永遠へのパスポート
J・G・バラード著/永井淳訳

を数日前に読んだ。創元推理文庫。
 まとめて落札したSF文庫の1冊。
短編集なので各作品についてメモ。

九十九階の男
 100階丁度のビルの屋上に上りたいという強迫観念を持つ主人公。
しかし99階で身体がストップしてしまい、どうしても登れない。
精神科医に相談すると、それは強力な催眠術のせいだと言われる。
男はなぜ100階のビルに登りたくて、かつ登れないのか。
興味を持った精神科医は男を監視するが・・・・・。

 ひねりがあるようで、全然ひねりのない展開。
まあ古い作品だから仕方がないか。
それを言ったらこの短編集全てがそれで終わってしまいそうだが(汗)

アルファ・ケンタウリへの十三人
 聡明な少年は、自分がいるのが宇宙船の中だと気付く。
世界は自分の見える範囲しか存在しないと思っていたのだが、実はその外には広大な宇宙空間という物が広がっていたのだ。
ただ一人居住区以外で生活しているドクター・フランシスに相談した少年は、更に自分たちが乗っている宇宙船はアルファ・ケンタウリへと向かっており、そこにたどり着いた時には今生きている人は一人も生き残っていないと教えられる。
少年との話を終えたドクターは自室に戻り、更に秘密のドアを開く・・・。

 3重構造の仕掛けが施されているのだが、どうも最後の仕掛けにピンと来ない。
演出が足りないのか、化夢宇留仁の読解力が足りないのか・・・(汗)

12インチLP
 極めて僅かな音を拡大することにより、様々な情報を読みとろうとする実験を行う2人の男。
しかし片方の男はもう片方の男の妻と浮気をしており、それがまさかばれているとは・・・・。

 オチがもう少しパンチに掛けると思ったのは、執筆当時に比べて現代が性描写に関して開放的になりすぎているからかもしれない。

監視塔
 空に巨大な監視塔が並び、人々を監視している。
監視塔は地上に接しておらず、ただ空に並んでいて、上の端はどうなっているのか誰も知らない。
そんな街では誰もが監視者の目におびえ、極力家に閉じこもって生活していた。
レンソールはそんな状況に疑問を抱き、一石を投じるために園遊会を企画するが・・・。

 諸星大二郎が描きそうな不条理な世界。
展開もそれっぽいが、オチは少し方向が異なる。
化夢宇留仁的にはなんだか肩すかしな感じだった。

地球帰還の問題
 初の月着陸に成功したゴライアス7号ロケットの船長スペンダー大佐が地球帰還時に南米に墜落してから5年(※この作品が発表されたのは1963年)。
大佐の発見の任務を負った国連調査官コノリーは、アマゾン川流域で未開部族達が宇宙船を発見しているという望みを抱いていたが・・・。

 舞台設定などが「地獄の黙示録」を思わせる。
異質なジャングルや部族、世捨て人、そして食人など、雰囲気は面白い。

逃がしどめ
 ついさっきやったばかりの映像がテレビで流れている。気付けば主人公は時間の流れの輪の中に入り込んでいた。
妻に話そうにも他の人は時間が戻った記憶が無く、話が通じない。
やがて時間の輪はその直径を狭め・・・。

 病気のように取り憑かれる時間の輪。
なんだかよく分からない(笑)

ステラヴィスタの千の夢
 人の感情を受け取り、それに反応する家。
中古物件を探していたタルボット氏は、その中に昔関わりのあった女優が住んでいた家を見つけ、妻の反対を押し切って購入するが・・・。

 人の感情が染みついた物件というのは幽霊屋敷に他ならない。
そしてその通りの内容(笑)。

砂の檻
 火星なのか地球なのかよく分からない砂漠に沈んだ街に暮らす3人。
やがてはそこが地球だが火星環境というなんとも不思議な舞台だということが分かる。
彼らはなぜそこに住み、政府から追われているのか?
そして3人の内の1人ブリッジマンはなぜそこに住んでいるのか、自分でも分からなかったのだが・・・。

 実に大げさな設定で、ちっぽけな心情が描かれている(汗)
ちうか地球に火星環境が出来る原因になった計画があまりにも馬鹿らしすぎる(笑)

永遠へのパスポート
 裁判官である主人公は、今度の休暇旅行で妻を満足させるために、あらゆる旅行プランを集めさせる。
集まってきたプランは大艦隊を率いて異星種族を滅ぼしに行くとか、滅茶苦茶なものばかり。
そして各旅行者からの営業が押し寄せ・・・。

 多分コメディ。
色々な旅行プランはどれも興味深くて実に面白い。
しかしオチはなぜそうつながるのかさっぱり分からないので、あくまでカタログ的楽しみを求めるべき???

