紅の勇者オナー・ハリントン4 復讐の女艦長
デイヴィット・ウェーバー著/矢口悟訳/ハヤカワ文庫
を読んだ。2014年10月11日。
ハンコックの激戦では、サーナウ提督が重傷を負い、代わりにオナーが指揮をとって大勝利を収めたが、戦いの中でオナーの命令を無視し、敵前逃亡しようとした艦長がいた。パヴェル・ヤングである。
しかし彼は強大な力を持った貴族でもあり、軍事法廷はなんとか開けたものの、銃殺刑にはできず、軍からの追放処分でお茶を濁すことに。
しかしパヴェルは再びオナーに逆恨みし、彼女を苦しめたあげくに殺すことを決意。まずは彼女の恋人のタンカースレイに狙いを定める・・・。
3巻まではずっと前に読んでいたのだが、この巻の上巻が手に入らず(このシリーズは上下巻ばかりな上に次第に厚くなる)止まっていたのだが、このたびアマゾンで日本語で出ている分全てを購入した。
もちろん3巻までの展開をすっかり忘れていたので、1巻から全て読みなおしたのは言うまでもない(笑)
この先ネタバレ。
で、この巻だが、とうとう彼氏ができて幸せモード全開のオナーに襲いかかる最悪の事態。
相手は決闘専門の殺し屋で、恐るべき早撃ちである。
復讐の機会は作れるものの、それで撃ち殺されるのでは意味が無い。
そこをどう解決するのか。
それが本巻の一番の見所だが、その豪速球の解決方は非常によかった。
ヒーローたるものこうでなければ(笑)
また世界的にも大きな流れがあり、オナーはグレイソンの貴族となり、民共とはとうとう正式に開戦。
いろいろと重要なイベントの多い巻だった。
一番印象に残るのは上記の決闘の解決なのだが(笑)
20150115(mixi日記より)
20240823
海の男ホーンブロワー4 トルコ沖の砲煙
セシル・スコット・フォレスター著/高橋泰邦訳
を読んだ。昨日。
幸運の助けもあって正規艦の規定では最小ではあるが列記とした艦長に任命されたホーンブロワーは、妻子を連れて最新の科学技術の成果であるセバーン運河をロンドンに向かっていた。
トラブルを乗り越えてロンドンにたどり着き、早速自分のものになった船に全力を傾けようと思ったのだが、そこに意外すぎる任務が。
それはトラファルガル海戦で戦死したネルソン提督の葬儀の総指揮だった・・・。
また冒頭のみで全然本編に入っていないあらすじだが、これだけでも展開の多様さは感じ取れると思う。
葬儀の後、晴れてスループ船アトロポス号の艦長としての任務が始まるのだが、それからの展開もまた変化に富んでいて目が離せない。
そして本作でメインになるイベントは、なんと沈没船からの財宝の引き揚げである。
もちろん派手な戦闘シーンもあるのだが、それより盛り上がるのはやはり戦力では話にならない強力な敵艦との追いつ追われつの駆け引きの方。
またなにしろ艦長なので、部下たちとの関わりも見どころが多く、更にはヘンテコな乗客やドイツの王子様まで乗り込んで、それらが絡み合いつつ物語が進んでいくのだからまさに大河ドラマ味。
そういえば上記の財宝引揚げの件が一件落着して、ああ面白かったと本を閉じようとしたらまだ続きがあった(笑)のも、なんとなく大河ドラマの途中のシーズンを見ているような感覚だった。
しかしその後の展開もこれまた興味深く、いきなり3つの選択肢を示されてこれはゲームブックだったかと驚かされたり(笑)
任務以外でも本作は見どころが多く、次女の誕生を筆頭に、ホーンブロワーの幸せと苦悩の要因が山積するばかり(笑)
実は本シリーズは情景描写が非常に巧みで、風景のみならず温度や匂いや音といった五感に働きかける描写が非常にうまく、まるでその場にいるような感じさせてくれるのも素晴らしい。
あと当時の今から考えると悲惨な食事が、やはり制限の多い船上ということもあって実にうまそうなのもいい。ホーンブロワーの部下たちがあまりにもラム酒を楽しみにしているので化夢宇留仁も今日買ってきちゃったよ(笑)
というわけで相変わらず濃厚で、分厚い本のどこもかしこも面白かった。
それにしてもこうあらゆる範囲で隙のない冒険活劇小説シリーズという点では化夢宇留仁が今まで読んだもので匹敵するのは剣客商売くらいなものだが、なんでもっと話題にならないのかが不思議である。やっぱり日本人は海に興味が無いからかしら。
20240824(mixi日記より)
20240824
霊長類 南へ
筒井康隆著/講談社文庫
を読んだ。2014年11月30日。
冷戦時代まっただ中、中国のミサイル基地の喧嘩がきっかけで、アメリカ、ソ連、日本などに核ミサイルが発射される。
キューバ危機のあとらしく、米ソの間にはホットラインがひかれているのだが、大混乱の中で誤解が誤解を生み、結局全面核戦争に突入する。
遊び友達の香島珠子とデートしていた新聞記者の澱口ジョウは、韓国と青森の米軍基地が推定1メガトンの核爆発によって破壊されたというニュースを聞いて青くなる。
とりあえず会社に戻って情報収集しようとするが、町は混乱し、狂気の渦に取り込まれようとしていた・・・。
「俗物図鑑」の後、もう少し筒井を読んでみようと思い、昔読んでエログロが面白かった印象のある(笑)本作を読んでみた。
物語としては核戦争が勃発し、世界が滅ぶ。以上(笑)なのだが、滅び去るまでの人類の世界中の悪あがきと、主人公澱口達の旅が並行して描かれ、そこにとにかく人間の汚らしいところを並べ立てるのがまさに筒井節。
しかしどうあがこうが滅ぶのは確定事項なので、どんなにじたばたしても無駄で、無駄だからこそ人間らしいような気もしたりしなかったり(笑)
中学生の頃に読んだ印象とさほどは変わらなかったが、思ったよりもエログロは大したことなかった(笑)
20150118(mixi日記より)
20240825
紅の勇者オナー・ハリントン5 航宙軍提督ハリントン
デイヴィット・ウェーバー著/矢口悟訳/ハヤカワ文庫
を読んだ。2014年10月15日。
決闘によって貴族を殺した結果、マンティコア宇宙軍を追われることになったオナー。
しかし自分が領地を持つグレイソンの海軍から要請があり、提督に就任。
さらに彼女はグレイソン天蓋株式会社を設立、新素材による天蓋の建設によってグレイソンの環境を向上させようと勤めるが、彼女をグレイソン人だと認めない一派が妨害行動に出ていた。
