宇宙船シナノマルの人々

第2回

邂逅


チーク・コードリオ
(プレイヤーTunami氏)

元海賊→悪党→海賊 3期
768B42
233/1075フォーニス生、男、31才

<格闘-2><ハンドガン-2><パイロット-2><リーダー-1><社交−1><戦術-1>

チークは小さい頃から手のつけられない悪ガキだった。
喧嘩はもちろん、たちの悪いいたずらもやったし、盗みも働いた。
それだけならよくいる悪ガキだったが、彼の場合はその上頭がよかった。
少人数の仲間を引き連れ、彼が指揮した盗みはほとんどが成功し、失敗してもうまく逃げ延びた。

そんな彼が海賊になったきっかけは、宇宙港の倉庫で仕事をしていた時だった。
その倉庫には公に出来ない荷物が入っており、通報される心配がないという情報を得ていたのだ。
梱包された荷物の運び出しが終わりかけていたその時、倉庫の借主らしい男に見つかり、逃げ出した。しかし仲間が一人捕まってしまった。
チークはすばやく倉庫の外周を反対側へまわり、仲間を締め上げている男に背後から銃を突きつけた。
男は動くなと言われているにも関わらず、余裕の表情で振り向いて、チークの仲間を盾にすると、そのまま近づいてきた。
震える手から拳銃をもぎ取ると、男は言った。
「海賊の上前をはねようたぁ、ませたガキだ。」
いつの間に呼んだのか、倉庫の周りには男の仲間らしい、強面が数人姿を現していた。
「海賊には海賊式の裁判ってものがある。丁度これから荷物を船へ運び出す手筈だったんだ。手間を省いてくれた礼もしなくちゃならんな。」
周りから下卑た笑い声が聞こえた。

そうして海賊船へ連れ込まれたチークとその仲間だったが、その後殺されたりはしなかった。
ただしそのまま船は出港し、彼らに選択の余地はなくなってしまったのだ。

それから約4年の間、海賊として暴れまわっていたのだが、ある日海賊船は、宇宙港で海軍に拿捕された。
なんとか逃げ延びたチークは宙港街に紛れ込み、身を隠した。
それから何年かはその街で、いわゆるチンピラのようにして生きていた。その時彼は思い知った。自分が海賊稼業を気に入っていたということを。
もう一度宇宙船に乗り込んで暴れまわりたいと思ったが、どうしようもなく、ただ毎日荒れるしかなかった。
そんなある日、酒場で喧嘩になり、ガラの悪いやつを二人ほどのした頃、頭に派手な傷のある男が彼を凝視しているのに気付いた。
もちろん許してはおけない。
チークは男にも難癖をつけた。すると周りに座っていた客がみんな立ち上がり、彼をにらみつけた。どうやら傷のおやじがその場のボスらしいと悟ったチークは、逃げ場を探したが、男の声に気が変わった。
「生きのいいあんちゃんだ。無敵艦隊の斬り込み隊員を二人もノシてくれるとはな。」
チークは聞いたことがあった。スピンワード・マーチ宙域で広く活動している血まみれ真っ二つ無敵艦隊の名を。
そしてそのボスが、ジャット・ロトローメス提督といい、彼の頭には大きな傷のあることも。
チークはその場で入隊を希望し、受け入れられた。

無敵艦隊の旗艦ゼットンに乗り込み、主に斬り込み隊員として働いていたチークは、提督の一人息子ジュニアから兄貴と慕われるまでになった。
だがそれがいけなかった。
提督に呼ばれたチークは、船を降りるように言い渡されたのだ。
提督にすれば、ジュニアは艦隊の後を継ぐべく指揮能力とカリスマを身につけてもらわなければならない。それがチークになついてしまっては、道を間違える可能性があったのだ。
フォーボールドンの基地で働いたらどうだとも言われたが、チークは断った。宇宙船に乗れない海賊なんて、辞めた方がましだったのだ。


最寄の星系リジャイナの外周惑星で降りたチークは、 シャトルで惑星リジャイナ(実はガスジャイアント「アシニボイア」の衛星なのだが)にやってきた。1106年240日のことだった。
宇宙港のロビーに行ってみると、その片隅に妙な人だかりが出来ていた。
近寄ってみると、白衣を着た老人が立っており、その脇には携帯用デスクにパソコンを置いて、若い女性が座っていた。
なにやら妙な研究のため、協力者を募り、同時に仕事の斡旋をしていると言うことだった。
ふらふらと後をついて行き、宙港街のはずれにある研究所まで行った。彼はここの仕事の中には、宇宙船に乗り込むものも多いと言う点に惹かれていたのだ。

残念なことに、その日は宇宙船に乗り込めるような仕事は無かった。
落胆して帰ろうとした彼を、助手のエルザが呼び止めた。
「お待ちください。実はそういう仕事のお話はあるんです。ただし詳しいことが決まってなくって、もうしばらくお時間が掛かりそうなんです。」
チークは少し考えて、ソファに座りなおした。
彼と同じく立ち上がりかけていた、口髭のある上品そうな中年の男性も、ソファに座りなおしていた。