 上でも書いたが、総じて古いからなのか作者の味なのか、どうもピンと来ない作品が多かった。
多分作風が化夢宇留仁に合わないのだろう。

20130127(mixi日記より)
20240101


スーパーナチュラル vol.2

シーズン1 vol.2
4、5話収録。

第4話 悪魔からの伝言/PHANTOM TRAVELER
 飛行機を墜落させる霊ファントム・トラベラーに取り憑かれた男によって旅客機が墜落する。
2人はファントム・トラベラーを清めようとするが、そのためには彼らも機上の人に・・・。

 クトゥルフが染みついているせいか、正面から悪魔払いをやられると少し興ざめする。
キリスト教アイテムが関係なければまだいいのだが、この話では聖水が大活躍だしな〜〜〜(汗)

第5話 鏡の中の真実/BLOODY MARY
 鏡の前でブラッディ・マリーの名を回唱えると、ブラッディ・マリーが現れて目をえぐられる。
しかし目をえぐられたのは、なぜか関係ないお父さんだった・・・。

 筋が通っているような、通っていないようなマリーの法則が面白い。
最後は貞子そのまんまだが、最後にマリーを倒す手段は実に私の好みのもの。
こういう不可思議なルールの利用は面白い。

 英語音声&字幕で観ているとまあまあ楽しめる。
とにかく日本語吹き替えは下手すぎて観ていられない。

20130130(mixi日記より)
20240102


クビシメロマンチスト
人間失格・零崎人識
西尾維新著

を読んだ。AKI氏から借りた戯言シリーズ第2作。
 前作より2週間後、「いっくん」は京都の大学に戻っていた。
その頃京都では通り魔殺人事件が発生していたが、それとは関係なく、やはり連続殺人事件に巻き込まれ、いつの間にかその中心に・・・。

 変人ばかりが大量に出てきた前作と比べると、登場人物は普通の人の割合が増えて人数は減ったため、主人公の目線と周囲との関わりが分かりやすくなって読みやすくなった。
主人公の思考も非常にスムーズに理解でき、快適な読書♪
派手(?)だった前作の舞台と比べると地味ではあるが、それも現実味が増して読みやすくなったのでよし。
肝心の物語もなかなかの変化球で面白かった。
しかし相変わらず感情移入できる登場人物は皆無(笑)

20130201(mixi日記より)
20240104


胡桃の中の世界
渋澤達彦著

を読んだ。数日前。
 いくつかのテーマを選び、古代からの哲学者や錬金術師や思想家の思考とその結果生まれてきた様々な事物を紹介している。
奇妙なイラストが多数掲載されており、それを眺めているだけでも結構楽しい。

石の夢
 表面になんらかの事象が浮かび上がっている石について。
 古来よりマニア垂涎のアイテム絵のある石(笑)。
石の中に閉じこめられた絵や事物であったり、石の中から生まれた事象であったりする。
なんとなく具象の浮かんだ石というのは魅力的なのは分かるが、それ以上でも以下でも無いかも。
ちうかちょっと怖い(笑)

プラトン立体
 正多面体に向けられた宇宙の心理への期待と、時間の経過によるその衰退。
全盛期は太陽系の各惑星の公転距離にまで当てはめられたプラトン立体だが、やがて真実との乖離とともに地位を失墜。
しかし正多面体は存在しているだけで人を惹きつける究極の幾何学の魅力を放ち続ける。
 正多面体は私も好きである。
ちうかRPGゲーマーは普通よりもサイコロという形で正多面体に触れる機会が多いのだ。
そしてあのなんとも言えない変えようのない形状による孤高感は確かに不思議な魅力を放っていると思う。
しかしそれが宇宙の法則を解き明かす鍵だとまでは思わないが(笑)

