になったに違いない。
前置きが長くなったが、「テレパスの絆」はなかなか面白かった。
だいたい外れのないスタートレックの小説だが、本書は女性らしいきめ細かな描写が生きた好著だったと思う。
光と陰、それに色彩にこだわった描写は美しく、化夢宇留仁は文章から連想していた画面を途中からテレビシリーズから映画クラスに切り替えた。特に壮大な神殿内での儀式のシーンなどは、映画クラスのお金を掛けないと再現できないものだった。
余談だが、こんな風にスタートレックの小説を読んで映像を思い浮かべる人は多いと思う。セリフは日本語吹き替えの声優の声で読んでしまうし、画面もそれっぽく作ってしまう。
化夢宇留仁はこの傾向が特に強く(昔芸大の映像学科にいたせいもあると思うが)いったん映像化が始まると、カット割りやらカメラワークまで考え始めてしまう。こうなるとほとんど小説とは言えず、このように感想を書こうとしても自然映画のそれに近くなってしまう。困ったものだが、化夢宇留仁自身は面白いのでいいとする。
惑星キャプロン4の王ジョーカルが正式に絶対君主になるに当たり、宇宙連邦加入とキリスト教系宗教団体、リトル・マザーズの協力を要請したことから、エンタープライズは修道女を乗せて件の星に向かった。
エムパシー(感情移入力)能力者であり、カウンセラーであるトロイ少佐は、修道女のヴェロニカが訓練されていないテレパスだと気付き、初めての他の世界への旅で他人の思考に押しつぶされそうになっている彼女を助けるべく、テレパスの訓練を始める。
ストーリーはヴェロニカが苦しみつつも成長してゆく過程を骨格として、キャプロン4の絶対君主の失われた双子が絡む陰謀劇を中心に進められる。
二つの要素を絡ませながら大きなストーリーを形作る手法は、いかにもスター・トレックらしいと言えるだろう。
さて王になりすました双子の弟に、例によって捕まってしまうピカード、トロイ、そしてヴェロニカ。
そのあと色々あって脱出して、王位もあるべきところに戻る訳で、まぁありきたりなストーリーと言えるが、そこにテレパス達の心理描写が巧みに絡ませてあり、最後まで退屈しないで読めた。ただし悪事が露見してからの双子の心理描写がほとんど無いのはどうかと思う。ヴェロニカの成長を伝えるのがメインだとしても、無責任な感じがした。
忘れてならないのが宗教に興味を持ってしまったデータの右往左往であろう。いつもながら息抜きのような、スパイスのような彼のキャラクターはいい味を出していて楽しめた。
最終的には悩めるマザー・ヴェロニカに助言を与えてしまうデータだが、勿論彼自身はそんなこと分かっていない。
これは悩みを、そのへんにいる野良猫とかに打ち明けて満足するのとあまり変わらない気もする。ま、いいけど。
心配性のライカー副長が、口うるさいメンドリ扱いされているのも愉快だったが、トロイの呼びかけで飛んでくる様は、どこか哀れにも感じた。
男というのはそういう生き物なんですなぁ。コッコッコッ・・・
1999.6.23読了
この草上仁という作家には、あこがれる点がある。
それはサラリーマンであること。
今もそうか確認してないが、この人は作家デビューしてからもずっとサラリーマンを続けていた。それだけならよくある話だが、この人の場合はそのうえに多作という特徴がつく。
毎日会社に通い仕事をこなしながら、作品も恐ろしいペースで書き続け、一時期は編集部に未発表作品が山積み状態になっていたという。
何ともパワフルな作家である。
そんな多作を支えている理由は、作品を読むと伝わってくる。
とにかく楽しみながら書いている。そんな感じなのだ。
化夢宇留仁の読んだ限り、文体はあくまで軽く、どこかユーモラスで、アイデアに満ちている。
多分会社員という別の顔があるからこそ、執筆はあくまで趣味という感じで楽しく取り組めているのではないかと思う。ここのところに非常にあこがれる。
さてこの「お父さんの会社」だが、ある意味この作家らしさの詰まった作品である。
まず書き下ろしであること。この人は何しろ趣味で書いているので、依頼があろうが無かろうがどんどん作品を書いていってしまう。
分厚い文庫本なのだが、これも全編楽しんで書いているのが伝わってくる仕上がりである。
主人公はサラリーマン。舞台は会社と家と、コンピュータ・ネットワークゲーム内に構築された仮想の会社、である。この辺の設定は会社と作家業がクロスオーバーする作者の心情が出ていそうだ。
主人公は会社と、ゲーム内の会社で仕事をする。時には家に仕事を持ち帰り、奥さんに文句を言われながらやっぱり仕事をする。
この辺の描写はさすが現役サラリーマンだけあって、リアルこのうえない。もちろんこの人の味であるライトな雰囲気は損なわれておらず、人間関係のどろどろみたいなのは省かれているが。
物語は現実とゲームそれぞれの会社で並行して進む。
ゲーム内でプレイヤー達が行った仕事が現実社会に漏洩しているのではないか、つまりはゲームの中でただ働きをさせられているのではないかと主人公が気付いてから、舞台は交差してゆき、結末へと集結してゆく。
こうして書いてみるとなんだかややこしい設定である。作品内でも登場人物がどちらの出来事か分からなくなって混乱したりしている。
化夢宇留仁が思うに一番混乱したのは作者だと思う。上記のように本人が会社に通いつつ、会社に通う主人公がこれまた会社に通うゲームをやっている小説を書いていたわけで、こっちも書いているだけでくらくらしてくる。