仕事の話は進み、一人また一人と研究所を出てゆき、残った客はチークと、さっき立ち上がりかけていた男だけになった。
エルザは二人に少し待つように言うと、なにやら電話をかけ始めた。
部屋の奥では宙港で立っていた老人、フレドリック・マーキュリー博士が同じくパソコンを前に、難しい顔をしていた。

やがて電話が終わると、エルザは二人の前まで来て、言った。
「クライアントが事情があるそうで、今ははっきりしないのですが、来週249日に詳しいお話ができるようです。」
一応希望は持てるようだ。
しかし本当にこんな小汚い小屋のような研究所で斡旋される仕事に、そんな話が舞い込むものだろうか?
エルザは少し間を置いてから切り出した。
「あのー・・・申し訳ございませんが、このお仕事には恒星間宇宙船を運行する上での技術が必要になります。お二人は何かそういう技術をお持ちでしょうか?」
チークは思わずにやけそうになった。脈がありそうである。
彼は得意気な口調になりそうなのを我慢しながら答えた。
「2レベルのパイロット免許を持っている。」
もちろん海賊時代に身分を偽って取ったものである。しかし実際操船技術には自信があった。
少し離れたソファに座っていた男は、淡々とした口調で言った。
「航法士の資格なら1レベル持っています。ただ後は・・・宇宙船と言っても、艦隊での戦闘が専門だったもので・・・」
チークはもぞもぞと居ずまいを正した。
それはどういうことだ?艦隊の戦闘が専門・・・普通そんなやつはこの世に2種類しかいない。
海賊か、海軍である。
男をもう一度横目で観察してみる。どうしたって海賊には見えない。

チークの様子が変なのに気付いているのかいないのか、男はそのまま黙っていた。
エルザはかまわず続けている。
「それなら文句無しです。では御足労ですが249日の13時に、またこちらの方に来ていただけますでしょうか?」
「分かりました。」
男は立ち上がった。
チークも慌てて立ち上がった。だが言葉が出てこなかった。果たしてこんなやつと仕事をして大丈夫なのか、決めあぐねていたのだ。
「それではお待ちしております。今日はどうもありがとうございました。」
エルザにドアまで送られ、どうしようもなく男と一緒に外へ出た。

歩道に出てしまったが、まだ男は前にいる。
なんとなく気まずい。
黙って男の背中を見ていると、彼は左右を見回したかと思うと、今度は右手を顎にやって、「うーむ」とつぶやいた。何か考え込んでいるらしい。
チークは通り過ぎるのも不自然な気がして、かと言ってこのまま背中を見ているわけにもいかず困っていたが、男が振り返ったので思考が停まった。
「あの・・・この辺で安く泊まれて目立たないホテルのようなもの・・・って、ご存知ないですか?」
「え?」
「お恥ずかしい話ですが、私はこの歳で家出の身なんです。下手に目立つところにいると、捕まりかねないんです。」
「あー・・・それは・・・大変ですな。」
チークの脳裏ではめまぐるしく思考が成されていた。
男は家出の身だと言う。もしかしたら海軍を脱走したのか?いや、それならこんな所をのんびりとはしておれない筈だ。
ではいいところのボンボンか?そう言えばそんな感じもする。ここは恩を売っといて損は無いか?
「それなら・・・私はいいところを知ってますよ。この近所です。ホテルなんて雰囲気じゃないですが。よかったら案内しましょう。」
海賊時代にたまに利用していた安宿が近所にある。もちろん海賊として泊まっていたわけではないし、問題は無い筈だ。
「そうですか。 それはどうもありがとうございます。あ、しかし案内までは結構です。そこまで甘えるわけにはいきません。」
「いいんですよ。どうせ暇ですし。来週までは。」
「来週まで・・・ですか。」
男ははじめて笑顔を見せ、更に言った。
「あ、名前も名乗らず失礼しました。私はロビン・ピッポーという者です。しばらく前まで海軍にいたんですが、今はこの通りの家出中年です。」
チークも慌てて答えた。
「私は・・・チークと言います。チーク・コードリオです。よろしく。」
偽名を使おうかとも思ったが、面倒になって本名を名乗ってしまった。
二人は握手を交わした。
ロビンは更に続けた。
「 私はこれから過去とは縁を切って生きてゆこうと考えてます。この仕事がその第1歩なわけです。どうかこちらこそよろしくお願いします。」
チークの心中も決まっていた。
過去と縁を切るのは彼もまた同じなのだ。


ロビン・ピッポー卿
(プレイヤーHomare氏)

元帝国海軍一般科中佐 3.5期
4A9A8B
115/1072イフェイト生、男、34才

<大型救命艇-2><宇宙服-2><0G戦闘-2><贈賄-2>
<ハンドガン−2><航法-1><艦隊戦術-1><エネルギー火器-1>
<バトルドレス-1><ロボット操作-1><交渉-1><尋問-1>

(プラズマガン-TL14)(磁気ピストル

ロビン・ピッポーは代々帝国海軍の家系に生まれ、彼もなんの疑問も志も無く、海軍に入隊した。
数々の襲撃作戦に参加し、おじのロック・ピッポー(現海軍提督)の力もあって32歳で中佐にまで出世し、重巡洋艦サラトガの副長をも任されるようになる。