螺旋について
 螺旋は無限の象徴であり、地獄の形状でもある。
球は完成された安定の象徴だが、それが崩れた時に螺旋となる。
螺旋に魅せられた昔からの作家や画家達は、無限の果てにどんな魅力を見いだしていたのか。
 螺旋を無限の象徴というのは「アキレスと亀」に似たパラドックスを含んでいると思う。
拡大は確かに無限を思わせるが、縮小は割り算を繰り返すのでなければ有限である。
ただしそれは客観的に見た上でのことで、螺旋の中を進むとなると話は違ってくる。一人称視点で螺旋の中を歩くと、確かにどっちを向いても無限に続いているように思えてくるのだ。
縮小していけばやがて道幅の関係で行き止まりになるとも考えられるが、それもあくまで客観的な話であり、一人称視点では道幅も、歩いている本人も螺旋の直径に合わせて大きさが変わっていく。そんな風に感じさせられるのだ。
そういう多様性を含んでいるのが螺旋の魅力だと思う。

「ポリフィルス狂恋夢」
 1499年に刊行された古代への憧憬とエロティックなイメージで彩られた物語。
 実はこの章に来るまでなにしろ内容が内容なのでもう一つつまらなかったのだが、じわじわと面白くなってきた。
やはりテーマが想像も出来ないほど自分の知識とかけ離れているとなかなか楽しみにくい。
この章で取り上げられている物語の内容がエロティックなシンボルが次々に出てくる冒険譚なのだが、そんなこと言われたらいやがうえにも読んでみたくなるが、多分読んだら死ぬほどつまらない(笑)
だいたい日本語版が存在してなさそうだし。
でもとにかく興味をひかれる(笑)

幾何学とエロス
 なかなか挑戦的なタイトル。
古代の祝祭の場や娼館など、幾何学的な設計でエロスを表現したり、表現してしまったりした物と人。そしてユートピアへ。
 とにかくテーマがテーマなので面白い。奇妙な建築のイラストも。
しかし逆にテーマがテーマなので(?)なにが言いたいのかはよく分からなかった(笑)。

宇宙卵について
 「モンテフェルトロ家の祭壇画」に描かれている卵。
卵は全ての始まりを示し、完全な秩序の中に混沌を秘めている。卵に類するものも紹介。
 卵がその辺を象徴するのはよく分かる。
特に興味をひかれたのは、死んだら魂を再生させることなく、神の元へ復帰させるという教義をもつオルフェウス教徒が卵を忌み嫌うという件。
こういう逆の視点から見た例というのは説得力があって面白い。

動物誌への愛
 まだ世界が謎に満ちていた頃、ヨーロッパの知識人達は競って動物誌を書いていた。
ところが実証が基本である科学というもの自体も未発達な時代のことで、そこには想像力の翼が自由に羽ばたいていたのだった。
 古代の動物誌というのは誰が見ても面白い物であり、私も幼少の頃から近いものに触れる機会があれば夢中になって見て(「読んで」ではない)いたものである。
そんな動物誌の解説が面白くないわけが無い。
そしてとにかく興味深いのは、動物誌に限らず当時の識者はどうしてここまで嘘八百を平然と書き連ねることができたのか、その精神状態が想像できないところである。

紋章について
 歴史の中で育まれてきた紋章文化。それはヨーロッパのみならず、未開の地のシンボリズムまでさかのぼることが出来る。
そしてひたすら女性の身体の魅力を詠った詩の世界と、その紋章とのつながり。
 著者が紋章学についてサラッと言っている以下の文句がお気に入り。
「およそ無益といっても、これくらい徹底的に無益な学問はないであろうから」(笑)

ギリシアの独楽
 イユンクス、ロンボス、ディアボロなど、古代より使われる用途のはっきりしない道具。
性交の誘いのシンボルであったり、戦いにおいての戦力の誇示であったり。
それらを歴史的資料をさかのぼって紹介し、そのつながりと存在の意味を探る。
 歴史に埋もれたわけの分からない道具というのは、それだけで非常に魅力的なテーマだと思う。
そんな物ばかり写真やイラスト満載で紹介した本があったらぜひ見てみたい。