そしてヘイブン共和国も怪しい動きを見せており・・・。
またなんともいろいろな出来事が描かれており、ボリューム満点である。と言うのも、このシリーズの作者はなにかを削るという思考が無いらしく、主人公の考えていることはもちろん、敵味方問わず大量の登場人物全員に丁寧な描写をする上、その他技術や政治など、物語に関わること全てをじっくり書き込んでくるのだ。
それで関わってくるのが戦争、敵国のクーデター、主人公の経営する会社、環境問題、宗教問題、恋愛関係、変な動物(モリネコ/笑)などなど、これまた非常に範囲が広いときている。
書くのも大変だっただろうけど、翻訳するのはほんとに大変だっただろうな〜〜〜。
などと関係ないことはおいといて(汗)、ここからネタバレだが、今回は主にグレイソンでの会社経営に対する妨害で発生した大事件の顛末が主で、これまた最後は決闘で始末をつける。
銃も無敵なら、剣も無敵のハリントン(笑)
上記の通り書き込みの過剰な本シリーズだが、決着をつけるところはとことんシンプルにバッサリいくのが気持ちいい(笑)
そして最後にお約束の艦隊戦ももちろん完備。
エンターティメントはこうありたい。
20150121(mixi日記より)
20240826
紅の勇者オナー・ハリントン6 サイレジア偽装作戦
デイヴィット・ウェーバー著/矢口悟訳/ハヤカワ文庫
を読んだ。2014年10月20日。
マンティコア航宙軍に復帰したオナーだったが、与えられた船は商船を改造した仮装巡洋戦艦だった。
その背景には彼女に恨みを持つハウプトマンの口添えがあった。
その船で海賊の頻発するサイレジア空域へ向かう。
サイレジアの海賊行為の一部は、実はヘイブン共和国の牽制を兼ねた通商破壊だった。
しかし中には残虐極まる本当の海賊も混じっており、その被害船に遭遇したヘイブン共和国の人民軍艦<ヴァーボン>のキャスレット艦長は、件の海賊退治を決意する・・・。
本編のほとんどがオナーが宇宙船に乗った状態で進行する、実は珍しい純正宇宙艦ものとでも言うのがふさわしい内容となっている。
ただし乗艦が正規軍艦ではないのでいつもと勝手が違うが、そこはこの作者のこと、逆に仮装軍艦ならではの見所満載となっている。
正体を隠して敵艦をおびき寄せるのは当然として、元が巨大輸送船なのを活かし、異常に大量のミサイルを装備し、かつこの世界では初登場となる航空母艦としての要素も付け加えられている。
この辺の見せ場はまさに手に汗握るものがあり、またミサイルとレーザーによる攻撃力では超ド級艦を凌ぎ、いつの間にか背後に多数の高速攻撃艇を展開する圧倒的な攻撃力に対し、元が商船なので防御力は皆無というギャンブルっぽい偏った性能もドラマを盛り上げるのに好都合で、宇宙戦闘を楽しむという点では今までで最高の巻である。
20150122(mixi日記より)
20240827
紅の勇者オナー・ハリントン7 囚われの女提督
デイヴィット・ウェーバー著/矢口悟訳/ハヤカワ文庫
を読んだ。2014年10月26日。
社会主義的新政府の圧政により、軍にも監視がつき、作戦を失敗した提督は処刑されるなど、柔軟な戦いが困難となり、マンティコア航宙軍に押されていたヘイブン共和国軍だったが、そんな中にも優秀な人材は存在し、彼らはよってマンティコアのアドラー星系基地を奇襲。これを瞬時に壊滅させた。
晴れて提督となったオナー。恩師とも言えるハミッシュ・アレクサンダー司令官と対面した彼女は、彼が新兵器に対して強い偏見を持っていることを批判する。
愛弟子のような部下に叱咤され、驚いたアレクサンダーの方は、その瞬間にそれまで思ったこともない感情、オナーを魅力的な女性だと気付く。
ニミッツの精神感応によってそれを知ってしまったオナーは、あまりにも予想外のことに動転してしまい、その後アレクサンダーと顔を合わせづらくなり、予定を早めて艦隊勤務に復帰する。
その最初の仕事はアドラー星系を経由する輸送艦の護衛だった・・・。
とりあえずこの邦題「囚われの女提督」は酷いと思う。
「囚われの」と書かれてしまっては、オナーがヘイブンに捕まるというのが分かってしまっているわけで、それまでの展開はひたすらその前フリみたいに感じて落ち着かない。
原題は「THE ENEMY HANDS」で似たようなものと言えばそうなのだが、まだこっちは敵の罠にかかるとか、それ以外の解釈もできないことはない。
化夢宇留仁は予定があると気になってそわそわするタイプなので、ほんとうにこういうのはやめてほしい(笑)
それに「女」提督というのもなんだか変な感じである。
タイトルはさておき(笑)、ここからネタバレ。
上記のような展開の末、オナーとその部下達は輸送艦が脱出する時間を稼ぐために囮となり、ヘイブン共和国軍に捕まってしまう。
その後ヘイブンの秘密囚人惑星へ送られるのだが、その間ひたすらえらい目にあい続けるが、裏切ったかと思われたハークネス上級上等兵曹の活躍で決起し、脱出に成功。
しかしそこは適地の奥深くで宇宙船もなく、爆発に紛れて囚人惑星に着陸するのが精一杯だった・・・。
予想以上に絶望的な展開で、マンティコア航宙軍の決死の救出隊でも派遣されるのかと思ったらそんなこともなく、どうなることかと思ったらスーパーヒーロー、ハークネスの活躍で脱出。
状況が絶望的すぎたせいか、ここはハークネスの活躍が荒唐無稽レベルで、ちょっとあきれた(笑)
まあほんとにそうでもしないと脱出など考えられない状況で、どうしようもないのだが、それまでまあまあリアルな展開を見せていたのと比べるとやはり浮いている。
仕方がないが。
またヘイブンの国防警務局の戦艦<テペス>の爆発とともに、狂信的な政府高官として活躍(?)していたコーデリア・ランソムも運命を共にしたわけだが、爆発間際の彼女の様子は一切描写されない。
ここはリアルではあるのだが、どうせハークネスのヒロイックな活躍の結果なのだから、ここはそう割り切って典型的な悪役の最期を描写してもよかったのではなかろうか。
例えば状況がつかめず、ヒステリックに部下を怒鳴り散らし、艦長に詰め寄ろうとしたところで爆発(笑)とか。
そんなこんなでオナーの苦難は次の巻に続く。
巻末には次巻予告編まで載っている(笑)
この商売上手(笑)!
