変身
カフカ著/高橋義孝訳

賄婦(こう書けと言っていた/笑)に借りた。
 朝目覚めると自分が巨大な虫に変わっているのに気付いた男の物語。
誰でも知っている内容だが、意外にちゃんと読んだことのある人は少ないのではなかろうか。
そういう化夢宇留仁も今回初めて読んだ。
 現代シュルリアリズム文学の先駆的存在であり、名作の誉れ高い本作であるが、化夢宇留仁の感想は「可哀想」だった(笑)。
巨大な虫になってしまうというのは、ある意味SF的展開だとも思うのだが、唐突にそうなっているのと、その原因究明や改善方法などに一切話が向かわないので、全然SFではない。
また虫になってしまうのがシュルリアリズムなところかと思っていたが、読んでみたらむしろ虫になってしまったという現実を受け止める本人と周囲の人々の反応の方がそうだった。
そんなシュールな展開の中で何が可哀想なのかというと、それは勿論主人公ザムザである。
なにしろザムザは物語が始まった時点で終わってしまっているのだ。
物語が始まった時点で巨大な虫になってしまっているザムザだが、一番のポイントは他の人と意思の疎通が出来ないと言うところである。
彼がどんなことを想い、どうしようと思おうが、他の人(主に家族)からすれば全く理解できず、単に巨大な怪物(しかし多分家族だったもの)が意味不明な動作をしているだけなのだ。
そして最後まで家族を想う意志を伝えることも出来ずに息を引き取るザムザ。
その後家族に訪れるのは悲しみではなくて、重い荷を下ろした開放感である。
 化夢宇留仁はザムザの立場に近い状況の妄想をして1人で震えている時がある。
難病で意識はあるのに一切のアウトプットができなくなってしまうというというのがあるが、もし自分がそうなったらと考えてしまうのだ。
ザムザのそれは、姿は違えどシチュエーション的にはほとんど同じで、そこから可哀想という感想につながるわけである。
というわけで、「変身」は化夢宇留仁の今まで読んだ中で最も悲劇的な話だった。

20130503(mixi日記より)
20240124


人生激場
三浦しをん著

バイトのMさんの机の上にあったのを黙って拝借した(笑)。
 エッセイ集なのだが、今の視点で見るとブログやmixi日記で垂れ流している内容をそのまま本にしたような印象。
基本的に日常生活で思ったことや人に聞いた話を垂れ流しているだけ。
だから面白くないかと言うと、もちろん面白い。
人の思っていることというのは他人が見るとだいたい面白いわけで、その人の立場が特殊であればより面白い。
この本ではエッセイなのだから勿論立場は小説家なのだが、そうなのに逆に視点が一般人的すぎるのもギャップになって面白かった。
中にはマジで笑ってしまうところもあって、最後の方に出てきた友人の旦那である中国人水墨画家の話は爆笑もの。
 というわけで充分に楽しめたのだが、やはりこれだけ個人的な視点で書かれていると、わざわざ本を買わなくてもネットで充分じゃないかと思ってしまうのは仕方がないところか・・・。

20130504(mixi日記より)
20240125


秘密
東野圭吾著

 なんか読むものないかと探していたら、社員のMTさんが「これ面白かった」と言ってバイトのMさんの本を勝手に貸してくれた(笑)。

 スキーバスの事故で妻を亡くし、小学5年の一人娘は植物人間になったかと思われたが、奇跡的に意識を取り戻した。
しかしなんたることか、娘の身体に宿っていたのは妻の意識だった・・・。
 ちうわけでいきなり「変身」より荒唐無稽と思われる展開でドン引き(笑)。
その後はリアルな日常生活などが描かれるが、やはり最初の意識の転位という事象があまりにも受け入れがたく、イマイチ集中できなかった。
最終的にはタイトル「秘密」がなんだったのかが分かり、全てはその展開を生み出すための布石だったのだと分かるのだが、やっぱり意識の転位は・・・・・・・(笑)
 これは化夢宇留仁が中途半端にSF者だからそうなるらしい。
事実この作品は普段SFなど読まない一般読者層に受け入れられて映画化までされているのだ。
確かにその後の展開のための仕掛けに過ぎないというのは分かるのだが、やっぱり認められない。
重ねて言う。
意識の転位は認められない。

