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TITAN
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FF(FIGHTING FANTASY) シリーズ紹介
ここではタイタン世界の元になったゲームブックを中心とした書籍を、
あくまで化夢宇留仁の視点で紹介しています。
もっとちゃんとした説明が見たいと思った方は、 八幡國瓦版にすばらしい解説があります。
タイトルにFFシリーズとありますが、 関係していると思われるものは
シリーズ外のものも収録しています。
火吹山の魔法使い
S・ジャクソン&I・リビングストン著
記念すべきFFシリーズ第1作目。
火吹山 のふもとにある地下迷宮を探索し、最深部にいる魔法使いを倒して、財宝を手に入れるのが目的。
つまり強盗である。
普通の強盗と違うところは、目標の方が強くて数も勝っているところだろうか。
これが書かれた時には、まだタイタンどころかアランシアの設定も無かった。表紙イラストも後続のそれと比べると、イメージが曖昧でなんとなくファンタジーと言った感じなのが面
白い。
イラストレーターも戸惑っていたのか、それとも間口を広めたかったのか。化夢宇留仁は多分前者だと思う。
世界の設定がない分1冊の本またはゲームとしての完成度は高い。
前半の迷宮に入って地下の川を渡るあたりまでのくだりは、イアン・リビングストンが書いている。彼は世界や生活感を大事にするタイプで、それは迷宮に巣くうモンスター達の活気として表れている。喧騒や匂いまで伝わってきそうな描写
は、他のゲームなどでよく見られる主人公(読者)の唯我論的な、いいかげんな世界とは一線を画している。
そうしてどっぷりと地下迷宮の存在感を与えておいて、後半に入ると著者がバトンタッチ。スティーブ・ジャクソンのゲーム的またはパズル的な展開に突入する。広大な迷宮がはじまり、そこかしこにパラグラフを利用したトリックが用意されている。さっきまでの生活感は鳴りを潜め、読者との知恵比べといった感じだ。これがもし最初からこういう展開だったら、よく出来たパズルブックにはなっただろうが、よいゲームブックとは言えなかっただろう。前半に迷宮の描写
があったからこそ、後半の謎解きにも力が入るのだ。二人の作家の個性が融合した結果
である。
この本が日本で出たのは、まだこういう形のファンタジーが珍しかった頃で、化夢宇留仁はゾンビや吸血鬼など、ファンタジーと言うよりもホラーな印象が強かった。 さらに「君は」という二人称で書かれている文章に想像が刺激され、怖さ倍増。謎解きどころではなかった(笑)。
バルサスの要塞
S・ジャクソン著
天才パラグラフアーティスト(?)スティーブ・ジャクソンが一人で書いた作品。
前作で後半の謎解きのくだりを執筆したジャクソンだが、この作品では彼もすばらしい描写
力があることを証明している。
今回の主人公は、世界征服を企む悪しき魔法使いを倒す使命をおっている。シリーズ化に伴って、大義名分が必要になったらしい。
やってる事は大して違わないが、流石に魔法使いを倒した後、財宝の入った箱が開かないからといって、泣きだしたりはしなくなったようだ(笑)。
表紙イラストは火吹山よりは具体的なイメージを描いているが、まだまだ曖昧な感じだ。
なんとか冒険の舞台であるバルサス砦らしきものは描かれているが、手前でにんまりしている奴は何者か分からないし(多分バルサスの脅威を表してるんでしょうが・・・)、ぞろぞろと行進してくるモンスターは、犀男らしい奴が呑気に空を見上げているところなど、脅威というより遠足気分だ。
これはこれで古風な味があっていい感じだが。
さてこの本ではスティーブ・ジャクソンによる、迷宮のような砦やモンスター達の描写が楽しめる訳だが、これがまた独特で面白い。イアン・リビングストンの描写は、まさにそこに生活があるという感じで、まかり間違えば親しみさえ湧いてきそうな雰囲気なのだが、ジャクソンのそれは何か違う。