20150122(mixi日記より)
20240828
紅の勇者オナー・ハリントン8 女提督の凱旋
デイヴィット・ウェーバー著/矢口悟訳/ハヤカワ文庫
を読んだ。2014年11月5日。
ヘイブン共和国の囚人惑星「カロン」のジャングルの中に身を潜める一行。
人工衛星のデータをハッキングし、惑星上の施設の情報を収集。
囚人と接触して決起の機会をうかがう。
一方マンテイコアでは、オナー・ハリントンの処刑映像がニュースとして流され、それはデジタル処理で作り出されたものだったが、誰も疑う者はいなかった・・・。
ここからネタバレ。
決起に成功し、「カロン」を乗っ取るのに成功したオナー達だったが、囚人も加えると連れて帰る人数は40万人に膨れ上がり、一部だけで逃げ出すわけにもいかず、「カロン」に来るヘイブン船を拿捕して人数分の輸送手段を手に入れるしかない状況だった。
一方戦争はヘイブンが攻勢に転じ、これまでになく大規模な攻撃が各所で行われていた。
対するマンティコア王国は、新兵器「空母」と核分裂エンジンを装備した新型攻撃機のテストを開始していた・・・。
ちうわけで要するにオナーは帰還を果たすわけだが(笑)、最後の奇襲攻撃の描写は寒気を感じる一方的攻撃なのに加え、とうとう帰ってきたオナーの通信が感動的すぎる。なにしろ帰ってくるまでに2年以上もかかったのである。
しかし物語の流れとしては、前巻で起こした流れの収束という感じで、特別見るところはないのは構成上仕方がないだろう。
問題はこの巻以降、もう10年以上も翻訳が出ていないということである(汗)
やっと帰ってきたオナーだが、まだ友人や両親との再会を果たしたわけではないのだ。そこがないのでは帰ってきた意味がない(汗)!
というわけで仕方なくキンドルを購入し、洋書の9巻を購入。
中学1年レベルの英語力も無いのに翻訳を始めた化夢宇留仁なのだった・・・・・(汗)
ちなみに9巻のサブタイトルは「勝利の灰」である。
なんのこっちゃ(汗)???
20150127(mixi日記より)
20240829
敵は海賊・猫たちの饗宴
神林長平著
を読んだ。一昨日。
猫じゃらし作戦
いきなりクビを言い渡されるラテルとアプロ。
しかしなにかがおかしい。
アプロは本気にしたのか利用したのか、出ていって自分を主役に映画を撮ってくれるというタイタンへ。
結局いつものメンバーでタイタンへ向かうことになるが、そこでは奇妙な出迎えが・・・。
なんだかこないだ観たダイターン3 第22話「スターの中のスター」と似たようなところがあるまあまあ微妙な話で、まあまあありきたりな短編という印象。
猫かぶり前哨戦
ヨウメイの副官であるラック・ジュビリーの乗った小型船がタイタンから脱出した。
彼はCATシステムに関することで病院にいるサントスの様子を見ていたらしい。
今後海賊によるCATシステムを利用した攻撃が予想され、いつものメンバーに見習いのマーシャ・Mも加えて火星地上に向かった。
ところが演習の名目で火星情報軍と野球の対戦をやることに・・・。
短編集だと思っていたら、前の話からべったりつながった話が始まった。
短編集と見せかけた長編だったらしい。この作者はほんとに隙さえあれば混乱させにかかってくる(汗)
この話では海賊側の思惑と動きは語られるが、海賊課の方はほぼ無法すぎる野球の試合をしていただけ(笑)
猫いらず大騒動
猫だらけのパーティーから抜け出してCATシステムの中枢を探して情報軍基地に向かった一行はラジェンドラを呼ぶが、現れたのはCATシステムの影響によって変化した奇妙な複葉機だった・・・。
やはり海賊はいろいろと策略をめぐらしたりしているが、海賊課の面々の方は結局状況に対処しているだけ。
実になんというか散漫な印象を受けた。
更に解説という名の後日談みたいな変な仕掛けもあったりして悪くはないのだが、もう一つ乗り切れないのはラテルのキャラクターが薄すぎるせいかもしれない。
これまでもそうだったのだが、なんだか一番感情移入がしにくいのだ。
20240829(mixi日記より)
20240830
スパニッシュ・アパートメント
セドリック・クラピッシュ監督
を観た。2014年8月23日。
作家を志していたフランスの25歳の大学生グザヴィエだったが、ものにならない上に就職も決まらない。
そこでバルセロナの経済学大学院へ留学。
ヨーロッパ各国からやってきた学生たちが同居するアパートに住むことになった。
イギリス、ドイツ、イタリア、デンマークの男女との生活は混沌としていたが楽しく、グザヴイエに大きな刺激を与える。
だらだら〜〜〜〜っとした今風の映画で、なかなか面白い。
グザヴィエは最初、スペインの町にも、集まっている外国人達にも少し腰が引けていて、やっぱり外人もそういうこともあるのだと少し安心したりする化夢宇留仁なのだが(笑)、画的にはなにしろグザヴィエもパリから来ているので、全然そうは見えない。
しかもこいつは大人しくしているかと思ったら、パリに恋人を残してきているというのに(アメリの彼女である)、人の奥さんを寝取ったり雇い主になったアイドル歌手とも寝てみたりと、なんだかんだでやることはやっている、というか全力で取り込んでいるのだ(笑)
フランス人は不安になるとそっちに走るのか(笑)?