20130511(mixi日記より)
20240126


どちらかが彼女を殺した
東野圭吾著

 例によってバイトのMKさんの所蔵から黙って持ち出し(笑)
 大切な人に裏切られたという言葉の後、兄のところに来るはずがいくら待っても来ない妹を心配し、彼女の住む東京へ向かう康正。
しかし妹はタイマーをセットした電気コードと睡眠薬による自殺死体で見つかる。
交通課の警官である康正は独自に現場を調べ、それが自殺に見せかけた殺人だと知る。
復讐のために1人で犯人を突き止める決心をした康正は、殺人の証拠になるであろう物品を全て回収し、警察にはドアにはキーチェーンが掛かっていたと証言する。
そうして調査を開始した康正の前に、2人の容疑者が浮かび上がってくる。
更に完全に殺人の証拠を消したはずなのに、疑いをも持ってつきまとう刑事の姿も・・・。

 容疑者は2人で確定。そして最後に犯人は分かるのだがそれは読者には公開されず、自分で考えろという感じで放置されるのが最大の特徴(笑)。
 化夢宇留仁の読んだのは文庫版なのだが、こちらは元のハードカバー版から更に情報が削られて犯人が分かりにくくなっているとのこと。
化夢宇留仁は犯人の決め手になったのが何であるかと、その根拠まではだいたい分かったが、そもそもそんな根拠で犯人を確定できるとは思えず、もう少しすっきりしなかった。
よくいって自白をさせる材料がせいぜいでは無かろうか。
だからこそ主人公の確信を得るための調査ということになっているのだろうけど。
 久しぶりにストレートなミステリという感じで、そういうの独特の雰囲気は楽しかった。

20130521(mixi日記より)
20240127


敵は海賊・海賊版
神林長平著

 火星の無法者の街サベイジの酒場の主カルマは、一見して高貴な身分だとわかる若く美しい女性が1人で訪ねてきたのに驚き、また彼女の要望が最凶の海賊ヨウメイ(漢字が表示不能)に会いたいというものだったので更に驚くことに。
彼女シャルファフィンはは惑星ランサスの王女付きの首席女官だった。
そして彼女の望みは海賊ヨウメイに行方不明になった王女を探してほしいというものだった。
 翌日火星に正体不明の攻撃型空母が不時着する。
それこそは海賊ヨウメイの愛船カーリー・ドゥルガーだった・・・。

 というのが冒頭の一部だが、いつものように本の内容を欠片も表していない(笑)
その後もちろん海賊課の腕利き捜査官ラテルとアプロも登場し、著者ならではの形容のし難い展開にもつれ込んでいく。
 化夢宇留仁は大昔に一度読んでピンと来なかった感じだったのだが、今回はそういうところもあるにはあるが、大いに楽しんで読むことが出来た。
当時はよくわからなかったが、読み返して確認したのは色々と極端だということだった。
キャラクターの描写やノリはよくあるアニメみたいで実に軽い。
SFかと思ったらファンタジーみたいな要素がぶち込まれている。
かと思うと戦闘シーンやメカ描写になると感動するほどかっこいい。
それらがまとまっているような、アンバランスなような、類型が思いつかない独特さなのだ。
その中でも化夢宇留仁が印象的なのはやはり畳み掛けるような描写によるアクションシーンで、こんなのはこの著者以外では見たことがない。
解説で川又千秋が「そしてやがて、精錬しきれぬ言葉との対決から彼が生み出すものは、必ずやとてつもない装置にちがいない。」と書いているが、そうして生まれてくるのが「雪風」なんだからシャレにならないというか、さもありなんというか・・・(汗)

20240127(mixi日記より)
20240128


怪笑小説
東野圭吾著

 例によってバイトのMKさんの・・・以下略。
ブラックな味のある短編集。
鬱積電車
 ラッシュ時の車内で繰り広げられる精神的ストレスの絡み合い。
それぞれが他者に対して思う憤りが描き出され、やがて・・・。