だが作品自体は、混乱しそうな設定を相変わらず分かりやすい文章でうまく書いていて、苦労無く読めるように仕上がっている。
さっきから会社会社で地味な話の印象があるかもしれないが、実は派手な見せ場もたくさん用意されている。
何しろ会社とはいえコンピュータゲームが舞台。ハッカーがからんで他のゲームからアイテムを流用したりし始めると、すごいことになる。
例えばいきなり警官隊が会社の一室に押し寄せ、追いつめられたスーツ姿の会社員達が銃を抜き、自分達の正体がFBIと内閣調査室の一員である事をばらし、さらにはペガサスに乗って逃げていったりするわけである。
この辺のくだりは結構笑わせてもらった。やはりびしっとスーツを着込んだ年輩のサラリーマンが魔法を使う様というのは、何ともミスマッチで面白い。
なんかちゃらんぽらんな記事になったが、作品の方は主人公の奥さんと子供がいい感じで絡んで、しっかり山場を用意してきれいにまとまる。
この作者はいつもそうで、終わり方はスマートで不安がない。もう少し突き放して読み手を考え込ませてもいいような気がするが、アイデア短編を主に書いてきて出来た作者のスタイルなのだろう。
1999.6.25
表紙について
日本の大衆小説でありがちなセンスで仕上げられている。
まとまってはいるが、化夢宇留仁はもっと他には無い特徴をアピールしてほしかった。
例えばもっとリアルな画で、いかにもなサラリーマン風のおっさん達がファンタジー風の装備を選んでいる様とか(笑)。
とにかく表紙から思い浮かイメージが、内容と比べて差がありすぎるのがもったいない。
2006.7.12追記
またもスタートレック関係。今度はファーストシリーズ。
前述の「テレパスの絆」と本作は、ある点で類似していると言っていいだろう。
両方とも「神」が大きく取り上げられているのだ。
ただしその扱い方は全く違う。「テレパスの絆」が神に対する信仰のありかたと、神の存在意義について掘り下げてあったのに対し、「星なき世界」では、まず神らしき存在と力の誇示があり、その圧倒的な力の前に神と認めざるを得ない状況が提示される。
つまり同じテーマを全く逆の視点から描いているのだ。
そういう意味では化夢宇留仁はタイミング良くこの作品を読んだと思う。「テレパスの絆」と比較する楽しみも同時に味わえたのだから。
残念なのは順番が逆ならもっと楽しめたというところだろう。スタートレックシリーズはバージョンを重ねるごとに、人間ドラマの比重が高くなっていっている。それは小説でも同じで、「星なき世界」はまさに映像のように展開を追ってゆくのに力を入れており、少々心理描写の点では物足りなさを感じた。
「星なき世界」の売りは、なんと言っても圧倒的な迫力で見せるダイソン球天体である。
来るべき人口爆発に備えて、科学者ダイソンが構想した巨大人工天体。太陽系にある惑星全てを破壊し、材料にして太陽のまわりをすっぽり包む。人類はその内側の壁面に居住する。壁面と言ってもその広さはただ事ではない。それこそ地球の何億倍もの面積になる。
エネルギーは太陽からの光線を余すところなく受け取れるので、これも問題なし。
何とも壮大な構想だが、現実には建造不可能と言われている。
そういう夢の構造物を探索できるのもまたスタートレックの面白いところである。
表紙について
このシリーズは化夢宇留仁の知る限り全て
こう言っては語弊があるかもしれないが、ユダヤ人は面白い民族(?)である。
この本にはその面白さが色々な形で詰まっている。
面白いと言っても、笑い話がそうだと言うわけではない。なにしろ笑い話では笑えない。中にはましなのもあるが、ほとんどは笑うよりも泣けそうな話で、笑うとしてもどこか自嘲的な雰囲気が漂っている。大爆笑の笑い話集!では全然ないのだ。
本の半分はきびしい歴史と生活を思わせる格言や教訓で、笑うどころではない。
しかしそれぞれから伝わってくるユダヤ人の文化や民族性が面白いのだ。同時にユダヤ人が如何に優れていたのかをも想像させる。
ユダヤ人と聞いて何を想像するだろうか。
迫害、ヒゲ、金に汚い?、鼻がでかい?
普通に思い出されるイメージは、主にユダヤ人以外がユダヤ人を指して言ったり、思ったことである。
この本にもそういう話もたくさん載っている。確かに笑い話としては分かりやすく、一応笑える。しかしそうしてユダヤ人を笑っている話でも、そこはかとなくユダヤ人に対する警戒心や畏れが見て取れて興味深い。
逆にユダヤ人自身が言い伝えてきた話は、内容自体は結構悲惨なものが多いのだが、妙にのんびりとして安心できる雰囲気を漂わせている。
どこかに余裕を残している。そんなところがユダヤ人が他の民族に拒否反応を起こされる原因の一つではないだろうか。
ユダヤの神学生の気楽な日々や、職業として認められていたという乞食の存在は、そんな余裕をはっきりと感じさせる。勿論精神的なものだが。生活や経済的には余裕などもてる筈のない状況なのだ。
他にも色々考えさせられたり、にやりとさせられたりと面白い要素が多いのだが、このまま書いていると論文みたいになりそうなので、この辺にしておく。
とりあえず面白い本だったのは確か。意味不明なところも多数あったが。(Madhatter氏、いきなり質問の電話したりしてご迷惑をおかけしました。)
まったくユダヤ人ってやつは・・・・・・
1999.7.18