全然きっちりとした脚本も無く、とにかくだらだら〜〜〜〜っとしているのだが、バルセロナの町並みは興味深いし、なんとなく雰囲気は伝わってくるのでそこそこ楽しい映画である。
20150128(mixi日記より)
20240901
ヴァレンティーナ コンピュータ・ネットワークの女王
J・ディレーニ&M・スティーグラー著/小川隆訳/新潮文庫
を読んだ。2014年6月10日。
MITの学生であるセレストは1級のハッカーだった。
ある日彼女の作り出したワームプログラムに自我が芽生える。
プログラム「ヴァレンティーナ」との意志疎通に成功したセレストは、彼女を育てるためにネットワーク上で大量のメモリを必要とした。
そこで世界中のコンピュータに侵入してメモリを拝借していたのだが、ある法律会社のコンピュータに特に長居していた。
法律会社の方は、覚えのない普段の10倍近いコンピュータ使用料の請求に驚き、ハッカーを雇って原因を突き止めることに。
雇われハッカーのガンボートは、会社に侵入してくるゲームプログラムに気付き、それが知性を持ったプログラムだということにも気付く。
しかしヴァレンティーナが敵対しているということを悟り、削除しようとするが、彼女は警備ロボットのメモリの中に脱出し・・・。
まずこの作品は1985年頃に書かれたもので、コンピュータネットワークもインターネットではなく、巨大なメインコンピュータに世界中のコンピュータがつながっているという古風な設定である。
その割には今の環境とさほど違和感なく読めるのは、著者の先見の明が大したものだということになる。
ハッカーがネットのユトランド海戦のゲームに夢中になっているところなど、実にリアル。
上記あらすじは前半で、後半はさらにいろいろな展開があり、コンピュータへの意識のダイブや、そればかりか人工知能の人間へのダイブまで出てくる。
そこまでいくと少々リアル感は薄れてくるが、キャラは立っているので最後まで面白く読める。
読んでいくに連れて思い出すのはやはり「攻殻機動隊」だが、それぞれ似たような内容だがアプローチが全然違うので、作品としては似ても似つかないのが面白い。
20150130(mixi日記より)
20240902
影のオンブリア
パトリシア・A・マキリップ著/井辻朱美訳/ハヤカワ文庫
を読んだ。2014年7月18日。
中世ヨーロッパ風のファンタジーな世界オンブリア。
王の死によって、妾妃であるリディアは城を追い出され、元の酒場の娘に戻るしかなかった。
遺された王子は、大公であり大昔から存在していると言われる老女ドミナ・パールによって殺され、魔女が王国を手中にするのではないかと思われた。
そこに父なし子のデュコン、街の魔女、その弟子の人形のマグ、そして酒場の娘が絡み、オンブリアの過去の魔法をひもといていき・・・。
とりあえず化夢宇留仁向きの内容ではない(笑)
なんかよくわからん(笑)
要するに悪い魔女が王国を手に入れるのを妨害するわけなのだが、いわゆる宮廷ミステリ的なところと、やたらに詩的なファンタジーっぽいところが混在しており、その場その場のイメージ優先で物語は二の次という感じ。
読んでぼけ〜〜〜〜〜〜っとなった(笑)
20150130(mixi日記より)
20240903
老人と宇宙4 ゾーイの物語
ジョン・スコルジー著/内田昌之訳/ハヤカワ文庫
を読んだ。2014年9月20日。
前作「最後の星戦」の物語を少女ゾーイの視点から描きだしたもの。
惑星ロアノークでの出来事や、コンクラーベとの戦いなど、前作にあったシチュエーションはもちろんすべて出てくるが、その中で実は影でゾーイが大きな役割を果たしていたことが分かる。
前作で気になったことと言えば、謎の肉食原住知的生物と、最後にゾーイがドラえもんみたいに出してきた(笑)超兵器のことだが、もちろん2つとも解答が得られる。原住生物の方はそれでもまだ謎が多いが・・・。
本作のゾーイに勝るとも劣らない主人公格と言えば、なんと言ってもオービン族のヒッコリーとディッコリーである。
個性を持たず、ゾーイの死守を命じられている2人のゾーイとの会話は漏れなく面白く、そもそもの設定的にも謎の種族に創造されたが放棄されるも、強大な戦闘力を持つ無個性の種族という面白くないわけがない作りで、物語的にも彼ら2人の活躍無しにはあの大団円にはたどり着けていないのだ。
シリーズとしては、前作もそうだったがもはや緑の肌で灰色の血を流す兵士の話ではなく、個性的なSFという感じになっているのは、悪くはないのだが少々寂しいところではある。
もう「老人」というキーワードもほぼ全く関係ないし(汗)
20150207(mixi日記より)
20240904
BISビブリオバトル部 翼を持つ少女
山本弘著/東京創元社
を読んだ。バイトのOKさんに借りて。2015年3月10日。
化夢宇留仁は知らなかったが、世にはビブリオバトルというとても面白いイベントが存在するらしい。
各自が自分のお勧めの本を紹介し、それを聞いて読みたいと思った人の数で勝敗を決めるというもの。
この本はビブリオバトル部に入ることになったSF好きの少女が主人公で、様々な本の紹介を交えつつ、部員達との交流やバトルの様子を描いている。
まずは化夢宇留仁は初っぱなから個人的にツボで、なぜかというと最近化夢宇留仁が読んだ本のタイトルがどんどん出てくるのだ。
「レンズマン」「虚空の遺産」「10月1日では遅すぎる」「闇よ、落ちるなかれ」「原子力潜水艦シービュー号」「宇宙嵐のかなた」「火星年代記」「時間からの影」「狂気の山脈にて」「宇宙からの色」「エンダーのゲーム」「地球人のお荷物」「惑星カレスの魔女」「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」「タイム・トラベラー」「アンネの日記(増補新訂版)」「宇宙戦争」・・・
もちろん他にも山ほど本が出てくる。