 オチが実にしょうもない。
普通の短編としてはオチらしいオチがつきすぎで、ショートショートと言うにはキレが悪すぎる。
面白くないわけではないのだが。

おっかけバアさん
 貧乏な1人暮らしの老女が演歌歌手にはまってしまい、生活の全てを掛けておっかけに。

 変にリアリティのあるおっかけばあさんの行動が面白い。
オチは別にオチていない。

一徹おやじ
 息子をプロ野球選手にするために、「巨人の星」そのままに育て上げる父親と、それに巻き込まれる家族。

 展開はマンガみたいだが、オチが変にリアリティがある。
ちょっと「変身」を思い出した。

逆転同窓会
 教師達の同窓会にゲストとして呼ばれた生徒達。
しかし通常の同窓会のようにはいかないのだった・・・。

 視点の逆転によってものの本質が見えてくるという例。
教師というのは社会的には止まった時間の中に生きている。

超たぬき理論
 幼い頃の衝撃的目撃によって、「UFO=たぬき」だと信じ込んだ男。
彼は調査と分析を進め、やがてはその道の権威となる。

 とにかく何もかもがたぬきだということになる屁理屈が楽しい。

無人島大相撲中継
 豪華客船が沈没。無人島に逃げ延びた人々の中に、過去の大相撲中継を全て暗記しており、ラジオのようにそれを再現して話すことができる人物が混じっていた。
やることが無い生存者達は相撲中継を聞きつつ、残った食料であるビスケットを賭けていたが・・・。

 オチにつながる伏線(?)が楽しい。
このオチはある意味爽快感がある。

しかばね台分譲住宅
 会社までの通勤3時間という土田舎の分譲住宅地。
みんな値上がりしたら売ってもっと便利な場所に家を買うつもりだったのだが、価格は下がるばかり。
そんなとき、いきなり道に死体が転がっているのが発見される。
悩んだあげく、最近値上がりし始めたという隣町に捨てに行くことに・・・

 なんだか筒井康隆で似たような話があったような。
しかもそっちの方が面白かったような(汗)

あるジーサンに線香を
 ある爺さんに若返りの実験台になるという話が持ち上がる。
若い身体と精神を取り戻した爺さんは幸せだったが、やがてその効果は薄まり、元の爺さんに・・・。

 「アルジャーノンに花束を」のパロディ。
しかし化夢宇留仁は「アルジャーノンに花束を」を読んでいなかったり(汗)
でも「孤島の鬼」は面白かったぞ(笑)

動物家族
 全ての人が動物に見える主人公。
それも人の本質を表した動物に見える。
しかし本人が鏡に映った自分を見ると、なんだか輪郭のはっきりしない爬虫類のようなものに見えていたが・・・。

 切り口がちょっと面白い。
しかしオチがしょうもない。

 全体的に少し筒井康隆を彷彿とさせるような内容。
しかしこっちの方が「現代」とか「日本」とか「社会」という要素が強く、なんとなくもっさりしている。
切れ味が足らないと言うか、風化しやすそうと言うか。
その分こういう物語を読み慣れていない人(例えばベストセラー小説を主に読んでいる人)にも入りやすいだろうとは思う。
しかし物語の迫力というか、切れ味のようなところではやはり全然もの足らない。
久しぶりに昔の筒井康隆を読み直したくなってきた。

20130524(mixi日記より)
20240129


ナイト・オブ・ザ・リビングデッド
1998年バージョン

ジョージ・A・ロメロ監督

 バーバラと兄のジョニーは父の墓参りに来ていたが、突然男に襲われる。
夢中で逃げたバーバラは車も動かなくなり、偶然見つけた屋敷に逃げ込む。
そこには誰もいなかったが、2階には死体が転がっていた。
そんなところに飛び込んできたのは黒人青年のベンで・・・。

 恥ずかしながら初めて観た。1998年バージョンは画面を綺麗にしたくらいでオリジナルから大きな修正はないらしい。
感想としてはまあまあ面白かった。
やはり元が古い(1968年)だけあって、演出技術もまだまだ未熟なところが見受けられ、ホラー映画としては昔観たリメイクの「死霊創世記」の方が楽しめた。
ただしやはりこの映画の価値はいわゆる「ゾンビ」というキャラクター(この映画の呼称はグールだが)の創造にあるので、そういう意味ではゾンビに関するあらゆるキャラクター造形がこの映画だけで完成しているのは見事としか言いようがない。
意外だったのはゾンビの発生原因が語られていたことで、その部分だけはなんだかウルトラQみたいだった(笑)
見どころはもちろん色々あるが、化夢宇留仁が印象的だったのはガソリン入手大作戦の結末で、あそこまでの◯◯◯は予想もしなかった(笑)

20240129(mixi日記より)
20240130


デスパレートな妻たち シーズン1

 アメリカ郊外の閑静な住宅地であるウィステリア通りに住む、個性的な妻達(元妻含む)の生活を描いたドラマ。
主役級の4人は旦那と別れて一人娘と2人で暮らす絵本作家のスーザン。
元モデルで金持ちの実業家の妻になって贅沢に暮らしているが、庭師と火遊びをしているガブリエル。
カリスマ主婦として有名で、あらゆることを完璧にこなすが、実は家庭内は問題だらけのブリー。
元80人の部下を動かしていたバリバリのキャリアウーマンだったが結婚を機に家庭に入り、今では4人の子供に振り回されまくっているリネット。
彼女らを中心に、様々な住民達が絡み、予想もしない物語が展開する。