モンスターは個性豊かで活き活きとしている。迷宮は変化に富み、冒険者に対するだけではなく、理由あって存在している事をアピールしている。
しかし親しみなんてものはない。ジャクソンの描く怪物達は、主人公(読者)には計り知れない彼ら独自の精神構造を持っている。そういう意味で奥深さが感じられる。ある意味本当の意味の怪物といえるだろう。リビングストンの場合は怪物達にもどこか人間臭さが伺える。怪物の描写としては物足りない部分もあるが、この面がタイタン世界を形作るのに役立っているのも確かだ。
このへんの違いも面白い。
もう一つのジャクソンの特徴が、ゲームブックそれぞれにストーリーと仕掛けに応じたルールシステムを作り出すところである。
この本では魔法ルールの存在がある。
白魔術師の一番弟子である主人公は、冒険に出発する時点でいくつかの魔法を選ぶことになる。
この時点で必要な魔法を選ばなかったら、クリアは不可能である。つまりもう冒険は始まっているのだ。
ジャクソンのシステムとドラマの融合はこの後も発展して行き、まさにパラグラフの芸術とでも言えそうな形に昇華して行く。
その第一歩が本書でもあるのだ。
イアン・リビングストンの作品。
ゲームよりも世界観を重視する彼らしく、火吹山のルールに変更はない。
バルサスと同じく魔法の助けはあるが、それはあくまでも持ち物扱いで、ルール的には一切追加はないのだ。
大きく変わったのは今回は野外の冒険という点。ジャクソンがゲームブックとしての面
白さを追求しているのに対して、リビングストンが冒険世界の広がりを楽しんでいる事が伺える。
巻頭には簡単な地図も用意されている。これは主人公(読者)の視点で役立つというより、世界の実在感を表したかったもののようだ。もしかしたら彼の脳裏には、この時点でアランシアの構想が出来ていたのかもしれない。
表紙イラストも今後の多くのリビングストンの作品に共通するパターンが出来上がっている。本文の1シーンを主人公(読者)視点で写
実的に描き表すのがそれだ。これも比較的視点が曖昧で、読者の想像力に任す主義らしいジャクソンの表紙パターンとは明らかに違って興味深い。
さて内容だが、完成度は非常に高い。
ゲームをしながら地図を書いてゆくと、ほぼ破綻せずに奇麗に出来上がるし、ダークウッドの森のどこかユーモラスだが不気味な雰囲気は一貫している。
だが面白さという点ではもう一つ、といった感じだ。
まず本文のイラストがよくない。これは好みにもよるが、二人称の文章で展開し、主人公の視点を表しているゲームブックのイラストは、これすなわち読者の多大な情報源であり、他の描写を想像する時にもベースになるものである。つまりイラストがしょぼいと全体的にしょぼく感じてしまうのだ。
下手とは言わないまでも、抽象的技法を駆使して物体の質感は不明、背景は簡略化ではゲームブックに向いたイラストとは考えづらい。もちろん好みやゲームブックの考え方にもよるのだが、誇り高く立ちはだかった真っ白なケンタウルスと文章では書かれているのに、おどおどしている肉の垂れ下がった怪物に見えるイラストはどうかと思う。
また前記の地図が奇麗に書けるという点も、特にゲームブック本来の面白味から言うと首をひねりたくなる。
地図が奇麗に書けるようにする為には、そのためのパラグラフが必要になってくる。
つまりその分内容が薄くなるのだ。
確かに地図を書くのは面白い。ただしそれはあくまでおまけ的な楽しみであり、本文が楽しめてこそのことだ。
この辺もリビングストンが世界を作る方に力を注いでいる皮肉な結果の一つと言えるかもしれない。
この本はタイトルから見ても分かるように、SFもので、タイタン世界とは関係ない。しかしここは一応FFシリーズ紹介と言う事になっている訳なので、取り上げる事にした。
FFシリーズにはいくつかこうしたSF物が含まれているが、「さまよえる宇宙船」はその第1作であると共に、とても異色な作品と言える。
まず作者は屋台骨を支えるコンビの一人、スティーブ・ジャクソンである。
この事は彼が既成世界の延長よりも、新たな作品を求めている現われとも言える。