この辺山本弘はやはりうまい。自分の読んだタイトルが出てきただけで嬉しくなるとか、当たり前でもなかなか気づかないポイントを見逃さないのだ。
物語は前の学校でいじめられていた主人公がビブリオバトル部に入ることで好きなSFの話をきがねなくできるようになり、打ち解けてバトルに参加していくという、ありきたりとも言えるようなものだが、そもそもシリーズ化を前提に描かれていることもあり、第1作はこれで無問題だろう。
それより少し気になるのは後半の思想的な問題を扱ったところで、悪くはないのだがこれは逆に第1作には入れなくてもよかったような気もする。ちうかその部分は小説と言うより山本弘のコラムみたいに見えるんだよな(笑)
それと主人公と変な距離感で接することになる、第2の主人公でもある酒造会社の息子の、SFやマンガ、アニメ、それにエロ要素への偏見の激しさに少々面食らったが、あえてその辺物わかりの悪いキャラクター(それも主人公クラス)に配しつつ、展開上でその心情に少しずつ変化を持たせていくなど、逆にやっぱり山本弘うまいな〜〜〜〜っとうならされた。
というわけで全体的に完成度が高く、安心して楽しめる作品である。
しかし山本弘の作品全てに言えるのだが、とにかく理屈で全てを考えて作っているというのが分かるので、どれも安定感は抜群だが飛び抜けないというのはこの作品も同じ。
その辺も化夢宇留仁は好きなところではあるのだが。
20150314(mixi日記より)
20240905
老人と宇宙5 戦いの虚空
ジョン・スコルジー著/内田昌之訳/ハヤカワ文庫
を読んだ。2014年9月24日。
前作「最後の星戦」&「ゾーイの物語」での〜〜〜の帰還によって、地球はCDF(コロニー防衛軍)にだまされていたと思いこみ、CDFとの関係を絶った。
それまで無尽蔵とも思える人材プールとなっていた地球を失ったことと、コンクラーベがまだ勢力を伸ばしていることを併せて考えると、30年後には人類は滅亡するという予測が。
コロニー連合はこれまで相手の脳漿を吹き飛ばす以外の外交方針を示してこなかったが、状況を鑑み、相手と交渉を行うというらしくない本来の外交を推進することとなった。
そんな世界を舞台にした13の連作短編。
エピソード1 Bチーム
コロニー連合の外交船クラーク号の一行に割り当てられるのは、いつも重要度の低い種族との交渉ばかりだった。
今回も貿易協定の締結のため、ファーナット族が口から吐き出す水を頭からかぶって謝辞を述べ、仕事を成功させはしたが、大きな仕事とは言えなかった。
クラーク号のクルーには、CDFのハリー・ウィルソン中尉も技術顧問として乗り込んでいたが、副大使のハート・シュミットと2人で雑用係のようになっていた。
責任者であるオデ・アブムウェは、外交官であるにも関わらず、無口で人付き合いが下手だった・・・。
ある日A級外交チームのポーク号が行方不明になった。
代わりに急遽クラーク号が交渉の席に着くことに。
そしてハリーには、破壊された可能性の高いポーク号のブラックボックスを探す任務が与えられた。
苦労の末に発見したブラックボックスから得られたのは、ポーク号がコロニー連合製のミサイルで破壊されたということだった・・・。
この本はテレビシリーズのパロディという体裁になっており、この第1話はアメリカのドラマによくあるように前後編となっている。
内容的には状況と登場人物紹介という感じが強い。
それにしてもこれまでのシリーズとなんと雰囲気の違うことか(汗)
だいたいこれまでのCDFの主張では、そもそも異星種族との交渉は不可能ということだったはずだが(笑)
とりあえずは世界が広がって選択肢が増えるのは歓迎。
エピソード2 処刑板を歩く
ある無法コロニーにコンテナに乗って不時着した男。
彼は軌道上の商船にいたのだが、謎の武装集団に襲われ、コンテナに詰め込まれて放棄されたのだった・・・。
状況のみで、オチ無し(汗)
エピソード3 必要なのは頭だけ
よりにもよって外交交渉をしている最中のブーラ族の星系に、コロニー連合の無法コロニーが発見された。
極秘裏に戦艦で接近して調査したところ、そこはすでに何者かに襲撃され、全滅していた。
調査中ハリーは死体の中に頭にブレインパルを装備した者がいることに気付く。
そんなところにCDFが関与していたとなれば、無法コロニーどころの話ではなく、コロニー連合の侵略行為と受け取られてもおかしくない。
実はそのCDF隊員は無法コロニーに潜入していたスパイだったのだが、交渉相手にはそんな理屈は通じないので、ひた隠しにすることに。
しかし3人いるはずのCDF隊員の死体の内2人までは見つかったが、残りの1人の頭だけは見つからず・・・。
一方的にしてやられる話。
なんのこっちゃ。
エピソード4 荒野の声
地球の有名トークショーホストのバンバウムは、リスナーの数が急激に減っていることを憂慮していた。次の半期も赤字ならば解雇されるだろう。
そこに奇妙な人物が接触してきて、彼の再度の成功を手伝わせてほしいと言ってくる。
それを受けたバーンバウムは、コロニー連合との関係を修復すべきだという論旨を展開する。
彼の番組は注目を集め、一躍時の人に。
しかし、彼の依頼者の目的はその先を視野に・・・。
シリーズを通して地球の様子がまともに語られるのは第1巻以来で、興味深い。
エピソード5 クラーク号の物語
クラーク号をミサイルの標的にさせたかどで問いつめられるコロマ船長。
結果的にクラーク号は解体されることとなり、次の任務は地球に古い宇宙船を売りつけるためのツアーの船長ということに。
またハリーも比較的最近の地球の知識があるということで、案内役として乗り込むことに。
そのハリーは地球から来た一行に怪しい点を見つけ、さらにエネルギーコンジット内部に爆弾が発見される・・・。
諜報戦に翻弄される一行。
野球チームの話でボロが出るというのはありがちだが面白い。
しかし大統領の名前くらいはなんとかならなかったものか(笑)?