 主なストーリーは彼女たちの共通の友人だったメアリー・アリス・ヤングの自殺の原因を探るというもので、実はミステリー色が強い。
またその後も様々な謎が展開され、殺される人も出てくる。
しかしなにより面白いのは4人のキャラクターと家庭それぞれの事情で、それらがもつれ合って進んでゆく。
 そもそもヤフオクで落札した輸入ゲームのセットにこのドラマのゲームが混じっていたのがきっかけで、偶然それに興味を示したSRさんと翻訳しながらプレイ。
なかなか癖のあるゲームで興味深かったのでドラマも観てみることにしたのだ。
で、その結果滅茶苦茶面白くてはまってしまった(笑)
とにかくいい感じに毒があるのと、そのあまりにも予想不可能な展開が引っ張りまくる。
シーズン1を短期間で見終わり、すでにシーズン2も借り始めている。
シーズン1の終わりでは、メインのミステリーはほぼ解き明かされたが、1人の旦那は会社をクビに。1人の旦那は刑務所に。1人の旦那はあの世に行ってしまった(笑)
そして新たに怪しい住人も。
またまた先が楽しみである(笑)。

20130525(mixi日記より)
20240131


漆黒の花弁
マイクル・ムアコック著/健部伸明訳

 はるばるナッセア・ティキにやってきたエルリックとムーングラム。
ここにはエルリックの身体を蝕む病を癒してくれるかもしれない漆黒の花が咲くという伝説を頼りにしてのことだった。
しかし船から降りたエルリックはストームブリンガーを封印したままで薬も尽きかけており、体力の限界が近かった。
伝説の花があると言われているジャングルの奥には、最近王が向かって帰ってきていないと聞き、その捜索隊と合流することになるが、その中には意外な人物も含まれていた・・・。

 雑誌ナイトランド・クォータリー28号に掲載されたものを読んだ。
まあいつもの通りのエルリック(笑)という感じで、体力も尽きかけているというのに王女の「報酬」に期待したり、相変わらずのゲス野郎(笑)
しかし本作では作中人物たちがエルリック「を」一番うまく「使った」エピソードだった。
ああいうタイミングでエルリック1人を置いていくのはまさにベスト(笑)

20240131(mixi日記より)
20240201


トイ・ストーリー3
リー・アンクリッチ監督

を観た。テレビ録画。
 引越前に途中まで観ていたのだが、最近やっと続きを観た。
ウッディ達の持ち主であるアンディ少年も大学生に。
ウッディは大学に、他のおもちゃ達は屋根裏部屋にしまわれようとしていたが、手違いで捨てられそうになってしまう。
流浪の末ある幼稚園にたどり着くが、そこは・・・。

 一時期ディズニーだけで製作されるということが決まり、どうなることかと心配された本作だが、ピクサーのディズニーへの吸収によってめでたくピクサースタッフによって製作され、前作からのクオリティも維持された。
よって相変わらず安定した内容で、そつなく面白い。
テレビ放送では画面に出てくる文字が執拗に日本語化されているのがすごかった。
バズのスペイン語モードも面白い。

20130526(mixi日記より)
20240202


片想い
東野圭吾著

を読んだ。バイトの(以下略)
 アメフト部の同窓会の帰り、マネージャーだった日浦美月と出会う哲朗。
しかし彼女の様子は変貌しており、まるで男のようになっていた。
しかも彼女の口から人を殺したという告白を聞き・・・・。
 性に関する様々な要素を詰め込んだミステリー&ラブストーリー。
性同一性障害を始めとする色々な性の形態や、彼らの社会の中での立場や戸籍との兼ね合いなど、興味深いところが多かった。
しかし全体的に乗り切れず、あまり楽しめなかったのは、主人公の性格なのか、アメフトに興味がないからか。
基本的に運動部のマネージャーという存在があまりにも想像できない役職で、これは化夢宇留仁がそんな人に会ったことが無いからだろう。
知っていればもっと違った印象になったと思う。