怪物について
 数百年前からやたらに書かれている識者による怪物に関する記述を紹介。
 キリスト教的思考によって、地上に存在するものは、空と海にも対応する存在があるということになり、結果海カタツムリとか、怪物が大量発生。
更に神の存在を前提に、それを称えるような形状を持った荒唐無稽な怪物も。
動物誌の場合はたわいない夢想の世界でいい感じだったのだが、怪物となると途端に宗教的な色合いが強くなってちょっとやな感じ。
やっぱ宗教(特にキリスト教)は排他的すぎてやな感じ。

ユートピアとしての時計
 永久機関のアイデアが描かれたスケッチを発端に、時計というそれまで人間にはコントロールできなかった時という現象を人間世界におとしめた機械について語る。
機械時計はそれまで独自に流れていた時計を一定のルールによって切り取り加工することで、永遠の繰り返しが行われるユートピアを夢想していたのだ。
 確かに機械時計という物はあらゆる機械の中でも特殊な物だと思うし、言わんとしていることもよく分かる。
だからこそ変に魅力があるのだし、色々な思考の出発点にもあるのだと思う。
でも最初に機械時計を作った人は、ユートピア的思考ではなく、単にあれば便利だと思って作ったような気がする。

東西庭園譚
 各国で富裕な貴族は大金を掛けて庭園を造ることにかまけてきた。
それらは様々な特徴があったが、大きく分けるとフランス式、イギリス式、中国式の3つがある。
 やはり日本庭園が今一つ言及されないのが少し残念ではあるが、とにかく面白いテーマ。
庭園は誰でも作ってみたいものだと思う。
私だけ?

胡桃の中の世界
 パッケージの中に、同じパッケージを持った女の子が。女の子の持つパッケージの中にもパッケージを持つ女の子が・・・。
 無限というのはいつでも人を惹きつけるテーマだが、ここで言う無限は、一方向に限定されているのが気になる。
なぜならパッケージを見ている人はパッケージを持つ女の子ではないからである。
大小の概念は比較あってのものだという話も出てくるが、これ全く納得のいく話。
そして全ての生物は生まれる前から全く同じ形をしているが極端に小さいだけという考え方は、面白いがバカとしか思えなかった(笑)。

 ちうわけで一通り感想めいたものを書いてみたが、なにやらさっぱり分からない(汗)
でもこういう本はさっぱり分からないのも面白いところだと思う。

20130226(mixi日記より)
20240106


分解された男
アルフレッド・ベスター著/沼沢洽治訳

を読んだ。数日前。
 世界第2位の業績を誇るモナーク物産の社長ベン・ライクは、トップの業績を譲らないド・コートニーの社長の殺害を決意していた。
彼は「顔のない男」の悪夢に悩まされていたが、それを払拭するのはその方法しかないと確信していたのだ。
しかし世界にはテレパシー能力を持ったエスパーが存在しており、彼らのおかげで計画的殺人はもう何年も起こっていなかった。
エスパーにはエスパーで対抗するしかないと、A級エスパーと手を組み計画を成し遂げるライクだったが、被害者の娘に逃亡される。
一方警察本部長でありA級エスパーであるリンカン・パウエルは、すぐにライクが犯人だと目星を付けて調査を開始する・・・。

 ベスターの処女長編。当時としては革新的な手法がちりばめられており、ヒューゴー賞を受賞している。
物語は意外なほどストレートな犯罪ものに仕立てられており、そこに逆に少し違和感を感じたが、そこがベスターらしいとも思える。
しかし物語の中で占める各キャラクターの位置づけとその結末は、斬新というのか、定番なのか、なんだかよく分からないところがあり、そのせいで最初から最後まで感情移入は勿論、もう一つ話に乗りきれなかったのは少し残念。
とりあえずテレパシーをふせぐために耳につく曲を聴くというのはありなのか(笑)?