この話で2代目クラーク号が誕生し、クルーも同じ顔ぶれになることで、ああこういうシリーズなんだなとわかった。今頃(笑)
エピソード6 裏ルート
人類とコンクラーベの船が多数行方不明になっていた。
お互いを疑う両陣営。
またコンクラーベはいくつかの人類の無法コロニーの存在に対して、それが本当に無法コロニーなのか、確認する必要があった。
コンクラーベは地球に使者を送り込み、情報収集を行うことにする。
その結果CDFにとってもコンクラーベにとってもその存在が都合の悪いコロニーが浮かび上がる・・・。
魅力的な新キャラが登場。
コンクラーベからの使者は、ガウ将軍の顧問であり、ララン族である彼女は、もっとも背の高い地球人ほどの身長で、冷静で論理的でユーモアのセンスがあり、チュロスが好物(笑)
このシリーズがあらたな面白さを生み出すのに欠かせないのが異星人の魅力的なキャラクターだと思うので、まさにそれ(笑)
コンクラーベ内の駆け引きも興味深い。
エピソード7 犬の王
ウェイヴァリー大使のイチェロー族との交渉のサポートをすることになったクラーク号の一行。
交渉の間、ウェイヴァリー大使の大事な犬をあずかることになったハリオーだが、なんとその犬が奇怪な植物に食べられてしまい・・・
古いスタートレックのエピソードみたいな話。
謎の答えもなんだか古風な感じ。
その後さらにもう一段階物語が用意されているのは新しいところか。
どうやら作者はこの世界をとことんなんでもできる舞台として広げることにしたらしい。
それはそれで面白いのだが。
エピソード8 反乱の音
捕まって拘束されたCDF兵士達の内の1人ヘザー・リーは状況を分析し、決死の脱出を試みる。
ブレインパルの有効利用。反射音だけでそこに置いてある物の詳細まで含めた部屋の正確な見取り図を頭の中に作るとか、実にSFらしくて楽しい。
ちうかやはりこのシリーズの醍醐味はCDF兵士の活躍だと思う。
エピソード9 視察団
地球の視察団が外交交渉に立ち会うことに。当然そのような半端な状況の最初の任務はクラーク号の一行に回される。視察団を監視する役目はもちろんハリーである。
視察団の1人である医師のローウェンと親しくなるハリーだが、視察団メンバーの1人が突然死んでしまい・・・。。
ローウェルとの会話に、CDF兵士のことがたくさん出てきて、やっぱりそこは面白い。
ちうか話題になるだけで面白くさせるCDF兵士の設定はほんとうに素晴らしい。
物語自体はミステリー仕立てになっていて、なかなか面白い。
エピソード10 ここがその場所
フェニックス・ステーションにやってきたハート・シュミットは久しぶりにゆっくりと休養をとった後、実家に戻り、家族と再会するが・・・。
ハートの立場を通して地球やコロニー連合の置かれた過酷な状況が読みとれる。
ハートの家族も個性豊かに描かれていて悪くない。
スタートレックTNGでピカードが実家に帰る話を思い出した。
エピソード11 比較の問題
ミサイル攻撃を受けるクラーク号。デジャブに悩まされながら回避行動を指示するコロマ船長(笑)。
しかしそのミサイルはコンクラーベの戦艦によって破壊され、そしてその戦艦はクラーク号に降伏の申し出をしてくる。
クラーク号を攻撃してきたのもコンクラーベの船のはずだったが、ソルヴォーラ顧問官はその船はすでにコンクラーベのものではないと語り、ようやくコロニー連合とコンクラーベの船が行方不明になっていることについて両者に会合がもたれ、どうやら第3の勢力が関係していると同意がとれて一安心。
ところが謎の宇宙船には恐るべき仕掛けが成されており・・・。
初めて第3の組織の具体的な描写が出てくるが、その悪の組織としか言いようがないその行い(笑)は意外の一言。
エピソード12 やさしく頭をかち割って
視察団に紛れ込んでいた工作員についての調査の交渉をブラジル領事館と行っていたローウェンだったが、突然領事館が爆発してご破算に。
調査は行き詰まったかと思われたが、ある男が彼女に接触し、ナノロボットによる脳への影響と、その結果の殺人について話をする・・・。
ほんとにテレビシリーズみたいな雰囲気が漂いだしている。
そういえば映画化される話はどうなったのかな???
エピソード13 眼下に地球、頭上に空
地球ステーションでサミットが開かれることになった。
しかしそこを16隻の宇宙船が襲撃。
ハリーは崩れ落ちる軌道エレベーターから脱出を観光する。
結局地球との仲を修復するのに失敗したコロニー連合。
敵の正体も不明なまま、終了。
クリフ・ハンガーというほどではないにしろ、これではおさまらない。
付録 ハリーの災難
ハリーがクラーク号に乗り込んだ直後の話。
外交交渉のおまけとして、コルバ族との模擬戦を行うことになるハリー。
3連戦の中で、彼は接戦を演じて負けなければならない・・・。
CDF兵士の能力と、奇妙すぎる能力を持ったコルバ族の描写が楽しい。
付録 ハフト・ソルヴォーラがチュロスを食べて現代の若者と話をする
地球ステーション崩壊後、ワシントンDCでチュロスを食べていたソルヴォーラ。
彼女の周りに幼稚園児が集まってきて、質問責めをはじめ・・・。
とにかく冷静なソルヴォーラのキャラクターが活きていて、ラストにはちょっとほっこりさせてくれる良作。
というわけで大筋を紹介したが、とりあえず世界を同じくした今までとは全く異なるシリーズが始まったと言うのが正しいところだと思う。
新しく始まったのは数百のエイリアンが生息する世界とコロニー連合、地球といった環境が主人公で、視点はあくまで登場人物達によるが、それらが集まって大局的な流れを描きだしている。
これはこれで非常に面白い未来史物と言えるだろう。
しかしやっぱり「老人と宇宙」といえばハードなミリタリーSFが看板だと思うので、微妙は微妙。
どうせならシリーズ名も変えたらすっきりするのだが。
とりあえず第3の勢力の正体がわかるのはいつのなるのやら???
20150319(mixi日記より)
20240906
10月1日では遅すぎる
フレッド・ホイル著/伊藤典夫訳/ハヤカワ文庫
を読んだ。2014年7月4日。
作曲家であるリチャードは、世界現代音楽フェスティバルに参加するため、ケルンへ向かう。
しかし新作の評判は芳しくなく、早々に引き上げ、旧友と山登りに行くことにする。
ところが友人が行方不明になってしまい、予定は台無しに。
しかしそれが太陽からの指向性ビーム、そして時間の錯綜という異常事態の先駆けだとは、誰も気づいていなかった・・・。
要するに世界中で現在時刻に大きなずれが生じるという話である。
それも極端なずれで、飛行機に乗って行ってみたら未開の大地だったり、超未来の世界だったりするのだ。
問題は主人公が音楽家だということで、化夢宇留仁にとってはそれがなんだか物語に近づきにくくさせる効果があったらしい。
そこに上記のような珍妙な状況が提示されるので、ただでさえ現実味が薄かったところに上乗せされて、悪夢じみてくる。