20130601(mixi日記より)
20240203


モルグ街の殺人事件
エドガー・アラン・ポー著/佐々木直次郎訳

 古い新潮文庫で、化夢宇留仁の持っているのは昭和48年の34刷。ちなみに初版は昭和26年(汗)
ちうわけで紙が超茶色く、字が極限小さく、印刷はかすれている。
そこまでは予想通りだったのだが、旧仮名遣いとまでは予想していなかった(汗)
おかげで読みにくいのはもちろん、全然パリが舞台っぽくなかった(笑)

モルグ街の殺人事件
 本の趣味が縁でC・オギュスト・デュパンと知り合い、意気投合して一緒に住むことになった「わたし」は、新聞記事でモルグ街で起こった殺人事件に興味を引かれる。
老婆とその娘が惨殺されたがそこにあった大金は盗られておらず、犯人の目処もついていないようだった。
ところがデュパンは犯人の目処はついていると言い、それを確かめるために現地の調査に向かうことに・・・。

 本編が始まる前のデュパンが「わたし」の思考をピッタリと追跡してその思考に返事をする件がすごすぎる。
本編の事件はというと・・・フランス警察がいくらなんでも無能すぎる(笑)
そして事件の真相がこれまた思い切りがよすぎると言うかなんというか・・・(笑)
あとは本作は世界最初の推理小説と言われているらしいが、世界最初の名探偵(?)デュパン氏のキャラクターはほぼホームズ(笑)で、犯人の呼び出し方まで全く同じなのには笑った。ちうかもちろんドイルがパクっているのだが。

オトシアナ(旧漢字)と振子
 宗教裁判の結果地下の暗闇に閉じ込められた「わたし」に迫る陰湿な処刑。
なんとか危機を乗り越える「わたし」の前には更なる危機が・・・。

 非常に思い切った内容で、なにしろ主人公の名前も人物像も、なんで宗教裁判に掛けられたのかも一切語られず、ただひたすら地下牢でもがき苦しむのだから、やはりポーは只者ではない。
名前をパクったあの人(笑)が好きそうな展開を好きなだけやったらあまりにもあっさり終わるのにも驚いた。

早過ぎる埋葬
 「わたし」が各地での早過ぎる埋葬の例を紹介。
それでてっきりそういうコラム的な作品なのかと思ったら、実は「わたし」が早過ぎる埋葬恐怖症であるという物語が始まる。
なんかポーは構成も只者じゃないな。
そしてやっぱり好きなだけ早過ぎる埋葬の恐ろしさを描いたらあっさり終わる(笑)

偸まれた手紙
 デュパンと「わたし」のところに警視総監が相談に来る。
ある高貴な女性の手紙が盗まれ、犯人はそれを使って大きな権力を掴んでいる。
なんとかして手紙を取り戻さなければならないのだがどうしても見つからず・・・。

 びっくりするのが当時のフランス警察のあまりにも超法規な調査内容。
なにしろ大臣である犯人の留守に家屋を徹底的に捜索し、本人もとっ捕まえて身体検査までしてしまうのだ。
しかしもちろん手紙が見つからないので相談に来ており、話を聞いたデュパンが見つけるわけだが、いくらなんでもその隠し場所は警察にも見つけられたと思う(笑)
作中でデュパンが数学者の推理がいかに危険かという持論を展開するが、化夢宇留仁もちょっと共感するところがあった。
人類が見つけ出してきた定理は素晴らしいが、それは人類の限られた能力の範囲内でだけで定理として成立するものだと思う。

 上記の通り明らかにホームズのモデルになったと思われるデュパン氏だが、2作読んだだけではまだ個性がつかめるほどの情報量が無い。
なのでもっとシリーズを読んでみたいのだが、彼の登場する作品はあと1つしか無いそうな(汗)

20240204(mixi日記より)
20240204


パラレルワールド・ラブストーリー
東野圭吾著

を読んだ。バイト(以下略)
 若き脳科学の研究者である崇史は、同じく研究者であり親友の三輪の彼女を好きになってしまい、板挟みの感情に苦しむ。
もう1つの展開では、崇史は彼女とつき合っており、三輪はアメリカに転勤になっていた。
2つの展開は時間も違えば記憶も異なるのだが、やがてそれらは絡み合い、1つの物語に集結する。

