ルーンの杖秘録1 額の宝石之巻
マイケル・ムアコック著/深町真理子訳

 文明が崩壊し、剣と魔法が支配するようになった今から1000年ほど未来の地球。
ヨーロッパはグランブレタンという狂気の帝国の支配下に落ちようとしていた。
その魔の手がまだ及ばぬカマルグ国では、伝説の英雄ブラス伯爵が防備を固め、帝国の手出しを防いでいた。
しかし祭りが大いに盛り上がって意気揚々と戻ってきた伯爵を待ち構えていたのは、グランブレタンのメリアタス男爵だった・・・。

 というのが第1部の前半部だが、主人公ドリアン・ホークムーンは第1部には登場しないのだ(笑)
第2部で登場したケルン公爵ホークムーンはグランブレタンに国を占領され、慰みものにされるためにグランブレタンの本拠地であるロンドラ(旧ロンドン)に輸送されるが、メリアタス男爵はブラス伯爵への復讐にホークムーンを利用することを思いつき、彼の額に魔法の宝石を埋め込む。
そんなこんなでメリアタスの言いなりにブラス城へ向かうホークムーンだが・・・。
というわけでホークムーンの大冒険が始まるわけだが、エルリックと比べると非常に真っ当なファンタジー冒険譚という感じで、なによりホークムーンが普通にいい人(笑)なのと、変な剣を持っているわけでもないので仲間を殺したりもしないのだ(笑)
だからといって凡庸でつまらないということは全然無く、密度の高い物語で最初から最後まで十分に楽しく読めた。
やはり新鮮だったのは未来の地球が舞台ということで、地名なんかも微妙に現在からも想像できるような塩梅で、長距離の移動もそれが効いて風情がある。
またのちに別作品の主人公にもなる(らしい)ブラス伯爵もなかなか魅力的で、先のシリーズを読むのも楽しみにできた。
魔法使いと山巨人のハーフである相棒オラダーンもいい感じ♪

20250904(mixi日記より)
20250904


ウルトラマン 第3〜4話

第3話 科特隊出撃せよ
 

飯島敏宏監督
 城の近くの300年前の古井戸から恐ろしい音が聞こえるとの報告を受け、調査へやって来たフジ隊員とホシノ君。
井戸の中に降りてみたホシノくんは地下で巨大な目玉を目撃する。
その直後すぐ近くの水力発電所で山が崩れ地面が陥没し、透明の怪獣が現れる。
その怪獣は今度は送電事故が発生している伊和送電所の調査を行うハヤタとアラシの前に現れる。電気を食べていると思われる怪獣ネロンガが次に現れると予想されるのは第三火力発電所で、ここが止まると東京の機能が麻痺してしまう。
自衛隊も加わって防御を固めた第三火力発電所だったが、やはりそこにネロンガが現れ・・・。

 
 まさにウルトラマンのステロタイプと言える内容で、ウルトラマンとはこういう内容だということを1話だけ見せて説明するならこのエピソードを選ぶことになると思う。
見せ場も多く、やはり透明怪獣ネロンガの姿は見せないが質量は見せる演出や、怪光線を発射するときの2つの角が前に回転して鼻の角の光が先端に移動するなど、非常に凝ったディテール描写も素晴らしい。
後半の火力発電所での対決シーンは、そもそも施設が超大規模なのを活かしており、巨大な専用車両なども登場し、いつものようにTVシリーズとは信じられないような大規模なセットを破壊しまくっていてまさに見どころ満載。
 化夢宇留仁的に気になったところは、いつもよりもメイクを頑張っているようで美しいフジ隊員(笑)や、火力発電所を守る自衛隊車両の戦車が車体はシャーマンだが長砲身の砲塔は小さくて見慣れない車種だったところ(誰か車種が分かる人教えてください/笑)。

 

 

第4話 大爆発五秒前
 

飯島敏宏監督
 木星開発用に6個の原子爆弾を搭載したロケットML-1が事故によって太平洋に墜落。
積まれていた6個の原子爆弾のうち1個は日本海溝の深度5千mで爆発し、南洋の島々は津波に飲み込まれた。
残りの4個は回収されたものの、最後の1個は見つからないままだった。
洋上で原爆を捜索していた海上保安庁の巡視船に怪しい白い航跡が接近したかと思うと、巨大なラゴンが現れる。ラゴンの腕には最後の1つの原爆が・・・。