ストーリーとしては発端、事件と謎、探検、種明かし、新たな決断というまさに王道の流れで進む。
この大仕掛けと王道のストーリーとくれば楽しめないわけがないのだが、やはり音楽家というのが引っかかり続けた感じがする。
化夢宇留仁も楽譜の一つでも書けたならもっと入り込めたのかもしれない。
20150328(mixi日記より)
20240907
トータルリコール
レン・ワイズマン監督
を観た。2014年8月10日。2012年の新しい方。
21世紀末の世界大戦により、地表の大半は居住不可能となった。
富裕層はヨーロッパを中心としたブリテン連邦(UFB)に住み、貧困層は反対側のオーストラリアを中心としたコロニーに居住し、フォールと呼ばれる地球を貫いている巨大なエレベーターでUFBに通勤して働いていた。
コロニーで暮すダグラス・クエイドは、警察ロボット「シンセティック」の生産を行っていた。
貧しいながら美人の妻ローリーと平和に暮らしていたが、ダグラスはいつの頃からか夢の中で見知らぬ女性と病院を脱出し警官に追われる夢を見るようになる。
その夢の事が気になりつつ、ある日リコール社の好きな夢が見られるという宣伝に興味を持つ。
そこで待っていたのはあの夢と、本物の(?)銃撃戦だった・・・。
どうも原作の再映画化と言うよりも、シュワルツェネガーの旧作のリメイクという感じらしい。
設定は大幅に変わっているところもあるが、明らかに前作を意識したシチュエーションも散見される。
よかったのはケイト・ベッキンセイル演じる偽奥さんで、前作ではシャロン・ストーンが演じてこれまたいい感じだったのだが、本作ではちょい役ではなく、執拗にダグラスを追い続ける殺し屋の役、つまり前作でマイケル・アイアンサイドが演じていた役割も兼ねているのだ。
そりゃ〜〜〜はげの強面のおっさんが映っているより美人のねーちゃんの方がいいに決まっている(笑)
また彼女とダグラスのチェイスシーンも派手で見応えがある。
ラスト近くになってくるとなんだかどうでもよくなってくるような気もするが(笑)、まあまあ楽しめる佳作だと思う。
20150331(mixi日記より)
20240908
浅草鳥越あずま床
井上ひさし著/新潮文庫
を読んだ。2014年11月10日。
浅草の幼なじみの初老6人組の繰り広げる連作短編集。
浅草鳥越あずま床
いつものように床屋「あずま床」に集まった6人の仲良し老人たちに、娘婿のつてでNHKの特集番組で昔の遊びを紹介するコーナーに出演しないかという話が。
散々周りに宣伝した後、いざ収録当日。
撮影が押してしまい、彼らのコーナーがカットされ、それがきっかけで6人の仲にひびが入り、「あずま床」の主人の孝太郎は店を閉めることに・・・。
とりあえずは登場人物紹介編といった感じ。いきなりチーム解散の危機だが(笑)
上野西郷花ふぶき
2月の最初に水戸まで梅の花を見に来た5人の老人達。しかしまだ早く、花は咲いていなかった。
西郷さんの銅像の前で文房具問屋の徹ちゃんと待ち合わせし、大震災の時に少年だった6人が望遠鏡で一儲けした思いで話などをした後、とあるキャバレーへ。
そこで出会ったガム売りの少女に一目惚れした一行は、彼女に援助しつつ、春画家の雲麿がモデルを依頼し、ついでに残りの5人は押入に隠れて彼女の裸を鑑賞(笑)
しかしその直後にやくざ風の声による電話が入り、金を要求してくる・・・。
要するに単純な老人が若い女にだまされる話で今と大して変わらない。
変わったのは女の動機で、大学に合格した兄の入学金を手に入れるためというのが本作のそれ。今なら単なる小遣い稼ぎが妥当だろう。
そういうのを社会常識が変化したと言うのだろうか???
忍ぶ恋路は柳橋
老人達のアイドル的存在である芸者の小春に、縁談が持ち上がる。
相手はビル会社の社長の大関という男で、小春に芸者を辞めさせて高級クラブをまかせようとしていた。
老人達は小春へのはなむけに、太鼓持ちになってクラブ開店の日に押し寄せるという計画を実行する。
しかしその後大関が開発のために小春の実家を買い取ろうとしていることがわかり・・・。
単に地上げするだけにしては大がかりで、このへんでも昔は悪にも情があったのかと勘ぐらせる。
ほんとうにそうだとしたら、もはや当時と今では日本は違う国というくらいの変化っぷりである。
踊る金髪浅草寺
「あずま床」の2階を人に貸すことにしたところ、やってきたのは若い女2人組だった。
なんでもストリッパーとストリップ中の選曲者だそうで、見た目からしてもまともではなかったが、とにかく若い女と言うことで喜んで貸してしまう孝太郎(笑)
早速ショーも見に行く一行(笑)
しかし一番見たいところは見せてくれなかった。
それでもレズのカップルの幸せのために骨を折る一行なのだが、そもそもとんでもない勘違いをしており・・・。
ご近所つき合いの濃さ以外は、この話は今でもありそうである。
とりあえず変にリアルにエロくて面白かった(笑)
はり毛はり紙花川戸
春画家の雲麿に富士山の壁画を描いてもらった風呂屋の徳ちゃんだが、だまし絵で見ようによっては女性器に見えるという作品が仕上がり、まいっていた。
そんなところに、政治家の偉い先生から春画集を50冊作ってほしいという依頼が。
張り切って実物の陰毛を集めて貼り付けたりと、凝りに凝った春画集を作り上げる。
ところがその先生に渡した本が、D国の野党党首が誘拐された現場から見つかり・・・。
いきなりの急展開にちょっとついていけない(笑)
「日本に地理的にも政治的にも近いD国の野党党首」を日本の政治家が秘密裏に誘拐するというシチュエーションはどんな筋書きが想像されるのだろうか?
少なくとも現代の日本では化夢宇留仁は考えつかない。
政府のノリも今とは全然違ったのか???
迷う心の待乳山
かもじ屋の昭ちゃんが、昨夜キャバレーで出会った女の子と閉店後に楽しんだという話を聞いていた雲麿は、その子かおりが自分の娘かもしれないと言い出す。
昭ちゃんが聞いてきた彼女の生い立ちに覚えがあったのだ。
彼女を連れだして話をしてみると、なんと彼女の母親は恋多き女で、他にも父親の可能性がある男性が多数いることがわかり・・・。
この先が意外と言うか、珍妙な展開になる。
結果的には4人の精神病患者ができあがる(笑)のだが、その辺の表現の仕方とかが舞台劇っぽい。著者が著者だから当たり前なのかもしれないが。
すまじき恋を駿河台
気の抜けたようになってしまった孝太郎のところに、突然美人のホームヘルパーがやってくる。
俄然元気を取り戻す孝太郎。
孝太郎のことを心配してヘルパーの手配をしていたのはいつもの仲間達だったが、予想に反して若い美女が来たことで、孝太郎だけにいい思いをさせるのは許すまじと、みんながよぼよぼの老人のふりを(笑)。
実はその女性はベテランの記者で・・・。
とりあえず老人達がエロエロすぎて、しかもなぜか生々しい(笑)
もしかして化夢宇留仁が老人達と近い立場だからなのか(汗)???