 なんとなく映画っぽい雰囲気。細かい部分までよく練られた物語だと思う。
しかし困ったことに全然面白くなかった(汗)
まず主人公の考えていることが、どうも釈然としない。
流れとしては特に破綻しているわけでもないのだが、どうしても入っていけない。
これは多分問題の彼女の描写が足りなくて、その魅力を描き出せていないからではないかと思う。
 また2つの展開の同時進行だが、最初からどっちもどうなってもいい感じで、全然乗れない。
脳科学研究とパラレルワールドと来た時点でネタは分かり切っているわけで、それだけでは物語にならないので恋愛要素を入れてみたという感じ???
こういうネタでこういう形で物語を描くのであれば、恋愛は逆にタブーだと思う。
ただそう思うのは化夢宇留仁がこういうネタで面白いSFをいくつも読んでいるからで、一般読者からすればそうでもないのかもしれない。
とにかく東野圭吾は化夢宇留仁には合わないようだ。
とか言いながら読みまくっているわけだが(汗)

20130601(mixi日記より)
20240205


アリスへの決別
山本弘著

 バイトのOKKさんが貸してくれた。
OKさんは職場では唯一オタク系世界の住人で、まともに化夢宇留仁と話題が合う唯一の人間(笑)

アリスへの決別

 幼く美しいアリスを撮影するルイス・キャロルことドジスン。
しかしその光景には少し違和感が。
やがてドジスンは暗黒の検閲社会の未来を語り出す・・・。

 あまりにもあからさまな現代日本への批判小説。
言わんとしているところはよく分かるし同意もするが、果たしてこれが小説と言えるのか?

リトルガールふたたび
 近未来の日本の小学校の授業。
教師が生徒達に日本の近代史を語り、そのあまりの酷さに驚く生徒達。
その時の日本は独裁者によってユートピアのような世界が形作られていた・・・。

 これまたあからさまな現代日本への批判。
ただしこっちの方は一応オチもついている。
やはり批判内容は強く同意できるものだし、なかなか楽しめた。
オチもある意味それが理想の形だとも思うし、そう思えばオチではなくなるような気もする。

七歩跳んだ男
 月面上で宇宙服を着ていない男の死体が見つかる。
月面初の殺人事件かと調査が進められ、やがて被害者はエセ科学の本を書いている作家だと分かり・・・。

 月面が舞台のミステリーなのに、やっぱり現代日本への批判が山盛り(笑)
ミステリーとしてはまあまあだと思うが、盛り上がりには欠ける。

地獄はここに

 人をだまして金を巻き上げているエセ予言者が、少女がコロされた事件の調査をテレビ局から依頼される。
収録には少女の親友も来ており、一緒に調査を進めるのだが・・・。

 これはなかなか面白い。
仕掛けはほぼ最初から予想がつくのだが、それが分かってからの展開に味がある。

地球から来た男
 二度と地球には戻らない宇宙船の中で密航者が見つかる。
彼は様々なタブーに縛られる国を脱出してきたのだと言う。
やがて彼の国より、彼の立場の方が特殊なのだと分かってくるのだが・・・。

 こんな設定なのにこれまた現代日本への批判が(笑)
これだけあからさまな批判が続くと、なんだか物語に集中できない。

オルダーセンの世界
 世界は滅び、オルダーセンの世界のみが残された。
限られた世界の中で衛兵を務める男が、不思議な女性に出会う。
彼女は世界は全て夢であり、やがて崩壊すると言っていた・・・。

 シリーズ物の舞台として考えられたらしい夢の世界。
シリーズ第1話としてはなかなか面白い。
PS2にあった滅び去った街が舞台のウィザードリィを思い出した。

夢幻潜航艇
 夢の世界に「魚」が現れ、多くの犠牲者を出した。
深夢ダイバーであるシーフロスは、漫画家であり発明家でもあるトールとともに、魚の調査に出かける。

 前作にも出演していたシーフロスの冒険。
更に世界が掘り下げられ、興味深い設定もいろいろ出てくる。
なかなかSFマインドもあって面白い。
もっと世界を広げた続編を読みたい。

 全体的な印象としては、やはり現代日本への批判があからさますぎるというのが強かった。
もっとオブラートに包んでもらわないと、肝心の物語の方がかすんでしまう。最も作者としては批判の方がメインなのかもしれないが。
言っていることは納得できるし同意するが、そういうのを小説という形で読みたいわけではないのだ。

