黄昏の峰へ

なんと渋いタイトル。パッケージも輪をかけて渋い。
シリーズ5作目にして、まさにキャンペーンというボリュームのシナリオが登場。それが「黄昏の峰へ」。
ショートシナリオ「アルゴン・ギャンビット」、「デス・ステーション」がつき、サプリメント「帝国市民」も入っていた。

ただでさえロングキャンペーンの「黄昏の峰へ」は、実はスタートセットの「シャドウ」と、「研究基地ガンマ」の同タイトルシナリオともリンクしており、謎のコインをめぐっての、まさに叙事詩と言えるような規模を誇っていた。
ただし、例によってシンプルな作りのGDWシナリオで、上記のように展開しようと思えば、レフリーにとてつもない作業量、または記憶力と臨機応変なアドリブが必要だった。

化夢宇留仁オリジナルのアドリブキャンペーン内に少しずつ絡めてゆくという形を取っていたが、やはり終幕にはいたっていない。
TRAVELLER世界の根幹にも触れる重要なシナリオなのだが。

2つのショートシナリオは、どちらも印象的な描写と謎、トリックが用意された好シナリオで楽しめた。「黄昏の峰へ」もこんな書き方がされておれば・・・と思ったが、あの規模ではシナリオブックの厚さだけでくらくらするものになっただろう。

「帝国市民」は、新しいキャラクター職業の紹介と、作成ルールとデータ集。
あまりプレイヤーキャラクターには向きそうにない職業が多く、かえって面白かった。


傭兵部隊

海軍に続き、陸軍と海兵隊の上級ルール&サプリメント・・・なのだが、化夢宇留仁はこのセットをもっていない。
内容はサプリメント&追加ルール「傭兵部隊」、シナリオ「ブロードソード」、データ集「ベテラン」。

「傭兵部隊」では強いキャラクターが出来、武器もフュージョンガンなどけた外れに強力なものが登場したが、ただでさえオーバーキル気味だったのがエスカレートし、かえって戦闘がやりづらくなるというジレンマが発生していた。

「ブロードソード」はほとんどウォーゲームのようなシナリオで、プレイヤーの視点は部隊指揮官あたりになり、ゾダーン特殊部隊相手の傭兵達の戦闘を指揮することになる。

「ベテラン」は例によってキャラクターのデータがずらりと並んだサプリメント。それ以外にも傭兵チケットなど、描写の助けになる資料も紹介されている。
画像は加藤直之大先生の画集より。パッケージイラストの原画である。


第五次辺境戦争

MAYDAYにも見られたまったく違うタイプのゲームによるTRAVELLER世界の表現の一つの完成形が、この「第五次辺境戦争」ではなかろうか。
このゲームは完全なウォーゲームである。
一応同題のサプリメントもついているが、RPG用というよりウォーゲームにおけるヒストリカルノートに近い。

ゲームは帝国と、ゾダーン連盟を中心にした外世界同盟が、スピンワードマーチ宙域を舞台に戦った様子を再現している。ルーン・クェストにおけるドラゴン・パスのようなものだと言えば、分かる人もいるだろう。

この戦争はその名の通り今まで4度にわたって行われた辺境戦争の5回目に当たり、TRAVELLER世界の歴史においても最もプレイされている時代の出来事で、自然RPGプレイヤーの興味も引くようになっている。この辺は非常にうまい。
またそのシステムも、行動プロットを巧みに使って広大な宇宙空間での艦隊行動の難しさを見事に表現しており、非常によくできている。TRAVELLERと関係なくウォーゲームとしてだけ見ても面白いと思う。
RPGをしていて自分が生きている場所として見慣れているスピンワードマーチ宙域が、戦場としてマップになっているのを見るだけで、ワクワクはらはらしてくる。

化夢宇留仁はこのゲームがすごく欲しかったが、お金がなくて買えなかった。ちょっと悔しい思いもこのゲームには感じている。



砂漠の傭兵

傭兵キャラクターが活躍するシナリオが2本セットになっている。
セット内容は表題の「砂漠の傭兵」と、嵐の星ガラテアを舞台にした「ガラテア救出作戦」。

「砂漠の傭兵」はセミウォーゲームといった感じで、プレイヤーは遊牧民を組織して、テクノロジーで上回る敵に挑まなければならない。

「ガラテア救出作戦」では、行方不明になったVIPを探す内、原住民も絡めた大規模な戦闘に巻き込まれるという内容。

傭兵がらみのシナリオに共通するのが、ロールプレイの中途半端さだと思う。何しろ強力すぎるキャラクターの能力を生かそうと思ったら、ある程度戦闘の規模を大きくしなければならず、そうなると個人の動きはどうしても軽視されがちになる。そこがレフリーの腕の見せ所かもしれないが、大規模戦闘ではなかなか難しい。オーバーキルのジレンマも含めて、そのままでは使いづらいシナリオかもしれない。
でもパッケージは渋くて好き。


レフリー・アクセサリー

サプリメント&シナリオのセット。サプリメントはレフリーの作業を助けるものが大半で、どちらかといえばユーティリティーに近い。

まず「レフリー・スクリーン」。やっと発売されたマスタースクリーンである。TRAVELLERらしく無味乾燥な図表で両面が埋まっており、いい感じである。
ルールを変えてやっている今でもクリップで新しいルールやオリジナルルールをくっつけて愛用している。

次に「装備カード」。これはいいアイデア。
様々なものが登場する装備をカードで管理。銃器の残弾チェックカードもあり、便利。
ただし化夢宇留仁はカード自体の管理保管が出来なくて、少し使ってすぐやめてしまった。

「60人のパトロン」はまさに待ち望んでいたサプリメントだった。
今までの「1001キャラクター」タイプのデータの羅列ではなく、それぞれ描写があるミニシナリオの形態をとっている。キャンペーンの展開に詰まったときなど、これを利用すればちょっとしたイベントがすぐ用意できた。

「逃避行/単独逃避行」は変わった構成のシナリオ。
同じ状況を1人でソリテアとしてプレイする場合と、多人数でプレイする場合に分けて書かれている。
レフリーの練習用ということだったが、化夢宇留仁は状況が絶望的すぎて、いっちょやったろか!という気にならなかった。

ところでレフリー・アクセサリーのパッケージは、今一好きになれない。加藤直之大先生は好きなように描いて楽しかったそうだが、なんか散漫で奥行きがない。
作品というものはある程度制限がないと、面白味が出てきづらいもののようだ。


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化夢宇留仁の異常な愛情