20130228(mixi日記より)
20240107


密林の謎の王国
E・R・バローズ著/厚木淳訳

 バローズの直球どストライクの冒険小説。
若きアメリカ人医師ゴードン・キングは好奇心でカンボジアのジャングルに踏み入るが、迷ってしまって命を落としそうになる。
原住民に助けられて一命を取り留めたゴードンだったが、彼の前には500年も前に滅んだと思われていたクメール文明の末裔達が・・・。

 明日引越である。部屋はまだ滅茶苦茶で、未整理の物がごろごろ転がりまくっている。
しかし昨日読み終わってしまったので、インターネットも1週間ほどつながらなくなるし、今書いておかなければ忘れそうなのである。
でもやっぱりこんなの書いている暇は無いのである。
錯乱しているのである。
 ちうわけで面白かった(笑)。
この世はジャングルしかないと思っている2大王国との戦いに巻き込まれていく主人公のご都合主義の大活躍は、読んでいて実に爽快。
アメリカに置いてきた気になる女性のこともスパッと忘れて現地妻というのも爽快(笑)

20130308(mixi日記より)
20240110


アラスカ戦線
ハンス・オットー・マイスナー著/松屋健二訳

 1944年、2年前に日本軍が占領したものの、両軍から注意を向けられていなかったアッツ島だったが、そこからアラスカへの空爆作戦が立案され、状況は一変する。
爆撃機を飛ばすためには極めて悪天候が多いアラスカの気象情報がどうしても必要で、かくしてオリンピック10種競技の銀メダリストでもある日高遠三大尉を隊長にすえた特殊潜入チームが編成された。
潜入は成功し、チームはアッツへ向けて気象情報を送り始める。
その通信を傍受したアメリカは正体がつかめずに困惑するも、それが敵性なのは間違いないと悟り、スカウトのプロ達と軍人による偵察チームを編成する。
そのチームのリーダーは自然保護局のアラン・マックルイアといい、まさに自然の中で生きるために生まれてきたような男だった。
かくして日米の精鋭チームが極寒のアラスカで対決することになるが、それは予想外の展開を見せ・・・。

 結論から言うと、とてつもなく面白かった。
タイトルから戦記物だと思って読み始めたのだが、まあ戦争中の軍部の争いには間違いないので戦記物と言えなくもないのだが、読み始めてすぐにこれは冒険小説なのだとはっきりと認識させられた。
というのも上記の日米のリーダーの紹介部分が非常にかっこよく魅力的に描かれているからで、いやが上にもその後の対決へのワクワク感を盛り上げてくるのだ。
そしてとうとう両者がアラスカに降り立ち、それぞれが相手から身を隠しつつ相手を探すというまさに探り合いの展開が盛り上がった期待を全然損なわずにむしろ更に盛り上げる。
それからどんな激しい対決が繰り広げられるのかと思ったら、あまりにも意外すぎる展開にひっくり返る。
途中まで原題(ALATNA)の意味が分からなかったのだが、まさかそっちだったとは(笑)
そしてラスト近くの最後の対決がこれまたものすごい意外な展開が用意されており、マジでページを繰る手が止まらない。
 また日本軍や日本人の描き方も完璧と言えるもので、これは著者が日本にも住んでいたことのあるドイツ人というのが大きいだろう。
ただ一つ気になったのは、川魚を生で食べた描写くらい(笑)
 ちうわけで新装版が何度も出ているのが納得の超名作だった。
ちうか内容の割には無名すぎると思う。
「読まずに死ねるか!」とか「冒険・スパイ小説ハンドブック」とかでも一切触れられていないのが変すぎる。

20240110(mixi日記より)
20240112


黄金仮面
江戸川乱歩著

 ニタニタ笑う三日月型の口のついた黄金の仮面を付けた怪人が、日本の至宝とも言える美術品を盗む事件が発生。
シロウト探偵明智小五郎が捜査に乗り出し、黄金仮面の意外な正体を暴き出すも、敵は更に狡猾で奇想天外な手段で国宝やら美女やらを手に入れてゆき・・・。

 とにかく引越は終わったのだが、家具のほとんどを捨ててしまったので、だだっ広いリビングでダンボールの机を使う、迷い込んだ浮浪者のような生活(汗)。
そんなこんなでインターネットさえつながっていない状況で本を読み終わってしまったので、仕方なくMacを組み立てた(笑)。
とりあえず記録は書いておかないとすぐ忘れる(汗)
 で、黄金仮面だが、平たく言えば明智vsルパンである(笑)。
なかなか豪華な対決に思えるがしかし、ルパンvsホームズがそうであったように、登場有名キャラクターは2人でも、作者は1人であるので、どうしても自分の生み出したキャラクターの方を贔屓してしまう。
結果ルパンはどうにもこうにもルパンらしくなく、明智にしてやられてしまうのだ。
まあそれはそういうものとして楽しめばいい訳なのだが、それにしてもルパンの割にはどうも血なまぐさく、しかも人種差別が激しくて白人以外は殺してもいいと明言するのはどうなのか(笑)?
江戸川乱歩の真骨頂である奇怪な事件や見せ場も、キャラクターを描くのに懸命だったからか、もう一つ盛り上がらない。
収穫としてはルパンに関わる「不二子」という名前がこの作品が元になっていたということを知ったことだった。