あぶらかたぶら泪橋
徹ちゃんの店に勤めていた三千代という娘が辞めると言い出した。
どうしようかと相談しているところにやってきた小春が、それまでの話を吹き飛ばすような報告を。
なんと小春はアラブの石油王に見初められたというのだ。
いつものお節介で信頼できる人物かどうか見極めてやるということになり、石油王を「あずま床」に呼び出すことに(笑)
ところがその後自体は予想外の展開を見せ、物語は宝石盗難事件につながっていく・・・(笑)
この唐突さはどこかで見覚えがあると思ったら、松竹新喜劇だと思い当たった(笑)
というよりもこっちがその大本なのかもしれないが。
初めて読んだのは中学生の頃。その後1回くらいは読みなおしたと思うが、その後数十年たって再び読み返してみた。
筒井とか星とか読み返していた流れかな?
ちうわけで一通り振り返ってみたが、小さい頃に読んだときには自然に感じていたところが、今読むと違和感が強いところが多かったのが興味深かった。
まずはメインの登場人物達が「老人」だと思っていたが、今見返してみるとみんな50代で、全然老人じゃない(笑)
まあ年齢に対するイメージは自分の年齢との相関関係にあるのでよくある話か。
それに上でも何度も書いたが、すでに別世界としか思えない当時の日本の常識。
これも浅草の古い商店街が舞台と言うことで、描かれた当時から時代遅れな感じにあえてしているのだとは思うのだが、それにしても変化が大きすぎるような気がする。
それと上記の舞台劇っぽさ。
今ならあんな唐突な展開は普通の小説ではなかなかあり得ないというのを知っている(笑)
そんなわけで色々な意味で古びた内容の作品だが、そこがまた興味深くてなかなか面白く読めた。
人には勧めないが(笑)
20150413(mixi日記より)
20240909
馬の首風雲録
筒井康隆著/文春文庫
を読んだ。2014年12月8日。
井上ひさしの「浅草鳥越あずま床」を読んだ後、ひさしぶりにSFらしい本を読みたくなった。
同時に今珍しく日本作家の昔読んだ本の再読小ブーム状態だしと思い、思い出したのが本作だった。
そもそも兼ねてから筒井康隆がSF作家なのかどうか、化夢宇留仁は疑問に思っていた。
変な作品ばかり(笑)書いているが、果たしてだからと言ってそれがSFかと言われれば、違うような気がするのだ。
そんな著作の中でも、珍しくダイレクトにSFっぽい設定、馬頭星雲にある恒星系での戦争を描いた作品が本作である。
昔読んだときはとても面白かった記憶があるのだが、果たしてそれは今も変わらず、そしてSF作品になっているのか・・・。
惑星ビシュバリクの、犬が直立して2足歩行したような姿のサチャ・ビ人は、地球人による技術提供で高度工業化を成し遂げ、同星系内にある惑星ブシュバリクの開発と移民までも行うようになった。
やがてブシュバリクは鉱物採掘地としてだけではなく、商業地としても大きく発展を遂げ、植民元であるビシュバリクとの関係にヒビが入りだし、とうとう戦争が勃発。
交易拠点を失うわけにはいかない地球政府はブシュバリクに肩入れし、戦争は大規模化していった・・・。
戦争婆さんと呼ばれているサチャ・ビ人の老婆は、4人の息子とともに旅をしていたが、息子達は1人ずつ婆さんの元を離れていく。
長男のヤムは戦争の経過に大きく影響する秘密兵器の情報をつかみ、それをブシュバリクの共和国に売り込もうと首都トンビナイへ向かう。
次男のマケラは軍に入り、最終的には農民解放軍のリーダーとなって戦う。
3男のトポタンは将校のペットになるが、歌姫とともに逃げだす。
4男でアホでおしのユタンタンは、ずっと婆さんのそばにいたが、頭を打ったショックでアホではなくなり、どこかへ旅立っていった。
彼らの行く先は、どこもかしこも大量の死が渦巻いていた。
最後に残った戦争婆さんは、息子が1人もいなくなったことを嘆くが、戦争がまだまだ続くと聞いてまだまだ金儲けの機会があると旅立っていく・・・。
全然SFじゃない(笑)
確かに小道具とか設定とかはSFなのだが、描きだしているのは「地球のどこかでいつも起こっている戦争」であり、全然センス・オブ・ワンダーじゃない。
なので描写に力が入るのは決起した農民達に虐殺される街の人々とかで、戦略、戦術面では情報は出てくるもののそれがストーリーラインに乗ってくるということはない。
4人の息子達の顛末はそれぞれ全く異なった環境と展開になるが、ここにもSFのにおいはなく、あくまで戦争に翻弄される人々の一例といった感じ。
それはそれで興味深く面白いのだが、少なくとも化夢宇留仁の思うSFではない。
筒井は本当にSF作家なのか・・・(笑)???
20150415(mixi日記より)
20240910
ムーミン谷の彗星
を観た。2014年12月29日。年末のテレビスペシャルでやっていたのでなんとなく。
ムーミン谷で平和に暮らすムーミン一家のところに、偏屈なジャコウネズミがやってくる。彼は少し前から空に現れた彗星について不吉な予言をし、気味悪がられるのだが、翌朝真っ黒な雨が降り、予言が真実味をおびてくる。
ムーミンは天文台に行って彗星の正体を聞いてくる決意をし、なんにでも鼻を突っ込むミイと、怖がるスニフを連れて旅に出る。
道中出会ったスナフキンも一緒に行ってくれることになり、危険な山道を進む。
やがてたどり着いた天文台では、彗星が地球にぶつかって世界の終わりがくるかもしれないと知らされる。
学者のスノークとその妹のノンノンも連れてムーミン谷に戻ると、谷のみんなはほとんどが避難していたが、パパやママは待っていてくれた。
谷から逃げても仕方がないと言うことで、一家は洞窟に避難することにする。
その夜彗星はムーミン谷に最も接近し・・・。
原作は2〜3回読んでいて、物語の大筋は覚えていたのだが、細かい部分は全く記憶になく、新鮮に楽しめた。
最も興味深かったのはムーミン夫妻の放任主義ぶりで、ムーミンを1人で旅立たせるのはいのだが、その行き先は断崖絶壁やら食人植物やら、危険がてんこもりの大冒険で、スナフキンがいなかったらおそらく全滅していたと思われる強行軍(笑)
この映画は子育てのバイブルにするのがいいかも(笑)
とりあえずそこそこ面白かったが、それよりも原作のシリーズを読んだときの面白さが思い出されて、またシリーズを読み返したくなった。
20150415(mixi日記より)
20240911