 
 ウルトラQに出てきたラゴンが再登場。
化夢宇留仁はスーツの使い回しの別物だと思っていたのだが、なんとウルトラQのラゴンと少なくとも同一種族で、音楽が好きという特徴まで活かしている完全な続編だった(汗)
巨大化したのは原爆の放射能のせいである(笑)
しかしもっと根本的に違うところがあり、それはスーツアクターで、なにしろ元のラゴンの中にはウルトラマンの中の人が入っていたので、対決する都合上そういうわけにはいかず、今回のラゴンはオリジナルと比べるとずんぐりした体型で、アクションも無駄な動きが多くて少し残念だった。
 例によっての化夢宇留仁の気になるポイントは、休暇をもらって旅行に行くというフジ隊員が連れがいるというので色めき立つ科特隊員たちだが、その連れはホシノくんで、しかもホテルでもなぜか科特隊のブラザー姿で色気のないことおびただしい(汗)
やはり子供向け作品ということで、そのへんのリアリティーに踏み込むわけにはいかなかったか(笑)
 またキャップの司令で千葉に調査に行っていたハヤタが「白い航跡」が湘南に現れたということで急いで向かうのだが、最速の移動手段がフェリーというのが味がありすぎる(笑)
 そして途中で出てきたスパゲティがあまりに不味そうすぎるのにはびびった(汗)
やはりこれも時代か(笑)
 最後、起爆スイッチの入ってしまった原爆を持って飛び立ったウルトラマン。
爆発の閃光が見えてウルトラマンを心配するアラシやホシノの前に現れるハヤタ・・・って、助かったのはいいけど戻ってくるのが早すぎる(笑)
ウルトラテレポートを使用したか?しかしエネルギーはほぼ尽きていたはずだが・・・(汗)

 

20250906(mixi日記より)
20250907


聖者の行進
アイザック・アシモフ著/池央耿訳

男盛り
 まだ生きていたのかと驚かれるアシモフがそのことについて書いた詩。
この詩を書いた当時(1966年)はアシモフはまだ46歳だったが、そのあまりの多作ぶりにとうの昔に亡くなった昔の作家だと思われていたらしい(笑)

女の直感
 極秘に地球上で活動していたロボットが事故によって失われた。
それは今までUSロボット・アンド・機械人間社が開発したロボットの中でも最も進んだ思考能力を持っており、人間には不可能な量の情報を突き合わせて直感を働かせることができ、その能力で人類が目指すべき居住可能な惑星の選定を行っていたのだ。
そしてロボットを開発したマダリアンの最後の報告では、それが成功していたはずなのに、研究者たちはその様子を誰見ておらず・・・。

 ロボットジェーンシリーズのボディを女性型にするという件があるが、そもそもこのロボットに人間のようなボディが必要な理由がよくわからない。
それと冒頭の事故内容があまりにも奇跡的な出来事で、神の審判かとさえ言いつつそのままなのが気になった。
スーザン博士が活躍するのは相変わらず楽しい。

ウォータークラップ
 月世界から地球の深海居住施設オーシャン・ディープにやってきたデマレストは、ある決意を秘めていた。
人類のためには月と宇宙の開発を進めるべきで、深海などに予算を割くのは無駄以上の深刻な問題につながるのだ・・・。

蒸気を利用した深海のエアロックの描写が面白い。
それにしてもそもそもオーシャン・ディープはなんのためにあったのだ(笑)?

心にかけられたる者
 前に読んだ「究極のSF -13の解答-」収録のものと同内容。
あっちの感想で化夢宇留仁は「そもそもロボットは人間をどうやって人間だと見分けていたのか???」という感想を書いたのだが、本書の冒頭のいつものアシモフのつぶやきで、そもそもこの作品は同じ疑問が出発点だったと知って驚いた。
ところがこれが同じ文章なのに意味は違うのだ。
化夢宇留仁が知りたかったのはもっと単純に、人間とそれ以外をどうやって見分けているかで、例えば寝たきりの人、部位の欠損のある人、子どもなど、ロボットはどこまでを人間とみなすのか、その線引きはどこなのかという疑問だった。
しかし最近のAIの様子や、更には本書収録の「バイセンテニアル・マン」でだいたいわかった。
なんとなくの見た目で判断しているらしい(笑)