 読了20130314(mixi日記より)
20240113


私の部下はイギリス人
デンゾー高野著

を読んだ。半月くらい前?
 化夢宇留仁の部署には翻訳チームというのがあって、商品とカタログの英語化を主に進めているのだが、そのチームリーダーのKYさんが、部下のネイティブチェッカーであるイギリス人KNさんとどうつき合っていいかの参考のために買った(らしい)本。
 某メーカーのイギリス支社長だった著者による、イギリス人と在英邦人の観察記で、日本の本社とのやりとりの難しさもさることながら、やはりメインは部下だった様々な立場のイギリス人と在英日本人の様子とその顛末。
人種差別や告訴の嵐など、日本の会社では滅多に直面しない状況や、日本人とは全く異なる考え方を持ったイギリス人やイギリスという国が興味深い。
 KNさんは途中でイギリス人の考え方に嫌気がさして読むのをやめてしまったそうなのだが、化夢宇留仁から見れば単に論理的に利益を追求しているだけで、特別変わった考えとは思えなかった。
それよりも転職によってキャリアを伸ばしてゆくという日本にはほとんど無い考え方の方が興味深く、その個人主義ぶりがうらやましくも感じた。
総じては物珍しい所もあったが、さすがに今も存在する会社のことでもあるし、踏み込みは浅く、軽い読み物レベルで終始したのは少し残念だった。
この手の本ももっと読んで色々比較してみたい。

 20130407(mixi日記より)
20240115


ローダンシリーズ28
ヒュプノの恐怖ふたたび
松谷健二訳

ヒュプノの恐怖ふたたび
クルト・ブラント著
 アルコン帝国の端に位置する惑星ヴォラトに派遣されていたラルフ・シケロンが、「鐘が三度」というメッセージを残して消息を絶った。
それは地球の危機を表す暗号だった。
詳細を調査するためにヴォラトに派遣されたフェルマー・ロイドは、ラルフの形跡を追い、更なるメッセージ「オーヴァヘッド」に行き当たり・・・。

 読みにくいし状況がつかみにくいと思ったらやっぱりこの著者(汗)
特別日本語訳しにくい文章なんだろうか???
やめてほしなあ・・・
 それはそれとして、スパイ物みたいな展開がなかなか興味深いのだが、アルコン女性クリ・オネレやヴォラトの原住民の協力に全然説得力が無いのが切ないところ。
 しかし本作の一番の見どころはガゼル級のパイロットだったカール・スタンフォードの存在である。
名前を聞いたら一部の人はピンと来るだろう。
そう。銀の黄昏教団のあのカールである(笑)
彼は次の話でその恐ろしさを垣間見せるのだ。

生ける死者
クラーク・ダールトン著
 ローダンが敵の正体を知った直後、なんとトーラがさらわれてしまう。
急遽ヴォラトに降り立ったローダンだが・・・。

 ローダンが「あれ」に普通に声を聞かせたのがうかつすぎてびっくりした(汗)
「あれ」もうっかりしていたそうだが(笑)、どう考えてもほんとならそれで一発でバレていたはずである。
それ以外でも「彼」を放置しておいて、その結果を意外に感じるとか、ちょっとローダンボケてきたかと少し心配になる展開が多かった(汗)
 そしてカール・スタンフォードは・・・存在が消えている!
ガゼルでロイドを待っていたはずの彼は跡形もなく消滅し、彼がいたということさえ誰も覚えていない。
彼が魔術によって1920年代のアメリカに戻ったことは明白である。
それにしてもここまで見事に消えるとは、さすがカール(笑)
もしかしてこの話のタイトルも彼のことを言っているのでは(笑)???