システム的にも異色である。
この本では読者は宇宙船トラベラー号の船長となるが、同時に船の主要クルー達をも操るとこになる。今までのように主人公は自分の心配だけしていればいいと言う訳ではないのだ。
更に異色と言う点では、この本が明らかに目指しているものがあると言う事だろう。
冒頭の関係者への感謝を捧げているページのまとめの分はこうである。
「・・・彼らの長寿と繁栄を祈って」
これはスタートレックのミスター・スポックでおなじみの、バルカン人の挨拶である。
そう。この本はスタートレックの世界をゲームブックで味わえるように作られているのだ。
例えば正体不明の惑星に調査に行く時はどうするのか?主人公(船長)はスタッフの何人かを同行者に選んで、惑星にビーム転送を行うのだ。もうそのまんまである。
設定的にはブラックホールに吸い込まれて未知の宇宙に来てしまったトラベラー号が、故郷の宇宙へ帰る道を探すと言うストーリーでもとのスタートレックとはまったく違うが、これはゲームブックとしての面白さを考えた結果であろう。
しかし・・・しかしである。お気付きの方もあろうが、この設定は、スタートレックの最新テレビシリーズ、ヴォエジャーとそっくりである。また最近本書をペラペラと読み直してみたら、中に挿入されている口絵の宇宙船がこれまたヴォエジャーそっくりなのを発見した。
なんか妙に因果関係を感じてしまう。
まさかヴォエジャーのスタッフが・・・・・・・・?????????
ちなみに本書に登場する名前、トラベラー号はこのホームページで大きく取り上げているTRAVELLERから来ているのであろう事は、想像に難くない。
盗賊都市
I・リビングストン著
タイタンはアランシアにおいて、最も有名な場所の一つ、ポート・ブラックサンドの登場である。
作者はイアン・リビングストン。 この作品が彼の代表作なのは間違いないだろう。
生き生きと描かれた危険で混沌とした町の描写は、素晴らしいの一言だ。
もちろんこれにはイラストの効果も大きく影響している。細部まで描き込まれたそれは、ストーリーとは関係ない町の生活感がダイレクトに伝わってくる。
観光気分を満喫できると言う点では、右に出るものの無い優れた作品である。
もちろん問題はある。
例によってゲーム的にはあまり気を使わないリビングストン。まずシステムは相変わらずいじっていない。火吹山そのままである。展開はブラックサンドを歩いてザンバー・ボーンを倒す為のアイテムを集め、その本拠地に乗り込むと言うものだが、読者が考えて突破できる謎とかはまったく無い。選ぶ道筋と、賽の目が全てと言っていい展開なのだ。
はっきり行ってゲーム要素は戦闘部分くらいだろう。
それでも読者を捕らえて放さないのは、やはりその描写にある。特にゲームブックと意識せず、名高い盗賊都市の観光を楽しむ本だと思えば、とてつもない魅力に満ちた作品である。
とにかく楽しいのはポート・ブラックサンド自体だ。住民全てが盗賊ではないかと言われる無法都市ブラックサンドは、活気に満ちており、危険で、汚くて、混沌としている。まさにタイタン世界の代表選手のような都市なのだ。その面
白さは、町を巡っているうちに本来の目的である闇の帝王ザンバー・ボーンの存在を忘れてしまうほどである。
可哀相なザンバー・ボーンは、おかげでもっとも影の薄いゲームブックの悪役に数えられるようになってしまった。その不死性や能力を鑑みるに決して嵐の3人にも引けは取らない奴だと思うのだが・・・・・ちなみに表紙でさも盗賊都市を手中に収めているように描かれているボーン様だが、全然そんなことはない。むしろ文中では馬車に乗って通
り過ぎて行くだけのブラックサンドの支配者アズール卿の方がよっぽど威厳がある。
やっぱり間の悪い人というのはいるものである(笑)。
ちなみにこの本はFFシリーズでクリアするのが最も簡単な作品の一つとも言われている。とにかくサイコロ運の悪い化夢宇留仁は何度やっても最後の方のトロールの衛兵コンビに勝てなくて辟易していたのだが、試しに妹にやらせたら何と1回で解いてしまった。化夢宇留仁は立場が無かった・・・・・・・・。