20130609(mixi日記より)
20240206


南極点のピアピア動画
野尻抱介著

 バイトのOKKさんから借りたもの。
あからさまにニコニコ動画と初音ミクを意識した連作短編集。しかし長編としてもまとまっている。

南極点のピアピア動画
 月に大型の小惑星が衝突し、破片やガスが地球にも降り注いでいる近未来。
地球に双極ジェットが発生するというシミュレーション結果を前に、それを使って個人で宇宙に行けないかと思いつく蓮見。
それを実現して出て行った彼女との約束を果たし、戻ってきてもらおうというのが目的だったが、ピアピア動画で話は日本中に広がり・・・。

 とにかくトントン拍子で宇宙へ。
自立型工場の描写など、興味深いところも多かったが、あまりにもテンポが早すぎてなんだかよく分からなかった(汗)

コンビニエンスなピアピア動画
 あからさまにファミリーマートをモデルにしたコンビニの入店音を、新曲のキャンペーンに利用するというアイデアが。
結果は大成功で、企画者は次には店頭の真空殺虫機の中で巣を張っている蜘蛛に着目。
その蜘蛛は強度の紫外線に耐え、短時間であれば真空中でも生存し、カーボンファイバーのような糸を出していた・・・。

 コンビニから軌道エレベーターへ・・・。
あまりの突飛な展開だが、なかなか熱くさせるものが。
実は剛速球のSFマインドが込められている。

歌う潜水艦とピアピア動画
 自衛隊の潜水艦を借り受けて、超高解像の音波スキャナーとボーカロイドを組み合わせ、クジラとコミュニケーションをとる計画が実現。
計画はうまくいき、クジラと細かなコミュニケーションを取ることに成功する。
ところが予想外の存在と遭遇し・・・。

 クジラと個体名で呼び合うコミュニケーションがとれる描写も面白かったが、やはり後半の展開はSFものにはたまらない。
最後のオチも効いている。

星間文明とピアピア動画
 クジラの話の直接の続編で、この短編集のための書き下ろし。
海底で見つかった「それ」は地球の文明との交流を望んだ。
しかし自衛隊に紛れ込んでいたらしいスパイより中国に情報が漏れ、狙われることに。警察も目を光らせている。
こうなったら一気に拡散して手のつけようがない状況にするしかないと、コンビニの流通網を利用することに・・・。

 驚嘆すべき「それ」の能力と、やはり驚嘆すべきコンビニの拡散力に拍手喝采。

 最初はあまりのアップテンポと変わった舞台で少々とまどったが、慣れてしまえばSFマインドが目一杯詰まった直球作品だった。
ある意味全編「電車男」の発展とも考えられるが、実際世の中がこうなってきているのだから一種の予定調和と言えるだろう。
これは面白かった。

20130623(mixi日記より)
20240207


妖虫
江戸川乱歩著

 寂れた墓の近くの廃屋で美しい映画女優が殺されてバラバラにされる事件が発生。
それを目撃していた相川守青年は、賊の次のターゲットが自分の妹だと知り、名探偵の協力を仰ぐ。
しかし賊「赤さそり」は魔術師めいた手段で妹をさらってしまい・・・。

 いわゆる江戸川乱歩のイメージそのまんまの話で、正体不明の殺人鬼「赤さそり」が次々と美女を殺し、その死体を衆人の目にさらす。
要するにジャーロな感じで、内容のしょうもなさとか荒唐無稽さとかは問題ではない。
気になるのは家族を殺された者の反応の薄さ。
相川青年は結局妹を殺されて、洋服店の店頭にマネキン代わりに飾られるという目にあうのだが、その一週間後には何事も無かったかのように犯人を追っている。
江戸川乱歩の他の作品でも思ったのだが、とにかく家族を殺された人の反応が超絶ドライなのだ。
いわゆるジャーロという性質上、読者が興味ないところは簡素にするという点では全く問題ないのだが、読者にそれを気付かれてしまっては台無しである。
なんだかあらゆる点でもう一歩な印象だった。

20130702(mixi日記より)
20240208


デスパレートな妻たち シーズン2

 シーズン1で主要なミステリー部分は解明され、次にひっぱるのは新しくウィステリア通りに越してきた黒人の家族。
母1人息子1人の家族かと思いきや、地下室にもう1人が・・・。

 今シーズンはどうもしっかり予定されていなかったようで、なんとなく中途半端な印象だった。
それぞれの家庭ではシーズン1を上回る大事件が頻発するが(特にブリーの家)、やはり散発的でもう一つまとまりに欠ける。
意外な有名俳優とかもぽろぽろ出てきて楽しめるが、次のシーズンの新たな盛り上がりに期待したい。
とりあえずスーザンは最悪でイーディは好き(笑)