 20240117(mixi日記より)
20240117


ビブリア古書堂の事件手帖
〜栞子さんと奇妙な客人たち〜
三上延著

を読んだ。数日前。AKI氏にお借りした。
 最近ドラマ化もされて話題になっていた作品。
ドラマの方は女優の人気のみでキャスティングされてファンから非難ごうごうだったようだが、原作を知らない人からはまずまずの高評価だったようだ。
しかしそういう流行物を読むのが恥ずかしいと思ってしまう化夢宇留仁には、電車で読むには少々勇気がいる本だった(笑)。
 ある古本屋にて、古書にまつわるミステリーを描いた連作で、それぞれの話は独立しているが、大きな一つの物語としても成立するように構成されている。
いわゆる安楽椅子探偵もので、古本屋の店主である栞子さんが病院(怪我をしているのだ)にいながら事件のあらましを紐解いてしまう。
ある意味実に古風な内容と言える。
そうじゃないのはキャラクターの扱いで、この辺はやはり日本のライトノベルらしく、みな続けて登場しては事件に関わってゆく。
 化夢宇留仁的にはなかなか面白かった。
ただ主人公の青年の性格があまりにも単なるいい人すぎるのは少々物足りなかった。
そこは読者に合わせて感情移入しやすいように設定されたのだと思うが、もう少し癖があってもよかったのではなかろうか。
続編も出ているようだし、今後彼に面白味が出てくることを期待したい。

 20130407(mixi日記より)
20240118


西洋拷問・処刑残酷史
柳内伸作著

を読んだ。2〜3日前。
 古本屋の100均でよく見かける刺激的なだけで内容の全然無いシリーズ。
内容はまさにそのまんまで、色々な拷問や処刑の紹介がされているが、それだけでなにか発展したりするようなことはなにも書かれていない。
たまに挟まる挿絵も全裸の女性が拷問されているものがほとんどで、本の趣旨がよく分かる。
それはそれで駄目とは言わないが(笑)。
それにしても改めて見ると、西洋の、特に宗教や人種の絡んだ人が人に対して行う行為のえげつなさはシャレにならない。
これに比べたら日本のそれなどくすぐっているようなものかも。
やっぱ狩猟民族は血に飢えてるね♪

 20130407(mixi日記より)
20240119


社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!
ちきりん著

を読んだ。バイトのYさんに借りた。
 有名ブロガーで旅行家のちきりんさんの個性的で楽しい視点の世界見聞録。
実に様々な国を訪れているちきりんさんだが、興味の持ち方が独特で、例えばベトナムから大量の難民がボートに乗って脱出していると聞けば、そこまでして脱出しようと思うベトナムはどうなっているのかと見に行くという、観光旅行とはほど遠い選び方なのに、ちゃんと観光旅行として大いに楽しめているところが面白く共感できる。
 この本は国別ではなくてテーマ別に構成されていて、お金から見える世界、異国で働く人々、共産主義への旅、世界の美術館、恵まれすぎの南欧諸国、など、どれも興味深い。
 全体的に満足度の高い内容だったが、少し残念なのはテキストのボリューム。
ブロガーらしくサクサク読めて楽しく仕上がっているのだが、目の付け所がいいだけにもう少し深く読んでみたくなるのだ。
ご飯もあとちょっと欲しいくらいが一番美味しいらしいし、このくらいが丁度いいのだろうか。

 20130421(mixi日記より)
20240122


愛しのローカルごはん旅 もう一杯!
たかぎなおこ著

を読んだ。バイトのHさんに借りた。
 「150cmライフ」の著者であるたかぎなおこ氏の食べ歩き旅行記。
神奈川、長野、茨城・福島、宮崎・鹿児島、高知、滋賀、そして台湾をまわる。
基本はフルカラーのマンガで表現されていて、著者ともう1人の2人で旅行する様子が描かれている。
もちろん主役は各地の料理だが、化夢宇留仁が面白かったのは毎回替わる同行者で、特に長野編と台湾編で同行したかとうさんという女性が細いのに食べまくるのがいい感じだった。
 全体的に軽〜いテイストで、自分で買って読もうとまでは思わないけど、借りて読むと嬉しい1冊。

 20130421(mixi日記より)
20240123


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