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TITAN
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海賊船バンシー号
S・ジャクソン&I・リビングストン監修/A・チャップマン著
立て続けにSF作品を書いてきたチャップマンだが、原点回帰か今作はファンタジーである。
そして驚いたことに(笑)、これが面白い。
原点回帰と書いたが、この作品は設定とシステムは実に斬新である。
まず主人公が正義の味方ではない。
まあ今まででも「火吹山の魔法使い」のように、盗賊としか思えない主人公もあったが、今作ではアクティブな悪人(笑)である海賊船の船長なのだ。
もちろん某人気漫画のように友情と努力と勝利がテーマ(笑)の海賊ではない。罪もない人々を皆殺しにし、金目のものを奪って大喜びする大悪人なのだ。
主人公は内海を荒らし回る海賊船バンシー号の船長である。
内海にはもう一人情け容赦ない海賊として名をはせている殺し屋アブダルという男もいる。
どちらが本当の海賊の王かはっきりさせたらどうだという話になり、今二人のいるタクの港からはるか南のニプール島をめざし、50日以内でどちらが略奪品が多いかで決着をつけることに。
と言うわけで、海賊同士の威信をかけた強奪レースが始まる。
システムは主人公のルールはほぼ通常通りなのだが(戦闘時の運試しルールは無くなっている)、海賊船の部下達の能力が追加されている。
「さまよえる宇宙船」以来、FFシリーズ2度目の、主人公に部下のいる作品なわけだ。ただし部下のルールは襲撃点と戦力点の2つだけで、主に集団戦闘に使用されるだけなので煩雑なことはまったく無い。
そして50日という期限を生かすために、パラグラフで航海日数を加算してゆくのだが、ここに部下の戦力点が影響する。
主に帆とオールで進む船なので、部下達の能力がそのまま船の航海能力になるというわけ。ゲーム的にも雰囲気的にも楽しい。
また主人公の体力点が減っている場合、航海を休んだ日数分だけ回復出来るというのも戦略性があって面 白い。
航海日数のシステムは非常に面白く、よく出来ているのだが、パラグラフの選び方によっては、日数の経過に不具合があるのだけは残念である。
冒険は内海を南に進み、ニプール島を目指すのだが、その間のルートは自由に選択できる。
選んだコースによって様々なシチュエーションが用意され、立ち寄った町によっては賭博に手を出したり、借金取りに出会ったりと飽きさせない。
総じて「フリーウェイの戦士」と同じく設定とシステムが見事に融合した佳作と言える。
ただし選択肢が広いのはいいのだが、主人公と部下達の能力が低いとどうしようもない展開も多く、その辺はもう少しバランスをとってほしかったところである。
しかしチャップマンにはこの調子で頑張ってもらいたいところだ。