彼はその一見冷静沈着な表情の裏に、子供っぽい宇宙のヒーローにあこがれのようなものを持っていた。なんの志も無かった彼だが、だんだん自分が理想の姿に近づいているように感じていたのだ。
しかしイフェイトの最高責任者である父親のブライアン・ピッポーに家を継ぐために呼び戻され、惜しまれつつ海軍を除隊した。
いざ父親の仕事を手伝ってみて、彼は疑問を感じた。

海軍の重要拠点でもあるイフェイトでは、海軍はまさに花形職業であり、誰からもしたわれている筈だった。
だがイフェイトの地上ではテロが横行し、経済も破綻、民衆は恐れ、おびえながらなんとか生きているような状態だった。
地上はそうだと言うのに、軌道上には巨大な海軍基地があり、光り輝く戦闘宇宙艦がひしめき合い、基地内には制服も誇らしげな海軍の士官や下士官たちが整列している。
何かがおかしかった。
父ブライアンはロビンに相談され、笑って答えた。
そんなことは気にする必要がない、と。そういう彼はきらびやかに装飾されたマントを羽織り、指には輝く指輪がいくつもつけられていた。
イフェイト経済の破綻の一端が、目の前に父親の形で立っていたのだ。

ロビンは家を出た。
特殊任務で予備役として活動していると偽り、海軍の高速輸送艦に乗り込んだ彼は、気付いてみればリジャイナにたどり着いていた。
海軍基地を出た彼は、今度こそ自分の進むべき、宇宙のヒーローへの道を探し出すため、第一歩を踏み出したのだった。


1106年249日13:00時。
チークとロビンは言われたとおり研究所に来ていた。
部屋の奥には相変わらず老人が難しい顔をしてデスクに向かっており、エルザは再び電話をしていた。
話の内容からすると、まだ人手が足りないらしく、クライアントは機嫌を損ねているらしかった。
「今更無かったことにしてください・・・て言うのは勘弁して欲しいな。」
チークがこぼす。ロビンも真顔で答えた。
「まったく。」
この1週間ちょくちょく行動をともにしていた二人は、なんとなく友人のようになっていた。
もちろんチークが元海賊だと言うことは伏せてあったが。

そこにインターフォンらしいコール音が聞こえた。
エルザは電話を保留にすると、大きな声で言った。
「どうぞ。開いてますよ。」
スピーカーは壊れているのだろうか?
ドアの外で女性の声がした。
「よかった。留守だったらどうしようかと思ってたんです。」
つぶやくような若い男の声も聞こえた。
「あ・・・」
ドアが開いて立っていたのは、若い男女だった。
エルザは二人分のソファを引きつつ、嬉しそうに言った。
「あら、おとついのお二人ですね。丁度よかった。いい仕事が入ってるんですけど、人手が足りなくて困ってたんです。」
後の方にいる女性も嬉しそうに答えている。
「ほんとですか。よかった〜♪」
彼女の手前に立っていた青年は、呆然としているようだったが、自分が通行の邪魔になっていると気付いたらしく、慌てて中に入ってきた。
ソファの前まで来て、二人はようやくチークとロビンに気付いたようで、女性の方が少しきょとんとした顔になった。
「あら?ピピさん達じゃない?」
「あ、あの方々は昨日お仕事を決められて、もう始められているんです。」
「そうなんですか〜、すみません。来れなくって。ちょっと用事が入ってしまって。」
「いえいえよろしいんですよ。そんなはっきりお約束をなさったわけではございませんし。それに今日はいい仕事が入ってるんです。あ・・・」
エルザは慌てて電話の方に走り寄った。
「すみません、クライアントをほったらかしでした。どうぞ座ってお待ちください。」
そしてさっそく電話の向こうに謝りだした。しかし人手が足りたことを伝えると、向こうの機嫌も直ったようで、途中から和やかな口調になった。

ソファに落ち着いた4人はお互いの値踏みでもするように、それぞれの顔を興味深げに眺め合っていた。
口火を切ったのは、ロビンだった。
「ロビン・ピッポーと言います。どうぞよろしく。」
「あ、ルシア・クリモアです。こちらこそよろしく〜」
チークはわざとぶっきらぼうな態度で、言った。
「チークだ。」
後の一人、若い男は困ったような顔でそれを見ていたが、やがて他の3人が彼を見つめているのに気付き、もはや逃げ場が無いのを悟った。
「マービン・セガリオン・・・です。」
そこにエルザが電話を終えて、戻ってきた。
「クライアントもすぐ来るそうですので、少々お待ちください。」
そう言ってお茶を入れはじめた。

4人はポツリポツリと自己紹介のようなものを始めていた。
チークとルシアは、もちろん海賊だったということは伏せていた。
またこの二人、同じ海賊団で同じ船に乗っていたのだが、丁度ルシアが降りた後にチークが入隊しており、お互いを知らなかったのだった。
そうこうする内、研究所の前に高級そうなエアラフトが降下してきた。
クライアントらしい。



宇宙船シナノマルの人々 第2回 終了

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