20130706(mixi日記より)
20240209


東京奇譚集
村上春樹著

 例によってバイトのMRさんのを勝手に拝借(笑)。
短編集である。

偶然の旅人
 著者が遭遇した不思議な出来事の紹介という体。
著者の友人のゲイのピアノ調律師が、ある女性と不思議な出会いをし、それがきっかけで疎遠になっていた姉と話をすることになり・・・。

 ほんとかどうかは分からないが、リアリティがあってなかなか面白い。
ちうか久しぶりに読むと村上春樹の文章はやはりうまい。

ハナレイ・ベイ
 カウアイ島のハナレイ・ベイで、サチの息子はサメに脚を食いちぎられ、そのショックで溺れ死んだ。
サチはその後毎年ハナレイ・ベイに向で、息子がサーフィンをしていた砂浜ですごすようになる。
それは息子を思い出すためだけではなく、彼女の世界の1つとなっていた・・・。

 実に雰囲気がよく、オフシーズンのカウアイ島の空気を感じることができる。
語られるサチの半生も興味深くて引き込まれる。
名作。

どこであれそれが見つかりそうな場所で
 マンションの階段で姿を消した夫を捜して欲しいという依頼を受けた私立探偵(?)
彼はマンションに毎日通い、階段をくまなく調べ、そこにあるはずの何かを探し続ける・・・。

 マンションの階段という普段なかなか使われない場所でのささやかな人と人の交流や、かいま見える生活などが面白い。
メインストーリーは無きに等しく、不思議な味わいを残す。
悪くない。

日々移動する腎臓のかたちをした石
 男が一生に出会う女で本当に意味を持つ女は3人しかいないとおやじに言われたのが心に残っている小説家の淳平。
彼は謎の職業についている不思議な女性と出会い・・・。

 不思議な展開。様々な要素が錯綜するが、それぞれの一幕にはなんとなくリアリティがある。
終わり方がなんとなく物足りなかった。

品川猿
 時々自分の名前が思い出せなくなると言う奇妙な症状に悩むみずき。
市が設置した心理カウンセリングを受けてみると、カウンセラーは意外な解決方法を提示し・・・。

 小説版「フロム・ダスク・ティル・ドーン」(笑)
吸血鬼が出てくるわけじゃないけど。

 東野圭吾の合間に読むと、いかに東野圭吾がダメかよく分かる。
レベルが違う。

20130728(mixi日記より)
20240211


地中海殺人事件
ガイ・ハミルトン監督

 古いポアロ映画。
 地中海のリゾート島に集まった面々。その中にはだまし取られたダイヤを取り返して欲しいという依頼を受けたポアロも。
そのダイヤをだまし取ったのは今最も注目されていながら結婚して女優を引退したアリーナ。
しかしそのアリーナが浜辺で殺されてしまう。
調査に乗り出したポアロは、関係者全員が彼女を殺す動機があり、かつ全員アリバイがあることを知り・・・。

 のんびりした雰囲気と独特のテンポが当時の映画の味わい。
全然かしこそうでもおしゃれでもなさそうなピーター・ユスティノフのポアロは、キャラクターの面白さもイマイチながら、この映画の雰囲気にはピッタリ。
調査も始終のんびりした雰囲気の中で進められ、謎解きはクリスティらしくなかなか切れ味がある。
ただしミステリー好きなら犯人の目処はすぐにつくと思う。
あれはアリバイ作りとしてはあまりにもあからさまかと。
最後に冒頭の事件との絡みも出てきて収まるのだが、そこはすっかり忘れていて唐突に感じる。
しかし化夢宇留仁的にはこういうのんびりしたリゾート気分を味わえる映画も好き。
ただし画的には全然地中海リゾートに見えず、日本のその辺の島に見えるのだが(汗)

20130728(mixi日記より)
20240212


デスパレートな妻たち シーズン3

 2で一瞬のゲストかと思っていたカイル・マクラクランの話がふくらみ、3ではメインストーリーに昇格。
と、思いきやあっさりと解決。
どうやらマクラクランの演じるオーソンの妻であるブリー役の女優が妊娠してしばらく登場しないことになったので、急いで一段落をつけたらしい(笑)。
その後は各キャラクターのドロドロの恋愛(?)模様などが描かれ、ブリーが戻ってシーズン終了。
 それにしても単なるご近所さんなのに、あまりにもややこしい人間関係が構成され、これがアメリカの普通なのかと(笑)感慨深い。

20130728(mixi日記より)
20240213


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