天国の異邦人
 その時代には同じ両親から2人以上の子どもが生まれるなどということは滅多に無かった。
また名前は名字も含めて本人が自由に名乗っていた。
そんな世界で同じ両親から生まれた顔もそっくりの兄弟が同じ目的を持って働くことになる。
それは水星にロボットを送り込んで調査を行うことだったが・・・。

 最後なんだか爽やかな感じで終わるのはいいのだが、この話は納得のいかないところばかりでよくわからなかった。
 新お名前はそれぞれにユニークな数字と記号が割り当てられているので名前はどう名乗ってもよいのなら。なんでそもそも名字が必要なのか?
 兄弟の拒否反応もよくわからに上に、物語になにか影響しているとも思えなかった。
 繊細すぎるロボットの反応を制御するために専用の超高性能コンピュータを地球に設置してコントロールするが、その通信には7分のタイムラグがあるというのはどう説明されても突っ込みどころしか無い。
 またこの作品のロボットこそ人間型である必要性が(オチ以外では)見当たらない。
ゴツいタイヤ移動でいいじゃん。
 というわけでこの作品は2人の編集者がそうしたように、ボツがふさわしいと化夢宇留仁も思う(笑)

マルチバックの生涯とその時代
 超大型コンピューター「マルチバック」にコントロールされた世界。
パクストは端末を破壊しようとしたハインズを告発したことで、反コンピューターの組織から糾弾されることになったが、彼の計画上それは必要なことだった・・・。

 オチは予測できるが、最後に付け加えられたという質問はなかなか深みがあってよかった。
またこの世界は「鋼鉄都市」の世界に近い雰囲気があるように思ったが、ほんとうにつながっているのかどうかはあっちを読み直してみなければ・・・(汗)

篩い分け
 地球の人口は60億に達し、絶望的に食料が不足していた。
そんな中細胞膜の浸透力をコントロールして変化させることを可能にした研究を発表したロッドマン博士は、政府によって囚われの身となり・・・。

 その話の流れで食べるとは思えない(笑)

バイセンテニアル・マン
 マーチン家のロボット、アンドリュウにリトル・ミスが木彫りのペンダントを作るように命令すると、アンドリュウはあっという間に見事な作品を作り上げた。
彼は世にも珍しい創造力のあるロボットだったのだ・・・。

 超名作。映画「アンドリューNDR114」の原作でもある。
化夢宇留仁が特に好きなのは前半部分で、その幸せな時間の流れに感動する。

聖者の行進
 精神に異常のある人に対し、その原因である脳波の一部を取り除いたものを音と光で患者に与えると、改善が見られた。
しかしレーザーで計測される脳波はあまりにも複雑で、そこに音楽家であるジェローム・ビショップが協力することになり・・・。

 あの「聖者の行進」である(笑)

前世紀の遺物
 小惑星帯の中でブラックホールに遭遇してしまった宇宙炭鉱船の乗員2人は、なんとかして地球に連絡を取ろうとするが通信機も破壊されており・・・。

 オチは想像つくが、本作が発表された非SF誌の読者ならどうだろう?

三百年祭事件
 2076年7月4日。世界は統一された連邦制になっていたが、「地方」として元の国の文化も色濃く残っていた。
そんな世界でアメリカの建国300年祭が行われるが、大統領の姿が一瞬で消え・・・。

 オチは読める・・・というかオチなのかどうか、ちょっとよわくわからなかった(汗)

発想の誕生
 タイムマシンを発明した男が約50年前のアメリカに・・・。

 アメージング・ストーリー誌50年記念号に掲載されたもので、ほとんど楽屋落ちみたいなもの(笑)

 面白いのもそうでないのも収録されているが、やはり「バイセンテニアル・マン」が飛び抜けている。
ところで本書の中のいくつかの作品もそうだが、アシモフの作品はどうやらロボットが登場しないものでもUSロボット・アンド・機械人間社が存在する同じ世界線で展開しているものが多いようだ。
誰か調べ上げて年表とか作ってないのかしら。

20250913(mixi日記より)
20250913


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